カトリーナ:カニエ・ウェストの大統領批判に検閲

ハリケーンカトリーナの犠牲者
検閲“されたこと”がニュースになるのではなくて、検閲“されなかったこと”がニュースになるあたりが今のアメリカ合衆国の雰囲気を象徴しているように見えます。
 

Googleニュース検索「カニエ・ウェスト」
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米ラップ歌手、ハリケーン対応めぐり生放送で大統領を批判 2005年09月4日
http://www.reuters.co.jp/newsArticle.jhtml?type=entertainmentNews&storyID=9554040§ion=news

[ワシントン 3日 ロイター] グラミー賞受賞の米人気ラップ歌手カニエ・ウェストさんが、NBCテレビに生出演中、ブッシュ大統領を人種差別主義者だと非難して視聴者を驚かせた。
黒人のウェストさんは、ハリケーンカトリーナ」の被災者救援の募金を呼びかけるチャリティショーで、「ジョージ・ブッシュは、黒人のことなんか気にしていない」と発言。カメラは慌てて他の出演者に画面を切り替えた。 
またウェストさんはこの少し前、ハリケーン被災者への救援が遅いのは故意だと批判。米国は「貧困層や黒人、より貧しい人々を助けるのをできるだけ遅らせるように」仕向けられていると非難した。
また、「救援活動をできるはずの人々が、現在戦争に送られていることは分かっている。代わりに政府は、治安部隊にわれわれを撃つ許可を与えた」とも述べ、メディアに対しても、「黒人家族を映す時は略奪していると報じ、白人の家族を映す時は食料を探していると報じる」と批判した。
NBCテレビは声明で、ウェストさんの発言は台本から逸脱したもので、局の意見を反映したものではないと弁解した。

http://www.barks.jp/news/?id=1000011376&m=hiphop

9月2日夜にNBCにて放映された支援コンサート『A Concert for Hurricane Relief』のステージにてカニエ・ウェストは「ジョージ・ブッシュは黒人に関心を払ってない」と発言し、更に「貧困層や黒人、裕福で無い人々への支援が遅い」と批判した。この様子はNBCやその他のネットワーク、ラジオなどアメリ東海岸全域で放映されたが、発言内容に問題があるとして、3時間後のアメリカ西海岸地域での録画放映ではカニエ・ウェストの発言はカットされた。

天災 米の内面も直撃 ハリケーン被害
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050905/mng_____kakushin000.shtml
NBC KOs Kanye's Bush Bashing
http://news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/eo/20050906/en_tv_eo/17294

 
アメリカのこのテの番組でなされる発言は、通常、「プロンプター」といって、なにを話すべきかを文字として話者の前にあるモニターに映して、歌手なり司会はそのモニターの文字を読みあげるだけにシステムになっています。プロンプターの文字を読み上げるだけですから、なにを話すべきか忘れたり、別なことを話したり、まちがったことを話して時間が長引くなどのトラブルは発生しない、と放送業界や番組を管理したい側の立場の人たちは考えています。
さらに米国の大手ネット局では、5秒ブランクと言って、会場の映像と実際に放送される映像には5秒間の差があって、その5秒間に検閲官がチェックして問題のある音声があると検閲官がカットして放送されないようなシステムになっています。今回のニュースは、検閲官がカットしなかったということで大きなニュースになっている。
 
出演者のコメントは出演者自身の内心の問題で、プロンプターを読み上げるということ自体が不自然だし、「ジョージ・ブッシュは、黒人のことなんか気にしていない」という発言にしても、大統領が示した予算や予算執行を見れば、単なる事実の指摘にすぎない内容なわけで、検閲されるほどの発言なのかとの疑問は当然あるだろうと思われます。
 
