NHK番組政治家介入疑惑(8):国会議員による言及のまとめ(1)

 
今国会の議事録が公表されつつありますが、既存メディアの中で公表された議員のコメントなどを拾ってみます。
 

田英夫参議院議員(社会民主党)
http://www011.upp.so-net.ne.jp/dennews/
田英夫とジャーナリストの会 直言極言
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000110107
2005年1月29日号
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501290140000000110107000
http://www011.upp.so-net.ne.jp/dennews/chok.htm

◎許せないNHK特集番組への政治介入 改憲案作成の陸自幹部を刑事告発
田: 権力はいつでもそうだが、特に自民党には、マスコミ介入の体質がある。安倍、中川両氏も例外じゃない。いろんなことが起きる。この前には、現職の陸上自衛隊幹部が憲法改正案を作成して自民党中谷元憲法改正案起草委員会座長(当時)に渡していただろう? 昔なら、一発でクビになるところだが、中越地震などのせいで、この問題についてのマスコミの追及は乏しかったね。今度はどうだろう。
−朝日は自信を持っている。何か確かなものがあるのだろう。本当かどうか分かりませんが、「報告書があるらしい」という話があります。
田:あの時期になると、NHK幹部は予算を国会で通してもらうために、議員会館の中を軒並み歩く。国会対策担当の野島直樹局長(現理事)ら偉いのが国会に常駐している。
自民党に呼びつけられなくても、自分から出向くわけだ。
田:NHK予算にはこれまで、共産党を含め各党とも反対したことがないそうだ。余談だが、以前に私が冗談で「今度は反対しようかな」と言ったら、当時のNHK会長が飛んできて驚いたことがある。
−それにしても、この番組は当時、永田町で問題になっていたのか?
田:自民党の右派の組織が問題にしていたんだろうね。一般的には知らないよ。
−もともとは、市民団体「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」が主催した民間法廷の「女性国際戦犯法廷」だが、国際的な問題だ。その報道があって、NHKが取材しているということで、右翼がNHKに押しかけたようだ。今回は日放労NHK労働組合)がしっかりしており、「政治介入があった」と告発したチーフプロデューサー、長井暁氏を支援する態勢をとっている。
田:この介入疑惑を国会で取り上げる党が、どういうスタンスで取り組むかが問題だ。特に民主党は、NHKの言い分の方が正しいなどと思い込まずに、長井氏を読んで話を聞くなどしてほしい。自民党右派のマスコミ介入を暴く絶好のテーマだ。安倍、中川両氏などは、自分たちが牛耳るのが何が悪い、と思っているからね。
放送は電波法で規制されており、さらに特にNHKの場合は放送法にも縛られている。英国のBBC放送はしょっちゅう政府とけんかしているが、NHKは時の政府に逆らったら予算が国会で通らないから、首根っこを押さえられている。この問題がどう決着するか、NHKにとって重大な危機だ。
NHKはニュース報道の中で朝日の報道批判を長々と展開し、読売、産経も「こんな問題を取り上げるのが悪い」と問題をそらしている。今後「NHKvs朝日」などのように、話がそれていく恐れもある。問題は、事前に政治家に番組の中身を説明し、了解を取るジャーナリズムを忘れた姿勢だ。ここを問題にしてほしいですね。

 
自民党右派のマスコミ介入を暴く絶好のテーマだとの指摘は同感です。この問題が発生してから自民党右派の活動が活発になっていますが、介入の事実を暴かれたことに動揺しているのでしょう。
自民党内でも放送番組に対する介入については、いろんな考え方があり、介入の路線については大別して次の四つの勢力があります。
 

1 放送の経営資源(周波数割当、持ち株制限、NHK予算の承認)への政府権限を大きくすることによって自発的服従を促す勢力
2 放送の政治的公平性など番組基準を根拠にしてマスコミに介入しようとする勢力
3 放送の経営資源の政府規制の緩和に政治力を発揮して放送に自発的服従を促す勢力
4 政治的公平性原則を廃止し、マスコミに政治的見解を伝える番組を作ってもらおうと考える勢力

