奈良県少年補導に関する条例成立(1)

奈良県少年補導条例を取り巻く事象・人物関係図
2006年3月24日、県議会本会議において、自民・公明の賛成多数で「奈良県少年補導に関する条例案」は可決成立しました。奈良県には「警察の権限拡大で非行が防止できるのか」と全国から強い批判が寄せられていました。
奈良県少年補導に関する条例の制定により、少年の「有害図書類を所持する行為」や「インターネットを利用し有害サイトを閲覧する行為」や「無断外泊」などの犯罪とまではいえない行為は「不良行為」とみなされ、不良行為少年を発見した奈良県民は少年に「やめろ!」と注意する条例上の義務が発生することになります。
何が「有害サイト」なのかを判定する有害性の客観判定基準は存在しません。子どもを注意するオトナの主観・気分次第でどうにでも少年たちを追い詰めることができるなど、条例は規範性に欠けた無法な法として施行される可能性が指摘されます。
ちなみに補導対象となる「有害図書類を所持する行為」は、どこで所持しているかという“場所”の限定されていないので、自宅の自室で“所持”していても警察官は補導のための権限(指導・連絡)を行使できます。自室で「有害サイト」を閲覧している場合も、警察官は補導権限を行使できます。
「不良少年」とみなされ、補導される子どもたちは、連絡→退学などの不利益を恐れて「不良行為」をした事実を隠そうとすることします。なので、子どもを保護する前提となる子どもからの通報・証言を得られなくなる可能性があります。
たとえば、「不良行為」のひとつである「性向類似行為」については、「デートしておじさんにキスしてくれたら千円あげるよ」などと言われてキスした少女は条例上「不良少年」となり、注意・指導・通報対象となります。
児ポ法*1では、金品を介して性向類似行為を児童にさせた大人を犯罪者として処罰することになっていますが、少女(少年)は通常処罰されないことになっています。児ポ法の目的はあくまでも児童の人権擁護であるという原則があるからです。だから子どもは児ポ法では「被害者」として扱われ、少女(少年)は通常罰せられることを恐れる必要は無く、通報したり犯罪事実を供述できます。
しかし、奈良県の補導条例は補導という形で子どもにある種のペナルティを与えることになります。補導条例が成立したことにより、加害者のオトナは「奈良県の補導条例って知ってな? バラされたくなかったら絶対誰にも言うな。聞かれてもちゃんとつきあっていて金は受け取っていないと言え。わかったな」などと脅され、沈黙を強いられることがあるかもしれません。
つまり、奈良県条例は、児童犯罪を潜在化させ、あるいは拡大させる効果を生むおそれがあります。*2
 
奈良少年補導条例は、警察庁少年非行防止法制に関する研究会「提言」や内閣府少年補導センターの在り方等に関する研究会の「報告書」の、地方全国展開のモデルケースといえます。
かつて政府は、青少年有害社会環境対策基本法なる名称の、実態としてはメディア規制にほかならない違憲立法を企てようとしました。が、国民世論の健全な批判により失敗しました。そこで出てきたのが条例による全国展開という国家統制戦略であり、この奈良県少年補導条例もそうした条例のひとつと考えることができそうです。
 
というわけで、今後こうした条例の制定が全国に波及し、中央政府が立法化を目指す可能性があるため、奈良県の条例について議論の前提情報として記録しておきます。



以下、奈良県少年補導条例を策定した菱川雄治天下り県警本部長についての情報。
一部新聞(はっきり言うと読売新聞)は、子どもを指導する補導員が困っているので条例が作られたという具合にあたかも現場からの要望で条例がつくられたかのような印象操作をしているようですが、実態は内閣府警察庁の情報官僚が地方に天下り内閣府警察庁で作った“政策の天下り”をしているだけと思われます。
 
菱川雄治奈良県警本部長は元警察庁生活安全局少年課長であり、児童ポルノ対策の政府説明員として国会で答弁した経歴を持ちます。
 

第159回国会 外務委員会 第8号(平成16年3月18日(木曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000515920040318008.htm

政府参考人
警察庁生活安全局少年課長)菱川雄治君

《略》
○菱川政府参考人 お答えいたします。
加害者の数自体はなかなかちょっと把握しづらいものがございますけれども、児童買春、児童ポルノ法の施行以降、これまでに国民の国外犯として検挙した事件数でございますけれども、五件十一名検挙しております。このうち、児童買春事件が三件三名、児童ポルノ事件が二件八名となっております。
《略》
 次に、国内の検挙状況でございますけれども、法律は平成十一年十一月に施行されたわけでございますけれども、法施行から平成十五年末まで、児童買春事件としては合計で六千四十八件三千九百十四人を検挙しております。また、児童ポルノ事件につきましては、同じく法施行から平成十五年までで合計七百四十三件六百七十一人を検挙しております。

 
児童ポルノ対策の説明員なら、子どもを処罰することが子どもの人権擁護につながらないことぐらいわかりそうなものですが、それを知っていて子どもを実質的に罰することになる「不良行為」の定義を奈良県で作ったるということは、菱川雄治という人は“確信犯”だということではないでしょうか。
 
菱川雄治氏は警察庁生活安全局少年課長の時、警察庁少年非行防止法制に関する研究会(座長は都条例改悪を推進した前田雅英首都大学法学部教授)の委員として、補導強化をタテマエとした警察権限拡大など含んだ提言の策定に参与していました。
つまり、中央政府で政策の企画立案していた人が県警本部長として同じ政策の企画立案をやっていることになります。
奈良県のためにやっているのではなく、政府のためにやっていることがミエミエです。
政策の天下りを許すな! 子どもの安全ぐらい地方にまかせろ! 地方自治を守れ!
 

少年非行防止法制の在り方について (提言)
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen14/teigenpdf/teigen.pdf

少年非行防止法制に関する研究会について
〔メンバー〕
座長 前田雅英 東京都立大学法学部教授
委員 相原佳子 第一東京弁護士会少年法委員会委員長
 川出敏裕 東京大学法学部教授
 小宮信夫 立正大学文学部教授
 高木光 学習院大学文学部教授
 高橋則夫 早稲田大学法学部教授
 村松励 専修大学ネットワーク情報学部教授
 森嶋照伸 国立教育政策研究所生徒指導研究センター総括研究官
 山崎晃資 東海大学教育研究所教授
 太田裕之 警察大学校警察政策研究センター所長
 菱川雄治 警察庁生活安全局少年課長(〜平成16年8月9日)
 大木高仁 警察庁生活安全局少年課長(平成16年8月10日〜)

北の系2005/警察庁資料/少年非行防止法制の在り方について(中間報告)
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020380.html

 
菱川雄治氏は、元内閣府政策統括官(総合企画調整担当)付青少年健全育成担当参事官で、元内閣府少年補導センターの在り方等に関する研究会委員でした。
「少年非行防止法制に関する研究会」の座長は、東京都で青少年健全条例を大改悪を推進した前田雅英首都大学法学部教授。菱川雄治氏はここでも前田とペア! 少年非行政策では前田、菱川、村松の三人が揃って動いていることが多い。少年非行三バカトリオと呼んであげましょう。
 

内閣府少年補導センターの在り方等に関する研究会
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hodou/hotop1.html
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hodou/homeibo3.html

少年補導センターの在り方等に関する研究会委員名簿
あきやまかおる
秋山薫 (社)日本PTA全国協議会常務理事
いなばたもつ
稲葉保 法務省保護局更生保護振興課補佐官
いわしたとよひさ
岩下豊久 千葉県環境生活部県民生活課長
おざきはるき
尾崎春樹 文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
さかもとまさこ
坂本正子 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課児童福祉専門官
しかたひかる
四方光 警察庁生活安全局少年課理事官
のぐちきょうこ
野口京子 文化女子大学文学部教授
ひしかわゆうじ
菱川雄治 内閣府政策統括官(総合企画調整担当)付青少年健全育成担当参事官
座長 まえだまさひで
前田雅英 東京都立大学法学部教授
むらまつ ひろし
村松内閣府政策統括官(総合企画調整担当)付推進担当調査官
やまぐち よしひろ
山口芳弘 神戸市青少年補導センター所長

 
菱川雄治氏は、中央政府で青少年政策を企画立案し、少年補導利権を代表する政策立案グループの実務官僚のトップにいた人です。
参事官という官職は、企業ポストで例えるなら本店の営業本部長といった立場。上には統括官、副大臣官房長官、総理大臣などがいますが、いずれも政治決定や政治的調整を行い、立案実務は参事官以下で行います。つまり政治判断の前提となる情報を彼は握っており、情報の使い方、出し方次第で政治判断を左右できる立場にいたわけです。そして、本店本部長が自分の作った計画を実現するために支店長に天下って実績を作ろうとした、といったところでしょう。(それをコントロールするのは政治家(を支持する有権者)の役割であり責任ですが、役人をコントロールするだけの能力も意思も情報もないあたりが問題かもしれません。)
なーにが補導現場の都合で条例を作った、だ。いい加減なこと言うな!
 
