衆議院「代用監獄」についての議論

 
代用監獄」についての議論なついての衆議院会議録へのリンク。(最近のもの)
平成11年に臼井法務大臣共産党議員の質疑に「できるだけ(代用監獄)早く解消するように努力をしていきたい」と答弁していましたが、平成17年現在もまだ解消されていません。「できるだけ早く」と言っているうちに鹿児島県志布志町の事件が発生してしまっている。
鹿児島県志布志町の冤罪事件は、警察当局の犯罪であると同時に、法務省の犯罪です。法務省は不作為による共犯者だ。
取調べの可視化についての議論はありますが、つっこみが足りないように思います。

 

衆議院
http://www.shugiin.go.jp/
会議録 第145回国会 本会議 第25号(平成11年4月22日(木曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000114519990422025.htm

坂上富男*1 私は、民主党を代表して、拷問等禁止条約の締結についての承認について、質問をいたします。
・・・・・
第八に、条約十一条の翻訳についてであります。
「拷問が発生することを無くすため」と翻訳されておる部分の原文を忠実に翻訳すれば、「いかなる拷問の事件も予防するという観点で」と訳すべきであると思っておりますが、いかがでございましょうか。「体系的な検討を維持する」と翻訳されている部分の原文は、「組織的な再検討を続けなければならない」と翻訳すべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
翻訳は、明らかに、問題となっております代用監獄制度を意識し、条約正文の意義を薄める意図で、意図的に誤訳されているのでないかと思っておりますが、いかがでございましょうか。翻訳の再検討を強く要請いたしたいと思います。

会議録 第157回国会 法務委員会 第2号(平成15年10月3日(金曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000415720031003002.htm

○野沢国務大臣*2 委員が御熱心にこの問題に取り組んでおられること、大変敬意を表しておりますが、この代用監獄問題にかかわる課題につきましては、平成十年に出されたB規約人権委員会の最終見解において、代用監獄が捜査部門とは分離されているものの、警察から独立した当局の管理下に置かれていないこと等を指摘した上で、代用監獄制度がB規約のすべての要請に合致されるべきことを勧告されたと承知をいたしております。
しかし、被疑者の勾留については十分な司法的コントロールがなされている上に、被勾留者の保護のための担保措置が既に十分に講ぜられているということから、代用監獄が警察と分離された当局の管理下にないことについての懸念は当たらないと考えております。*3
○木島委員 どうも、その日本政府の認識、根本的な間違いだと思いますよ、私は。警察署の中に十三日間、あるいは二十三日間、拘禁され続けている、そのことが自白の温床になっているんですよ。もうそれは、大体法曹の世界では常識じゃないでしょうか。
だから本当に、そういう自白偏重、そして拷問とまでは言いませんけれども、同じ警察署の中に閉じ込められている、そういう状況がどんなに人権侵害をし、また真実発見にも阻害になっているかということが指摘されているんじゃないでしょうか。だから、同じ警察署の中にいて、捜査警察官と留置のための担当警察官、それは別ですよ、だからいいんだという理屈はもう通用しないんですよ、大臣。

会議録 第146回国会 法務委員会 第3号(平成11年11月10日(水曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000414619991110003.htm

○臼井国務大臣 我が国におきましては、刑事事件の真相解明を十全ならしめるために、極めて詳細な取り調べを行っているのが実情でございます。こうした実情のもとで、取り調べの電気的手段による記録を実施したり、あるいはその再生、反訳等に膨大な時間と労力、費用を要する等の問題がございます。
こうした中で、一方、供述したその内容を供述者に対して読み聞かせ、または朗読させ、補充、訂正の申し出があればそれらを加筆をする、こうしたいろいろなことを現在やっているところでございまして、収容人員という問題もあり、これらの捜査上の問題というものもあり、現在、残念ながら代用監獄というものを使わざるを得ないという状況にございます。
したがいまして、これらについてもできるだけ早く解消するように今後とも努力をいたしてまいりたい、このように考えております。*4
○木島委員 今大臣から最後に、できるだけ早く解消するように努力をしていきたい、こういう御答弁をされました。大変重く受けとめたいと思うんです。

会議録 第159回国会 法務委員会 第33号(平成16年6月2日(水曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000415920040602033.htm