 
戦後のいわゆる逆コース時代、最初に現れた考え方が「1」の考え方で、「1」の発展形として「2」が現れ、冷戦終結によって「3」が現れ、「3」の発展形として「4」が現れたというのが戦後の放送介入の流れです。公明党は池田名誉会長と創価学会の防衛というはっきりとした政治目的がありますので「4」に近いのではないでしょうか。公明党は民事裁判の制裁強化をさせて次から次へと賠償裁判を提起してマスコミをコントロールことを考えているので、自民党の流れとはちょっと違います。
麻生総務大臣などは「3」からそろそろ「4」に移行した方がいいのではないかと考えてるように見えますが、安倍氏の主張は「2」に近いので一気に40年以上昔の自民党族議員政治に逆戻りした感じですね。安倍氏の考え方は、自民党内にとってもある意味で異質だと思われます。
 

小池晃参議院議員(共産党
http://www.a-koike.gr.jp/index.html
若手国会議員メルマガ『未来総理』*1
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000101304
第119号
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501171140000000101304000

NHKへの政治介入問題
「未来総理」読者のみなさん。新年おめでとうございます。今年1年よろしくお願いいたします。
さて、年明け早々とんでもないニュースが飛び込んできました。2001年1月に放映された従軍慰安婦問題に関するNHK教育テレビの番組に対して、安倍晋三自民党幹事長代理(当時内閣官房副長官)と中川昭一経済産業大臣が事前に介入したという問題です。
ご存じの通り、憲法21条は一切の表現の自由を保障し、放送法3条は放送番組への干渉を禁じています。国会議員、とりわけ当時内閣の中枢にいた安倍晋三氏が放送内容に事前介入したとなると、まさに戦前の「検閲」を思わせる重大事件です。
16日のテレビ番組でも安倍氏は「NHKに対して、公平に放送してほしいと意見を述べただけ」と繰り返し、何が悪いのかと言わんばかりの態度。
私はテレビ朝日の「サンデープロジェクト」で、「特定の番組について”公平に”と言うことは、公平でないから修正せよと圧力をかけたことにほかならない」と指摘しました。
奇妙なことはいくつもあります。
本年1月12日の『朝日』報道によれば、安倍氏は当初「中立的な立場から報道されなければならず、反対側の意見も紹介しなければならないし、時間的配分も中立性が必要だと言った」とコメントしています。番組内容を知っていなければこんなコメントは出せません。どうして放送前に知ったのか。
以前、オウム真理教の事件で、TBSの番組内容を教団幹部が放送前に見ていたことが重大問題になったことも思い起こされます。
中川氏にいたっては、13日のコメントで「公正中立の立場で放送すべきであると指摘した」としながら、NHKが中川氏との面会が2月2日(放送3日後)だという見解を出すやいなや、「会ったのは放送3日後」と足並みをそろえる始末です。だとすると放送の3日後に、「かれこれの立場で放送すべき」と言ったという奇怪な話になってしまうのです。
最初の両氏のコメントが真実であって、ことの重大さにあわてて修正したというのが自然な経過ではないでしょうか。
そもそも従軍慰安婦問題は93年8月の内閣官房長官談話で、「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」「慰安婦の募集については・・・甘言、強圧による等、本人たちの意志に反して集められた」「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」と断罪し、「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」としています。政府の正式な決定であり、国際公約です。
安倍氏の行為は、政府の中枢にいながら、自ら政府決定を踏みにじった点でも重大な問題をはらんでいます。真相を徹底的に解明することは国会の責務であり、全力をつくします。

 
小池晃参議院議員指摘する通り、公平だと思っていないから「公平に」と言っているわけで、安部氏はあわてふためいて言い訳したことによって、自ら政治的圧力かけたことを自白したようなものです。
安部氏の態度が1993年の「内閣官房長官談話」の趣旨に反する閣内不一致の態度であることは、以前指摘した通り。
ところで、国会議員にはNHK出身者の議員も何人かいます。
安住淳衆議院議員も海老沢前会長と同じNHKの政治部記者です。
 

安住淳衆議院議員(民主党・元日本放送協会東京報道局政治部記者)
http://www.miyaginet.com/jun-azumi/
安住淳が斬る!!
http://www.miyaginet.com/jun-azumi/diary/diary.cgi
安住淳国会通信
http://www.miyaginet.com/jun-azumi/mailform/mailmag.html
164号

