奈良県少年補導に関する条例成立(2)



以下、議会の情報。
2月定例会の会議録など新しい情報はまだネットで公表されていませんが、公表され次第追って追加します。いろいろヘンテコな質問や答弁があったらしい…。
 

奈良県議会
http://www.pref.nara.jp/gikai/
提出議案と議決結果一覧表
http://www.pref.nara.jp/gikai/gaiyo/2/1-01-02.html

【平成18年度議案(知事提出)】
議第45号 奈良県少年補導に関する条例 3月24日 原案可決

2月 代表・一般質問項目
http://www.pref.nara.jp/gikai/gaiyo/2/2-01-02.html

自由民主党  松井正剛(平成18年3月6日) *1
《略》
12.奈良県少年補導に関する条例について



新創NARA  川口正志(平成18年3月6日) (())
《略》
10.犯罪と青少年対策などについて

民主党 高柳忠夫(平成18年3月7日)
《略》
8.奈良県少年補導に関する条例について

一般質問の主な項目
《略》
自由民主党  菅野泰功(平成18年3月7日)
《略》
6.「奈良県少年補導に関する条例」について
《略》
日本共産党   山村幸穂(平成18年3月8日)
《略》
5.奈良県少年補導に関する条例について
《略》
新創NARA  梶川虔二(平成18年3月8日)
《略》
6.奈良県少年補導に関する条例について

奈良県議会委員会会議録平成17年12月9日総務警察委員会
http://www.pref.nara.jp/gikai/iinkai-kiroku/17-11gatsu/soukei-171209.htm

開催日時  平成17年12月9日(金) 10:34〜12:16
開催場所  第1委員会室
出席委員  9名
丸野智彦 委員長
藤本昭広 副委員長
荻田義雄 委員
山村幸穂 委員
上田悟 委員
神田加津代 委員
菅野泰功 委員
服部恵竜 委員
中村昭 委員
欠席委員   なし
出席理事者  滝川総務部長
 谷川県理事兼平城遷都1300年記念事業準備事務局長
 黒瀬総合防災監
 藤井企画部長兼観光交流局長
 菱川警察本部長 ほか、関係職員
傍聴者 1名
《略》
○山村委員
《略》
それから次に、警察本部の方にお聞きしたいと思います。
 こちらの方でも今、(仮称)奈良県少年補導条例の制定に向けてパブリックコメントを実施しておられます。この点について聞いておきたいと思います。
 警察庁の方では、少年非行防止法制に関する研究会が昨年提言を発表されております。この中身については、現在、賛成、反対、さまざまな議論があると思います。県のパブリックコメントの提案についての資料を私も見せていただいておりますが、詳細がわからないこともありますので、質問しておきたいと思うのですが、これまで警察職員が行ってきた少年補導活動、これが条例によって、どの点がどのように変わるのかということですね。
 それからもう1点は、不良行為少年ということを定義づけるということなのですが、例がここに書かれて紹介されています。そのまま放置すれば少年の健全育成に支障を及ぼすおそれのある行為ということで、内容は非常に多岐にわたるというか、不明確であるのですが、この辺、具体的にどうなのかということ。
 それからもう1つは、少年補導員の方、今ボランティアでありますが、身分や活動や処遇、これを条例で決めていかれた場合に、どういうふうに変わるのかということについてお聞きしておきたいと思います。
《略》
○中谷生活安全部長 (仮称)奈良県少年補導条例についてお答えいたします。
 警察ではこれまでも、不良行為少年に対しましては、少年補導員や関係機関と連携して、注意や、その後の非行を防止するための助言、または指導を行うなど必要な補導を行ってきたところです。しかし、少年が不適切な物件を所持していた場合の取扱いや、家出少年を深夜に補導した場合の措置などについて、必ずしも明確な法令上の規定が置かれていないこともありまして、現場での取扱いに支障が生じることもあったところです。また、少年警察ボランティアとして委嘱している少年補導員につきましても、法令上の地位が明確でないこともあり、必ずしも十分な理解と協力が得られていなかったところです。そこで、補導活動の根拠と手続を明確化して、県民の理解と協力のもとで補導活動の活性化を図るため、ご質問の(仮称)奈良県少年補導条例の制定について検討しているところであります。
 また、現在の補導の対象としている不良行為少年とは、不良行為、すなわち刑罰法令に該当する行為ではないが、飲酒、喫煙、深夜徘徊など、少年が事故または他人の特性を害するおそれのある行為を行う少年を指しています。現在検討中の条例における不良行為少年の定義においても、実質的には補導の対象の範囲について変更を加えることは考えておりませんでして、補導の対象を、より具体的かつ明確になるよう整理して定義したいと考えているところです。
 また、現在、意見の募集に当たっては、不良行為とは、犯罪ではないが、飲酒、喫煙、深夜徘徊等、そのまま放置すれば少年の健全育成に支障を及ぼすおそれのある行為を言い、本条例では、補導の対象となる不良行為の範囲を明確にするとしており、不良行為の定義の仕方を含め、ご意見を伺っているところです。
 以上でございます。
○山村委員
《略》
それから、警察本部の方からお答えをいただきましたが、もうひとつよくわからない面があるのですが、今、警察職員の方が行っていらっしゃいます少年補導ですね、これ自身は法律に基づく活動ではありませんよね。で、今、法整備もされていない状況でありますよね。だから、街頭補導の活動というのは、通達、あるいは国家公安規則、そういうものでやられているのだと思うのですが、それを奈良県の場合は条例で規定をして、根拠のあるものにしていこうということなんですよね。そういうことでいいますと、これまでのやっておられる活動と、これからされる活動というのが、具体的に言えば、どこがどういうふうに変わってくるのかなということを教えていただきたかったのですが、もう少し詳しくお願いします。
 それから、不良行為少年、この定義づけについては、ここに書かれている範囲のことを超えないんだということをおっしゃったんですよね。ただ、私、この書いているのを見せていただきましたが、これだと非常に範囲が広くて、不良行為少年というのは、犯罪でもなく非行でもないと。それ以前の段階ですよね。だから、補導という対象にはなっているけれども、強権的にどうこうしなさいというようなことよりも、その子どもが人間として試行錯誤を繰り返しながら成長していくということを援助する、もちろんどの子もそうなんですが、そういう対象であるわけですから、いたずらに範囲を決めて、あれもだめ、これもだめ、これは全部不良行為だということで規制をしていくというふうないき方というのは、これは正しくないのではないかと思っています。そこのところを私は懸念しているので、そういう点についても考えていただき、今検討中だということですので、お願いしたいと思います。
 それと、少年補導員の身分、活動、処遇ということで、今、地位が明確でないということでされるということになったのですが、その明確になった場合、処遇とか、活動とか、そういうものがどういうふうに変わるのかということなんですが、ちょっとそのことをお聞きしたんですが、お答えいただけますか。
《略》
○菱川警察本部長 (仮称)奈良県少年補導条例についてのご質問でございますが、まだ条例案の中身については現在検討中ということでありまして、その具体的な条文を前提としたようなお答えというのは、なかなかいたしかねるものがありますので、一般的な考え方ということについて、ご説明したいと考えております。
 先ほど生活安全部長から説明がありましたが、現在もこの少年補導というのは行っているわけでありまして、法令上の根拠は全くないというわけではなくて、警察法という規定に基づいて、任意のとりうる手段の中での働きかけということは当然できる、個別の根拠、法規がなくてもできるということでありまして、今回、条例では、まさに個別の活動としての根拠規定を整備しようというものでございます。
 条例の制定によって、従来行っていた警察の補導活動の本質に大きな変化を生じさせるといったことは考えているわけではございませんが、補導の根拠が明確になる、あるいは、先ほど生活安全部長が説明申し上げましたが、少年が不適切な物件を持っているときに、警察職員が一時預かれるようにするとか、あるいは家出少年を補導した場合に、これを警職法の規定に基づいて保護できないような場合に、保護者に引き渡すまでの間、一時的に保護するでありますとか、そういう個別具体的な権限としてはできる部分を明確にする、さらには、そういう補導した少年について、保護者の方にきちっと連絡して、保護者の方に必要な対応をとっていただく、こういったことをきちっと条例で書くことによって、県民の方々の理解と協力によって、より円滑に補導活動が行われるようになるだろうというふうに考えておるところであります。
 また、少年補導員の法的な地位の問題でありますが、これは、例えば、道路交通法上の地域交通安全活動推進員とか、同種の制度はあるのですが、基本的にはそれらの方々と同じような法的な地位になると思うのですが、こういう条例上の地位が明確化することによりまして、県民の方々の理解と協力が得やすくなるということもありますし、また、今回の条例の中では、ぜひ守秘義務についても定めたいと考えており、そういう守秘義務を持った立場ということで、より県民の方々の理解が得られやすくなるのではないかと考えておるところでございます。
 不良行為の定義についてもいろいろ貴重なご意見をいただきましたが、パブリックコメントで出させていただいている中で、例示して書いてありますが、飲酒、喫煙、深夜徘徊など云々と書いてあるんですが、飲酒、喫煙というのは割とどういった行為であるかということははっきりしているんですが、例えば深夜徘徊の、この深夜というのは、どの時間帯を深夜と呼んだらいいのかと。あと、少年が事故または他人の特性を害するおそれがある場合、幾つか補導する場合に類型はつくってあるわけですね。不健全な娯楽をしているとか、不健全な性的な行動があるとか、幾つか類型があるわけですが、社会のコンセンサスとして、不健全な娯楽というものがあるにしろ、やはり補導という形で、ある程度警察の方で働きかけをする場合においては、何を不健全な娯楽と見るのか、そのあたりをよりわかりやすい形で、県民の方にわかる形で定義をしていく必要があるのではないかと、こういうふうに考えているところでありまして、やっぱり今、そういった観点から情報の整理を検討しているといったような段階でございます。
《略》
○山村委員
《略》
それで、次に、警察の方でお答えをいただきましたが、今おっしゃっていただきましたように、法的な根拠という点でいえば個別の法はないけれども、今、警察官の職務執行法とか、そういう法に基づいて実際にやられていることはたくさんあると思うのですが、つまり、その範囲でしか、それを超えるような規制的なことをされるということは問題があるのではないかという意見が多数あると。つまり、非行でもなくて、まだ単なる不良行為少年という状態にある人を警察にとめ置いたりとか、あるいは持っているものを取り上げることになったりとか、職務質問のような形で質問をするとか、そういうことは大人に対しても非常に厳しく制限がされておりますよね。そういう状況がある中で、条例によって新たに人権や自由に制限を加えるようなものを決めていくということについては非常に問題があると思うのですが、私は、その点を考えていく上で、法的な根拠を持たせるということが必要だったとしても、その問題については、やはり規制を強化するということになって、人権を侵害することにならないようにということを求めておきたいと思います。
 それと、不良行為少年が本当に立ち直って、社会の中で再生していく、こういう少年犯罪を減らしていくという目的からいいましたら、当然、警察の力だけではなくて、学校や家庭裁判所児童相談所という役割があります。教育にかかわっている人々の役割というのは非常に大きなものがありますよね。それを一般的な県民の責務ということで押しつけるという形ではなく、やはり専門家や善意の人たちが本当に一緒にやっていけるような、教育的、福祉的な予算をふやしていく、あるいは人をふやすという、そういうところをきちんと進めることが必要ではないかということもあると思いますので、そこも、専門家の声も聞いていただいて検討されていくということが大事かと思います。
 それと、パブリックコメントで出されているこの資料だけを見て意見を募集されているわけなんですが、普通の方、私はいろいろな人の意見を聞いていますが、なかなか中身を理解できないとおっしゃるのです。よくわからないことですし、具体的にもどうなるのかなということがわからないことですから、これで意見を求められるというのは、非常に、意見を出される方に制約があると思うのです。だから、まだつくるまでに目指しておられるところまでには時間があるし、私はそんなに性急につくるということをしなくて、もう少しいろいろ広い方法で意見を聞く方法というのをこれ以外に考えていただくとか、県民的に議論ができるということが必要ではないかと思いますので、その点を申し上げておきたいと思います。