読売新聞が菱川ヨイショ記事を書いてます。これは記事というより内閣府の広告に近い内容。
着任三ヶ月で全国的に有名になった奈良事件が発生し、マスメディアが波状的に報道合戦をくり広げ、劇的な逮捕で本部長は一躍「県民の安全を守った英雄」になる。警察が事件を計画したとまでは言いませんが、警察にとって都合よく事件が起こり世論がコロっと変わってしまうあたりに違和感を感じなくもありません。
 

■読売新聞
企画・連載 一覧 人を守る地域を守る 2年目の誓い
警察と地域の連携重要 <5>女児誘拐殺人事件1年
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nara/kikaku/087/5.htm

県警本部長 菱川雄治さん 48
警察庁少年課長を経て2004年8月に県警本部長に就任した。県内の刑法犯の認知件数は、02年をピークに減少傾向に転じていたが、着任から3か月後に、あの事件は起きた》
大変ショックな事件でした。熱心に防犯活動を続けていた地区だけに、すきを狙った犯罪が起きることを再認識しました。子供の命を守るために、大人と社会は、最善の努力をしなければならない。そのことを実感しました。
「一生懸命やっても無力感を覚える」。当時、防犯活動に取り組む地域の方々からそういった話を聞きました。防犯パトロールなどをしていても、そのすきを狙った犯罪はどこでも発生します。でも、すきを埋める網として、防犯活動などの努力は、欠かさないことが大切なんです。
《事件後、県警には市民から子どもの安全を守る警戒活動を強めてほしいという要望が多く寄せられた。県警は学校を巡回する回数を増やし、警察学校の初任科生を通学路で警戒にあたらせるなど、「見せる防犯」に力を注いだ》
 子どもを守る機運が高まったせいか、昨年12月の刑法犯の認知件数が減りました。犯罪の未然防止には、警察官が街頭に立って警戒するのも大事ですが、「自分の身は自分で守る。地域の安全は地域が守る」という姿勢で、警察と地域が連携することが重要です。
大変不幸な事件でしたが、教訓の一つとして「事件の犠牲を無駄にしない防犯活動」が広がり、地域の連帯感が高まったようです。
《だが、事件後も子どもに対する不審者の声かけ事件などが続発。県警はホームページにその情報を公開して注意を喚起するとともに、「子どもを犯罪の被害から守る条例」の制定にも取り組んだ》
 事件前から、「子どもに対する声かけを何とかしてもらいたい」という不安の声は根強いものがありました。防犯ボランティアらが行う善意の声かけを規制しないよう、明らかに子どもに不安を与えるような行為を規制できないか考えました。いかに重要犯罪の前兆行為を敏感につかみ、対策を講じるか。それを細かく見極めながら、早い段階で検挙し、大きな事件を起こさせないことが大切です。
 国際社会からも、日本は児童ポルノの発信国だと批判を受けています。児童ポルノの撮影は違法行為であり、子どもに性的な好奇心を持つ人が刺激を受け、性的犯罪の引き金にもなりかねません。事件が起こった奈良の実情を考えると、子どもに対する重大な犯罪を抑止することは、特に重要なことです。
 子どもが健やかに育つように、大人は絶えず考えないといけません。子どもを日本一、安心して育ててもらえる奈良県にしたいと思っています。
 子どもを犯罪の被害から守る条例 女児誘拐殺人事件を教訓に、子どもを性犯罪などから守る目的で、10月に全面施行された。13歳未満の子どもの衣服をつかむなど不安や恐怖を与える行為や、児童のわいせつな画像を正当な理由なく所持する行為に対し、「30万円以下の罰金か拘留、科料」の罰則付きで取り締まる全国初の条例。

 
「子どもを犯罪の被害から守る条例」の策定を誇らしげに実績として紹介していますが、逆ですよね。
不審者の声かけを禁止する「子どもを犯罪の被害から守る条例」を作り、→規制の網を広げすぎて善意の人の声かけが難しくなり、→地元の治安力を失わせ子どもがより危険になり、→警察の責任を問う声が増え、補導権限を与えろということになり、→「少年補導に関する条例」を作ろうぜ、という経緯で補導条例が作られていることを考えると、少年補導条例は菱川本部長たちが作った欠陥条例の欠陥を埋めてるだけという見方もできるかもしれません。
というよりもむしろ、そうなることがわかっていて「子どもを犯罪の被害から守る条例」を作り、「少年補導に関する条例」を作った、マッチポンプだったのではないか、という疑問もなきにしもあらず。
 
これは一般論ですが、役人の暴走をとめるのは法と政治であり、法と政治をコントールするのは有権者です。有権者がしっかり役人の暴走を監視し、コントロールしなければ、税金と治安は役人の都合に左右されるだけです。



以下、柿本知事関連情報。
 


Wikipedia 柿本善也 2006年3月22日版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%BF%E6%9C%AC%E5%96%84%E4%B9%9F

柿本善也(かきもと よしや、1938年2月7日 - )は、奈良県知事。
奈良県大和高田市出身。奈良県立高田高等学校、東京大学法学部卒。旧自治省に入省し、自治大学校校長を経て1990年奈良県副知事に就任、上田繁潔知事の辞意表明を受け1991年11月の奈良県知事選挙に立候補、初当選した。現在4期目。
バブル崩壊期に奈良県政を担当し、1997年12月には1億5000万円に上る県庁食料費不正流用事件も発覚した。この時は柿本知事始め県庁幹部が私費で返済し、刑事事件となるのを免れた。さらに2000年11月には奈良県立医科大学教授陣の汚職事件、2001年3月には奈良県警察本部を舞台にした奈良佐川急便事件など大掛かりな不祥事が多発した。2001年9月明日香村にオープンした奈良県立万葉文化館も古代遺跡の上に立地しているとして物議をかもした。知事就任以来「遊」の哲学を提唱しているが、県勢は衰退気味で何もしない知事との声もある。

 
不祥事起こした役人たちがルールを作り、「ルールを守れ」と言って子どもを補導するんですか? 「ルールを守れだなんておまえらだけには言われたくないよ!」、と言わてしまうのではないでしょうか、子どもに。私も言うけど。
劣悪な学習環境やイジメに適応できず不登校になっている子ども=犠牲者を補導するよりも、税金泥棒の不良知事や不良警察官、税金泥棒の不良県職員を補導し指導することが、奈良県民にとって喫緊の優先課題では?
ルールを破るような人はルールを作っちゃいけない!
 
以下、知事の発言・暴言・迷言など。
 

奈良県
http://www.pref.nara.jp/

奈良県:知事室 柿本善也*3
http://www.pref.nara.jp/chiji/index.html
2006(平成18)年2月6日 知事定例記者会見
http://www.pref.nara.jp/chiji/teirei/h17/h18-02-06/teirei.html


【少年補導条例案について】
記者  補導条例案について、先だって弁護士会が反対の意見を表明され、当初2月議会に提出するよう準備が進められていたが、知事の見解はいかがですか?
知事  そういう意見もあるが、作業は進んでいると報告を受けている。具体には、警察本部に確かめていただきたいと思いますが、そういう(2月議会に提出する)前提で、作業が進められていると思います。
記者  警察本部の方から、提出できる状態で来れば、議会に提出する方針か?
知事  あんな(小学生誘拐殺害)事件が起こったところなので、十分議論されることについては、警察本部も検討していないはずはないので、弁護士会の意見も聞いた上で、持ってくれば応じることになる。これは、プロセスとして、決めたとかいうことではないが、そういう作業が進んでいることは知っている。
記者  最終的には、(議案は)知事名で提出するので、警察本部で仕上げてくれば、知事としては提出するということか?
知事  その段階で、改めていろんな意見が出たことを検討したかどうかを聞いて、その上で決めることになる。弁護士会が発言されたのですから、意見としては重要なこと。
記者  この前、鳥取県で人権条例を施行するといって取りやめになったこともあったが、警察本部から、仮に提出したいと言ってきても、その段階で知事が意見を聞いて提出をやめる余地もあるということで認識して良いか?
知事  私はそういうことを言っているのではない。いろんな条例と同じこと。字句修正だけの簡単な条例もあるが、どの条例も出す時には、私なりに理解して出している、という意味で言った。それ以上に、この条例だけチェックするという意味は全然ない。