Subject: 安住淳国会通信164号
Date: Fri, 21 Jan 2005 15:54:57 +0900
そして、ここへ来て大きな話題はNHK問題だ。私はNHKの出身なので、いろんな人にいろんなことを聞かれる。だから、このことについて一言書いておきたい。
受信料収入と国会の承認というルールがある限り、NHKは政治圧力を受ける宿命にある。それは、民放がスポンサー企業に気を使うのと似ている。だからこそ、その政治圧力をうまくコントロールして、主張すべきを主張する知恵と気骨がなければ、NHKは成り立たない。
長年の間にこの政治との距離が近すぎたり遠すぎたりして、いくつもの教訓を得てきたのがNHKだ。今回は政治との距離感が近すぎる感じを一般の人に与えていて、公正さを疑われる結果になっているのだと思う。
朝日とNHKのケンカに入る気は全くないが、NHKは今後とも存続する為にも、政治との距離をしっかり図る知恵と工夫が必要だと思う。体制を一新して再出発してもらいたいものだ。

安住淳国会通信166号

Subject: 安住淳国会通信166号
Date: Fri, 4 Feb 2005 11:32:28 +0900
ところで、この予算委員会の基本的質疑が終わったら、NHK問題を総務委員会でキッチリ取り上げたいと思っている。民間放送事業者の株の問題もしっかりやる。この際、放送業界のあらゆる膿を吐き出す国会にしたい。

 
受信料収入と予算の国会承認というルールは、本来、放送経営に対する政治のコミットのために存在するわけで、番組内容への介入とは議論を分けなければなりません。海老沢前会長と同じ政治部記者だった安住淳議員の経験ではそうではないのかもしれませんが。
百歩譲って番組内容についても政治がコミットできるということになると、では番組内容についても政治のコミットを受けないためには受信料制度と予算の国会承認というルールそのものを廃止するよりないということになりますが、それでは公共放送は必要無いのかという別な議論も発生し得ます。
受信料制度を廃止し、NHK予算の国会承認も廃止して、民営化させて自分の金の面倒は自分でみろということにすれば、番組に対する介入は発生しなくなるかもしれませんが、それでは広告主の意に添わない番組が作れない民放と変らなくなってしまいます。
それでいいのか、公共放送を廃止していいのかという問題をどう考えるか、という点についてきちんと考えない限り、受信料収入と予算の国会承認というルールについて公共放送の理念を切り捨てたような結論を出すことはできないと私は考えます。この点で、「NHKが公平であるわがないだろ」的な諦観した認識や、「もう民営化しちゃえよ」的な某週刊誌のような議論には問題があります。
安住淳衆議院議員は、「放送業界のあらゆる膿を吐き出す」のではなく、放送業界に対する“政治業界”の介入の膿を吐き出す質問を行っていただきたい。
次に社民党の福島党首。福島さんはNHK問題についてたくさん発言しているので抜粋。 

福島瑞穂参議院議員(社会民主党)
http://www.mizuhoto.org/
福島みずほの国会大あばれ
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000027778
2005/01/27号
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501271810000000027778000

本日は、昨日26日に行なわれました、本会議質疑をお送りいたします。
・・・・・・
◆政治権力のメディアへの介入について
次に、政治権力のメディアへの介入の問題です。
当時、官房副長官であった安倍晋三さんは、放送の前に、公正中立の立場で報道すべきではないかと発言をしていることを認めています。番組は、二〇〇一年一月三十日放送の直前、一月二十九日、三十日に大改変が行われています。これは憲法二十一条が禁止している検閲に実質的に当たると考えます。また、放送番組は何人にも干渉されないと規定する放送法三条にも明白に違反しています。
表現の自由が侵害されるとき、民主主義が死にます。日本の中でメディアが生きるのか死ぬのか、それを決する極めて重要な事件です。事件の解明と責任を明確化させるため、政治家の参考人招致が必要だと考えますが、いかがですか。
総理は昨日の答弁で、NHKは圧力を受けていないと言っているので問題はないと答弁をしました。しかし、問題の本質が違います。政治権力による圧力によって国民の知る権利が奪われたという重大な問題なのです。このことに関して明確な答弁を求めます。

2005/01/25 訂正号
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501252320000000027778000