 
もっと厳しく追求できるとは思いますが、大筋でいい質問をしていると思います。
少年補導には法的根拠がありません。警察官はあくまで犯罪捜査が主な活動であり、犯罪と関係のあることについて“職務質問”は許されていますが、子どもの養育や教育は育てる親の価値観によって様々であるため、画一的に対応すれば私生活の介入につながるおそれがあります。
子どもが犯罪に巻き込まれるおそれを警察は強調しますが、警察官が補導し子どもたちの行動を制限するようになれば、子どもたちは警察官に補導されるかもしれないと思って警察官の目の届かないところに行くようになり、子どもたちはますます危険な場所に行く可能性があります。
従来の民間ボランティアとしての補導員には、なんの権限もありません。権限が無いから子どもたちは補導員が現れても逃げ隠れせず、見える場所にいるわけです。見える場所にいるから、なにかあっても対応でき、安全です。もし補導員に補導権限を与えたら、子どもたちは補導員の目の届かぬところに行くでしょう。つまり、ますます子どもたちは危険に近づくことになります。
 
質問者の情報。
選挙の投票の参考にしてください。
 

日本共産党奈良県会議員団
http://nara.jcp-giin.net/
日本共産党奈良県会議員団「山村さちほ議員」
http://nara.jcp-giin.net/www/member/giinYamamura1.shtml

 
条例の話ではないですが、奈良県って9千票程度で県議になれるんですねぇ。
札幌市北区で出馬した現職の共産県議は、18,909票とっても落選してしまいました。*2地域によって政治事情は様々とはいえ不条理ですね。奈良県は県議の議席数が多すぎやしませんかね。
 

文教委員会記録
http://www.pref.nara.jp/gikai/iinkai-kiroku/17-11gatsu/bunkyou-171209.htm

開催日時 平成17年12月9日(金) 13:34〜15:15
開催場所  第3委員会室
出席議員  10名
中辻寿喜 委員長
畭真夕美 副委員長
奥山博康 委員
田中美智子 委員
山本進章 委員
岩城明 委員
安井宏一 委員
松井正剛 委員
小林喬 委員
山本保幸 委員
欠席議員   なし
出席理事者   矢和多教育長 ほか、関係職員
傍聴者 なし
《略》
田中美智子委員 
《略》
あともう1つは、(仮称)県少年補導条例案への対応について伺いたいと思います。
これは奈良県警の方が、(仮称)県少年補導条例というものをこれからつくっていきたいと。ついては、概要の案を示すので、県民の皆さんに意見を寄せてほしいというふうにおっしゃっているわけですけれども、この内容については、少年非行という、非行というふうに至っていない、不良行為を行った少年に対して警察がいろいろかかわっていくという、そのかかわり方を決めていくというものでございますし、また、補導委員ですか。
○中辻委員長 補導委員です。
田中美智子委員 少年補導員を新たに委嘱をして活動していってもらうと。そこには守秘義務もちゃんと定めていくということですし、罰則なども、少年補導員の守秘義務違反や、立入要求拒否に対して罰則を定めるであるとか、それから、運用上の注意でいえば、少年の自由と権利を不当に制限しないよう、運用に当たっての注意について定めるんだと書いています。ということは、不当でない制限、自由や権利を制限するということはあり得るということになっているわけなんですけれども、この概要だけでは本当にわからないんですよね。
 私は、やはり、少年といった場合、用語の解説では20歳までを少年と言うと、こう書いています。そして、この不良行為というのは、喫煙、飲酒、それから夜間の出歩きですね、そういったことを不良行為として、そして、いろいろ警察が関与していくということになっていくわけですけれども、その内容によっては自由や権利が侵害されるというようなことにもなりますし、やっぱり子どもにとっては教育とか福祉、この立場で接していくことが、本当に非行という方向に進んでいかない、その上でもとても大事なことだと思うんですね。安易に警察権力で子どもたちを萎縮させたり、親たちにもそういう思いをさせたりというようなことでは、かえって立ち直りを阻害するということにもなるんじゃないかと思うんです。この点では教育と随分かかわりのあることだと思うので、教育委員会にはこの問題についての相談というか、教育委員会と何か協議がこの間されてきたのかどうか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
《略》
○矢和多教育長  順番はちょっと違うかもわかりませんが、奈良県少年補導条例というのが、仮称でございますけれども、そういう方向で今、県警察本部の方で検討いただいておりまして、警察の方から私自身の方に、趣旨とか、それから目的についてお話を伺いました。私自身、20年前には高等学校の教師をしておりました。補導委員というのをやっておりましたので、よくその趣旨は理解できたと思っております。この条例は、健全育成に有益なものであると認識をいたしております。
《略》
田中美智子委員
《略》
 それから、県少年補導条例案の問題ですけども、教育長、先ほど補導委員をしたことがあるとおっしゃったけれども、その補導委員と今度委託しようとしているのとは意味が違うんです。私たちはボランティアで今まで、大体学校のPTAなどの中から担当者を選んだりしていますよね。それとは違って、権限を持って子どもを、不良少年を補導するという、そういう内容になっているものですので、その辺は、ややもすると、この内容を見てみますと、その補導委員がもう少し機能的に役割を果たすことなのかなと思えてしまうんですけれども、どうもそうではないというようなことです。
 実は、去年の12月に、警察庁の少年非行防止に関する研究会というのが少年非行防止法制のあり方について提言を発表しています。その提言の中で、犯罪行為ではない不良行為にまで警察の権限を拡大して、民間ボランティアに強制権限を与えるというようなことを提言している。そういう内容とどうも流れは同じようなんです。
 そこで、日本弁護士連合会は、今年の7月に意見をまとめて、警察庁の方にも、また関係機関にも提出したということなんですけれども、この意見を私、読ませていただいて、本当にこれは問題を随分はらんだものだなというふうに思いました。主に言っているのは、警察権の発動というのは、基本的人権の尊重の観点から必要最小限度にとめるべきものであり、これを拡大する法律の制定は反対であるというふうに弁護士連合会がおっしゃっています。ですから、条例も同じことになると思うんです。
 それから、少年非行予防のための国連ガイドライン、リヤド・ガイドラインと言うんだそうですが、その理念、すなわち、少年非行防止のためには、家庭、学校や地域において子どもの人権を尊重した教育、福祉的アプローチが重視されなければならないとしているんですけれども、この理念を踏まえて、国、地方公共団体は教育福祉政策を抜本的に拡充強化して、警察よる監視型ではない、子どもの成長発達支援という観点に立ったコミュニティーの再建、これを援助する施策を行うべきであるという内容がるる述べられておりますので、一度この少年非行防止法制のあり方についての日本弁護士連合会の意見をぜひお読みいただいて、それで参考にしていただいて、子どもたちの健全育成がかえってそがれるというような、阻まれるというようなことがないように、教育委員会としてしっかり対応していただきたいなと思っております。
 こういった条例の概要だけでは、中に含まれている心配な部分は出てきておりませんので、私なんかからしたら、何かいいことがあるのかなあと思って、何か誘導されていくような、そんな心配もしますので、ぜひこれはしっかり情報開示も求めて、必要な意見を子どもたちの立場に立って言っていくということが必要だということを求めておきたいと思うんです。
 さっきおっしゃった、これまでの補導委員とは違うというご認識はおありでしょうか、後でちょっとお聞きしたい。
《略》
○矢和多教育長 条例にかかわりまして、私は20年前に補導委員というのをしておりまして、そういうことから、この条例につきましてはよく理解ができたと、そういうことでございます。同じだとは考えておりません。お聞きいたしました内容につきましては、子どもたちの健全育成に有益なものであると私自身は感じております。