○辻委員 八〇年代に入ってから、夜間でも、また執務時間外でも、弁護人が接見に行った場合に、代用監獄に行った場合に、会わせてもらえるというか、もらえるというのは、権利ですから、会うことができると言うべきだと思いますが、なっております。ただ、夜の十一時ぐらいに接見に行くと、本人がもう寝ているから、できれば、緊急でなければあしたにしてもらえないでしょうかというようなことを言われたりすることがあるわけですね。それでも会わなきゃいけないときは、起こしてくださいということで会ったりするわけでありますが。
つまり、留置場の日課の生活として、六時に起きて九時には寝るということからいえば、九時以降は、やはりこれは深夜だというふうに通常考えておかしくないと思いますね。任意の取り調べではありますが、この川畑幸夫さんという方については、送り迎えをされて夜の十一時に家に帰ってくる、だから、少なくとも十時半ぐらいまでは取り調べをされているわけですよ。こういう深夜にわたる取り調べが行われた、しかも最初三日間行われ、次に十六日間ですか行われ、さらに十九日間か何か行われている、これは全部任意同行という形なわけであります。
このように、深夜の問題は水かけ論になるかもしれないから、私は九時以降は少なくとも深夜だと思いますけれども、このように任意の取り調べを長期間にわたって繰り返して行うことというのは、一般的に考えて、一般的に考えてですよ、どのようにお考えなんですか。
○栗本政府参考人*5
(略)
社会通念上相当と認められるような方法、態様、こういう限度において許容されるものとしてやるべきものと考えております。

会議録 第145回国会 法務委員会 第16号(平成11年5月25日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000414519990525016.htm

○白取参考人 白取でございます。*6
今回の組織的犯罪対策三法案に反対であるという立場から意見を申し上げます。
(略)
日本国憲法は、非常に豊かな人権条項を持っています。とりわけ捜査と刑事裁判に関しては、少なくない人権保障、権利保障の規定があります。しかし、刑事実務においては、例えば捜査段階に国選弁護制度がない、被疑者に保釈が認められていない、黙秘権を侵害するような取り調べが代用監獄制度を背景にして行われたという裁判例が多数報告されています。このように、刑事手続は、日本においてはまだ近代化が果たされていない。立法論として、黙秘権、弁護権を充実するための立法提案というのは、これまでないわけではなかったけれども、いずれも実現してこなかった。現代型犯罪に対処するための法整備が全く不要だというふうには言いませんけれども、まずはおくれている近代化が先ではないだろうか。
この点について、欧米先進諸国の例がよく出されます。しかし、例えばマフィアの本家とされているイタリアでは、一九八九年に、未決拘禁の期間を制限し、弁護権を充実する新しい刑事訴訟法ができました。これが施行されたために、四千人あるいは五千人のマフィアを釈放せざるを得なかったということが報告されています。そこまでやって近代化を果たすという、産みの苦しみがイタリアでもあったということを指摘しておきたい。
日本国憲法に沿った自由で平和な社会を目指すということ、そのためには、まず人権保障のための改革をすることが先決であって、組織的犯罪対策三法案というのは、憲法の理想に逆行する監視社会をつくるおそれがあり、賛成できないということを最後に申し上げて、私の意見陳述を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

会議録 第145回国会 法務委員会 第24号(平成11年7月23日(金曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000414519990723024.htm

○北村(哲)委員 五年前から同じことを繰り返されている。今の大臣の御見解も、五年前も同じ、今回も同じ、法務省
しかし、現実にはこういう事態が起こっておるという問題があります。ですから、繰り返しそれはおかしいじゃないかと現実に私は言いました。
この事件に照らしてみますと、目の前に、検察官が一年間かかってやっと整理した膨大な記録があるわけですよ。それを、今大臣は、弁護人は証拠にアクセスする権利は十分保障されているとここで言われました。国際社会でも言っているんです。おかしいじゃありませんか。全然ないんですよ、弁護人にはアクセスする権利が。裁判所は勧告することはできると言いました。それもあるかもしれません。しかし、現実にはしない。権利としてはないんです、勧告をしなければ。その点についてどう考えるかということで、人権委員会は、日本政府はおかしいではないかとたびたび言っているわけです。
特に、これだけではないんです。被疑者の国選弁護人制度がない問題とか、未決勾留期間の問題とか、その中で、未決勾留期間が長くて、そして代用監獄の中でやられるから自白が強要されるんだとか、そういうことについても直さなければいけないんだということを言われているわけです。特に、今の問題については、まさにこの狭山事件に関連して、アクセスする権利がないと一般論として言っておられるわけです。その点について、今のようなお答えは私は非常に不満であります。

会議録 第156回国会 法務委員会 第13号(平成15年5月14日(水曜日))

○鴨下参考人 ただいま御紹介いただきました龍谷大学法学部客員教授の鴨下であります。*7
(略)
法制度の整備について、学者や法曹人の中には、依然として欧米崇拝主義から脱却できず、既に行刑制度が破綻に瀕している欧米諸国において既に失敗していると報告されているような第三者委員会による受刑者の不服申し立て処理制度の導入などを声高に主張し、あるいは、本来的に行刑法の分野で論議する問題とは言えない死刑制度や代用監獄の廃止を主張して、我が国の行刑を全面的に否定したり、あるいは、建設的な意見を明らかにすることなく、法改正に反対する意見を繰り返している人が少なくないということが、私にとっては残念でなりません。

会議録 第156回国会 予算委員会 第13号(平成15年2月18日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001815620030218013.htm

