NHK番組政治家介入疑惑(9):長井告発以前にもあった政治介入

いままでkitanoのアレではNHKについていろいろ書いてきましたが、私への批判としてその通りだと思ったことがひとつあります。なにかというと、「NHKなんて昔っから政治介入受けているよ。長井告発以前の問題はどうでもいいのかよ」という批判です。
まったく仰る通りで耳が痛い。批判していた方は本田勝一氏の「NHK受信料拒否の論理」のことを指摘していたようですが、たしかに以前から政治介入の問題はありましたし、その問題が解決されたとは言い難い状況が続いていることも事実だと思います。
というわけで、本田勝一氏の見解が正しいかどうかの判断はひとまず置いておき、「NHK受信料拒否の論理」に書かれている客観事実についてのみ抽出して着眼してみます。
いやこれは事実ではない、昔は介入は無かったという事実や意見があればお教え下さい。
 

  • 中国敵視政策を続けてきた佐藤内閣まで、NHKは中国を一貫して「中共」と呼称し、「中華人民共和国」や「中国」との呼称を用いなかった。しかし、中国と和解した田中内閣になったとたん、NHKは「中華人民共和国」「中国」の呼称を用いて「中共」の呼称を用いなくなった。
  • アメリカがベトナム戦争に突入した時、「南ベトナム解放民族戦線」のことをNHKと民放すべてがアメリカ軍による蔑称であった「ベトコン」を呼称していたが、その後民放各社が「解放戦線」と呼称するに至ってもNHKだけは「ベトコン」の蔑称を用い続けた。しかし「南ベトナム解放民族戦線」を攻撃していた側は「政府軍」「米軍」などの正式名称を呼称していた。
  • 慶応大学言語文化研究所の川本邦衛氏がNHK国際局アジア部のベトナム向け番組のアドバイザーとしてベトナム語番組を担当した時、デスクが気づかないベトナム語で「南ベトナム解放民族戦線」の呼称を使った時は干渉されなかったが、国内放送で「ベトコン」ではなく「南ベトナム解放民族戦線」を使うべきであると忠告しても無視された。
  • アメリカがベトナム戦争で敗北し、南ベトナム共和国臨時革命政府が樹立したとき、川本氏は、アメリカ以外では国際的に使われている「南ベトナム共和国臨時革命政府」の呼称を使ったが、そのことに気づいたデスクが、「政府の理解ではまた臨時革命政府が存在を認めておらず、政府の認識に従うことが日本人の良識であるから、解放戦線に直せ」と要求した。
  • NHKはベトナム戦争における前述の呼称問題をひた隠した。
  • 天皇がヨーロッパを訪問したとき、NHKは民放とは比較にならないほど大規模な天皇ヨーロッパ訪問キャンペーンを展開した。
  • 受信料の受託集金人(NHKの呼称)が、来月分の受信料を含めた二ヶ月分の支払いを要求した。来月分の支払いはおかしいのではないかと抗議すると、NHKは「仮に番組を見ていなくても支払わなければならない」と主張した。
  • NHKに「NHKだけを見る事が出来ないテレビなら受信料を支払わなくてよいのではないか」と質問したところ、NHKは「再改造が可能なので受信料をいただきます」と言った。
  • 民間のNHK受信料不払い運動を展開していた「NHK試聴者会議」の会長が面会を求めただけで逮捕された事件を報じた1971年3月1日号の「週刊文春」で、NHK飯田次男広報室長(当時)が、「ボクは新聞記者のヤツラがNHKの組織の批判などをするとここへ呼びつけてどなるんだ。『おまえら、たかが新聞記者のブンザイで、NHKの組織がどうのこうのといえる身分かよ! おまえらはできた番組だけを批評してりゃそれでいいんだ』とこういってやるんですよ」と語った。
  • 1971年3月1日号の「週刊文春」で報道されたNHK飯田次男広報室長(当時)の発言を、「週刊読売」1971年3月12日号、「週刊サンケイ」1971年3月15日号、「未来」1971年4月号(本田氏NHK批判を連載していた雑誌)でもとりあげられたが、NHK飯田次男広報室長(当時)は批判した本田記者を「呼びつけ」に来なかった。
  • NHKの海外支局の支局長交替の際に、大金をかて「おひろめパーティー」を開催。ベトナムサイゴン支局長の交替したときに、超一流のコンテネンタルホテルのホールを借り切り、主要国大使館関係者やサイゴンの政府要人を招待した。
  • 「NHKサイゴン支局の支局長は毎月数十万ドン(ベトナム通貨)をかけて妾宅をかまえている」という噂が現地日本人の間で広まっていた。
  • 1971年、本田氏がNHKのサイゴンでの浪費ぶりについてNHK労組に説明すると、労組関係者は一言も抗弁できずに帰っていった。
  • 1959年5月、NHKが主催する「第一回科学記者欧米視察団」が編成されたとき、民放は法律の範囲内で派遣記者に取材費用の補助を出したが、NHKは派遣する記者のために「録音テープを送るための費用にため」との理由で、旧大蔵省の外貨割当の例外適用枠を適用させ、多額の費用を記者に渡した。
  • NHKの社員寮などの厚生施設が豪華
  • 旧オリンピック施設のほぼすべてが公共施設として使われたが、当時唯一NHKだけが、だれにでも自由に使うことができないという意味での非公共施設として、渋谷のNHKセンターが作られた。
  • NHKには極秘の出演料格付け表があり、格付けの一番低い人は、たとえばNHK組織を批判している人の親族に対しては、NHK教育テレビに毎週1年間出演した人への出演料(半年間の全額出演料)はアルバム一冊だけだった。
  • リハーサルを三回ほどやる30分番組に出演した名の売れていない芸能人の出演料は、5000円程度。
  • 1964年〜1965年に、NHK受信料の支払い義務付けを含んだ放送法改正が議論されたとき、放送法改正案を通そうとしたNHKが、当時しめくくり段階にあった日韓会談の報道の扱いで、ニュース、解説、関連企画番組で自民党政府の意向を強く受けいれた番組が作られた。そして放送法改正案が成立し、集金人は支払いをしていない人に「放送法で決められたていますので支払ってください」と言うようになった。
  • NHKの職員の親族が、本田氏に電話をかけ、「あんたNHKのてれび見てるでしょ! だったら受信料払いなさい」「ずいぶんレベル低いわね」「うちの主人は、あんたの名前を見るのもいやだって言ってるわよ」とヒステリックに一方的に叫び続け、対話も拒否した。本田氏が一部の記事だけをつまんで批判せず全体を読んでくれと言ったところ、「そんなものォ、お金を出して買う気がするものですか」と言い、本田氏が無料で記事の提供を申し出ると、「住所なんか教えたら、主人の名前がわかっちゃうじゃないの! ずいぶんレベルが低いわネ!」と言った。
  • 一株株主運動では株を買うことで経営者に対する発言権・干渉権を持とうとしているが、NHKに受信料を支払っている視聴者には株主に匹敵する発言権・干渉権は存在しない。
  • アメリカ電話電報会社の統計によると、アメリカ合衆国における戦争税納税拒否運動(納税額のうちベトナム戦争の国防費比率分の納税を拒否する運動)の納税拒否者は、1967年1800人、1969年4000人、1971年17,200人。
  • 長野県松本市のある方が受信料の支払い拒否を実行したところ、NHK松本支局の職員が「あなたがたがNHKをつぶす結果になります」と言った。拒否者は「つぶれてもいいじゃん」と言ったところ「そうすると国営になりますよ」とHK松本支局の職員が反論。「そうなりゃ税金でやってくれるもんで、よけいイイじゃん」と言うと、「そうなると報道機関は政府になりますからね。内容も操作されますよ」とHK松本支局職員。それを聴いた拒否者が「今のやり方には疑問がある」と反論するとすでに内容が政府に操作されている事実を納得したのか「いいように解釈する」と言って帰った。
  • 日米安全保障条約更新が迫った1969年、8月15日にNHKは終戦日特集を組まなかった。
  • 1969年7月、NHK視聴者会議小金井準備会が、NHKが終戦記念日特集を組まなかったことへの疑問、衆議院選挙前のNHK二党討論会で自民党共産党の組み合わせだけが無かったことへの疑問、1969年1月19日の東大安田講堂の放送では民放では中継報道があったがNHKだけが実況中継が無かったことへの疑問を、事前の通告をした上で改めてNHKに回答を求めたが、NHK職員は「わからない」と回答を拒否した。NHKが実施している「視聴者懇談会」への出席についてNHK三鷹営業所の職員(中村所長、山内副所長、相談室岩崎主査)は「出席者を選ぶ権利はNHKにある」と言いNHK視聴者会議小金井準備会関係者の出席を排除した。1965年に実施された「視聴者懇談会」の出席者の名前と内容について質問すると「公表できない」と拒否した。