リヤドガイドラインの遵守義務を怠っている点あたりの指摘はなかなか良いです。
リヤドガイドラインは「非行少年と烙印をおすことは、かえって青少年の好ましくない行動を持続させるという認識を非行予防対策の中で認識されねばならない」とはっきり言っています。
 

少年非行の予防のための国連ガイドライン(リヤド ガイドライン
United Nations Guidelines for Prevention of Juveniele Delinquency (The Riyadh Guidelines )
http://www.mirandanokai.net/body/siryou/riyadh.html

1. 基本原則
《略》
2 少年非行の予防が成功するためには、幼児期から人格の尊重とその向上を念頭におき、調和のとれた成年期の発達を確保する努力を社会全体が行う必要がある。
3 このガイドラインの解釈にあたっては、子供中心の態度が追求されなければならない。青少年は、社会において積極的な役割とパートナーシップを認められなければならず、単に社会化と統制の目的物とみなされてはならない。
《略》
5 進歩的な非行予防政策および非行対策の体系的な研究とその案出の必要性および重要性が認識されなければならない。これらは、子供の発達に深刻な害悪を及ぼさず、他人を傷つけない行動のために子供を犯罪者としあるいは刑罰を科することを避けるものでなければならない。そのような政策や対策は、以下のようなものを含まなければならない。
a 全ての青少年の、とりわけ危険にさらされまたは社会的な危険に直面している青少年あるいは特別のケアと保護の必要な青少年の、さまざまなニーズに応え、かつ、その発達を保障する援助の枠組みとして機能する機会の提供、とりわけ教育の機会の提供
b 違反行為を犯す動機、必要、機会あるいは条件を減少することを目指した、法律、手 続、組織およびサービス提供ネットワーク(service delivery net- work) に基づく、非行予防のための専門的な理念ならびにアプローチ
c 青少年の総合的な利益を第一に追求し、かつ、公正で平等な公的な介入
d 全ての青少年の福祉、発達、権利ならびに利益の保障
e 社会の標準や価値に全面的には適合しない青少年の行動というものは、しばしば成熟と成長の過程の一場面であり、大人になるにしたがって自然と消失するものであるという考慮
f 専門家の支配的な意見において、青少年を「逸脱者」、「非行少年」あるいは「類非行少年(pre-delinquent)」と烙印することは、かえって、青少年の好ましくない行動を持続させると言われていることの認識
《略》
4. 社会化の過程
《略》
A 家族
11 いかなる社会も家族とそのメンバーのニーズと福祉に高度の優先順位をおかなければならない。

 
以下、質問者の情報。選挙の投票の参考にしてください。
 

日本共産党奈良県会議員団「田中美智子議員」
http://nara.jcp-giin.net/index.html
http://nara.jcp-giin.net/www/member/giinTanaka1.shtml

 
それにしても、憲法解釈を変えることになるかもしれないほど重大な内容を含む条例について議論されているのに、傍聴者なしというのは本当? そう記録されているので本当なんだろうなぁ。
無関心だからでは済まされないと思いますよ。県が積極的に市民を議論に参加させていないということが問題ですけれど、市民ひとりひとりが政治の“現場”にコミットしない“おまかせ民主主義”にも問題があるのかも。
 

奈良県議会 会議録検索システム 
http://tinyurl.com/qrrh3

平成17年 11月 定例会(第277回)-12月06日−02号
◆四十三番(服部恵竜) (登壇)今定例会、私が最初の質問者でございます。発言のお許しを得ましたので、自由民主党を代表いたしまして、当面する県政の幾つかの課題につきまして、知事、教育長、警察本部長にお尋ねをいたしたいと思います。
《略》
次に、深刻化する少年犯罪を未然に防止する目的から、奈良県少年補導条例の制定に向けた検討をされ、十一月十四日からパブリックコメントも開始されたようであります。この取り組みは、国においても法制化に向けて検討が進められていると聞き及ぶ中で、本県が国に先駆けて検討し制定しようとしている奈良県少年補導条例について、その制定の趣旨と必要性についてどのように考えておられるのか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
《略》
◎ 警察本部長(菱川雄治)
次に、現在検討中の奈良県少年補導条例、これは仮称でありますけれども、この条例についてであります。
 県警察では、少年は次代を担う宝と位置づけ、非行の防止と保護を通じてその健全な育成に取り組む必要があると考えておりまして、とりわけ非行の入口に立つ不良行為少年につきましては、早期発見により非行性が深化する前の立ち直り支援等が必要であると考えております。そこで、県警察では、これまで関係機関やボランティア等と協力し、不良行為少年に対する街頭補導活動等を行ってきたところでありますけれども、少年が有害な物件を所持した場合の取扱いや、深夜に補導した家出少年等の保護の取扱いについて、必ずしも明確な法令上の根拠が設けられていないということもありまして、活動に支障が生じる場面もあったところであります。また、少年警察ボランティアとして委嘱している少年補導員の方々につきましても、法令上の位置づけが明確ではなかったために、その活動に理解と協力が得られにくい面があったことも否めないところであります。そこで、補導活動の根拠と手続を明確化して、県民の理解と協力のもとで補導活動の活性化を図るため、本条例の制定について検討することとしたものでありまして、現在、条例案の概要を公表し、広く県民の意見を募集しているところであります。
 なお、少年に対する補導活動につきましては、平成十五年十二月、政府の青少年育成推進本部が策定した青少年育成施策大綱におきまして、「権限・手続などについて、条例を含め法的明確化を図る」とされたところでありまして、国におきましても所要の検討が行われていることとは思いますが、国による法律の整備を待つということではなくて、県の少年の実情や、あるいは少年の非行防止に対する県民の意識に応じて、奈良県にふさわしい条例の整備を検討するということも、地方分権の時代にふさわしい取り組みではないかと考えているところであります。

 
自民党県議らしい質問ですね。菱川雄治警察本部長に自由にしゃべらせるための質問だと思います。
 

服部恵竜奈良県議会議員(自由民主党)
http://www4.ocn.ne.jp/~hattori/profil.htm

 
地方分権の時代にふさわしい取り組み」と答弁してますが、そう答弁している人が天下りで、政策も警察が作った天下り政策。
「平成十五年十二月、政府の青少年育成推進本部が策定した青少年育成施策大綱におきまして」と説明していますが、青少年育成推進本部の下にいた人のひとりが菱川本部長。
 

