拉致監禁して拷問する人権の無い国の名前は?


外国の市民を拉致し、拘束し、誘拐した後、凍えるような独房に素裸で移し、釈放も起訴もせず、覆面をかぶせ、手錠をかけ、厳しい尋問と取調べをして、質問に対する答えが返ってこないと体の敏感な部分に電気ショックを加え、殴り、拷問をくり返し行う。
そんな非人道的な行為を国の命令で何度も何度も公務員が組織的に実行している、と書くと、信じられないと思う人は多いと思います。
でも、これは事実です。
その国の名前が何だか、みなさんは想像がつきますか?
あの国の名前が思い浮かびましたか?
…。
正解は、アメリカ合衆国です。
 

ル・モンド・ディプロマティー
CIAによる拷問の海外委託
ティーヴン・グレイ(Stephen Grey)による調査
http://www.diplo.jp/articles05/0504.html

ヨンソン弁護士によると、「ゼーリは拷問の被害者だ。彼は凍り付くように寒い小さな独房に移され、殴られた。最もひどい拷問は電気を使ったもので、医者が見ているなかで、体の敏感なあらゆる部分に何度も電極が押し付けられた」
その後ゼーリは釈放され、起訴されることもなかった。しかし彼はエジプトからの出国を許されず、刑務所への監禁に関して公言することもできなかった。アギザは現在も投獄されている。何度も刑務所で彼と面会した母ハミダ・シャリバイはカイロで取材に応じ、次のように語った。「息子はエジプトに到着すると、覆面をかぶせられ、手錠を掛けられ、建物の地下に連れて行かれた。そして尋問と虐待が始まった。質問に対する答えが返ってこないと、電気ショックが与えられ、殴られた。(・・・)初めの1カ月は素っ裸にされ、寒さに凍えていた」
このスウェーデンでの事件にアメリカの諜報員が関わっており、それに続いて拷問行為があったという事実が確認されたことによって、9・11以降くすぶっていた疑念に最初の具体的な証拠が挙げられたことになる。アメリカが拘束者の世界的な不法移送に、組織的に関与しているのではないかという疑念である。世界各地の公的機関や報道機関による調査によると、アメリカはイスラム主義活動家を組織的にマグレブ・中東諸国へ搬送している。そこで彼らを待ち受けているのは、アメリカ諜報員には実行が認められていない手荒な尋問だ。ある人々はこのシステムを「拷問代行」と名づけている。
(略)
このスウェーデンでの事件にアメリカの諜報員が関わっており、それに続いて拷問行為があったという事実が確認されたことによって、9・11以降くすぶっていた疑念に最初の具体的な証拠が挙げられたことになる。アメリカが拘束者の世界的な不法移送に、組織的に関与しているのではないかという疑念である。世界各地の公的機関や報道機関による調査によると、アメリカはイスラム主義活動家を組織的にマグレブ・中東諸国へ搬送している。そこで彼らを待ち受けているのは、アメリカ諜報員には実行が認められていない手荒な尋問だ。ある人々はこのシステムを「拷問代行」と名づけている。
アメリカ人によって誘拐されたテロリスト容疑者の移送は、アフガニスタンイラクのような紛争地域だけではなく、ボスニアクロアチアマケドニアアルバニアリビアスーダンケニアザンビアパキスタンインドネシア、マレーシアなど世界中で行われている。「特別引き渡し」というのが、このシステムを指すCIAの公式用語であり、いかなるアメリカの現職の政府関係者も公の場でこのことを話題にしようとはしない。しかし、CIAの元高官で1990年代末にウサマ・ビン・ラディン跡部門を率い、2004年11月に退職したマイケル・ショワーは、BBCのインタビューで詳細な説明をし、スウェーデンの事件がもっと巨大なシステムの一部にすぎないことを裏付けた。

 
関連ニュース。
BBCラジオの"file on 4" の記録はすごい。そういう事実だったとは驚きです。
 

BBC file on 4
http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/file_on_4/
BBCのインタビュー
CIA prisoners 'tortured' in Arab jails
(CIAの容疑者はアラブの刑務所で「拷問」されました)
By Stephen Grey
BBC Radio 4's File on 4
A former CIA official has confirmed suspicions that dozens of terror suspects have been flown to jails in Middle Eastern countries where torture is routinely practised, and without reference to courts of law.
http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/file_on_4/4246089.stm
file on 4 の記録
http://news.bbc.co.uk/nol/shared/bsp/hi/pdfs/15_02_05_renditions.pdf

 
ティーヴン・グレイ氏のウェブサイトとウェブログ
 

■Stephen Grey homepage
http://www.stephengrey.com/
http://www.stephengrey.com/blog.htm