2006(平成18)年3月16日 知事定例記者会見
http://www.pref.nara.jp/chiji/teirei/h17/h18-03-16/teirei.html


【少年補導条例案について】
記者  少年補導条例についてですが、2月議会開会日に提案されて以降、日弁連(日本弁護士連合会)からの反対声明や、近畿弁護士連合会から反対決議が出されたりと、状況がかなり変化し議論も深まっているかと思うのですが、今の段階での必要性についての認識をもう一度聞かせてください。
知事  日弁連等の意見については前々からお聞きしているところであり、今改めてということではなく、既に議案を提案して審議いただいているところでもあるので、私の方から説明することでもないと思います。色々な意見・懸念を、それぞれお持ちになることはあるが、やはり、現場で補導員が少年補導をどう進めているか、どんなことで困っているのかという現実を見てもらわないと。
 もう一つは、色々な懸念を言われるが、今のままで良いのか。抽象的な言い方をしますが、前へ進まないといけない。次世代を担う少年に、暖かいアドバイスや声かけをすることが必要だと思います。それを警察職員だけにしてもらうということではなく、色々な所と連携しなければならないと思いますが、どういうものを対象に、どういう方が、どういう狙いかということを明確化する。(補導員は、)いわば職務の延長のような、あるいは当然の義務のような形で努めておられるのですが、それを明確化することが必要というのが条例を提出した立場からの判断です。
記者  明確化によって警察の権限が拡大してしまうのではないかということを懸念する声があるのですが、権限の拡大でないことをどういう形で担保していくのか? 具体的に出て来てないのでお聞きしたいのですが?
知事  条例を子細に読んでいだければ、権限として増えたというより色々な範囲を明確化して、それに対して示されている懸念に配慮するような条文が並んでいます。私が初めにこの話を受けたときに、権限拡大より「ご苦労なことによく手を出してもらったなあ」と思ったのです。むしろ、本当の実態を、県民あるいは子どもを持つ親の立場でどうしたらいいのか考えるということが中心であった方がいいと思うのです。だからそういう懸念事項は、条例にも書いてあり、あるいは今後の運用について見守るとか、そういう形で対応していくべきではないか。
 実際行われてきた補導の範囲や立場を明確化する。例えば、補導を受けた人が補導員に「あなたは何の権限で、私に言うのか」と言うそうです。そうなれば、そこで引き下がるしかないのです。条例が出来ても強制権限は伴いませんが、「私は、こういうことであなたに注意しているのですよ、アドバイスするのですよ」と言える。このことを一歩前進という目で見てもらうべきではないかと思っているのです。
記者  現場の補導員がこんなことで困っているという話が、本会議や予算委員会など、この条例に関する議論の中で全く見えてこない。本当に困っている例が何件あって、どんなケースがあるということを、警察から報告を受けているのか。法令審査の中でも、どれだけ例があったという話も聞いていません。必要性があるというが、そのバックデータが出ていないような気がするのですが?
知事  統計があるかどうか知りませんが、現実の話として、先ほどのようなことを聞いています。条文を全部見てもらえれば良いと思いますが、不良行為で何条の条文が書いてあるか、明確化に力点を置いて条文が出来上がっていると私は思います。
記者  「同じ気持ちで」と警察本部長が本会議で答弁されていたが、親が注意するのと警察が注意するのは明らかに違います。現場で困っている例があることは私も聞いていますが、条例にしなければならないほど困っていることが見えないのですが?
知事  先ほど紹介した話は聞いたものですが、そう言われた時どうしますか。今の条例を離れて、みんなが声かけする雰囲気や勇気を持たないと。
記者  何の権限で言うのかと、子どもに言われた時、条例で決まったからと言ったとしてもどうか?
知事  権限というより、資格だと思います。権限というと強制や実力行為が出来るように受け止められますから、正確に言うと、そういうことを行っている立場だと思うのです。例えば、明らかに未成年がタバコを吸っていても「あんたに関係ない」という言葉が返ってくると思いますよ。
記者  条例で決まっているからと言うのですか?
知事  本当はみんなが、「今頃、タバコを吸うのは色んな誘因になるからまずいのだよ」ということが望ましいのですが、現実に電車や路地で見かけた時、なかなか勇気のいることです。
記者  条例が出来たら、みんなが言うようになるのですか?
知事  こういうためにしてはならないとか、条文に全て書いてあるでしょう。それと違った行為だとみんなが判断した時には「条例と違う」と言えば良いと思うのです。
記者  たとえば、2条4項のケで「みだりに異性の身体に触れ、又は異性につきまとい、その他の他人に性的な不安を覚えさせるような行為」というのを県警に聞いたところ、握手すらもこの不良行為に該当するということをご存じでしたか?
知事  そこまで私が答弁することではないでしょう。
記者  知らなかったのですか?
知事  条文は読んでいます。
記者  条文じゃなくて実際の運用上の不良行為として、そのような行為すら不良行為に当たるということをご存じなかったのですか。
知事  その論議はわかりません。答える能力はありません。というのは、軽犯罪法など、この種の条文は、条文の書き方とその解釈については、状況次第で微妙なところがあると思うのです。条文とは関係ないことを断っておきますが、握手しにいったときに喜ばれる状況の握手と喜ばれない状況の握手があるでしょう。いろんな状況判断だと思うのです。
記者  外形的行為として握手する行為を不良行為と定めている訳ですから。
知事  警察本部に聞いてください。
記者  知事はこの条例の提案者であって、条例を知事名で施行するのですから。警察本部で聞いてくれというのは、ある意味解るのですが、自分の名前で施行されるのですから、きちんと答えてほしいのですが。
知事  そう言われても、私がここで答えたことが事態を左右するようなことであってはなりません。今言われた条文がどう解釈されるかということを私が答えないといけないと言われれば、私があらゆる職員の行動を代行しなければならない。
記者  聞いているのは知らなかったのかどうかです。
知事  条文は読んでいます。
記者  条文は読んでるでしょうが、条文の意味するところを知っているのですか。
知事  知っているのか、知らないのか、わかりません。
記者  それはどういう意味ですか。
知事  いろんな法律があり、言葉の解釈は法律によって変わることがあるのです。細部まで私が知っていなければいけないと言われれば、それは無理です。条文は読んでいますが、どう解釈されるのかという具体のことは、条例を執行される立場の方が責任をもって答えなければ仕方がないということです。
記者  条例を見ていただけれはわかるとおっしゃたのですが、実際に適用される県民の方が読んでもわからないと言っている。私自身も、よくわからないところがあります。たとえば、正当な理由がなくしてというところで、正当な理由は誰が判断するのか、徘徊というのはどこまでをどのように規定するのかわからない。県民のための条例であれば、県民にわかりやすくしないと意味がないし、社会全体で健全育成を目指そうというのであれば、内容がこれではおかしいのではないか。あいまいな中で、警察職員の判断で補導されたら、少年はたまりません。学校を休みたくなることもありますし、いろんな状況があると思うのです。
知事  今、正当な理由とおっしゃたが、それだけで何冊もの研究書が出来るぐらい難しい話です。それを誰にもわかるように明確に説明せよと言っても難しい。
いろんな人間社会のことに適用しているので、状況に応じた妥当な判断がいつも必要です。事前に明解になっていない場合もある。法律や条例が作られた趣旨をしっかりと踏まえ、その趣旨に沿って解釈し運用するという努力が必要です。この種のものは、運用の中でだんだん妥当な線に固まっていく、そういう性格をもっているような気がするのです。
記者  運用の中で妥当な線に固まっていくということが、警察権力の拡大ということです。握手して不良行為になるとしたら、やりすぎだと思うでしょ。
知事  何ともいえません。選挙の時、女性から手を出されても最初は握手できなかった。
記者  話のすり替えですよ。
知事  すり替えかもしれないが、そんな極端な話もあるということ。人間の行動というのはそれぐらいバラエティ。
記者  握手は両方から手を出さないと握手にならない。手を出さないから握手ができない。お互いしたくないということはあるのですかね。
記者  少しでも前へ進まないといけないということはわかります。タバコを街頭で吸っている子ども達もいるでしょうけれども、それを補導する人達が、根拠がないので困っているのですというのは本当にどれぐらいあって、少しでも進めなければというベースになる話がこんなにあるから条例が必要と言ってもらわなければ。とりあえず条例を作って、拡大じゃないから権限を規定してということではたまらない。本当に困っているのですかということを聞いているのです。
知事  そういうご意見があったことを警察本部に伝えておきましょう。
記者  知事部局でいうと、青少年課にも注意する立場の職員もいる。必ずしも警察がやっている事案ばかりではない。一般の大人として注意したが困っている例があって、やはり市民にも努力義務を課したのだという、ベースになっている所は全部が警察ではないですよね。
知事  知事部局というより行政だけの話ではない。
記者  本当にこんなに困っているのですというデータを示してください。示す責務があると思います。
知事  それは、お伝えしましょう。 *4
記者  現下の状況、反対論もかなり強まっていることもありますが、成立した場合は、条例案どおり施行日は7月1日から施行するという考えに変わりはないですか?
知事  変わりはないです。議会で成立した上ですが。
記者  日弁連とか反対なさっている方は、もっと時間をかけて議論をすべきという意見もあって、そういった中には、仮に成立しても施行日を遅らせるとか、そういったことも想定の範囲内と思うのですが、現時点ではそういった考えはないということか?
知事  私の方からそういう提案をするつもりはございません。
記者  運用の中でだんだん妥当な線に固めていくというお話しですが、補導という行為が目に見えないのです。件数やどういう内容で補導したということを検証する手段というのはどうにかならないのでしょうか。
知事  段々固まっていくというのは、一般論で言ったことです。条例が出来れば、今後は補導件数はきっちり記録が残っていくと思います。というのは、補導すれば警察署長に引き継がなければならないという業務があります。そうすれば、全部書類として作成されると思います。
記者  それを公表して検証する場を作る必要がある。
知事  細部はわからないが、基本的に秘密事項ではない。固有名詞を出したりすれば別の話になるが、何件あったというのは当然出てくるでしょう。
記者  条例案の概要が出されたのが去年の11月だったと思うのですが、その間4か月というのは十分な期間だったという認識か?
知事  担当部局としては相当な議論をしたと思いますが、そこからの判断は、人によって違うと思いますから、何とも言えませんね。
記者  全国に先駆けて制定するという意味は、説明いただいている理由では説得力がないように思うが、なぜ奈良県で初めてなのか?
知事  なぜ奈良県で最初にやったらいけないのですか。おそらく必要性はどこの県でも感じていると思うのですが。最初というのは、ほとんど意識していません。意識が無いというのは、そんなことにポイントを置いて考えていません。今、聞かれて、そんな質問もあるのかなと思うのですけれども。
記者  どういう根拠があって制定を目指すのか?
知事  少年が不良行為に入りかねないような状態や補導とは無関係ですが、少年の犯罪は大きなウエイトを占めています。そういう状況から、対応して前に進まなければいけないというのは必要です。
記者  条例案策定にあたって、少年の意見はどれぐらい求めたのか?
知事  それはわかりません。聞いていません。
記者  条例を作るきっかけとかは、どなたが提案したのか?
知事  それはわかりません。いつか忘れたが、こういう条例を検討したいという報告を受け、ご苦労なことを一生懸命やっていただけるのだなと思って、検討しなさいと指示しました。本部長ではなかったと思います。
記者  警察の中でも、なぜこんな条例が出されたのかという疑問の声が起こっています。それでお聞きしたのです。
知事  秋頃に聞いて、それでは検討しなさいと言ったことがあります。それ以上のいきさつは特に聞いていません。
記者  意見ですが、質問して答えていただいたのですが、「わからない」とか「条文に書かれています」というのは、質問する方は当然条文を読んで、さらに疑問があって聞いているので、これでは議論が深まらないと思います。議会では、きっちりと答えていただきたい。
記者  先日の本会議で、大方の県民の意見に合うのではないかと答弁されて、今日この場でも、我々が県民を代表しているとは思わないが、弁護士会等も軒並み反対意見が強まっています。大方の意見に沿うのではないかという根拠づけは何を念頭に置いておられるのかというのが伺えないが、その点についてはどのようにお考えか?
知事  親だけでなくいろんな人が、子どもの行動を、これはどうかなと思う状況によく遭遇していると思う。私自身でも、子どもが路地でタバコを吸っているのを一人の時に見たら、何か言う勇気があるかどうか分かりません、その時になってみないと。
 だから、そういうことにみんなで声かけをして、子どもたちが悪い方向に走らず、いい方向に育っていくように努力するということは県民共通の希望だと思うのです。いろんなご意見があって懸念も示されているのですが、それはそれとして、当然十分その趣旨を理解して条例を作り、執行にあたらないといけない。しかし、こういうものを作れば当然警察だけでなく、いろんなところが連携して行うことではあるのですが、このままではいけないという雰囲気・ムードが出来るだけでも変わると思う。私はそういうような判断で、大方の県民の意志として、支持していただけるのではないかと思う。
記者  先ほど7月1日の施行日について触れたが、仮に24日の最終日に可決されたらとして、それから3か月余りあるが、例えば、成立した後に改めて広範な議論をするような場を設けてみるような考えはあるか?
知事  条例が決まると、我々は施行しなければなりませんから、施行日の話ではないですね。当然これが出来上がったら、施行までに「こういう条例です」ということを徹底します。
 条例の中にもいろんな関係機関の協力や県民の理解(という項目)が入っていますので、幅広くPRしないといけない。
記者  他県で、成立した後にいろんな反対意見等を踏まえ、一旦施行を凍結したというような例がありましたが、そのような余地はありますか?
知事  そういうことはむしろ異例じゃないですか、本来は。それは提案した立場でありながら提案しないというのと同じで、議会で決めていただいたことに改めて、ということを今、予定しているとか想定にあるということはありません。ただ、あらゆる手段で説明に努めないといけない。