そもそも論でいうと、「出演者はプロンプター以外の言葉を話してはならない」という番組出演契約だとか、その契約に違反して問題が起きたら違約金を数千万円とか支払わなければならないという契約が契約書にもりこまれているだとか、5秒ブランクという検閲システムが日常化しているといったことがそもそも問題でしょう。アメリカの人たちにもそうしたシステムに疑問を持っている人は少なくないように私には見えます。
日本は、幸いにして5秒ブランクという検閲システムが日常化しているわけではありませんが、そのかわり独立したアーティストが少なくて、いてもメジャーな番組に出演することは少なく、発言が事務所にがんじがらめに管理されているという別な問題もあり、ある意味、アメリカよりもひどい状態かもしれません。
当の国民には情報が管理されているという自覚に欠けているあたりは、アメリカ人も日本人も同じというところでしょうか。
 
黒人と白人に行政サービスに違いがあるという問題はアメリカの問題で日本の問題では無いと思っている人がいるかもしれませんが、日本にも同様の人種問題があります。
すなわち、在日韓国人・在日外国人への行政サービスの格差の問題です。
彼らには、年金、健康保険、児童養育補助などの行政サービス、雇用など、様々な日常生活で民族差別を受けています。その結果として彼らはの所得は日本国籍を持っている人と乖離し、その乖離がさらに多くの乖離と差別を生むという悪循環を招いているという側面があります。
その問題は、在日外国人には解決できないけれど、日本人には解決できます。ということは、悪循環を悪循環のままにしている責任は日本人にあるということです。
日本はある意味、アメリカよりもひどい国という見方もできます。決して対岸の火事では無い。
 
NBCのハリケーン被害者支援コンサートのページ。
 

A Concert for Hurricane Relief
http://www.nbc.com/nbc/Hurricane_Relief/

 
カニエ・ウェストのCD。
 

ザ・カレッジ・ドロップアウト+1Late Registrationレイト・レジストレーション(限定特別価格)ダイヤモンドは永遠にザ・カレッジ・ドロップアウトレイト・レジストレーション

 
ネットで聴ける音源。
 

Kanye West - Family Business
http://tim.aiiyah.org/media/20-kanye_west-family_business-rns.mp3
Kanye West - Jesus Walks
http://www.personal.psu.edu/users/c/w/cwo105/mp3s/Kanye%20West%20-%20Jesus%20Walks.mp3

 
洪水対策については、自治体によって対策がとても進んでいる自治体と遅れている自治体があります。
札幌市は、かつては洪水対策が遅れていた自治体でした。
しかし、非自民非公明非民主の革新市長が誕生してから、洪水対策などの住民福祉施政が進み、「洪水ハザードマップ」が作られ、在日外国人を含め全世帯に配布されました。「洪水ハザードマップ」は希望者は誰でも無料で入手することができます。
「洪水ハザードマップ」によると、洪水時には最悪、5メートル水没する地域があり、災害発生時に住民の避難が少しでも遅れれば住民の生命の危険があるという情報を、住民自身で確認できるようになりました。
危険は事前に知らせた上で、住民の不安感を解消する。そういう住民本位のフェアな政治は、「そんな起るかどうかわからない災害に金なんか使っていられないよ」「もっと別なところに税金を使えよ」という反対論を封じる意味で、とてもよい効果をあげています。
 

■札幌市危機管理対策室
洪水ハザードマップ
http://www.city.sapporo.jp/kikikanri/fuusui/ct0000.html

 
私は革新市長の当選に協力した一人ですが、こういう成果や実績とアメリカのカトリーヌとその後の“人災”を目にするにつけ、一票の投票が生命をも左右する重みがあるということを改めて実感します。
投票に行かないと損をしますよ。
 
関連ログ。
 

パティ・スミス:レディオ・バグダッド
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050111
テレ朝番組でキレたハマコー机を蹴りたおす
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040918/p2
宇宙の目と台風の目:衛星写真で台風見物
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040918/p1
金曜「ナイトライン」で戦死米軍将兵721人の名前を朗読
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040504
戦争報道と放送倫理
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040412

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