平成17年 11月 定例会(第277回)-12月07日−03号
◆四十五番(山本保幸)
《略》
最後に、青少年健全育成条例の改正について、お尋ねをいたします。
 県内の刑法犯の認知件数が減る一方で、半数近くの人が治安が悪くなったと感じていることが県警の調査でわかったと、先日報道されていました。特に少年非行の増加は凶悪化、低年齢化し、進展化しており、まさしく少年犯罪の抑止は治安回復の大きなかぎになると言われます。また、この三月、内閣府は、少年非行に関する世論調査結果を発表いたしました。時間の関係で詳細に触れることはできませんが、非行の背景に、コンビニ、カラオケボックス、漫画喫茶、インターネットカフェの深夜営業、インターネットによる自殺や暴力、性の情報が手に入る、簡単に暴力や性に関する情報を扱ったビデオ、出版物を手に入れられる、また、社会全般に心の豊かさや思いやりの心が失われている、子どもに関心がない等、社会の規範意識の低下を指摘しております。そして、行政に力を入れてほしい政策として、少年に悪影響を与えるような環境を改善する、警察や学校、児童相談所、少年補導センターなどの関係機関が連携し、非行少年に対し継続的に指導・助言を行う、その他、無職少年の就職支援、子どもの居場所づくり、警察の対応等が挙げられています。
 今回、県警本部は(仮称)少年補導条例案の制定に向けて取り組んでおられ、現在パブリックコメントが実施されておるというふうに伺っております。それはそれで大切なことでありますが、少年非行は、警察による取締りや、あるいは管理の強化だけではなく、県は子どもを取り巻く環境を的確に分析し、社会情勢の変化に即した青少年健全育成条例の改正と、それに基づく家庭を含めた社会全体での良好な社会環境の整備や再非行を防ぐための取り組みなどが重要であります。そのためには、社会全体でそれぞれが担わなければならない役割を改めて検証し、役割分担の明確化と連携強化に努めるべきと考えます。家庭、学校、関係機関・団体など地域ぐるみで、かつ相互に連携をしながら取り組んでいくことが極めて重要であると考えております。
 全国的に見て、少年非行の増加、少年を取り巻く社会環境の変化、社会規範の低下等に呼応して、規制強化や健全育成に業者や地域に努力義務を課すなど、条例の見直しが進められています。全国の知事部会においても、個別具体的な問題について対応を協議しているということも伺っております。青少年健全育成条例は一県だけで強化してもだめで、近隣府県との連携も重要ではないかと考えております。大阪府兵庫県でも条例の改正の動きがありますが、本県の条例の見直しについてどのようにお考えなのか、こども家庭局長にお伺いをいたします。
《略》
◎こども家庭局長(上森健廣) (登壇)四十五番山本議員のご質問にお答えをいたします。
 私に対しましては、青少年健全育成条例の改正についてどのように考えているのかというお尋ねでございます。
 青少年を取り巻く環境は、有害図書類やインターネット、残虐なゲームソフトなど、さまざまなメディアの情報がはんらんするとともに、非行や犯罪被害者が懸念される深夜営業施設の増加など、急速に変貌しつつあることはご指摘のとおりでございます。県におきましては、これまでも、青少年健全育成条例の改正や環境浄化活動の推進など、その整備に努めてきたところでありますが、こうした社会経済環境の変化を踏まえ、諮問機関であります県青少年問題協議会を今年度は既に五回開催いたしました。その中で、携帯電話やインターネット等新たなメディアへの対応、社会的自立に困難を抱えるニートなど、当面する課題や青少年施策の基本的な方向についてご議論をいただいているところでございます。
 青少年を取り巻く有害環境につきましては、今後とも、関係機関や県の青少年指導員等の協力を得ながら浄化に努めるとともに、お尋ねの条例改正などにつきましても、新たな問題事象や実効性ある対策に関する議員あるいは県民各位のご意見や、県青少年問題協議会のご議論、ご提言を十分に踏まえながら、必要に応じ、所要の措置を講じてまいる所存でございます。

 
有害情報の影響の科学的根拠など見解の相違はありますが、提案側の矛盾を指摘しているので、まあまあの質問だと思います。少なくとも賛成したり質問しないよりはずっとマシ。山本県議(新創NARA)は委員会採決で反対にまわっていますので、その点は評価できると思います。
 

ちなみに、民主党本部はこういうアピールも出しています。
 

民主党 2005年12月17日 
【子どもの安全に関わる緊急アピール】
http://www.dpj.or.jp/news/200512/20051217_12appeal.html

《略》
私たちは、昨年発生した奈良県での事件以降、検討を重ねまとめた、学校及び周辺の安全対策を推進する「学校安全対策基本法案」を次期通常国会に提出します。
さらに、「子どもの安全合同会議」を立ち上げ、学校やその周辺のみならず、厚生労働省所管の保育所、障がい児施設、児童館、学童保育等、経済産業省の下にある学習塾、法務省所管の性犯罪者の再犯防止の問題等、中央省庁の縦割り行政を排して、すべての子どもたちの「命」を守るために、あらゆる方策を講じます。
《略》

学校安全対策基本法(本文)(PDF 29KB)
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/monka/image/BOX_MKA0008-honbun.pdf

 



二月定例会での条例案審議の会議録については、後日ここに追加します。
ネット中継を見た人の話しではひどい答弁だったらしい。乞うご期待。
 

以下、弁護士会の声明。
「不良行為」の定義の問題は、たしかに看過できない大変な問題。
どうしてこんな条例がこうも簡単に通過してしまうのか。

■日本弁護士連合会
http://www.nichibenren.or.jp/
会長声明集 Subject:2006-03-10
奈良県少年補導に関する条例(案)」に対する会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/060310.html

現在開会中の奈良県議会において、「奈良県少年補導に関する条例(案)」が上程され、近く採決の予定と伝えられている。しかし、その内容には、以下のように重大な問題がある。
第一に、警察職員の権限を拡大し、子どもに対する監視を強化することが、少年非行の防止と少年の健全な育成につながるとの発想に、根本的な誤りがある。
1990年の国連犯罪防止会議が採択した「少年非行の防止に関する国連ガイドライン」(リヤド・ガイドライン)は、基本原則として、「少年非行の防止が成功するためには、社会全体が幼児期から少年の人権を尊重及び伸長しながら、青年期の調和のとれた発達を確保するため努力する必要がある」「幼児期からの青年の福祉が非行防止計画の中心とされるべきである」と明記している。また、国連子どもの権利委員会(CRC)は、2004年1月、日本政府に対し、「問題行動」を伴う子どもを犯罪者として取り扱わないようにすることを勧告している。
少年非行の背景には、子どもの悩みやストレスがある。特に、重大な非行をおこした少年ほど、成長過程でさまざまなハンディを背負い、自己肯定感を持てない子どもが多い。その様な少年の成長の支援には、少年の心の傷を受けとめ、福祉的・教育的・医療的援助こそ重要である。
第二に、26項目の「不良行為」を定めているが、そのなかでは、学校を欠席、早退、遅刻した子どもや「不登校」の子どもも対象とされる危険があるなど、監視の範囲に歯止めがない。また、警察職員の権限として、注意、助言、指導、質問、警察施設への同行の要求、所持物品の提出要求、一時預かりないし廃棄の催促、少年の保護者等への連絡を定め、さらに警察署長の権限として、警察施設における12時間を超えない一時保護を定めている。これらは、警察官職務執行法で認められている警察官の職務権限の範囲を大きく逸脱しており、憲法13条から導かれる警察比例の原則に反するものである。
また、「不良行為」は、少年法の「ぐ犯事由」と重なり合う内容を含んでいる。少年法は、ぐ犯少年を発見した警察官に家庭裁判所への送致または児童相談所への通告のみを認め、少年補導員については家庭裁判所への通告のみを認めている。これは、ぐ犯が犯罪ではなく、その外延が不明確であることから、ぐ犯調査を理由として、警察が親や子どものプライバシーや人身の自由に深く介入することの問題性を配慮して、警察職員の権限を限定したものと解される。本条例(案)は、少年法の規定を大きく超えて、「不良行為少年」の補導の名の下に、事実上ぐ犯少年に対する権限を警察職員に付与している。このことは、子どもや親の人権を保障した少年法の趣旨を没却し、憲法94条の条例制定権の範囲を逸脱するものである。
第三に、県民に対し、「不良行為」少年を発見したときの「行為を止めさせる努力義務」や、「保護者、学校、警察などへ通報する努力義務」を定めているが、このような義務付けは、保護者の意向に関係なく、地域住民や関係機関の一定の価値観により行動規制する危険性がある。また、それを望まない住民の良心の自由を脅かすおそれがあり、問題を抱える子どもと家族を住民全体で監視する息苦しい地域社会を生み出すことになる。
当連合会は、以上の観点から、本条例(案)の制定に反対するとともに、国・地方公共団体に対し、警察中心の非行防止施策ではなく、福祉・教育・医療による子どもの成長支援の強化、及び、非行防止と立ち直りを支援する地域の自主的活動を援助する施策の拡充を求めるものである。
2006(平成18)年3月10日
日本弁護士連合会
会長 梶谷剛

■奈良弁護士会
http://www.naben.or.jp/
仮称「奈良県少年補導条例(案)」要綱案に反対する会長声明
http://www.naben.or.jp/shonenhodou.htm