 
不良行為の定義の運用について具体的に質問すると、答えられず「その論議はわかりません。答える能力はありません!」「本部長に聞いてくれ!」などと知事は開き直ってますが、条例提出者が条例運用についてわからない、説明できないだなんて、ナンセンスではありませんか? 
ま、「本部長に聞いてくれ!」という暴言は知事の本音だとは思いますけれど。条例をとりまとめた人は政府オスミツキの天下り県警本部長様なわけで、結局、知事様は中央政府のご意向に逆らえないような人ということなのでしょう。
知事がそういう態度をとればとるほど、柿本善也知事はなにか弱みを握られているから県警本部長のいいなりになっているのでは?  県庁食料費不正流用事件や奈良県警察本部を舞台にした奈良佐川急便事件の秘密処理でお互いのキンタマを握り合うモチツモタレツの関係になってしまっているのでは?という疑惑が奈良県民の心の中でますます膨らんでいかざるを得ないでしょう。
 

参考情報
中和広域消防組合職員不正採用事件徹底捜査を求める要望書(2005年7月)
http://nara.jcp-giin.net/www/policy/index.shtml

 
現場の補導員が従来の制度でどれくらい困っているのか具体的なデータを出してくれと質問しても答えず、「統計があるかどうか知らん!」などと開き直ってしまう知事が提出した条例は、やっぱり凍結すべきではないでしょうか。
かつて東京都で育成条例改悪案が策定されていた時、慎重派からデータを出してくれという議論が出たときに提案側がなにも答えられず、強引に議論を打ち切って条例を通してしまったということがありました。同じことが奈良でも再現された、ということでしょうか。
肝心な論点について情報をシャットアウトし、本質的な問題について議論することを奈良県は避けてきた。判断は情報に依存する。ゆえに情報源の不正は判断の不正を導く。
「現場からの要請」という存在しない虚構のデータによって虚構の世論がつくられ、虚構の世論によってできた虚構の条例がつくる「子どもの安全」という神話は子どもたちになにをもたらすのか、と、みなさんには問題提起しておきます。
 
そもそも論を言うと、教室や家に居場所が無いから子どもたちは外に行くわけで、そういう阻害された子どもの状況とものをちゃんと考えて条例作れよ、阻害の原因を拡大しながら阻害されているコドモをさらに追い詰めてどうするよ、という話。子どもたちの居場所をつくるのが先であって、とにかく戻って来い、戻ってこないなら補導するというのは問題の先送りであって解決ではない。
 
