単純所持禁止・奈良県が初の条例検討

 

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13歳未満ポルノの所持禁止・奈良県が初の条例検討 
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20050428STXKE022028042005.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050428-00000087-kyodo-soci

良県警は28日、13歳未満の子どもを使ったポルノの所持や保管を禁止し、違反者に罰金などを科す県条例を検討していることを明らかにした。
昨年奈良市で起きた女児誘拐殺人事件を受け、県とともに検討を進めている「子どもを犯罪の被害から守る条例」(仮称)に盛り込む。
同県警や法務省によると、一般人の所持禁止を規定する条例は全国初。表現の自由や個人のプライバシーとかかわる可能性もあり、議論を呼びそうだ。
18歳未満の児童を使ったポルノの製造・販売目的所持を禁止する児童買春・ポルノ禁止法と異なるため、条例案では規制対象を「子どもポルノ」と定義。「正当な理由なく所持、保管してはならない」とする。公共の場所で子どもに対し、惑わしたり言い掛かりをつけるような声掛けも禁止する。
県警は5月中にホームページなどで概要を公開。県民の意見を求めた上で、県が6月の県議会に条例案を提出する方針。

http://c11om4bv.securesites.net/newspack/modules/news/article.php?storyid=218149011
http://www.minyu-net.com/news/2005042801001133.html
http://kumanichi.com/news/kyodo/social/200504/20050428000160.htm
http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack.cgi?national+CN2005042801001133_1
http://www.sanyo.oni.co.jp/newspack/20050428/20050428010011331.html
http://www4.oita-press.co.jp/news.cgi?D=CN20050428&ID=CN2005042801001133.1.N.20050428T121158&J=National&UP=20050428T121158
http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050428000193
http://www.kahoku.co.jp/news/2005/04/2005042801001133.htm
http://www.shizushin.com/national_social/2005042801001133.htm
http://www.sakigake.jp/servlet/SKNEWS.NewsPack.npnews?newsid=2005042801001133&genre=national
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20050428010011331.asp
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20050428STXKE022028042005.html

 
警察庁の統計によると、児童ポルノ罪の小学生の被害者はほとんどいません。
児童ポルノ罪の奈良県の年間小学生被害者人数は、ほぼ皆無。
奈良県警さん、被害者のいない刑罰って何よ、という問題。
 

平成16年度年間全国統計
全国の13歳未満のポルノ被害者数  5人
奈良県の少年犯罪の増減数 281件減少。
子に対する実母など親権者による重大犯罪人数  253人
うち殺人33人、傷害致死29人、強姦16人。
全国の15歳未満の交通事故死亡者数  221人
全国の15歳未満の交通事故死傷者数  91,141人
過去10年間で交通事故で死んだ15歳未満の子供の総数 2801人。

 
社会が最優先で取り組まなければならない課題は何でしょうか。
児童ポルノ? 少年犯罪? 
ある種の熱狂とパニックが広がっているように感じるのは私だけでしょうか。
限りある税金と資源と時間。その優先順位を合理的に決めるのが政治の役割でしょう。
大人の感情を満足させることか、それとも子どもにとっての最善か。答えは瞭然ではないでしょうか。
識者は声をあげるべきでしょう。
「単に一部の人の感情的欲求のみを満足させるだけの、公益の無い規制は作るのはよくない。」との声を。
 
毎日新聞に澤登俊雄氏のコメントがちょっとだけ載っています。
 

奈良県条例案: 子どもへの「声掛け行為」も処罰 毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20050428k0000e010069000c.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050428-00000055-mai-pol

県警によると、子どもの安全を目的とした、処罰規定付きの条例が実現すれば全国初という。子どもを惑わす行為、販売目的外の子どもポルノの所持・保管禁止も初。条例案は6月県議会へ提案、今秋施行を目指す。
条例素案によると、対象の「子ども」は13歳未満。想定する状況は、「通学路や学校周辺、公園など公共の場所・施設で、保護者らが身近にいない子ども」としている。違反行為には、罰金などで処罰するほか、県民に通報の努力義務も課す。
推進団体内にも「声を掛ける行為」の線引きを巡って賛否があり、5月2〜20日、一般から意見を募り罰則の内容などを調整する。【中村敦茂】
▽澤登俊雄・国学院大名誉教授(刑事法)の話 子どもを守るための法的規制は必要だが、抽象的に声を掛ける行為や子どもポルノ所持を禁じてしまえば、自由を極端に束縛することになりかねない。刑罰を用いるなら、犯罪の構成要件を相当具体的に示す必要があり、技術的な難しさがある。不必要に行為を抑制しないような規定の工夫ができるかに成否がかかる。