1 はじめに
  奈良県警察本部は、現在、その立案による「仮称「奈良県少年補導条例」(案)要綱案」を発表し、今後これを条例化するべく県議会への提出を予定している。
 この「仮称「奈良県少年補導条例」(案)要綱案」(以下、単に「本要綱案」という。)は、概要、(1)各種行為を少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある「不良行為」と規定する、(2)これを行う不良行為少年に対する県民等の責務を定める、(3)不良行為少年を補導する権限を警察職員に付与する、(4)民間ボランティアである少年補導員の委嘱要件、任期、活動内容、活動区域等について定める等を主な内容とするものであるが、以下に詳述するとおり、これらの内容にはそれぞれ重大な問題点があるので、当会は、その問題点を指摘し、このような条例が制定されることのないよう、意見を表明する次第である。
2 本要綱案の根本的問題点
 本要綱案は、「不良行為少年の補導に関し、県民の責務を明らかにするとともに、警察職員及び少年補導員の活動に関して必要な事項を定め、もって少年の非行の防止と保護を通じて少年の健全な育成を図ること」をその目的とするという。
  少年の健全育成及びそのための少年非行の防止それ自体は重要な社会の利益である。しかし、それを実現するための手段として、本要綱案が予定する「不良行為少年に対する補導権限」の法定化をはじめとする警察権限の拡大は、適切な手段とはいえない。
 少年非行防止のための成長支援の本来的あり方は警察権限の拡大による規制強化ではなく教育・福祉的政策であることは、1990年に第8回犯罪防止及び犯罪者処遇に関する国際会議で採択された「リヤド・ガイドライン」でも明確にされているし、2001年11月に奈良で開催された日本弁護士連合会主催第44回人権擁護大会においても、このリヤド・ガイドラインの理念をふまえて、「子どもの成長支援に関する決議」を採択し、その中で、「少年犯罪の防止のために大人に求められていることは、子どもの悩みやストレスを早期に正面から受け止め、一人ひとりの子どもの尊厳を確保し、その力を引き出すことであ」り、そのためには、「学校や地域社会、福祉機関、医療機関、保健所などは、子どもに対する人権侵害を見逃さず、関係機関との連携を強めて、これに対処すべきであ」るとの提言を行っているところである。
  単に規制・威嚇を強めることでは少年非行問題は解決しない。強制権限を背景に持つ者が、条例に規定される「不良行為」に該当するとして少年に対し権力的・画一的指導を行ったとしても、それは、少年が自ら抱える問題点を認識し、これを積極的に改めていこうとする真の更生への契機にはならない。更生への契機として必要なのは、個々の少年が抱える問題に応じたきめ細やかな対話・ケアなのである。
 そのために必要な学校教育の充実、児童相談所の人員、予算増加を含む態勢・活動の充実、未就職者に対する就職の機会の提供等、先に取り組まれるべき福祉施策をなおざりにしたまま、ただ規制を強化するのみでは、少年非行の防止及び保護という目的は達成されない。
  あるいは、地域社会が少年を温かく見守る中で、住民それぞれが、時には自ら少年を正し、時には積極的に少年を守ってやるという連携があることこそあるべき姿である。それにも拘わらず、下記のように、地域住民に対し、不良行為を行う少年について警察職員等へ通報するよう努める責務を法定化し、むしろ地域社会への警察権力の介入を促進するのは誤った方向性である。地域社会は少年の更生への最も有効な社会資源として活用されるべきであり、その保護力を強化するような取り組みが先になされるべきである。
  また、未だ犯罪に至らず、少年法上の「ぐ犯」さえ構成しない適法行為を「不良行為」として規制の対象とすることは、憲法13条後段から導かれる「警察比例の原則」に反するおそれがある。
 さらに、本要綱案が予定するような警察権限の拡大は、その性質上、国法によって全国統一的に処理されるべき事項であると考えられるから、一地方公共団体たる奈良県条例制定権の対象ではない。あるいは、制定権の範囲を超えると解される。
 そもそも、奈良家庭裁判所管内における少年一般保護事件の年間新受件数は、ここ数年ほぼ減少傾向にある。また、奈良県と人口が近似する他の県に対応する家庭裁判所管内における同事件の年間新受件数を比較しても、奈良県の件数がことさらに多いとは必ずしもいえない。すなわち、奈良県においてあえて少年非行の深刻な増加をいうべき根拠となる事情はなく、したがって、上記のように法律的に極めて問題のある条例を全国に先駆けて制定する必要性は全く存しない。
  このように、本要綱案は、全体としてみても、多くの看過できない問題点を含むものである。
3 「不良行為」に対する規制の点について
 本要綱案は、飲酒・喫煙・深夜はいかい等それ自体は少年が行っても犯罪とはならない行為についても「不良行為」として定義し規制の対象とする。
  しかし、先に述べたように、犯罪行為・触法行為に該当せずぐ犯にも該当しない行為を規制の対象とし、警察権限を及ぼすことを可能にすることは、「警察権の発動及びその程度は、社会公共の秩序にとって容認できない障害の程度に比例すべきである。また、その障害を除去すべき手段は、常に必要最少限度にとどめなければならない。」という警察比例の原則に反し許されない。
  本要綱案が定める「不良行為」の範囲は極めて広範にわたっており、かつその定義が漠然としているものもある。これらを規制の対象とするならば、警察権限の市民生活に対する不当な介入をほとんど無限定に認めることにも繋がりかねない。
 また、以下に挙げる行為を規制の対象とすることは特に問題である。
  第一に、本要綱案は、「自ら進んで児童買春の相手方となり、その他少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある性交又は性交類似行為をする行為」や「正当な理由がなく、法律又は条例の規定により18歳に満たない者を立ち入らせることが制限されている施設に立ち入る行為(例:風俗営業の営業所、有害興行係る興行場など)」等を不良行為と定義するが、児童買春等性的搾取の対象となった少年は、少年法上のぐ犯に該当しない限り、被害者としてケアの対象とされるべきであり、警察職員による補導の対象とするのは不当である。
  第二に、本要綱案は、「正当な理由がなく、学校を休み、又は早退若しくは遅刻をする行為」をも不良行為と定義するが、いわゆる不登校についても補導の対象とされてしまう危険があり、不当である。
4 「不良行為」に対する県民の責務を定める点について
 本要綱案は、「県民は、不良行為少年を発見したときは、当該少年にその行為を止めさせるため必要な注意、助言又は指導を行うとともに、必要に応じ、保護者、学校関係者、警察職員その他少年の保護に関する職務を行う者に通報するよう努める。」とする。
  しかし、ここでいう「不良行為」とはあくまで非犯罪行為である。それにも拘わらず、このような行為を止めさせる努力義務及び保護者等に通報する努力義務を定めるとすると、それを望まない県民の内心の自由が侵害されることとなる。また、県民一般にこのような義務を課せば、問題を抱える少年及びその家族と地域住民を含む県民とを、条例による強制のもと行動を監視し、制限し、挙げ句は通報する側とされる側として対立するような状況に置くことは必至である。このような息苦しい状況が非行防止及び立ち直り支援に資するとは到底思われない。
5 警察職員に「不良行為少年」に対する補導の権限を付与する点について
 本要綱案は、警察職員が不良行為少年を発見したときに、状況に応じて、これに対する注意、助言、指導、質問、警察施設への同行の要求、所持物件の提出要求、一時預かりないし廃棄の促進、警察施設においての一時保護、少年の保護者等への連絡をしうるとする。
  しかし、繰り返しになるが、警察官の権限行使には警察比例の原則が妥当するところ、非犯罪行為を根拠として上記のような警察官の権限行使を認めることは、明らかに警察比例の原則に反する。
  警察官の権限行使については、警察官職務執行法においてその要件が厳格に規定されているところ、本要綱案のいう「不良行為」のみを根拠として上記のような行為を行うことは、全く認められていない。職務質問でさえ、警察官職務執行法2条によれば、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」と厳格な要件を課されているのであり、このような要件を満たさない者に対し質問する権限を警察官に認めることは許されない。ましてや、警察施設への同行の要求や警察施設においての一時保護は少年の人身の自由を、所持物件の提出要求、一時預かりないし廃棄の促進は少年の財産権を、少年の保護者等への連絡は少年のプライヴァシー権をそれぞれ直接に侵害するおそれがあるものである。
 したがって、警察職員に対し補導の権限を付与することは絶対に許されない。
6 少年補導員の活動内容等を法定する点について
 本要綱案は、民間ボランティアである少年補導員の委嘱要件、任期、活動内容、活動区域等について定めている。
 しかし、少年補導員についてこのような事項を条例において定めることは、本来ボランティアである少年補導員を警察協力の組織として位置付け、警察の志向する少年非行防止施策をこれらを巻き込んで強化するということに繋がりかねない。これは妥当ではなく、必要なのは、教育・福祉的施策の一層の強化であることは、再三繰り返しているとおりである。
  これらの者は、あくまで民間のボランティアとして自由に活動させるべきであり、但し県は必要に応じてこれらの者に対し直接に財政上の手当をするべきである。
7 まとめ
 以上のように、本要綱案については、様々な看過できない問題点が存するので、当会は、これに対して反対の意見を述べるものである。
以上  
2006(平成18)年1月27日
奈良弁護士会
会長 福井英之