◆ 政治権力のメディアへの介入について ◆
NHK問題と言われているけれどもそうだろうか。
確かにNHKの問題ではあるが「政治権力のメディアへの介入問題」ととらえなければ、大変なことになると考える。
私は、メディアが生きるか死ぬか、ということを決する問題であると思う。
NHKの長井チーフプロデューサーが1月13日に記者会見をして、番組に対する「政治家の圧力」を証言してくれたこと自体「奇跡」のようなものである。
1 2001年1月〜2月にNHK教育テレビ「ETV2001」の特集で「戦争をどう裁くか」の4回シリーズが放送された。問題になったのは、1月30日に放送された第2回「裁かれた戦時性暴力」の番組である。この番組は、旧日本軍のいわゆる従軍慰安婦問題を審理し、判決を出すという「女性国際戦犯法廷」を主に取材して構成された。
女性国際戦犯法廷」は、「法廷憲章」作成という手続きを踏んで、膨大な証拠資料と証言に基づき、時の国際法を適用して裁いた民衆法廷である。五大陸から選ばれた世界的に信頼の高い国際法の専門家や旧ユーゴ国際刑事法廷の裁判官がこの民衆法廷の裁判官をつとめた。「女性国際戦犯法廷」には、被害8カ国から64人の被害女性が参加し、メディアは国内外から約300人が参加し、三日間の審理には約1000人が傍聴している。「女性国際戦犯法廷」がどのようなものであったかぜひ知って欲しいと思う。
2 高橋哲哉東京大学大学院教授は、2005年1月30日号の「サンデー毎日」のなかで以下のように書いている。高橋さんは、NHKの側から追加の台本が送られ、追加の撮影の依頼があったと述べている。高橋さんは、1月28日の追加の撮影には応じている。1月28日には、44分の番組がほぼ完成している。
問題はこれからである。1月29日から放送日である30日にかけて、出演者の誰も知らない、了解をしていない大改変が行なわれたのである。放送された番組を見て、出演者や取材に協力した人々は、当初の「企画」や説明とあまりに違っていたために驚き、怒ったのである。被害者側の証言のカットなどの、番組の大改変が29日、30日に起きる。そもそもこの番組は、44分番組である。しかし、放送されたのは、40分である。「44分の番組をつくれ」と言われ、40分の番組を納入することなどありえない。「異常」なことである。
そこでNHKと番組の制作会社を相手どって、裁判が提訴される。
当時から、まさに直前に大改変が行なわれたのは、政治家の圧力があったからだと言われていた。しかし立証が困難だったのである。長井さんの告発、そして安倍晋三さん、中川昭一さんの発言は、政治家の圧力を立証するものである。なお第一審の判決は、制作会社に対する慰謝料請求だけを認め、NHKに対する請求は認めなかった。
3 政治家によるメディアへの圧力
安倍さんは「明確に偏った内容であることが分かり、公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」と言っている。安倍さんは、当時、官房副長官である。与党の有力な政治家であると同時に、「内閣」の枢要な位置を占めている。
ところで、憲法21条1項は、表現の自由を保障し、2項は「検閲は、これをしてはならない」と規定している。表現行為に対して、事前に介入してはならない。検閲は絶対に許されない。裁判所の事前差し止めもきわめて例外的な場合にしか認められていない。
表現行為に対して、事前に介入したら、そもそもその「表現」は、表に出ないか、ゆがめられてしまう。人々は「表現」されたもので判断をしていく。そして、民意を形成し、民主主義を形づくっていく。メディアに対する政治権力の介入が許されれば、メディアは死んでいく。それは、とりもなおさず民主主義が死んでいくということを意味する。憲法21条2項が「検閲は、これをしてはならない」と定めている意味は、極めて大きい。
今回の行為は、事実上の検閲であり、表現の自由を侵害するものである。安倍さんの発言を前提としても立派な「介入」である。そして大改変が行なわれたのである。このような行為が「問題ない」として居直られたら、大変なことである。
日本のメディアの生き死にがかかっていると思う理由である。

 
福島さんの見解について私から特にコメントすることはありませんが、憲法の検閲禁止規定について補足すると、放送法は番組基準について定めた放送法第3条の2(旧44条=政府草案4条)の制定の歴史ととても深く関係しています。
政治的公平原則が規定されている現行放送法第3条の2は、以前は放送法旧44条と呼ばれていた規定で、その放送法旧44条は政府原案4条と呼ばれていた規定でした。
第2回国会に提出された放送法案第4条(提出時法案)は、このようなものでした。
 