 
13歳未満のポルノと13歳ポルノ。みなさんは具体的な違いがわかりますか? 
なにをどう比較して判断すれば13歳未満のポルノか13歳ポルノかを判断できるでしょう? 撮影者については対象となる児童がいますので事前に確認をとれと言う事はできますが、単純所持者に年齢確認を求めることは困難です。
年齢差の確認方法だけではなく、「性交類似行為」の類似表現の限界についても、専門家の間で意見が分かれています。水着姿の写真はOKか。では下着姿はどうなのか。手で胸などを隠している場合はどうなのか、モザイクなら良いのか。モザイクの濃度はどれくらいか、などなど。
そんなあいまいな制度が「制度」と言えるのかという問題もあります。
法を知っている誰もがおなじ判断結果になると期待されるからこそ法は法でしょう。
構成要件を具体的にせよとの意見には賛成です。
 
単純規制についてそもそも論を書くと、抑止すべき実在被害者が存在しない=想定法益が無いという点が、単純所持罪規制の最大の問題点であるように思われます。
実在児童に人権があるのであって、写真というモノには人権はありません。あたりまえのことです。
実在児童への撮影や撮影物の提供がない単純所持はあり得ません。どのような所持も、撮影や提供を前提とします。ですから、撮影や提供を罰する現行児ポ法を適切に適用すれば、撮影や提供の効果として生じる所持も無くなります。
現行児ポ法を執行せよ。それが結論です。
 
ときどき「児童に欲情するのは許せない!」などという理屈で「単純所持を規制すべきだ!」などと言っている人がいますが、児童人権侵害の現実を誤解しています。
実在児童の人権侵害=撮影と提供の多くは、お金を得たいという利己的動機で発生しています。児童ポルノを見たいとか所持したいという性的動機を持つ人は、所持の動機はあっても、児童の人権侵害の行為者となる例は多くはありません。
前述した通り、実際に発生した小学生の児童ポルノ被害は、年間全国で5人。奈良ではおそらく0人でしょう。
被害児童が劇的に増えているのであればともかく、被害児童が増えていないのに制度を新規でつくる必要性がなぜあるのか不明です。

奈良県のケースに限りませんが、「犯罪に不安を感じる」といった漠然とした不安意識を背景に、「単純所持が児童の人権を侵害している」という根拠の無い感情的な共感のみによって制度が作られようとしているあたりに、提案の背景にある問題の深さを感じます。
 
以下、単純所持についての参考意見。
 

■連絡網AMI
「児童買春児童ポルノ禁止法」改正への要望書
1 はじめに
http://picnic.to/~ami/repo/youbousyo.htm
2 「フィクション」と「実在児童への虐待」の区別
http://picnic.to/~ami/repo/youbousyo.htm#2
3 単純所持罪/単純製造剤の問題点
http://picnic.to/~ami/repo/youbousyo2.htm
4 中高生も多数参加した私たちの署名活動について
http://picnic.to/~ami/repo/youbousyo3.htm
5 私たちからの提案
http://picnic.to/~ami/repo/youbousyo3.htm#5

 
以下、関連リンク。
 

奈良県
http://www.pref.nara.jp/
奈良県福祉部こども家庭局青少年課
http://www.pref.nara.jp/seisyonen/

奈良県福祉部こども家庭局青少年課
〒630-8501  奈良市登大路町30 奈良県庁3F
TEL 0742-27-8608
FAX 0742-27-9574
E-mail seisyo@office.pref.nara.lg.jp

県政の窓 総務部広報広聴課
http://www.pref.nara.jp/kensei/
県政の窓メールフォーム
http://www.pref.nara.jp/kensei/f_input.htm
知事定例記者会見
http://www.pref.nara.jp/chiji/teirei/teireikisyakaiken.html