奈良県少年補導に関する条例(案)」に反対する会長声明
http://www.naben.or.jp/shonenhodou2.htm

奈良県少年補導に関する条例(案)」に反対する会長声明
2006(平成18)年3月9日  
奈良弁護士会 会長 福井英之  
1 はじめに
 現在開会中の奈良県議会において、「奈良県少年補導に関する条例(案)」が上程されている。
 この「奈良県少年補導に関する条例(案)」(以下、単に「本条例案」という。)には重大な問題点があるので、当会は、その問題点を指摘したうえ、このような条例の制定に反対するものである。
2 本条例案の問題点
 本条例案は、「不良行為少年の補導に関し、保護者及び県民の責務を明らかにするとともに、警察職員及び少年補導員の活動に関して必要な事項を定め、もって少年の非行の防止と保護を通じて少年の健全な育成を図ること」をその目的とするという。
 少年の健全育成及びそのための少年非行の防止それ自体は重要な社会の利益である。しかし、奈良家庭裁判所管内における少年一般保護事件の年間新受件数は、ここ数年ほぼ減少傾向にある。また、上記新受件数と、奈良県と人口が近似する他の県に対応する家庭裁判所管内における同事件の年間新受件数とを比較しても、奈良県の件数がことさらに多いとはいえない。すなわち、奈良県において特に少年非行の深刻な増加をいうべき根拠となる事情はなく、したがって、以下のように問題点の多い条例を今あえて制定すべき必要性はない。
 また、少年非行の防止を実現するための手段として、本条例案は警察権限を拡大し少年の行為に対し広範な規制を及ぼすことを予定しているところ、このようなやり方は、適切な手段とはいえない。
  第一に、少年非行防止のための成長支援の本来的あり方は警察権限による規制ではなく教育・福祉的政策であることは既に世界的潮流であり、2001年11月に奈良で開催された日本弁護士連合会主催第44回人権擁護大会においても、このような流れをふまえて、「子どもの成長支援に関する決議」を採択し、その中で、「少年犯罪の防止のために大人に求められていることは、子どもの悩みやストレスを早期に正面から受け止め、一人ひとりの子どもの尊厳を確保し、その力を引き出すことであ」り、そのためには、「学校や地域社会、福祉機関、医療機関、保健所などは、子どもに対する人権侵害を見逃さず、関係機関との連携を強めて、これに対処すべきであ」るとの提言を行っているところである。
  単に規制・威嚇を強めることでは少年非行問題は解決しない。強制権限を背景に持つ警察官が、条例に規定される「不良行為」に該当するとして少年に対し権力的・画一的指導を行ったとしても、それは、少年が自ら抱える問題点を認識し、これを積極的に改めていこうとする真の更生への契機にはならない。問題行動には、子ども自身の悩みや劣等感が顕れていることが多い。したがって、更生への契機として真に必要なのは、個々の少年が抱える問題に応じてきめ細やかな対話・ケアを行い、少年が自己肯定感を持てるようにすることなのである。
 そのために必要な学校教育の充実、児童相談所の人員・予算増加を含む態勢・活動の充実、未就職者に対する就職の機会の提供等、先に取り組まれるべき福祉施策をなおざりにしたまま、ただ規制を強化するのみでは、少年非行の防止及び保護という目的は達成されない。
 第二に、未だ犯罪に至らず、少年法上の「ぐ犯」さえ構成しない行為を「不良行為」として規制の対象とすることは、憲法13条後段から導かれる「警察比例の原則」に反するおそれがある。
 しかも、本条例案が定める「不良行為」の範囲は、不登校をこれに含みうるなど極めて広範にわたっており、かつ、「放置すれば暴行、脅迫、器物損壊その他の刑罰法令に触れる暴力的な行為に発展するおそれのある粗暴な言動をする行為」のように、その定義が漠然としているものもある。これらを規制の対象とするならば、警察権限の市民生活に対する不当な介入をほとんど無限定に認めることにも繋がりかねない。
 さらには、本条例案は、警察職員が「不良行為少年」を発見したときに、「不良行為」の内容及び状況に応じて、これに対する注意、助言、指導、質問、警察施設への同行の要求、所持物件の提出要求、一時預かりないし廃棄の促進、警察施設においての一時保護、少年の保護者等への連絡をなしうるとするが、未成熟の少年が、自らを補導しようとする警察官に対して、全くの任意に行動を決することができるとは必ずしもいえない以上、警察施設への同行の要求や警察施設においての一時保護は少年の人身の自由を、所持物件の提出要求、一時預かりないし廃棄の促進は少年の財産権を、少年の保護者等への連絡は少年のプライヴァシー権をそれぞれ直接に侵害するおそれがある。
  第三に、本条例案は、県民が不良行為少年を発見したときにこれを止めさせる努力義務及び保護者等に通報する努力義務を定める。
 しかし、本条例案のいう「不良行為」とはあくまで非犯罪行為であるから、それにも拘わらず、このような行為を止めさせる努力義務及び保護者等に通報する努力義務を定めるとすると、それを望まない県民の内心の自由が不当に侵害されることとなる。また、県民一般にこのような義務を課せば、問題を抱える少年及びその家族と地域住民を含む県民とを、条例による強制のもと、行動を監視し、制限し、挙げ句は通報する側とされる側として対立するような状況に置くことは必至である。このような息苦しい状況が非行防止及び立ち直り支援に資するとは到底思われない。むしろ、問題を抱える少年及びその家族を、地域社会から疎外してしまうことにもなりかねないし、このような方向性は、地域社会が一体となっての子育て支援を掲げて県が一方で進めている「新結婚ワクワクこどもすくすくPlan(奈良県次世代育成支援行動計画)」とも整合しない。
3 まとめ
 以上のように、本条例案については、様々な看過できない問題点が存するので、当会は、これに対して反対の意見を述べるものである。
以上



以下、不登校厚生団体・青少年団体の反対声明。
こういう現場の声に、条例を策定した人や審議したひとたちはどれだけ心と耳をかたむけていたのでしょうか。
 

ふきのとうの会、フリースペースSAKIWAIの反対声明
http://future.web.infoseek.co.jp/documents/fukinotou.html

奈良県少年補導の関する条例(案)に反対します。
2006年3月9日   ふきのとうの会(不登校・ひきこもりを考える親たちの会)
フリースペースSAKIWAI(子ども・若者たちの居場所)
 私たちは、不登校やひきこもりの子どもを持つ奈良の親の会と、子ども・若者たちの居場所を主催している団体です。
 この条例案が可決されると。子どもたちの人権が侵害されることを非常に危惧しています。今回、県議会に上程された条例案は、少年(19歳以下)の健全育成を目的としながら、補導対象となる“不良行為”(非行の入り口となるもの)として、幅広く28項目もの行為を規定しています。
その中には、到底、犯罪行為にはいたりそうもない行為まで、対象にしています。例えば、「正当な理由なく、義務教育諸学校を欠席し、又は早退し、若しくは遅刻して、徘徊をし、又は生活の本拠を離れて遊戯若しくは遊興する行為」が不良行為のひとつに定義されています。
不登校の子ども達は、学校でいじめや様々な理由で学校に行かれなくなり、いっぱい傷付いています。ひきこもっていた子どもがやっとの思いで外出できるようになっても、この条例案だと、警察や少年補導員に補導されたり、県民に通報されるおそれがあります。
場合によっては、警察に同行され、12時間まで留め置かれるおそれがあります。そうなれば、子どもが受ける精神的ショックは甚大で、 再びひきこもるおそれがあります。
また、不登校の子ども達の中には、適応指導教室や遠くのフリースクールに電車に乗って通う子もいます。通う途中、度々呼び止められ、質問されたら、せっかく通えるようになっていても、通えなくなるおそれがあります。
また、学校にも適応指導教室も合わず、フリースクールも近くになく、ホームスクーリングを選択している子どもいます。そういう場合、 この条例案だと、自由に外出ができなくなるおそれがあります。正当な理由の定義が非常にあいまいで、この条例で不登校の子どもが補導されない保証はありません。
また、少年補導員に委嘱すると書かれていますが、その人達が不登校やひきこもりの子ども達を必ずしも理解されているとは限りません。
学校にも家庭にも居場所がなく、いじめや虐待などの人間関係で傷付いた子ども達が、追い詰められたなかで、「不良行為」と書かれた行為をしていても、警察や大人の側がはじめから「不良少年」と予見をもって補導することは、行為を取り締まることはできても、子ども達の心は救われません。
むしろ、そういう子ども達は社会や大人達の被害者です。この条例案では、そういう子ども達を守り支援していくことができるとは思われません。
また、この条例案を周知徹底したと県知事は語っていますが、県民の人たちは、この条例案のことは、ほとんど知りません。県民にとって非常に関りのある条例案なのに、十分な議論なしに拙速で可決するべきではないと思います。廃案若しくは継続審議にされることを要望します。

登校拒否・不登校問題全国連絡会、奈良県登校拒否を克服する会の要求書
http://future.web.infoseek.co.jp/documents/narakokufuku.html