(番組統制)
ニュース、時事評論、時事分析及び時事解説に際しては次の原則に従わなければならない一 厳格に真実を守ること。
二 直接であると間接であるとにかかわらず、公安を害するものを含まないこと。
三 事実に基き、且つ、完全に編集者の意見を含まないものであること。
四 何等かの宣伝的イとに合うように脚色されていないこと。
五 一部分を特に強調して何等かの宣伝的意図を強め、又は展開させないこと。
六 一部の事実又は部分を省略することによってゆがめられないこと。
七 何等かの宣伝的意図を設け、又は展開するように、一の事項が不当に目立つような編集をしないこと。

 
この放送法政府案の番組統制条項は、検閲政策に関った旧内務省の通産官僚が大日本帝国憲法下で実施された体制翼賛体制の報道統制政策を復活させようとして作ったものです。
しかし、この放送法案第4条(提出時法案)は、1948年12月2日、当時の連合国軍総司令部の法務局(LS)が「検閲の禁止を定めた憲法と矛盾する」などとして提案に反対したことで修正され、政府が統制するのではなく自主的に番組を制限する旧44条=現行3条の2となったわけです。
連合国軍総司令部法務局(LS)が日本政府に対して送った意見書(抜粋)にはこうあります。
 

この条文には、強く反対する。
なぜならば、それは憲法二一条に規定されている「表現の自由の保障」と全く相容れないからである。
現在書かれているままの第四条を適用するとすれば、絶えずこの条文に違反しないで放送局を運用することは不可能であろう。
・・・・・
この条文は、戦前の警察国家のもっていた思想統制機構を再現し、放送を権力の宣伝機関としてしまう恐れがある。

(放送法制立法過程研究会編「資料・占領下の放送行政」1980年・東京大学出版会。207項)

 
大日本帝国の検閲制度を放送法によって復活させようとした通産省は、この連合国軍総司令部の「意見書」に占領軍指令33号(プレスコード)を根拠に意見書に反論しましたが、連合国軍プレスコードと国内法の性格は同じではないとして却下し、日本政府は第四条(番組統制条項)を放送法案から削除しました。
そのかわりとして作られた条項が、放送局が自主的に守るルールとして作られた旧第44条3項の番組準則で、それが放送法の再改正を経て今の現行放送法第3条の2になっているわけです。
ちなみに、当初、旧第44条3項の番組準則には「公安及び善良な風俗を害しないこと」という原則はありましたが、「政治的公平原則」の項目は入っていませんでした。
「政治的公平原則」が盛り込まれたのは60年安保直前の1959年の放送法改正の時で、この時は保守派の低俗番組批判が高まっていた頃ですが、番組審議会の設置義務、放送番組基準の設置義務と共に政治的公平原則が無理矢理追加されました。(低俗番組批判というものの本質は、政治的公平の名の下での政治介入のために提出された「議論のための議論」だったとも解釈できます)
 
次に山本たかし議員。民主党議員の中では公共放送についてかなりまとまった意見を情報公開している議員のようです。
 

■山本たかし参議院議員(大阪選挙区選出・民主党
http://www.ytakashi.net/
NHK不祥事と公共放送
http://www.ytakashi.net/CONTENTS/OPINION/content/NHK.htm
山本たかし 蝸牛のつぶやき
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000021451
2005年2月1日号
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200502020040000000021451000

◆ 今週の「何でやねん!?」
* エビ・ジョンイルこと海老沢NHK会長辞任の翌日に、顧問に就任。「院政宣言だ!」と思ったら、翌日には辞任。NHKには茨城出身者が多い、それは橋本登美三郎郵政大臣以来の派閥とか。「政治家に、事前に番組内容を説明する」と平然と言う体質、そして海老沢院政への企て。これで受信料を払ってもらえるのだろうか。