 
参考図書。
 

NHK受信料拒否の論理
NHK受信料拒否の論理 (朝日文庫)
http://d.hatena.ne.jp/asin/4022606509
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022606509/
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NHK受信料拒否の論理 増補
NHK受信料拒否の論理
http://d.hatena.ne.jp/asin/4624410254
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4624410254/
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NHKと政治―蝕まれた公共放送
川崎泰資
NHKと政治―蝕まれた公共放送 (朝日文庫)
http://d.hatena.ne.jp/asin/4022612924
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022612924/
※この本を書いた川崎泰資氏は元NHK職員です。

例えば、次のような体験を私自身がしている。
ロッキード事件の初期の段階で、コーチャンが田中角栄と面識があり、通産大臣の時に何回か会っているという外電が飛び込んできた時がある。当然裏をとらなければならない。
デスクについていた私が田中派の担当記者に田中への確認を求める指示を電話でするのを聞いて、顔を真っ赤にした古参デスクに「そんな必要は無い」と怒鳴られる。実は、この情報は私がデスクを引き継ぐ前から政治部に届いていた。彼はそれを放置していたのだ。この古参デスクは佐藤派の時代から田中番の記者として知られる人だ。
出先の記者にしても、この古参デスクを中心にNHKの政治部内の大勢が田中擁護。つまり事件の「穏健派」であるのを知っているだけに取材を渋ったが、私は記者を督励して結果を待った。やがて電話で報告があり、田中の秘書が「そんな取材を命じるデスクは誰だ」「それは川崎だろう」と怒っているという。
取材に答えないのはともかく、NHKの社内事情に精通し、取材を指示したデスクを名指しして非難するのには、驚きあきれるほかはなかった記憶がある。

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