―子どもたちの健やかな育ちと自立への援助は、受容と共感と信頼の対応で―
監視と取り締まり強化の「奈良県少年補導条例(案)」の撤回を強く求めます
2006年3月   奈良県登校拒否を克服する会
 私たちの会は、親を中心に、教職員、相談員、この問題に関心のある人達が互いに経験を交流しあい、受けとめ助け合い、子どもたちが登校拒否・不登校状態から生きるエネルギーを回復し、自ら立ち上がるのを援助してきました。
 その援助の基本にあるのは「受容と共感と信頼に基づく援助」です。そうした援助によって、多くの子どもたちが、親子関係を築き直し、自己肯定感をひろげ、自らの意思で進路を切り開いています。「人との出会い」を作り、ひろげています。
 このように子どもたちが自らの意思で立ち上がるまでには、さまざまな行動があります。登校するふりをして家を出て校区外を「徘徊」し夕方帰宅した子、夜になるとまわりの目を気にせず安心して出かけた子、校区外だと買い物に出かけることが出来た子、登校してもすぐ帰宅したり自分の行ける時間だけ登校したり自分の心と相談しながら様々な形で登校する子どもたちなどさまざまです。
 こうした行動には、全て子どもたちにとって意味があります。全て子どもからのサインがあります。訴えがあります。叫びがあります。
 大切なことは、その行動を規制したり、注意したり、やめさせることでは決してありません。まわりの大人たちが、子どもたちのサインを受けとめられるかどうかです。子どもを認め、理解しようとする姿勢になれるかどうかです。その姿勢がなければ、決して子どもの本当の姿は見えてきません。子どもを援助することも出来ません。
 子どもを受けとめ、理解しようとすることで、子どもの思いや苦しみを感じ、子どもたちの声に心寄せていくことが出来るのです。その事により、子どもたちは安心感をふくらませ、前に進もうとするエネルギーを少しずつ大きくしていけるのです。
 私たちの会は、こうしたことをいろいろな体験を通じて確認しあい、子どもたちの援助を続けて17年目になります。多くの親や教職員、子どもたちの笑顔を見るたびにその事の重要性を感じ続けてきました。
 こうした会の経験からすれば、今回の「少年補導条例案」は下記に示すような重大な問題をもったものであり、実施されれば不登校問題がいっそう困難を増す危険性をもつものとして、「少年補導条例案」の撤回を強く求めるものです。

 重大な問題点として次の点が考えられます。
 第1に、「不登校の生徒一般が補導の対象となるのではない」とホームページにありますが、「要綱案」と「条例案」を比べて、本質的に何も変わらず、依然として不登校生徒の補導の危険性があります。
 子どもたちのさまざまな行動の中には、「徘徊」したり、いわゆる「非行行為」にはしる子もいます。
 私たちは、こうした子どもたちの姿に「自分の気持ちを分かってもらいたい」という思いや「周りの人との関係での苦しさ」や「自己嫌悪や自尊心との葛藤」を見てきました。今回の条例案では、こうした場合、当然、補導の対象となり、子どもたちの思いや苦しさを受けとめることとはかけ離れたものとなるに違いありません。
 また「正当な理由」とは、いったい何を指すのか曖昧な条文で、まさに「条例にあるから」という警察判断がなされ、さまざまな行動をとる不登校児の場合、「不良行為」と判断され、補導される場合も充分予想されます。
 「正当かどうか」の判断をを警察がにぎるということは重大な問題であり、これはまさに「権限強化」の危険性を持つものといわざるを得ません。

 第2に「条例による少年補導」の根本的誤りは、県民に「監視と通報」を明記するなど、警察が子どもたちを「取り締まりの対象」と見て「さまざまな困難や間違いを犯しながらも、学び成長し続ける主体」としては決して見ていないことがあります。こうした見方はいわゆる「不良行為」の問題をいっそう複雑にするだけです。

 第3に、子どもたちをめぐる環境の悪化にこそ目を向けるべきです。そうしたことに目を向けないで、子どもたちに責任を転嫁しては絶対にいけないということです。社会と大人自身の問題として捉えてこそ、真に子どもたちの行動を理解し、改善していく手だてが生まれてきます。

 今回の条例(案)には、そうした観点が全く欠如しています。「補導活動の活性化(ホームページ)」とは言うが、補導しなくていいような社会環境の「活性化」には目が向けられていません。そうした姿勢はまさに、問題を少年個人に転嫁しているからにほかなりません。補導の活性化や強化よりも、補導しなくていい環境作りこそ県民あげて取り組むべきことです。そのために警察がすべきことは多くあるのではないでしょうか。

 子どもたちをとりまく環境の悪化は、憂うべき状況です。
 この30年間で、飲酒や喫煙が「規制緩和」の名の下にいたる所で販売され、自動販売機や量販店だけでなく、コンビニでも購入できるなど、24時間いつでも購入できる状況になっています。性の商品化に関しては、インターネットを使った物にまで広がり、雑誌などの購入も24時間購入可能になっています。こうした子どもを取り巻く社会環境の悪化は、大人社会が作り出したものです。そうした環境を変えることなしに、「不良行為」だけを問題にする姿勢は許されません。まして「正当な理由」を警察の判断で行うことは絶対に許されません。
 こうした環境に警察や行政が目を向け、改善を図ることに全力を挙げてこそ、現在行われている「補導」もより効果を上げ、「青少年の健全な育成」がはかられるのではないでしょうか。
 第4に「パブリックコメント」については、このような重要な問題について、全く形式的にすすめているといわざるを得ません。
 本当に重要な内容だと考えるなら、内容を様々な形で県民に提示し、論議を広く行えるようにすべきです。学校や児童相談所、少年補導員などへも提示できているかどうかは、はなはだ疑問です。校長や少年補導員など関係者に知らされていない人もあり、今回の条例がいかに県民の意見に耳をかそうとしていないかを示しています。条例(案)に「県民の責務」を明示するなら、なおさら、手をつくして知らせ、広く論議を呼びかけ、十分な論議をすべきです。そのためにも条例案を一度撤回し、再度論議しなおすべきです。

 第5に子どもたちの健やかな育ちと自立への援助のためには「補導強化」ではなく、さまざまな施策が必要です。
  家庭の経済的困難が増えています。親の養育不安も広がっています。そうしたことへの施策
  子どもの問題で自主的に行われているさまざまな活動への援助
  地域の街作りなどさまざまな自主的な活動による人の結びつきを強める取り組み
  学校教育では、30人学級定数のための教員増などの教育環境改善、子どもと学校に関わる  地域の人々との結びつきを強める取り組みなど、さまざまな施策が求められています。
 子どもたちが安心して暮らせる家庭・地域・学校づくりは、「子どもを温かく見守る人のつながり」なしには考えられません。そうした努力が現在でも県内で数多く行われています。こうした努力を、条例による監視と取り締まり強化で台無しにしてはなりません。
 以上、不登校に関わる問題だけでなく、健全な子育てを考える上で重大な根本的誤りのある「条例(案)」は直ちに撤回するよう強く求めます。

おかネット−岡山県不登校ネットワークの反対決議
http://future.web.infoseek.co.jp/documents/nara_apeal.html

奈良県少年補導条例案の撤回を求めます
 私たちは、岡山県内の、不登校やひきこもりの子どもを持つ親の会と、子ども・若者たちの居場所のネットワークです。

 現在、奈良県議会で審議されている、「奈良県少年補導条例(案)」の中に、「正当な理由なく、義務教育諸学校を欠席し、又は早退し、若しくは遅刻して、徘徊をし、又は生活の本拠を離れて遊戯若しくは遊興する行為」が、補導対象となる「不良行為」として定義されていることを報道で知りました。

 不登校の子どもたちの多くが、自宅や自室に閉じこもりがちになります。それは、学校生活の中で深く傷ついたり疲れきったりして、他人の目に大変に敏感になっていることのほか、昼間外に出ると色々と大人から「注意」を受けたり、場合によっては警察官や青少年補導員などに「補導」されたりし、まるで悪いことをしているかのように思い込んでしまうからでもあります。

 閉じこもりがちの子どもたちは、長い時間の末にようやく元気を回復し、やっとの思いで外出できるようになったとたんに、警察官や「少年補導員」、地域住民などに、「不良行為」だとして、「注意、助言又は指導」を受けたり、補導されるようなことになれば、大きな精神的なショックを受け、再び閉じこもってしまう危険性がきわめて大きいといわざるをえません。

 この点については、「怠学に関わる不良行為については、『義務教育諸学校』に限定し、いわゆる不登校の生徒一般が補導の対象となるものではないとの趣旨を明確にするため、『正当な理由がなく、義務教育諸学校を欠席し、又は早退し、若しくは遅刻して、徘徊をし、又は生活の本拠を離れて遊技若しくは遊興をする行為』と規定した」と説明されておりますが、条例案には、「正当な理由」が何であるかが明示されておらず、その判断は、警察官や「少年補導員」、「不良行為少年」を発見した市民の主観に委ねられており、不登校の子どもが補導対象になるのではないかとの不安をぬぐいきれません。

 また、不登校の子どもを持つ親は、不登校に関する誤解と偏見の中で、地域の中で孤立しがちになり、一人で問題を抱え込むことで、より事態がこじれることが少なくありませんが、住民に「助言又は指導」や警察官等への「通報」する努力義務が課されることで、そうでなくても孤立しがちな不登校の子どもを持つ親や家族が、地域住民から「助言又は指導」・「通報」される側となって、さらに孤立してしまう恐れがあります。

 報道によれば、準備期間がわずか半年とあまりに拙速で、条例案の作成に当たって、教育委員会児童相談所等の専門機関との協議、議論も行われていないともききます。本条例案は、以上のような多々の問題点があり、不登校に関する理解を全く欠いたもので、不登校にかかわる者として、絶対に容認できるものではありません。

