霊友会と武部幹事長と森前首相の関係


 
青少年政策に関る世論づくりの背景に、宗教法人霊友会が組織する青少年団体「インナートリップ青少年センター」が関与しており、霊友会が組織する政治団体「IIC」(インナートリップイデオローグリサーチセンター/代表=荻窪新始所長/会計責任者島崎政江)の役員総会に安倍晋三衆議院議員が出席していたことは、すでにkitanoのアレで書きました。
 

普遍価値教育論の源泉:日本青少年研究所霊友会の場合
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050320

 
インナートリップイデオローグリサーチセンターと政治家との関係のウラをとる過程で、森前総理と武部自由民主党幹事長がインナートリップイデオローグリサーチセンターの会員として多額の会費を“政治活動として”支払っている事実が、政治資金収支報告書により判明しています。
 
総務省が平成16年9月10日に公表した政治資金収支報告書(平成15年分 定期公表)によると、森喜朗内閣総理大臣の全国政治資金管理団体「春風会」(しゅんぷうかい)は、政治活動費として、平成15年11月5日に、インナートリップイデオローグリサーチセンター(東京都港区麻布台1-9-2)の会費として18万円を支出しています。
 

総務省 平成16年9月10日公表 政治資金収支報告書(平成15年分 定期公表)
政治資金管理団体
春風会

※赤枠強調は北野による。

 
月500円の会費だと年会費6000円ですので、18万円の支出は会員30人分に相当する支出ということになります。
森前首相は、一体なんの目的で、宗教法人霊友会政治団体・インナートリップイデオローグリサーチセンターの会員となり、多額の会費を支払っていたのでしょうか?
 
宗教法人霊友会政治団体・インナートリップイデオローグリサーチセンターに政治活動として多額の会費を支出している国会議員は、森総理だけではありません。現自民党幹事長の武部勤衆議院議員も、IICに政治活動として多額の会費を支出しています。
総務省が平成16年9月10日に公表した政治資金収支報告書(平成15年分 定期公表の、武部幹事長政治団体「東京翔武会」の報告には、平成15年12月25日にIICの会費として政治活動費から18万円の支出があることが確認されています。
ちなみに、武部幹事長政治団体「東京翔武会」は、武部幹事長の政治資金管理団体「翔武会」から高額の寄附を受領しており、トンネル寄附が行われていることも確認されています。
 

総務省 平成16年9月10日公表 政治資金収支報告書(平成15年分 定期公表)
政治団体
東京翔武会

政治資金管理団体
翔武会

※赤枠強調は北野による。

 
以上が、お金を支払う側の状況。
では、お金を受け取っている側はどうか。
 
IICは、それ自体が総務省政治団体認証を受けた全国規模の政治団体であり、毎年政治資金収支報告書を提出しています。
総務省が平成16年9月10日に公表した政治資金収支報告書(平成15年分 定期公表のIICの報告によると、年度収入の約九割が会費による収入で、平成15年度の会費収入は25,771,000円。残りの収入は機関誌(「マンスリーIIC」)の収入で約3,276,300円。会費納入の員数は4,642人*1ですので、会員一人当り平均5551円を納入している計算になり、森・武部両人の18万円の会費は、極めて多額の会費であることが確認できます。
IICの支出は、会費の約四分の一の657万円が翌年繰越(積立)となり、残りの会費の大半が機関誌(「マンスリーIIC」)の発行と発送費用になっています。
「マンスリーIIC」の記事の一部は外部委託執筆原稿も一部含まれていて、「マンスリーIIC」から原稿料を受け取った執筆者は、政治資金収支報告書で確認がとれる範囲では以下の通りとなっています。
 

原稿料55,555円 浅川公紀*2 品川区旗の台3-8-1
原稿料111,111円 木村汎*3 西宮市甲風園1-17-4-202
原稿料111,111円 神谷不二*4 横浜市青葉区美ヶ丘2-51-5
原稿料111,111円 渡部昇一 (東京都)練馬区関町南1-7-22
原稿料111,111円 加瀬英明*5 (東京都)千代田区平河町2-16-15北野アームス612
原稿料111,111円 井沢元彦*6 船橋市飯山満町3-1761-109
原稿料111,111円 深田祐介*7 (東京都)目黒区平町1-16-8
原稿料111,111円 入江隆則*8 取手市戸頭3-26-7
原稿料111,111円 高橋史朗*9 多摩市関戸1-1-5 c-826
原稿料105,000円 (株)ケイテクノリサーチ 唐津*10
原稿料111,111円 渡部昇一 (東京都)練馬区関町南1-7-22