 
NHKには茨城出身者が多いというのは面白い。コネ入社は民放にもあると言われていますが、考えてみればNHKにもあるというのは頷けます。
要するに、以前から自由民主党という政党はNHKに介入し、私物化し服従させ私欲のために使っていたということでしょうか。民主党が政権与党になったときはどうでしょうか。そういう不安感を払拭する意味でも、公共放送の問題や政治介入の問題について政治家がしっかり発言することが求められます。
次ぎにドクター桜井こと桜井議員。*2
 

桜井充参議院議員(民主党)
ドクター桜井の日本診療
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000041719
363号 05.2.3
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200502032020000000041719000

◇お役所仕事
・・・・・
NHKの問題についても質問した。海老沢さんは世論の批判が強かったため、顧問就任を断念したが、私も総務省に対して、かなり厳しい抗議を行った。もし、質問の日まで顧問を辞めていなければ、委員会に参考人として呼ぶつもりだった。
質問の前日に、質問通告をするのだが、この時にきたNHKの関係者の態度はひどかった。私が質問の内容を伝えているときに話をしていた。それだけではない。私の受信料が海老沢さんの顧問料になるのであれば、受信料など払いたくないと言ったら、ニタニタしながら、義務ですから払ってくださいと言い放った。
本来であれば、「信頼を失って申し訳ございません。これから一生懸命頑張ってまいりますので、よろしくお願いします。」という趣旨のことを言うのが当然だと思う。
しかし彼は違っていた。NHKの職員全てが彼のような人だとは思わないが、とにかく反省しているとは思えなかった。
委員会の質問で明らかになったことは、現在顧問は4人いて、顧問料として合計5400万円支払っていること、彼らは週に3、4回しか勤務していないこと、そしてタクシーチケットは年間43億円使っているということだった。43億円ということは、一日あたり1100万円使っていることになる。これをNHKの職員数で割ると、毎日一人平均1000円使っていることになるのである。
今度NHK予算の審議が行われる。党の方針はどうなるか分からないが、私は反対するつもりだ。何故ならば、それが国民の皆さんの声だからである。

 
顧問料5400万円? タクシーチケットが年間43億円?(唖然) 
NHK予算審議で反対するとのこと。取材でどうしてもタクシーが必要になるケースは私も憶えがあるので否定しませんが、43億円は使い過ぎでしょう。
顧問料5400万円、タクシーチケット43億円を含むNHK予算案に反対する議員を私は支持します。頑張れドクター桜井。
 
次に、「討ち首」失言発言で有名な鴻池祥肇参議院議員(元青少年担当大臣・現参議院決算委員長)の発言。今回も失言でわたしを楽しませてくれました。
 

鴻池祥肇参議院議員
http://www.kounoike-web.com/
コウノトリが運ぶ国会通信
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000066300
第183号
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200501181750000000066300000

残念ながら見ていないんですが、「NHK」が平成13年1月に「問われる戦時性暴力」という特集番組が政治化の圧力で改変されたかどうか、大問題になっています。
この問題の番組は、平成12年12月に東京で6日間にわたって「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」なるものが開かれ、それを取り上げたものだそうです。
いずれその映像を手に入れて見るつもりですが、聞くところによると各国の女性活動家たちが「法廷」を開いて、昭和天皇陛下は「強姦と性奴隷」の責任で有罪とするといった番組だそうです。
それを事前に知った中川氏や安倍氏が「ケシカラン」と言ったとか言わなかったとか。それで、少し内容を変えたとか変えないとか。なんじゃそれ!
こんな馬鹿げたサヨクの番組を、教育番組として日本中にそれもNHKが放映するなんて。政治家からの圧力や発言以前の問題じゃない!
放送法第3条てのがあるようですが、その当時も今もNHKには常識というものが働いてなかったんでしょうな。一番大事なものは常識ですよ。
とにかく日本中、電車に乗っても、道を歩いていてもどこへいっても非常識人間が多いですね。その非常識人間が多く集まる永田町と霞ヶ関に今週はおります。21日が国会開会式と小泉総理の所信演説があります。
1月18日 午後5時半 議員会館にて