 
キーワードは" Extraordinary rendition "(拷問ショー特別公演)
 

■マルチメディア・インターネット事典
Extraordinary rendition
特別公演
http://www.jiten.com/dicmi/docs/e/4031.htm

「''Extraordinary rendition'' and other terms of our times by Tom Engelhardt, Tom Dispatch site, posted January 6, 2004」を翻訳し、Subject: [TUP-Bulletin] TUP速報244号「時代の言葉のワンダーランド(翻訳/井上利男)」2004年1月16日で紹介された、2004年1月4日発行のサンフランシスコ・クロニクル日曜版(Sunday's San Francisco Chronicle)真相解明シリーズ(Insight section)に掲載されたクリストファー・パイル(Christopher Pyle)の記事「代理拷問(Torture by Proxy)」で登場した「拷問ショー特別公演」という諜報業界の隠語で、シリア生まれのカナダ人マーヘル・アラル(Maher Arar)が、搭乗便の乗り換えでニューヨーク・ケネディ国際空港(New York's Kennedy International Airport)に降り立った際に、テロ被疑者ブラックリストに引っかかって、入国管理当局に拘束され、その後、ニューヨーク市警、次にFBI、そして遂には(「おそらくは」)CIA、それとも別の未確認米国政府機関へと、いずれ劣らぬ荒っぽい手から手へと引き廻され、さらにワシントンからヨルダンへ空路搬送され、シリア当局に引き渡され、テロリスト被疑者として尋問されることになり、テロとは無関係であることが判明するまでの10ヶ月間、アラルは墓穴サイズの独房に拘置され、「尋問(拷問)」された。

■TUP-Bulletin TUP速報
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/
TUP速報244号 時代の言葉のワンダーランド 04年1月16日
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/255

「わが国諜報機関はこの代理拷問を『特別公演』の名で呼んでいる。ある諜報関係者は『わが国が手を下して、連中からxxxxを蹴りだすのではない。連中を他国へ送致して、そこでxxxxを蹴りだしてもらう』と説明する。この被疑者を拷問する秘密作戦は、こういう言葉が正しいとすれば、極秘の大統領裁定によって公認されてきた。大統領が拷問を認可する権限の根拠は説明されていない」
全体を見通せば、単純な拷問の特別公演だけではなく、新しい現実――グアンタナモからアフガニスタンにいたる地球規模で、わが国が作り出したミニ強制収容所列島の形成――を、これは文字どおり反映していたのであり、その超法規的ルールには、「被疑者」を「友好」国に、いや、とても「友好」とは言えないシリアのような体制であっても、とにかく身柄を送りこみ、自国では使えそうもない十八番(おはこ)の責め苦を与えていただくことも「あり」なのだ。
(略)

"Extraordinary rendition" and other terms of our times
http://www.nationinstitute.org/tomdispatch/index.mhtml?emx=x&pid=1164
Torture by proxy How immigration threw a traveler to the wolves Christopher H. Pyle
Sunday, January 4, 2004
http://sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2004/01/04/INGPQ40MET1.DTL
Military Split On How to Use Special Forces In Terror War
By Gregory L. Vistica Washington Post Staff Writer
Monday, January 5, 2004; Page A01
(ワシントン・ポスト グレゴリー・L・ビスティカの記事『対テロ戦争
の特殊部隊活用法をめぐり、軍が割れる』)
http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A54655-2004Jan4?language=printer

 
関連報道など
 

拷問「常習」国に移送 テロ容疑者をCIA 3月6日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050306-00000125-kyodo-int

【ニューヨーク6日共同】
(略)
同紙によると、ブッシュ米大統領が同時テロから数日以内に、こうした移送権限をCIAに与えたとみられるが、人権団体は、日ごろ拷問を非難し続けているブッシュ政権の政策とは相いれないと批判している。
これまでに100−150人がエジプト、シリア、サウジアラビア、ヨルダン、パキスタンなどに送られたという。出身国や市民権を持つ国が大半だった。

95年から拷問国に移送 米、テロ尋問委託を制度化 3月26日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050326-00000112-kyodo-int

【ワシントン26日共同】米国が、拷問が常態化しているとされる第三国にテロ容疑者を移送し、現地の治安機関を通じて自白を引き出している問題で、こうした措置がクリントン前政権時代の1995年に制度化され、エジプトなど中東の同盟国や外国情報機関との組織的協力の下で行われていたことが26日、元米政府高官の証言で分かった。
 米政府が人権より治安重視のテロ対策に乗り出すきっかけとなった2001年の中枢同時テロの約6年前から、拷問が行われている国にテロ容疑者の尋問を“外部委託”していたことになり、人権団体などの批判が高まるのは必至だ。