 
執筆者の詳細な情報は脚注を参照していただければわかりますが、歴史修正主義の推進者がずらりと並ぶ“気持ち悪い系”な人たちで占められています。
上記情報が真実であり、同姓同名の別人では無いことの証拠として、政治資金収支報告書を、申告住所も含め、引用しておきます。
原稿料が“あたかも後で決めたかのように”とても半端な数字になっていますが、政治資金収支報告書ではそうなっています。→2005.07.07追補参照。
  

総務省 平成16年9月10日公表 政治資金収支報告書(平成15年分 定期公表)
政治団体
インナートリップイデオローグリサーチセンター

※赤枠強調は北野による。

 
ここまでの情報をまとめるとこうなります。
 
1 森前総理武部幹事長は、平成15年に霊友会政治団体IICの会員だった。
2 森前総理武部幹事長は、IICの会員としてそれぞれ18万円を私的支出ではなく“政治活動費として”支払った。
3 森前総理武部幹事長が支払った会費は、他の一般会員とは明らかに異なる多額の金額であり、IICへの寄附に等しかった。
4 IICの会費の大半は、機関誌発行による政治的情宣活動に使われていた。*11
5 IICの機関誌「マンスリーIIC」の執筆者は、歴史修正主義的傾向の言論人で占められていた。

 
これらの事実からいろいろ推測できそうです。
たとえば、霊友会組織に森前総理武部幹事長が政策浸透を図り、選挙協力の円滑化を実現するという目的があったのではないか、というのがその一例。
この推測が事実かどうかはさておき、与党自民党の中枢にいる幹部二人が特定宗教法人と関係が深い政治団体と密接なつながりがあることは事実として認識できると思われます。
 
余談ですが、霊友会政治団体「インナートリップイデオローグリサーチセンター」は、「マンスリーIIC」という機関誌を発行していますが、この「マンスリーIIC」を読むと、自由民主党の議員の名前を散見することができます。
人権擁護法案に対して「表現の自由を侵害する恐れがある」との根拠の無い批判を展開している人種差別思想擁護団体「真の人権擁護を考える懇談会」の座長を務める古屋圭司衆議院議員(自由民主党岐阜県)は、「マンスリーIIC」に登場する議員の一人で、古屋圭司衆議院議員は自分のウェブサイトに「マンスリーIIC」の記事を転載しています。
 

古屋圭司衆議院議員
(自民党岐阜県文部科学委員会委員/憲法調査会幹事/拉致議連事務局長)
http://www.furuya-keiji.jp/
日本の自由と民主主義を守るために
(マンスリーIIC 6月号インタビュー)平成17年6月1日
http://www.furuya-keiji.jp/activity_diet/17_06_01.html

 
関連リンク。
 

森喜朗衆議院議員
http://www.mori-yoshiro.com/
首相官邸
歴代内閣情報 森内閣
http://www.kantei.go.jp/jp/morisouri/index.html

平成13年1月4日、伊勢神宮を“内閣総理大臣として”参拝する森前首相


武部勤衆議院議員(自民党/北海道12区)
http://www.takebe.ne.jp/
「日本は天皇の国」発言について
http://www.takebe.ne.jp/seiken7.htm
自由民主党 武部勤幹事長記者会見
http://www.jimin.jp/jimin/kanjicyo/index.html

霊友会
インナートリップイデオローグリサーチセンター(IIC)
http://www.reiyukai.or.jp/ouen/ouen2.html

総務省
政治資金収支報告書及び政党交付金使途等報告書
http://www.seijishikin.soumu.go.jp/

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■2005.07.07追補
111,111円の数字について、ある方から「111,111円は自由業者への報酬等で適用を受ける10%源泉徴収で、手取りをちょうど100,000円にするための“一並び”ではないか」、とのご教示をいただきました。
私も指摘を受けて気づきましたが、ご指摘の通り“一並び”ではないかと思います。
ご連絡をいただいた方には、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
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*1:霊友会の選挙運動の実働部隊は4000人と言われていますが、IICの会員数はその人数と近似です。