私事ですが、先日、某所でトイレで用を足していたら、バケツとモップを持った清掃のオバチャンがドカドカと入ってきて「掃除するからどいて」と言ってモップで私のお尻をツツクんです。掃除の必要はわかるけど、途中で尿を止めるわけにはいかないので「終わるまでちょっと待って」と言ったのですが、「ジャマジャマ!」と言ってお尻をつつき続けるんですよ、清掃のオバちゃんが。お尻をつつかれるたびに、尿がへんな方向に飛びそうになるので焦って「あーっ!あーっ!」と叫んでしまったわけですが、ありゃ絶対楽しんでるな、清掃のおばちゃん。出すもの出してからじゃないと帰れません!(笑)
で、何が言いたいのかというと、補導員が「こんなところに居ないで出て行け! 帰れ!」と一方的に言って補導しても、子どもたちは自分という存在を出す居場所がなければ困るということ。
 
それから、もうひとつそもそも論を書くと、子どもは教育によって人格がつくられるものであって、犯罪の取締や、監視や逸脱の禁止で子どもの人格が育つわけではないということ。ダメダメばかり言っている減点法による管理のもとでは、自分を殺し、なにもできない指示待ち人間ばかり育成される。そんな育成は「健全」な育成なんかじゃない。学校行け! 家に帰れ! エロマンガを見るな! ルールを守れ!だけ言ってりゃいいのかというと、まったくそうではないし、そんなことやっても意味が無い。
たとえば「エロマンガを見るな! 山本直樹の『学校』は不健全だから読んじゃダメ!」などと注意して「どうして?」と子どもに聞かれたとき、条例が想定しているように「それがルールだからだ!とにかくルールを守れ!」と言ったときに子どもは何を学ぶかというと、「ルールを逸脱しても見つからないようにすりゃいい、うまくヤった奴が勝ち」ということを学ぶようになるわけです。つまり、逸脱行動が以前よりも増える可能性がある。取締りと教育とは違う。
というか、オトナたちは子どもの前では善人面してるけど、たくさんのオトナがルール破ってるでしょ。ルールをやぶってもうまくやったものか勝ちという現実を子どもたちは見ている。社会の二面性を知っている子どもたちにしてみれば、「とにかくルールを守れ」「ルールだからヤメロ!」という言葉は白々しく見えるだけでしょう。
そういう現場の議論がまったく不在のまま、中央から天下った県警本部長の出世に貢献するためなのかどうかわかりませんが、なにがなんだかわからないままできちゃったのが、奈良県少年補導条例というくだらないルールではないでしょうか。
養育の自由や言論の自由など、親権や人権を過剰に制限する可能性という問題はもちろん大問題ですが、それ以前の基本的な議論すらまともにやっておらず、認識の共有もなされていないあたりが、どうにもお粗末すぎます、奈良県少年補導条例は。できちゃった条例を無くすのはなかなか難しいとは思いますので、施行で凍結すべきでしょう。



以下、奈良県警の条例策定関連情報。
不良行為の定義(ボールド部分)に注目。
 

奈良県警
http://www.police.pref.nara.jp/
仮称「奈良県少年補導条例(案)」要綱案
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/051222.pdf

仮称「奈良県少年補導条例(案)」要綱案
第1 総則
1 目的
不良行為少年の補導に関し、県民の責務を明らかにするとともに、警察職員及び少
年補導員の活動に関して必要な事項を定め、もって少年の非行の防止と保護を通じて
少年の健全な育成を図ることを条例の目的とする。
2 定義
(1) 「少年」とは、20歳に満たない者をいう。
(2) 「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務がある者及び少年を現に監
護する者をいう。
(3) 「警察職員」とは、警察官及び少年警察補導員をいう。
(4) 「不良行為」とは、次に掲げる少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある行
為(刑罰法令に触れるものを除く。)をいう。
アすべての年令の少年に共通の行為
・喫煙し、又は喫煙する目的でたばこ若しくは喫煙具を所持する行為
酒類を飲用し、又は飲用に供する目的で酒類を所持する行為
・競輪の勝者投票券(車券)を購入し、又は譲り受ける行為
・売春をし、又はその相手方となる行為
・正当な理由がなく、保護者に無断で生活の本拠を離れ、帰宅しない行為
・保護者その他の同居の親族の金品を無断で持ち出す行為
暴力団員、暴走族その他少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある者と
交際する行為
・有害薬物等を濫用し、又は濫用する目的で有害薬物等を所持する行為
・放置すれば暴行、脅迫、器物損壊その他の刑罰法令に触れる暴力的な行為に
発展するおそれのある粗暴な言動をする行為
・正当な理由がなく、刃物、木刀、鉄棒その他人の身体に危害を及ぼすおそれ
のある危険物品を所在する行為
・正当な理由がなく、他人に対し、金品の交付、貸与等を要求する行為
・みだりに異性の身体に触れ、又は異性につきまとい、その他他人に性的な不
安を生じさせる行為
・暴走行為をあおる行為
イ18歳以下の少年の行為
・スポーツ振興投票券(totoチケット)を購入し、又は譲り受ける行為
ウ18歳未満の少年の行為
・自ら進んで児童買春の相手方となり、その他少年の健全な育成に障害を及ぼ
すおそれのある性交又は性交類似行為をする行為
・正当な理由がなく、法律又は条例の規定により18歳に満たない者を立ち入
らせることが制限されている施設に立ち入る行為(例:風俗営業の営業所、有
害興行係る興行場など)
・法律又は条例の規定により18歳に満たない者を客とすることが制限されて
いる営業において、当該制限に違反することとなるような形態で客となる行為
(例:デリバリーヘルスなど)
・自ら進んで、法律又は条例の規定により18歳に満たない者を従事させるこ
とが制限されている業務に従事する行為(例:テレホンクラブの利用カードを
販売する業務など)
・正当な理由がなく、有害図書類及び有害がん具刃物類を所持する行為
・インターネット異性紹介事業(出会い系サイト)を利用する行為
・自ら進んで、インターネットを利用して、「有害サイト」を閲覧等する行為
・他人を中傷するような情報を、インターネットを利用して他人が閲覧するこ
とができる状態に置き、又は電子メールを利用して他人に送信する行為
・正当な理由がなく、深夜(午後11時から翌日の午前4時までの間をいう。
)に徘徊する行為
はいかい
・正当な理由がなく、保護者に無断で外泊する行為
・正当な理由がなく、学校を休み、又は早退若しくは遅刻をする行為
・自ら進んで入れ墨を受ける行為