 条例案の撤回を強く求めるものです。

2006年3月19日
岡山県不登校ネットワーク
世話人団体          
フリースペースてらこやおひさま
フリースペースあかね
倉敷不登校ネットワーク
FUTURE不登校を考える会
コアラの会

 
不登校問題に関心のある親たちも、奈良の条例を“不登校児追い詰め条例”と認識しているようです。
 

■全国不登校新聞社
不登校が補導対象に!?/奈良県・少年補導条例
「正当な理由なく欠席」で補導 3/10
http://www.futoko.org/cgi/newsread/newsread.cgi?disc=newest&st=51&ed=51

奈良県警は2月27日「奈良県少年補導に関する条例(案)」を県議会に提出した。条例の目的は少年補導の法定化、活性化によって、少年の健全育成、非行防止を図ること。しかし、この条例案に対し、「警察権限の拡大」を懸念する声や「不登校も補導対象となるのでは?」という不安の声が広がっている。条例案は3月13日から県議会で審議され、可決されれば、今年7月1日からの施行となる。
 条例案で定められるのは、少年補導の対象、補導に関する警察の権限と保護者・県民の責務。5章30条で構成され、飲酒や喫煙、深夜徘徊など、補導対象となる不良行為が26項目にわたって規定されている。また、青少年条例としてはめずらしく、一部の行為は、18歳未満だけでなく、20歳未満にも規定を設けている。
 条例案は警察の権限について「補導した少年に対する注意や助言」「警察施設で最長12時間の保護(少年が同意した場合)」、「タバコや薬物などの任意提出を求め、一時的な保管、廃棄を促す」などを規定している。また、「条例の規定による警察職員の権限は、犯罪捜査のために行なうものではない」「県民及び滞在者の自由と権利を不当に制御しない」といった注意点も定められている。県民の責務としては「保護者は、少年が不良行為を行なわないよう指導および監督する」こと、不良行為を発見した場合は「助言や指導、または通報するよう努める」などを定めている。
●不良行為を明確化し規制
 奈良県警は、条例を提案した理由について「少年非行は依然として深刻な状況にあり、少年を取り巻く環境に対しては、県民全体として取り組む必要がある。不良行為の早期発見が非行防止、健全育成につながることから、補導の活性化を図っていきたい」としている。
 少年補導の権限や活動内容、不良行為の範囲は「少年警察活動要綱」(警察次長通達)によって指針が示されているだけで、法律上の規定はない。とくに不良行為は、刑罰法令に触れないものの「自己または他人の徳性を害する行為」と位置づけられており、その範囲はあいまいだ。2004年警察庁が設置した「少年非行防止法制に関する研究会」は、少年補導に対する警察の権限、不良行為の範囲を明確にし、法定化するよう提言した。具体的な条例案が出たのは、奈良県がはじめて。
 奈良弁護士会は、この条例に対し「非行防止のために必要な教育・福祉的政策の観点から外れる」として、反対を表明している。弁護士会は「広範囲かつ、刑罰法令に触れていない不良行為を規制対象とすることは、『警察権の発動は、目的のために必要最少限度において用いるべきもの』という原則に反し、警察権力の不当介入をほとんど無限定に認めることにもつながりかねない」と批判している。このほか、地域住民に通報努力を促すことで「地域住民がたがいを監視する状況になり、問題を抱える少年と周囲住民の対立さえ生み出しかねない」「警察施設への同行要求や一時保護は少年の人身の自由を直接に侵害する恐れがある」などの危険性を訴えている。
●「正当な理由なく欠席」で補導
 条例案は「正当な理由がなく、義務教育諸学校を欠席し、または早退し、もしくは遅刻して、徘徊をし、または生活の本拠を離れて遊技もしくは遊興する行為」を補導対象としている。この規定によって、不登校の子が外出しているだけで、補導されることも危惧される。昨年11月に県警が実施したパブリックコメントでは、この規定について「不登校が補導対象となってしまう」との指摘もあがっていた。
 県警は「あくまで怠学を補導対象とした条文であり、不登校は対象となっていない」とし、当初の条文「正当な理由がなく、学校を欠席すること」に「徘徊」「遊技」「遊興」を追加した現在の条文へ修正した。しかし、条文は修正されたものの、「怠学」か「不登校」かは警察判断にゆだねられることになる。実際問題として、不登校が補導の対象となることはないのか、また、「怠学」だからといって警察の補導の対象となるのはおかしいのではないかなど、懸念の声が県内外の親の会やフリースクールからあがっている。
 県内の不登校の親の会「ふきのとうの会」とフリースペース「SAKIWAI」は、不登校の子が補導対象となる危険性に変わりはないこと、「正当な理由」があいまいなこと、などを理由として、反対声明を発表し、県議会に対し、条例案の廃案もしくは継続審議を要望している。
 「奈良県登校拒否を克服する会」も、条例案の撤回を求める要望書を県などに提出した。要望書は「大切なことは、その行動を規制したり、やめさせることではなく、子どもの行動を理解しようとする姿勢。『不良行為』にはしった子は、気持ちを受けとめてほしいからこその行動という子も多い。条例案は子どもたちの気持ちから離れている」と批判している。
 県議会に当事者の声が反映されるのか、審議の行方が注目される。

不登校を考える会
不登校も取り締まり? 奈良県のとんでもない条例案
http://future.web.infoseek.co.jp/topics/20060310.html

不登校が「不良行為」として取締りの対象となる? こんな条例案奈良県議会に提案され、不登校関係者をはじめ、弁護士や教員、女性団体から反対の声があがっています。
問題となっているのは、仮称「奈良県少年補導条例」(案)。少年非行が「依然として深刻な状況」にあるとして、少年(19歳以下)の「非行防止」と「健全育成」を目的に、不良行為少年の「早期発見」のためと称して、現行法では罪にならない行為を「不良行為」として列挙し、規制を加えようとしています。
「不良行為」とされているのは、「みだりに異性の身体に触れ」る行為など男女交際の問題や、「正当な理由がなく、義務教育諸学校を欠席」すること、「正当な理由がなく深夜徘徊(はいかい)する」ことなど。「不良行為」を発見した県民には、その少年に注意をしたり、警察等に通報する努力義務を課しています。
当初の案では、「正当な理由がなく、学校を休み、又は早退若しくは遅刻をする」ことを「不良行為」と定義していましたが、「いわゆる不登校の生徒一般が補導の対象となるものではないとの趣旨を明確にするため」「義務教育諸学校」に限定し、徘徊をしたり、生活の本拠を離れて遊技や遊興するなどの語句が加えられたもののが、不登校の子どもが補導されるのではないかとの懸念は消えていません。
現に、フリースクールやフリースペースに通う子どもたちが、駅前や街頭で警官に補導され、交番や警察署に同行(連行?)され、スタッフが迎えに行くというようなことは過去にひんぱんに起きていますし、今日でも決してまれではありません。
また、「当該少年にその行為を止めさせるため必要な注意、助言又は指導を行う」よう努めよとの努力義務が一般人に課されると、平日の日中など、通常多くの子どもが学校に行っている時間に外出している子どもに対して、「その行為を止めさせるため必要な注意、助言又は指導」として、学校に行くよう声がかけられることにもなります。
奈良県内では、弁護士会が、「少年の保護育成の手段は、権力的な規制に頼るのではなく、学校や、児童相談所をはじめとする福祉機関、地域社会等による包み込み」などを「手段とすべきことは世界的潮流」とする、条例案に反対する会長声明を出し、県議会各会派にも反対するよう呼びかけました。
また、県教職員組合や女性団体など5団体が「同条例を考える会」を結成し、同条例案を県議会に提出しないよう申し入れたほか、反対のシンポジウムを開催。ふきのとうの会(不登校・ひきこもりを考える親たちの会)やフリースペースSAKIWAI、奈良県登校拒否を克服する会など、不登校関係団体も、条例案への反対を表明しています。
東京シューレ代表・奥地圭子さん 不登校一般が対象ではないということを示すために「正当な理由なく」をつけたということだが、誰が、どう判断するのか? 先日、東京シューレの小学4年の子が11時ごろ、駅で補導されて警察に連れて行かれ、警察から「お宅の生徒か?」と確認の電話があった。このようなことは、シューレを作った80年代によくあったが、復活する気配で心配だ。
鳥取タンポポの会代表・医師 森英俊さん 子どもの成長支援にとって大切なことは「不良少年に対する補導権限」の条例化や警察権限の拡大ではない。子どもの意見表明を受けとめ、子ども自身が一人の人間として、家庭でも社会でも、人間としての尊厳を守られることが何より重要。学校教育が今の子どもたちに合わなくなって、歪んできたため、学校に背を向ける子どもたちが増えてきた。子どもたちの置かれている状況をよく理解し、規制や威嚇ではなく、一人ひとりの子どもに合った教育を用意していく必要がある。

 



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関連ログ
 

奈良県少年補導に関する条例成立(1)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20060330
奈良県少年補導に関する条例成立(2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20060329
奈良県少年補導に関する条例成立(3)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20060328
単純所持禁止・奈良県が初の条