*2:浅川公紀(あさかわこうき) 筑波学院大学教授(国際政治、アメリカ外交)東 http://www.tsukuba-g.ac.jp/gakka/curriculm/kyoin_inter.html#a 東京家政学院筑波女子大学国際社会学科教授 http://www.kasei.ac.jp/kokusai/menyu/kyoin_sita.html

*3:木村汎(きむらひろし)拓殖大学海外事情研究所教授 ロシア政治、日露外交の研究者。日本の北方領土対策政策のキーパーソン。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%9D%91%E6%B1%8E

*4:神谷不二(かみやふじ)東洋英和女学院大学教授 国際政治学

*5:加瀬英明:右翼イデオローグ、日本会議代表委員・東京都本部会長、(財)松下政経塾相談役。共著に「醜い韓国人歴史検証編」「皇室と伝統精神と即位礼・大嘗祭」「天皇裕仁」「創価学会問題の真実は何か」など。加瀬英明氏の精神的ブラクラウェブサイト http://www.kase-hideaki.co.jp/

*6:井沢元彦(いざわもとひこ) 作家。よみうりテレビのニュースバラエティ番組「ウェークアップ+」の“歴史修正主義派”のコメンテーターとして登場した。「"日本の安全には改憲が必要"が持論。」 http://www.ytv.co.jp/wakeup/commentator/a/izawa.html 「言霊、和、怨霊、穢れなどの迷信的な力が日本史を動かす原点であるといった説の持ち主」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%95%E6%B2%A2%E5%85%83%E5%BD%A6 著作に「仏教・神道儒教 集中講座」「逆説の日本史〈11〉戦国乱世編―朝鮮出兵と秀吉の謎」「日本を殺す気か!―「官僚の論理」に国を亡ぼされないために」「誰が歴史を糺すのか―追究・日本史の真実」「歴史の嘘と真実―誤解だらけの「正義」と「常識」 ノン・ポシェット」など。井沢元彦のウェブサイト http://www.gyakusetsu-j.com/

*7:深田祐介直木賞作家。右派系論壇氏「諸君!」にも登場する。著書に「炎熱商人」「鍵は朝鮮半島にあり」「アジアは復活するのか」「金正日亡命」「北朝鮮・狂気の正体」「大東亜会議の真実」など。歴史修正主義的傾向を強めることで出版と読者を稼いでいるようですが、石原慎太郎と同じで作家としての旬はとうに過ぎたように見えます。

*8:入江隆則明治大学教授。文藝評論家。http://www.meiji.ac.jp/shogaku/seminar/cultural/4.htmlつくる会」のシンポジウムにパネラーとして出席したことがある。 http://www.tsukurukai.com/08_simpo/simpo25_report.html 「諸君!」2003年3月号の記事で「戦後半世紀間の日本には、自虐と自己否定の空気があまりにも広がり過ぎていた。それは敗戦によるというよりは、敗戦を契機とした占領軍の言論操作によるものだった。それにあっけなく屈したところに、日本人の弱さがあったと言える。それにまた、戦後半世紀にわたって猛威を振るった左翼のイデオロギーが加担したのはいうまでもない。その結果が醜い自虐の言論となって日本人の精神を呪縛していた。それは朝日新聞に代表される偏向マスコミに今でも生き残っている。」などと歴史修正主義的言論を披露している。

*9:高橋史朗:「新しい歴史教科書をつくる会」元副会長。歴史修正主義にもとづく教科書運動のイデオローグ。著書に「教科書検定」「感性・心の教育(全5巻)」。自治省が国家青少年政策策定のために委嘱した「青少年健全育成研究会」の会長でもある。 http://www.coco-de-sica.com/lectur/lecturer/takahasi-sirou.htm

*10: (株)ケイテクノリサーチ 唐津一氏は東海大学名誉教授で、(株)電通特別顧問でもある。 →「特定非営利活動法人人間総合研究所 理事」 http://www.k3.dion.ne.jp/~npohri/rijikanjihyougiin.html 唐津東海大学名誉教授「著書 『松下幸之助とその社員は逆境をいかに乗り越えたか』『かけひきの科学』『説得の法則』『「ものづくり」は国家なり 』など多数 」 http://www.coco-de-sica.com/lectur/lecturer/karatsu.htm

*11:読者の大半は霊友会の会員。選挙の際に選挙運動の実働部隊となる人たちがメイン。