(5) 「不良行為少年」とは、不良行為を行う少年をいう。
3 保護者の責務
保護者は、その監護に係る少年が不良行為を行わないよう適切な指導及び監督を行
う。
4 県民の責務
県民は、不良行為少年を発見したときは、当該少年にその行為を止めさせるため必
要な注意、助言又は指導を行うとともに、必要に応じ、保護者、学校関係者、警察職
員その他少年の保護に関する職務を行う者に通報するよう努める。
5 適用上の注意
(1) 条例の適用に当たっては、県民の自由と権利を不当に制限しないよう留意する。
(2) 条例の規定による警察職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解して
はならない。
第2 警察職員による不良行為少年の補導
1 警察職員による補導
警察職員は、不良行為少年の補導を行うに当たっては、常に少年の健全な育成を期
することを念頭に置き、また、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があっ
たときは、これを提示する。
2 注意、助言、指導等
(1) 警察職員は、不良行為少年を発見したときは、当該少年に対し不良行為を行わな
いよう注意を行うとともに、その後の非行を防止するため必要な助言又は指導を行
う。
(2) 警察職員は、(1)の措置をとるため必要な限度において、不良行為少年と認める
者の年令を確認し、不良行為少年であることが判明したときは、本人及び保護者の
氏名及び住所など必要な事項を質問することができる。
(3) 警察職員は、その場での助言又は指導などが当該少年に対して不利であるときな
どは、付近の警察施設に同行することを求めることができる。
3 少年の所持する物件の一時保管等
警察職員は、少年が酒類、たばこ若しくは喫煙具、有害薬物等若しくは危険物品な
どを所持している場合には、当該少年に対し、当該物件の提出を求め、保護者等に引
き渡すまでの間、これを一時的に保管し、又は当該物件を自ら廃棄することを促すこ
とができる。保管した物件については、速やかに保護者等に返還する手続をとる。
4 不良行為少年の一時保護
警察職員は、家出、無断外泊、深夜はいかいを行っている不良行為少年(18歳未
満の者に限る。)を発見した場合において、そのまま放置すれば少年の健全な育成に
重大な障害を生じるおそれがあると認めるときは、保護者等に引き渡すまでの間、警
察施設において一時的に保護することができる。(最長12時間)
5 保護者等への連絡
(1) 警察職員は、不良行為少年を補導したときは、当該少年の保護者にその旨を連絡
する。
(2) 警察職員は、補導した不良行為少年が学校に在籍する者である場合において、少
年の非行を防止するため学校における教育上の措置が必要であると認めるときは、
当該学校関係者にその旨を連絡するほか、特に必要であると認めるときは、雇用主
その他の当該少年の関係者にその旨を連絡する。
6 非行少年等を発見した場合の措置
警察職員は、不良行為少年を補導した場合において、当該少年が非行少年や要保護
児童であることが判明したときは、少年法児童福祉法などに定めるところにより必
要な措置を講ずる。
第3 少年補導員
1 委嘱
警察署長は、
(1) 人格及び行動について、社会的信望を有すること。
(2) 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。
(3) 生活が安定していること。
(4) 健康で活動力を有すること。
の要件を満たしている者のうちから、少年補導員を委嘱することができる。
2 任期
少年補導員の任期は、2年とする。(再委嘱可)
3 活動内容
(1) 少年補導員の活動は、
ア街頭その他の場所における、不良行為少年に対する声かけ活動
イ被害少年に対する援助活動
ウ少年相談活動
エ有害環境浄化活動
オ非行及び被害防止に関する啓発活動
などとする。
(2) 少年補導員は、不良行為少年を発見した場合において、警察職員による補導を
必要とすると認めたときは、速やかに警察職員に当該事案を引き継ぐ。
(3) 少年補導員は、その活動に当たって、関係機関・団体等と緊密な連携を図る。
4 活動区域
少年補導員の活動区域は、委嘱に係る警察署の区域内の地域とする。
守秘義務
少年補導員又は少年補導員であった者は、正当な理由なく、その職務に関して知り
得た他人の秘密を漏らしてはならない。
6 身分証明書
警察署長は、少年補導員を委嘱したときは、身分証明書を交付し、少年補導員は、
その活動を行うに当たっては、身分証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、
これを提示する。
7 講習等
警察署長は、少年補導員を委嘱した場合など、少年補導員の知識、技能及び資質の
向上を図るため講習を実施する。
8 解嘱
警察署長は、少年補導員が、
(1) 委嘱の要件を欠く
(2) 職務上の義務に違反、又はその職務を怠る
(3) 少年補導員たるにふさわしくない非行がある
などの場合においては、これを解嘱することができる。
9 身分
少年補導員は、名誉職とする。
10 少年補導員協会等
少年補導員は、警察署ごとに、少年補導員協会を組織するほか、その連合体として
奈良県少年補導員協会連合会を組織し、活動計画の策定や少年補導員相互の連絡及び
調整などを行う。
第4 雑則
1 保護者等の措置
保護者等が第2−5の連絡を受けた場合において講ずる、再発防止等の措置につい
て定める。
2 保護者に対する支援
警察本部長及び警察署長は、不良行為少年の保護者からの申出があった場合におい
て相当と認めるときは、
(1) 当該保護者に対し、当該少年に係る適切な監護上の措置に関する指導又は
助言その他の必要な支援
(2) 当該少年に対し、非行の防止に関する助言又は指導、カウンセリングその
他の継続的な補導
を実施する。
3 立入り
警察職員が、不良行為少年の補導を行うため必要があると認めるときや、少年補導
員が、あらかじめ警察署長の承認を受けたときは、
(1) 興行を行う場所
(2) 図書類を販売し、又は貸し付ける場所
(3) がん具刃物類を販売する場所
(4) 物品を買い取り、又は金銭を貸し付ける場所
(5) 客に遊技又は遊興をさせる場所
(6) 飲食店、喫茶店コンビニエンスストア、スーパーマーケットその他小売
営業の場所
(7) 電車、汽車、乗合自動車その他公衆が利用することのできる乗物及び駅
に立ち入ることができる。
4 関係機関との連携等
警察本部長及び警察署長は、少年非行の防止及び保護に関する施策について学校、
市町村その他関係機関等と緊密な連携を図ることとするとともに、不良行為少年の補
導等に関し必要があると認めるときは、関係機関等に必要な協力を要請することがで
きる。
公安委員会規則への委任
条例の施行に関し必要な事項は、公安委員会規則で定める。
第5 罰則
守秘義務に違反した少年補導員等や、警察職員による立ち入り妨害した者に対する
罰則を定める。

奈良県少年補導に関する条例(案)経緯
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/060220.htm

奈良県少年補導に関する条例(案)をとりまとめました。
奈良県警察では、喫煙や飲酒などの「非行の入り口」となる不良行為を行う少年に対する補導活動の根拠と手続を明確化して、県民の皆様方のご理解とご協力の下で、補導活動の活性化を図ることが、少年の健全な育成に資すると判断し、昨年11月14日から12月16日までの約1か月間、
仮称「奈良県少年補導条例」(案)の概要(別添1)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-1.pdf
(PDFファイル)
をお示ししてご意見を募りました。
 また、昨年12月22日には、
   いただいたご意見の概要及びそれに対する奈良県警察の考え方
とともに、
仮称「奈良県少年補導条例」(案)の要綱案(別添2)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-2.pdf
(PDFファイル)
を公表し、要綱案に対するご意見を承ってきたところです。
 そして、県民の皆様からいただいた貴重なご意見をご参考にさせていただくなど検討を行った結果、
奈良県少年補導に関する条例」(案)の要綱案(別添3)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-3.pdf
(PDFファイル)
としてとりまとめましたので、お知らせいたします。
 なお、要綱案との主な変更点は、
○  怠学に係る不良行為については、「義務教育諸学校」に限定し、いわゆる不登校の生徒一般が補導の対象となるものではないとの趣旨を明確にするため、
「正当な理由がなく、義務教育諸学校を欠席し、又は早退し、若しくは遅刻して、徘徊をし、又は生活の本拠を離れて遊技若しくは遊興をする行為」
と規定
○  少年が所持していた有害物件の警察における一時保管の規定については、少年の任意の提出に基づいて行われる手続であることを明確に規定
○  家出などを行った不良行為少年の一時保護については、少年の同意の下で(少年が低年齢の場合には、少年の同意又は保護者の依頼の下で)進められる手続であることを明確に規定
○  少年補導員の委嘱者を警察本部長とするとともに、少年補導員に関する日常的な業務を警察署長に行わせるため、警察本部長の権限を警察署長に委任することができる旨を規定
することとしたことなどです。
 また、これまでにいただいたご意見に対する県警察の考え方は、次のとおりです。
パブリックコメントを実施した際の提出意見及びそれに対する県警察の考え方(平成17年12月22日に公表済み)(別添4)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-4.pdf
(PDFファイル)
○条例(案)要綱案公表後における提出意見及びそれに対する県警察の考え方(平成17年12月22日に公表済み)(別添5)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-5.pdf
(PDFファイル)

仮称「奈良県少年補導条例」(案)の概要(別添1)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-1.pdf
仮称「奈良県少年補導条例」(案)の要綱案(別添2)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-2.pdf
奈良県少年補導に関する条例」(案)の要綱案(別添3)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-3.pdf
パブリックコメントを実施した際の提出意見及びそれに対する県警察の考え方(平成17年12月22日に公表済み)(別添4)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-4.pdf
○条例(案)要綱案公表後における提出意見及びそれに対する県警察の考え方(平成17年12月22日に公表済み)(別添5)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/pdf/060220-5.pdf
公共工事発注見通し・随意契約の公表
http://www.police.pref.nara.jp/kaikei/kaikei-main/kaikei-main050412.htm
奈良県警本部の発注する特定調達契約に該当しない随意契約の公表
http://www.police.pref.nara.jp/kaikei/kouhyou2.htm
平成17年度 第1 回公表分 (平成17年6月13日締結分)
http://www.police.pref.nara.jp/kaikei/kaikeipdf/zuii05-1.pdf
仮称「奈良県少年補導条例」(案)作成に関する
パブリックコメント(ご意見募集)結果について
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/kekka051222.htm

仮称「奈良県少年補導条例」(案)に関し、平成17年11月14日から平成17年12月16日までの間、パブリックコメント(意見の募集)を実施しましたところ、皆様から貴重なご意見をいただきありがとうございました。
 皆様からいただいたご意見の概要及びそれに対する奈良県警察の考え方とともに、皆様からのご意見を参考にして、現時点で取りまとめた同条例(案)要綱案をお示しいたします。
1 ご意見の提出状況
(1) 意見提出者数  13名 1団体
(2) 意見提出方法内訳
ア 郵便    5名
ファクシミリ   3名 1団体
ウ 電子メール  2名
エ 持参  3名
(3) 意見提出者の住所
奈良県  10名 1団体
奈良県以外   3名
 