○山花委員 山花郁夫でございます。
法務大臣、ここのところ刑務所の過剰収容というのが大変問題となっておりまして、この点について、今度の予算でも拘置所の新設であるとか刑務所の増設など、予算がついていることは承知をいたしておりますが、まず、法務委員会でも指摘をさせていただいております話でありますけれども、代用監獄、あれは留置場ですから所轄は警察ということになるんでしょうけれども、本来であれば拘置所の新設ということが必要なのではないかということを、まず冒頭指摘をしておきたいと思います。

会議録 第145回国会 法務委員会 第7号(平成11年4月13日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000414519990413007.htm

○高橋(融)参考人 弁護士の高橋融であります。
(略)
また、グローバルスタンダードが言われておりますけれども、国連の規約人権委員会は、政府が提出した報告に基づいて昨年審議を行いまして、代用監獄における起訴前の勾留と起訴前保釈制度がないこと、有罪判決において自白偏重であること、弁護側に証拠開示を求める一般的権利がないことなどについて厳しく勧告をし、前にも勧告したのにこれが全く措置されていないことについて不満を述べています。また、人権規約上の人権について、司法官、行政官に対する教育システムがないということを指摘しております。

会議録 第145回国会 法務委員会 第5号(平成11年3月30日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000414519990330005.htm

○福岡委員 ありがとうございました。
それでは次に、大出先生に御質問を申し上げたいと存じます。
憲法の人権保障規定に基づく刑事訴訟法が施行されましてから、ちょうど満五十年になるわけでございます。その間、我が国の刑事司法というものは、人権保障が充実強化されるどころか、この五十年の間にますます形骸化の一途をたどると言われております。特に、刑事訴訟法の規定します人権保障手続、当事者主義、直接主義、そして黙秘権の保障、それから権利保釈、これらの問題は、実際の運用では全く形骸化されておるという批判が長くされているわけであります。いわゆる規定と運用というものの差が激しく著しくゆがめられておる。しかも、これは先ほど先生の方で御指摘もありましたように、国際人権規約にも反するということで、内外の批判を浴びているわけであります。
このような刑事裁判を改革するということは、我が国の国民の人権保障上はもちろん重要でありますけれども、それのみならず、我が国の国際的な信用回復の面から見ても極めて重要であります。人権問題というのが今は国際間の信用のバロメーター、したがって、アメリカなどはいろいろな国に対して、人権侵害について監視の目を光らせておる。西欧諸国なんかも、それをまず第一番に考えておるというわけでありますけれども、我が国の司法改革というものの中に本当にこの点が真剣に考えられているかということは非常に疑問であろうかと思うのであります。
そういう意味から、この刑事司法についての改革の重点はどこにあるのか、そしてまた、その必要性はどこにあるのか、大出先生の専門的な御見解をお伺いしたいわけであります。
○大出参考人 私、専門が刑事訴訟法でございますので、先生の御指摘はごもっともかと思いますし、刑事訴訟法をやっている者にとりましては大変心強い御指摘であったかと思います。

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*1:坂上とみお衆議院議員(新潟2区) http://www3.ocn.ne.jp/~minshu/member/profile/SakagamiTomio.html

*2:野沢太三Wikipedia) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E6%B2%A2%E5%A4%AA%E4%B8%89 矯正管区長 少年鑑別所長会同における野沢法務大臣訓示 http://www.moj.go.jp/SPEECH/INSTRUCTION/inst040708-01.html

*3:「十分な」司法的コントロールがなされているという点は嘘ですし、被勾留者の保護のための担保措置が既に「十分に」講ぜられているというのも嘘。問題は取調べの密室性であり、その密室性を担保するための環境が代用監獄

*4:「できるだけ早く解消するように今後とも努力をいたしてまいりたい」と法務大臣が国会で答弁してから6年経っているわけですが。誠意はどこにあるんですか? 政府が誠意を示せないなら、納税者としても税金を払うことはできませんね。

*5:朝6時起床で夜10時まで取調室での過酷な取調べを38日間実施することを「許容されるものとしてやるべきもの」と言った人は、栗本英雄警察庁刑事局長。元神奈川県警本部長で、元公安調査庁調査第一部長。神奈川県で暴走族を応援することになるとして「団旗の掲揚」を犯罪として処罰する迷惑防止条例を作らせたのもこの人。いわゆる盗聴法国会では、携帯電話の通信履歴や位置情報などの取得を「検証令状で必要な情報を得るということはあり得るかと思います」と答弁したこともありました。 http://murasame.s42.xrea.com/wiretap/thought/tapping13.htm

*6:白取祐司教授。刑事法について私は彼の学説から少なからず影響を受けました。信頼できる刑事法学者の一人です。

*7:代用監獄存守を訴えている鴨下守孝参考人は、自民党推薦の参考人客員教授とか言ってますが、実は法務官僚の天下りで、刑務所の不祥事を管理する仙台矯正管区長という職に就いていた方。つまり、行刑業界で利益を得ている側の利益代表者です。