 
報道では女児誘拐殺人事件が制度検討理由になっているようですが、犯罪全体の状況について奈良県警の統計を見ると、平成16年度の強制わいせつ事件は19件減少しており、少年犯罪に到っては不良行為少年の補導件数は6748人も減少しており、激減しています。制度で緊急に対応しなければならない理由は想定されません。
女児誘拐殺人事件といった特異なケースだけに着眼した制度づくりは、冷静さに欠けているのではないでしょうか。
奈良県庁の「県政の窓」と、奈良県警に「実際の治安は改善されている。被害者が存在しない単純所持行為に対する処罰制度創設の検討の中止を求める」との声を届けましょう。


 

奈良県警察
http://www.police.pref.nara.jp/
「(仮称)子どもを犯罪の被害から守る条例(案)」の概要
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/kodomohigaiboushi.htm
「(仮称)子どもを犯罪の被害から守る条例(案)」に対するご意見募集
http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/050428.htm

3 ご意見の募集期間
平成17年5月2日(月)から平成17年5月20日(金)まで
4 ご意見の提出方法
次のいずれかの方法で提出してください。
電話等口頭によるご意見はお受けできませんのでご了承ください。
記載の様式は自由ですが、ご意見とともに住所、氏名を記入してください。
(1) 郵便の場合
〒630−8578(個別番号につき住所は不要です)
奈良県警察本部生活安全部生活安全企画課内
「安全やまとまちづくり推進本部」事務局
(2) ファクシミリの場合(※送信時には上記「事務局名」を明記してください。)
0742−23−1169
(3) 電子メールの場合
https://www.police.pref.nara.jp/mail/mailform(hyoshikihigaisya).htm
 奈良県警察本部生活安全部生活安全企画課内
「安全やまとまちづくり推進本部」事務局
電    話:0742−23−0110(内線:3056〜8)
ファクシミリ:0742−23−1169

平成17年奈良県警察の重点推進事項
http://www.police.pref.nara.jp/jumoku05/jumoku05.pdf

◆少年犯罪等の現状
〜少年犯罪は減少〜
総数1,217件
前年比−281件
〜 不良行為少年の補導は減少〜
総数17,389人(− 6,748人)
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◆ 重要犯罪は昨年比で横ばい
〔H16中の発生件数〕
殺人12件(−1)
強盗52件(+2)
放火33件(+19 )
強姦23件(+7)
誘拐10件(−10) 
強制わいせつ98件(−19)

 
警察庁の統計によると、平成15年と比較した平成16年の13歳未満の児童ポルノ被害件数(全国)の増減率は、マイナス54.5%であり、激減しています。件数でいうと、平成15年は11件、平成16年は5件。これは全国での被害件数で、奈良県ではおそらくゼロ。
ちなみに、平成16年の警察庁の統計によると、実父、実母、養父、継父、養母、継母などの家族内での子どもに対する重要犯罪人数は、子の殺害33人、傷害致死29人、強姦16人、強制わいせつ8人など。重要犯罪件数の合計は253人となっており、昨年に較べて増えています。
 

警察庁
警察庁生活安全局少年課
平成17年2月少年非行等の概要(平成16年1〜12月)
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen21/syonenhikoh16.pdf

加害者の罪種別・被害者との関係別検挙状況
実父、実母、養父、継父、養母、継母、内縁、その他
平成16年 検挙人数 合計253人
       殺人 33人
       傷害 142人
     傷害致死 29人
       強姦 16人
    強制わいせつ 8人
      増減率38.3%
 
児童買春・児童ポルノ禁止法による検挙状況
平成15年 児童ポルノ 214件
平成16年 児童ポルノ 177件
増減数        ▲37件
増減率       ▲17.3%
 
児童ポルノ事件の被害児童
平成15年 小学生 11人
平成16年 小学生  5人
増減数      ▲6%
増減率    ▲54.5%

平成16年中の交通事故発生状況 [H17.2.25 更新]
http://www.npa.go.jp/toukei/koutuu22/h16jiko.pdf

○年齢層別死傷者数の推移(各年12月末)
15歳以下 死者   221人
    重傷者  5,141人
    軽症者  85,779人
    死傷者  91,141人

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