2 主な意見と推進本部の考え方
※同様のご意見については集約の上掲載しております。

全般
ご意見の概要
少年の非行防止及び立ち直り支援は、条例(案)が想定するような警察中心の政策ではなく、非行防止対策としての国際標準である教育・福祉的政策の一層の強化及び民間社会資源の尊重・支援によって実現されるべきである。
奈良県警察の考え方
少年の非行防止及び立ち直り支援を警察中心の政策として実施していこうとするものではありません。
これらについては、警察のみならず、学校その他関係機関等と緊密な連携を図っていくことが重要であると認識しています。
 本条例においても、その旨を明記することとしています。
ご意見の概要
司法統計によると、奈良家庭裁判所管内における少年一般保護事件の年間新受理件数は微減傾向である。
それにもかかわらず、全国に先駆け条例を必要とする立法事実は存在するのか。
奈良県警察の考え方
平成15年12月、政府の「青少年健全育成推進本部」の策定した「青少年育成大綱」において、「補導活動の権限や手続きなどについて、条例を含め法的明確化を図る」とされたところであり、県の少年の実情や少年の非行防止に対する県民の意識に応じて、奈良県にふさわしい条例の整備を検討することは、県として当然の取組みであると考えています。
 本県の少年非行の情勢をみると、平成16年中に検挙した犯罪少年は1,217人で、平成15年(1,498人)に比べて281人(23.1%)減少しました。
しかし、強盗などの凶悪犯は30人で、平成15年に比べ12人(66.6%)増加したほか、街頭犯罪総検挙者584人のうち、少年が372人と63.7%を占めています。
 また、平成16年中は、延べ17,389人の不良行為少年を補導していますが、なかでも、深夜はいかいと喫煙による補導人員は延べ16,800人と全体の96.6%を占めています。
 こうした状況から本県の少年非行はいまだなお深刻な状況にあると考えており、間断なく少年非行対策を推進していくことが重要であると考えています。
 また、本年8月30日から9月5日までの間、警察本部運転免許センター、五條警察署、中吉野警察署の窓口において、運転免許更新者及び運転免許試験合格者に対して「警察活動等に関する県民の意識調査」を行いましたが、「少年の健全育成のための施策」については、
 ・ 保護者のしつけの厳格化
 ・ 警察とボランティアが連携した少年補
  導活動の強化
を求める声が、それぞれ全体の約25%を占めるといった高い数値を示していることからも、県民の皆様のご意見を反映し、本県にふさわしい条例にしていくことが重要であると考えています。
ご意見の概要
条例制定権の対象範囲でないのではないか。
奈良県警察の考え方
憲法第94条において、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定されており、奈良県の条例で奈良県警察の具体的な活動の根拠を定めることは何ら問題がないと考えています。
ご意見の概要
「警察権の発動が許される場合であっても、障害を除くための手段は障害を除くために必要な最小限度に止まることを要する」とする警察比例の原則に反するのではないか。
奈良県警察の考え方
喫煙や飲酒などの不良行為は「非行の入り口」となるような行為ですから、警察職員がこうした不良行為少年を発見した場合に適切な助言や指導等を行っていくことは、警察の当然の責務であり、何ら問題があるものとは考えていません。
ご意見の概要
社会全体が法を守らない、軽くみる、見逃すことの放置が今の犯罪の増加につながっている。法に触れる行為を不良行為などと今頃条例程度で検討しているようでは話にならない。
奈良県警察の考え方
不良行為とは、刑罰法令に触れる行為ではないが、少年の健全育成に障害を及ぼす行為です。
 警察としては、本条例の制定により県民の皆様のご理解とご協力の下で不良行為少年に対する補導を強化し、少年の規範意識の醸成を図っていくこととします。
ご意見の概要
補導の実施範囲、時間の拡大と、遠慮なく通報、即補導できる体制の構築をお願いしたい。
奈良県警察の考え方
あらゆる警察活動を通じて少年の非行防止と健全育成に努めていきます。
 本条例では、県民の責務として、不良行為少年を発見した場合の注意や必要に応じ警察等への通報を規定していくこととしており、県民の皆様のご理解とご協力の下、少年の健全育成に努めていきます。
ご意見の概要
条例制定は必要であるが、運用を誤ると危険である。補導が目的であり、不良行為少年の摘発が目的でないことを明記することが重要である。
奈良県警察の考え方
本条例の目的が、少年の健全育成を図ることにあることを明確にするとともに、適用上の注意として、県民の自由と権利を不当に制限しないよう留意すべきことや、警察職員の補導措置は犯罪捜査目的ではないことを明記することとします。
ご意見の概要
本条例は、他の県条例等と補完し合うことが必要であり、実効性のあるものにしていただきたい。
奈良県警察の考え方
本条例は、他の県条例等と相互に補完し合い、少年の健全育成を図るものとなるような仕組みとします。
県民等の責務について
ご意見の概要
県民の責務を法定することには反対である。
地域住民を含む県民は、それぞれの信頼関係、人間関係を背景に子どもと向き合いそれぞれのやり方で子どもを支援すべきであって、そのような支援は責務として法定されることとは相容れない。
奈良県警察の考え方
児童福祉法奈良県青少年の健全育成に関する条例においても、それぞれ法令の目的達成のために必要な国民や県民の責務を規定しているところです。
 本条例においても、条例の目的達成のための必要事項を県民等の責務として規定することは必要であると考えています。
ご意見の概要
少年補導員の委嘱については良いことだと思うが、非行化防止には追いつかないし、根本原因は解決しない。県民の意識を高めること、大人がやさしい目で少年を見守り、あたたかく健全育成していく条例にして欲しい。
凶悪な事件が次々と発生する中で、個々の認識不足を思い知らされる。県民一人一人が「今出来るときに出来る限りのこと」をしっかり心にもつことが大切である。
奈良県警察の考え方
県民の責務として、不良行為少年を発見した場合の注意や必要に応じ警察等への通報を規定していくこととしており、県民の皆様のご理解とご協力の下、少年の健全育成に努めていきます。
警察職員の補導措置について
ご意見の概要
警察職員による不良行為少年の補導について、警察職員に対し不良行為少年を発見した場合の注意や助言、有害物件を所持していた場合の措置等のこのような権限を付与することに反対する。
奈良県警察の考え方
警察は、学校その他関係機関等と緊密な連携を図り、少年の非行防止と保護を通じて、その健全育成に努めていかねばならないものと考えています。
 喫煙や飲酒などの不良行為は「非行の入り口」となるような行為ですから、警察職員がこうした不良行為少年を発見した場合に適切な助言や指導等を行っていくことは、警察の当然の責務であると考えています。
 本条例は、こうした助言や指導、また有害物件を所持していた場合の具体的措置の手続きを明確化するものであり、県民の皆様のご理解とご協力の下で、補導活動を推進する上で、必要なことであると考えます。
ご意見の概要
非犯罪行為を規制の対象とすれば結果として広範かつ抽象的な規定になるおそれがあり、現場の警察職員に拡大解釈される可能性がある。そうなれば少年の行う行為の多くが、それ自体が必ずしも直ちに非行に結びつくことは限らないものであるにも拘わらず、警察職員による監視、注意の対象にさえなりうることが危惧される。このような締め付けをしたところで、少年の非行防止にとっては全く得策とはいえない。
奈良県警察の考え方
本条例において、「不良行為」とは、少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある行為(刑罰法令に触れるものを除く。)をいい、少年の年齢区分に応じて出来るだけ具体的に規定していくこととしており、広範かつ抽象的な規定とするものではありません。
 喫煙や飲酒などの不良行為は「非行の入り口」となるような行為ですから、警察職員がこうした不良行為少年を発見した場合に適切な助言や指導等を行っていくことは、警察の当然の責務であり、このことは、少年を警察の監視下において締めつけようとするものではありません。
 なお、こうした活動が、少年の自由や権利を不当に制限するものでないことや、条例の規定による警察職員の権限が犯罪捜査のために行うものでないことも、条例において明記し、適正な運用を図ることとしています。
不良行為
ご意見の概要
20歳未満の者と20歳以上の者が混在して同時に不良行為を行った場合、少年のみならず、少年に該当しない者であっても補導できるよう規定すればより実効があがると考える。
奈良県警察の考え方
本条例は、「少年」の健全育成を図ることを目的とするものであり、不良行為少年に対する補導も、このために行われるものです。
 ですから、少年ではない20歳以上の成人を補導の対象とすることは適切ではないと考えます。
 しかし、成人が法令の規定により少年に行わせてはならないような行為をさせる等していた場合には、当然当該法令に基づき厳正に対処していきます。
ご意見の概要
不良行為として飲酒・喫煙とあるが、未成年者飲酒・喫煙禁止法に抵触しており、れっきとした犯罪として対処していただきたい。
奈良県警察の考え方
未成年者の飲酒や喫煙については法令により禁止された行為ではありますが、未成年者がこれに違反しても刑罰を科すものではありません。(国の法律で定めています。)
 しかし、飲酒や喫煙などの不良行為は、「非行の入り口」となるような行為ですから、今後とも適切に補導を行って少年が非行への道を歩まないようしていくこととします。
ご意見の概要
不良行為少年の補導の実態(時間・場所・件数・態様)についてネット上等で公表しそれぞれの活動諸団体とのデーター共有できるようしてはどうか。
奈良県警察の考え方
県警察ホームページにおいて、不良行為少年の総数等について公表しています。
 条例においても、関係機関等との緊密な連携を図ることを規定することとしていますが、今後とも、緊密な情報交換等に努め、少年の健全育成を図ることとします。
少年補導員について
ご意見の概要
少年補導員の地位と権限を公務員と同様の権限を与え、適切に職務が遂行されるよう希望する。
奈良県警察の考え方
少年補導員については、条例により委嘱の根拠と要件、活動内容を明確にすることとしています。
 また、活動上において知ることとなった他人の秘密について守秘義務を課すこととします。
 これらの規定の整備により、少年補導員としての活動が県民の皆様のご理解とご協力の下に、適切に遂行できるものになると考えます。
ご意見の概要
少年補導員の活動内容等の法定等について反対である。
 ボランティアである少年補導員を警察協力の組織として位置づけ、警察の志向する少年非行防止施策をこれらを巻き込んで強化することに繋がりかねない。
奈良県警察の考え方
現在、少年補導員は、警察署長から委嘱を受け、
 ・ 警察職員との合同街頭補導活動
 ・ いわゆるピンクビラをはがす等の有
  害環境浄化活動
 ・ 通学路等における見守り活動等の被
  害防止に係る啓発活動
等を行っています。
 本条例は、こうした少年補導員の委嘱の根拠と要件、活動内容等を明確にするとともに、少年補導員に守秘義務を課すものです。
 条例で規定することにより、少年補導員が、県民の皆様のご理解とご協力の下で、その活動をより活性化することができるものと考えています。
ご意見の概要
 不良行為少年に対する補導権限付与そのものが問題であると考え、少年補導員に付与することも認めるべきでないと考える。
奈良県警察の考え方
少年補導員が、不良行為を行っていると認められる少年に対して声かけ活動を行い、その結果、当該少年が不良行為少年であった場合に必要な助言や指導を行うなどの活動は、ボランティアとして、通常期待される行為であり、問題はないと考えています。
 なお、警察職員が行う措置を必要とする場合は、速やかに警察職員に引き継ぐものとします。
ご意見の概要
少年補導員の委嘱については、地位や名誉にこだわらない真に少年の健全育成に熱意のある人に委嘱し、任期については十分実効のあがるまでとしたらよいのではないか。 また、警察・行政・地域が一体となって活動できるような拠点づくりが必要ではないか。
奈良県警察の考え方
少年補導員の任期については、2年(再委嘱可)と考えています。
 熱意と実行力等を兼ね備えられた方を委嘱することとし、常に、少年補導員としての知識や技能等の向上を図っていただくものとします。
 また、少年補導員は、警察署ごとに少年補導員協会を組織することとし、関係機関等と緊密な連携を図り、その実効性が図られるよう努めていきます。
ご意見の概要
少年補導員の委嘱と同時に協議会を立ち上げ、地区別や県下全域の連絡会を構築すれば良いのではないか。
奈良県警察の考え方
少年補導員は、警察署ごとに少年補導員協会を、またその連合体として奈良県少年補導員協会連合会を組織し、関係機関等と緊密な連携を図っていく旨を規定することとします。
その他
ご意見の概要
「保護者等関係者への連絡」を条例化すべきでない。
 保護者に対して連絡するについては、地域住民による見守りの観点から、または児童相談所による児童保護の観点から具体的必要に応じてなされるのが適当である。
 また、学校等への連絡は少年のプライヴァシーの侵害であり少年に対する不利益な取扱い(停学、退学等)のおそれもある。
奈良県警察の考え方
子どもに対しては、その保護者に第一次的監督責任があるものと考えており、当該少年が不良行為少年であった場合に、保護者にその旨を連絡することは当然のことと考えます。
 また、学校関係者は、在籍者が不良行為少年であった場合に必要な教育上の措置をとることは当然のことであり、学校への連絡も必要であると考えています。
ご意見の概要
継続補導について反対である。
 未だ非行に至っていない少年を日常的監視のもとに置くということであり、本来法が予定する少年保護手続きに乗せないまま警察が抱え込んでしまうということになりかねない。
奈良県警察の考え方
継続補導については、保護者からの申出に限り行うものとしており、実施に当たっても、学校その他関係機関等と緊密な連携の下で行うこととしています。
 なお、不良行為少年を補導した場合において、当該少年が非行少年や要保護児童であった場合には、少年法児童福祉法の措置をとるべきことを明記することとしています。
ご意見の概要
少年を取り巻く環境の整備をより実効あるものとするため、酒類やたばこの自動販売機設置者(管理者)を対象とした適正販売・管理に関する規定を設けてはどうか。
奈良県警察の考え方
本条例は、不良行為少年の補導に関し、県民の責務を明らかにするとともに、警察職員等の補導活動の措置を定め、少年の非行の防止と保護を通じて少年の健全育成を図ることを目的として制定するものです。
 よって、少年をとりまく有害環境等に関する規制等にかかる規定を盛り込むことは適当でないと考えています。
 しかし、不良行為少年の補導に当たっては、関係機関等と警察は連携を図ったり、目的達成のために協力をお願いすることも必要であると考えており、その旨の規定を設けることとします。