 
この人、ほんとに国会議員なんでしょうか? 内閣官房長官談話も知らないみたいですし。(とぼているんだろうと想像しますが)
鴻池議員も安倍議員と同様、自ら「政治介入はあった」と自白して動機を説明したようなものでしょう。頭が大日本帝国の人は議論でも特攻して自爆するのが得意なのでしょうか? 歴史を否定することが男の本懐ってところでしょうか。
天皇統帥権のもとで戦時性暴力が存在したことは、以前紹介した日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷での証言でも明らかですが、もしその証言に疑義がありその疑義について議論したいのであれば、なおさら番組は修正せず放送されるべきでした。
情報の共有なしに議論はできないということは、国民の「常識」に属する判断ではなかろうかと思われます。逆に言えば、情報が事実であるということを否定する証拠や論拠が無いので、情報の共有それ自体を否定したい、番組を改変させたいということではないでしょうか。
ちなみに、鴻池議員は右派思想政治団体の「日本会議」に集う「日本会議議連」のメンバーのひとりで、「憲法・皇室・靖国問題プロジェクト」の座長をしていたこともある方です。*3博徒鴻池忠治郎の孫で鴻池組のオーナーだという話*4もありますが、未確認*5。KSD献金受領者でもありますね。
いずれにせよ、国民の知る権利の意義を理解していない鴻池議員のような議員は、選挙で国民の良識によって落選させるべきでしょう。というか、次の選挙でもし立候補するようなことがあれば謹んで落選指定させていただきます。
 
私は自民党議員だから発言は悪だと言っているわけではありません。
たとえば河野太郎議員は写真で顔を見るといつも視線が泳いでいますが、ときどき良いことを言います。この発言もそのひとつ。
 

河野太郎衆議院議員(自由民主党)
http://www.taro.org/index.php
ごまめの歯ぎしりバックナンバー
http://www.taro.org/ml/mailmagazine/index.html
ごまめの歯ぎしり 05年2月8日号
興味のないこと
http://www.taro.org/ml/mailmagazine/index.php?mode=day&log=200502&date=8#no211

・・・・・
8日付の新聞に、「法務省は不正流用が指摘されている検察庁の調査活動費について適切に執行されているとの報告書を衆院予算委員会理事会に提出した」という記事があった。「元幹部が主張する不正流用問題は現時点で調査する必要はないとしている」と、たんたんと事実を書いているだけだ。提出されたのは、調査をしてシロでしたというのではなく、検察庁は調査の必要がないと思ってますという報告だ。
お前のお腹は黒く塗られているという指摘があれば、腹を見せながら、そんなことはないといえばよいものを、服も脱がずそんなことはないといっているわけだ。
しかし、マスコミは、検察庁がそういう報告書を理事会に出しましたという記事を書いているだけ。
事実を書く、つまり検察庁が報告書を予算委員会の理事会に出したということを記事にするのはよろしいのだ。が、この報告書をどう評価するのか。評価はしないのだ。おとがめがあるから。
なんだ、とっくに権力に、権力の圧力にひれ伏してしまっているではないか。
・・・・
NHKも朝日新聞も、両者の喧嘩について論評している他のマスコミも、とっくに圧力に屈しているじゃないか。

 
圧力に屈していることは事実ですし、“お払い下げ情報”をお役所から独占的に貰って商売するための制度である記者クラブに、官からコントロールを受けているという問題はたしかにあります。検察裏金問題然り、六ヶ所村問題然り。という意味で河野太郎議員の言い分は一理あります。
しかし、だからといってその圧力を既成事実のものとして認めるわけにはいかないし、メディアの中には圧力に屈してはいけないとする良識や良心があることも事実でしょう。
その良識や良心を持つジャーナリストを圧力に屈しているメディアの中でどう育てていくのかという議論があり、その議論の延長にNHKの長井告発があります。
そういう視点が河野太郎議員にはありませんし、結果的に政治家の圧力という問題についての論評を避けている点は残念です。
───────────

*1:『未来総理』は与野党の複数の若手議員の発言の場として株式会社ロゼッタストーンが運営しているメールマガジンです。

*2:ドクター桜井さん、あなた民主党党首に立つって以前メルマガで書いてたけど、どうしてこの前の党首選挙のときに立候補しなかったの? まぁいいか。

*3: http://www.linkclub.or.jp/~teppei-y/tawara%20HP/2003.12.3/1.html

*4: http://www.asyura2.com/0403/senkyo3/msg/956.html

*5:カマヤンの虚業日記 宗教右翼関係情報整理 http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20050123/1106491623