拉致事件にCIA関与か 主権・人権侵害で捜査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050314-00000044-kyodo-int

【ワシントン13日共同】13日付の米紙ワシントン・ポストによると、イタリアで起きたエジプト出身のイスラム教指導者の拉致事件などに米中央情報局(CIA)が関与していることが濃厚となり、イタリアの検察当局が主権・人権侵害の疑いで捜査に乗り出した。
拘束したテロ容疑者を拷問が横行する出身国に送還、現地の治安機関を通じて自白を引き出しているなどとCIAへの批判が高まる中、主権の及ばない欧州で拘束作戦まで行っていた強引な捜査手法の一端が明らかになった。

講演会:いま、イラクは… 拘束体験した安田純平さんら講演−−徳島 /徳島
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050516-00000253-mailo-l36

安田さんは自らの拘束体験などを基に「家族や友人を殺されたり、米兵から拷問を受けた経験を持つ人が武装勢力となっていた。現地では日本人も疑われる状況ができている。自分も拘束されたとき、銃を持っていたら100%死んでいた」などと講演。イスラム武装勢力「アンサール・スンナ軍」に拘束されたとみられるイラク駐留米軍施設勤務の斎藤昭彦さん(44)にも触れ、「民間人であっても物資輸送の護衛をしており、軍事行動と思われたのだろう」などと話した。

米軍の「拷問マニュアル」は40年前から存在した ベトナム戦争で発案され中南米で実践 CIA文書で明らかに 2004年07月08日
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200407081114174

 
関連リンク。
 

アムネスティインターナショナル
http://www.amnesty.or.jp/
拷問廃止キャンペーン
http://www.amnesty.or.jp/stoptorture/
拷問の現在
http://www.amnesty.or.jp/stoptorture/present00.shtml
http://www.amnesty.or.jp/stoptorture/present00.shtml
日本の状況
http://www.amnesty.or.jp/stoptorture/stoptorture5/A0050200.shtml
被拘禁者の処遇
http://www.amnesty.or.jp/stoptorture/stoptorture5/A0050201.shtml

■外務省
世界人権宣言
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_001.html

第五条
何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。

市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権規約自由権規約 ICCPR)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html

第七条
何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。
第十条
1 自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。

国連拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約)
1999. 6.29日本国批准。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gomon/zenbun.html

第二条
締約国は、自国の管轄の下にある領域内において拷問に当たる行為が行われることを防止するため、立法上、行政上、司法上その他の効果的な措置をとる。
戦争状態、戦争の脅威、内政の不安定又は他の公の緊急事態であるかどうかにかかわらず、いかなる例外的な事態も拷問を正当化する根拠として援用することはできない。
上司又は公の機関による命令は、拷問を正当化する根拠として援用することはできない。

締約国一覧表(主要6条約)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/ichiran.html
拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約加盟国一覧
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gomon/ichiran.html

1999. 6.29日本国加入。
1994.10.21アメリカ合衆国批准。

市民的及び政治的権利に関する国際規約加盟国一覧
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_001_1.html

1979. 6.21日本国批准
1992. 6. 8アメリカ合衆国批准

国連が中心となって作成した人権に関連する諸条約一覧表 [PDF]
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/pdfs/jinken_j.pdf

拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の選択議定書
批准国6 未発行

 
「国連拷問等禁止条約」を読んで気づいたのですが、締約国の責務は「自国の管轄の下にある領域内において」という締約国の義務を範囲限定する文言が書いてあって、国外における公務員や民間人の拷問の禁止(国外犯の制限)については規定がありません。
拷問条約の“抜け穴”を埋めるため、第三国査察手続きや勧告手続きを定めた「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の選択議定書」という条約が2002年に国連で採択されましたが、主権制限につながると判断する国か多いらしく、批准国は2005年4月11日現在、6カ国にとどまっています。*1
 

■日本弁護士連合会
2002-12-12 会長声明
日本政府に対して拷問等禁止条約の選択議定書を支持し、その早期批准を求める声明
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/kaityou/00/2002_18.html

 
オマケのビデオ。
アメリカがどういう国かは、これを見れば1時間でわかります。
 

■テロリストは誰?
http://www.wa3w.com/

 
念のために書いておきますが、アメリカにもいろんな国民や政治家がいて、アメリカの中でも海外移送拷問に否定的な人はいます。ブッシュ政権とそれ以外の人たちとは区別し、見解の多様性を考慮すべきです。
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*1:国連拷問等禁止条約の選択批准書の採択の採決では、賛成127カ国であったのに対し、アメリカ合衆国など4ヶ国が反対、日本国、中華人民共和国など42ヶ国が棄権しています。