4 仮称「奈良県少年補導条例」(案)要綱案
仮称「奈良県少年補導条例」(案)はこちら(PDFファイル)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/051222.pdf
※要綱案についてのご意見を承ります。
ご意見のある方は下記により提出してください。
(ご意見の内容について、個々に回答をしたり、ホームページ等で奈良県警察の考え方を示すことはありませんが、今後の立案に当たっての参考とさせていただきます。)
意見提出書(PDFファイル)
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/ikensho051222.pdf
(1) 郵便で提出の場合
〒630−8578(個別番号につき住所は不要です)
    奈良県警察本部生活安全部少年課内
    奈良県少年補導条例制定準備事務局 宛
(2) ファクシミリの場合(※送信時には上記「事務局名」を明記してください。)
0742−23−1169
(3) 電子メールの場合
メールでのご意見はこちら
https://www.police.pref.nara.jp/mail/mailform(publiccomment3).htm

5 お問い合わせ先
奈良県警察本部生活安全部少年課内
奈良県少年補導条例制定準備事務局
0742-23-0110(内線 3081)



以下、県公安委員会の情報。
 

奈良県公安委員会
http://www.police.pref.nara.jp/kouaniin/
定例公安委員会の開催結果
http://www.police.pref.nara.jp/kouaniin/kaisaikekka1.0512.htm

1 開催月日
  平成17年12月22日
2 主な議事の概要
《略》
仮称「奈良県少年補導条例」(案)作成に関するパブリックコメント手続き実施結果及び同要綱案について
 仮称「奈良県少年補導条例」(案)に関するパブリックコメントを実施した結果、大多数は賛成意見であったこと。また、県警ホームページ等に今回の結果と要綱(案)を公表していることなどについて報告がありました。

 
意見募集で賛成論が多かったと書かれてしまってますねー。でもパブコメ出したのは13名1団体しか無かったわけで…。うーん。
 
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関連ログ
 

奈良県少年補導に関する条例成立(1)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20060330
奈良県少年補導に関する条例成立(2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20060329
奈良県少年補導に関する条例成立(3)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20060328
単純所持禁止・奈良県が初の条例検討(2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050430
単純所持禁止・奈良県が初の条例検討
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050429

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*1:児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html

*2:奈良県少年補導条例は児童保護の観点から見れば、被害が潜在化するおそれがあります。」 http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20060227/1141038273

*3:奈良県知事柿本善也のページ http://www2.mahoroba.ne.jp/~kakimoto/

*4:補導現場で困っているのデータを示してほしいとの要望を伝えると知事は明確に語っていましたが、条例が制定された現段階でも未だにデータはどこからも示されていません。