警察の犯罪捜査:「踏み字」の強要

 
2005年2月13日に放送されたテレビ朝日ザ・スクープスペシャル」を見ました。「ザ・スクープ」は今回もいい仕事です。
犯人にしたてあげて犯罪を捏造するキチガイじみた警察の取調べの事実に絶句しました。
踏み絵ならぬ「踏み字」。警察の自白の強要は常軌を逸しています。
一番悪いのは、警察による自白中心の取調べを事実上容認している法務省・検察(に弱みを握られてなにもできない政治家)と不祥事を改善しない国家公安委員会ですが。
 

テレビ朝日
ザ・スクープ
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/

一昨年4月、鹿児島県志布志町の人口わずか6世帯の集落で起こった選挙買収事件が、「日本の刑事司法の病理が集約された事件」として法曹界の注目を集めている。
突然、身に覚えのない容疑で警察の任意同行を受け、連日の厳しい取り調べで精神的・肉体的に追いつめられていく高齢の被告たち。結果、3人が自殺未遂、3人が意識不明となって倒れ、5人が救急車で運ばれた。
現金授受を裏付ける物証が一切無く、犯行日さえ特定されない中、警察検察は、「自白」だけに頼って逮捕起訴するが、被告13人全員が自白は強要されたものとして無実を主張している。
参考人が供述してもいない内容の調書でっち上げ。
家族の名前を紙に書いて「踏み字」の強要。
取調室から虚偽の電話をかけさせ録音。
警察のウソで次々弁護士解任に追い込まれる被告たち…
取調室という密室で行われた驚くべき違法捜査の数々を検証する。

 
この番組の内容は、2月14日にインターネットでも公開されています。是非ご覧下さい。CM無し。
 

狭山事件42年目の真相〜事件経緯&自白強要/証拠を再検証 【約21分】
ADSL(300k)
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/asx/scoop050213-01_0300.asx
ISDN(64k)
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/asx/scoop050213-01_0064.asx
狭山事件42年目の真相〜斎藤鑑定パート1&2
鹿児島事件〜人権無視の取り調べ 【約25分】
ADSL(300k)
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/asx/scoop050213-02_0300.asx
ISDN(64k)
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/asx/scoop050213-02_0064.asx
■鹿児島事件〜違法捜査のデパート、接見交通権侵害 【約21分30秒】
ADSL(300k)
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/asx/scoop050213-03_0300.asx
ISDN(64k)
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/asx/scoop050213-03_0064.asx

動画配信バックナンバー
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/Frameset/special.html

 
警察の異常な取調べの背景となっている刑事政策に関する国連人権委員会の「最終見解」を以下に抜粋します。
外交文書は「強く勧告する」「勧告する」「深く懸念する」「懸念する」「非常に遺憾に思う」「遺憾に思う」「喚起する」といった様々な表現によって意見の重要度が示されますが、「強く勧告する」「勧告する」という表現は条約上の義務である「要請する」に次いで強い、強制力の無い表現としては最高レベルの表現であることに注意してください。
 

■外務省
人権委員会第64回会期(1998年11月19日)規約第40条に基づき締約国から提出された報告の検討 人権委員会の最終見解 日本 (仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c2_001.html

C.主な懸念事項及び勧告
22.委員会は、起訴前勾留は、警察の管理下で23日間もの長期間にわたり継続し得ること、司法の管理下に迅速かつ効果的に置かれず、また、被疑者がこの23日の間、保釈される権利を与えられていないこと、取調べの時刻と時間を規律する規則がないこと、勾留されている被疑者に助言、支援する国選弁護人がないこと、刑事訴訟法第39条第3項*1に基づき弁護人の接見には厳しい制限があること、取調べは被疑者によって選任された弁護人の立会いなしで行われることにおいて、第9条*2、第10条*3及び第14条*4に規定する保障が完全に満たされていないことに深く懸念を有する。委員会は、日本の起訴前勾留制度が、規約第9条、第10条及び第14条の規定に従い、速やかに改革がされるべきことを、強く勧告する。
23.委員会は、代用監獄制度が、捜査を担当しない警察の部局の管理下にあるものの、分離された当局の管理下にないことに懸念を有する。これは、規約第9条及び第14条に基づく被拘禁者の権利について侵害の機会を増加させる可能性がある。委員会は、代用監獄制度が規約のすべての要請に合致されるべきとした日本の第3回報告の検討後に発せられたその勧告を再度表明する。
25.委員会は、刑事裁判における多数の有罪判決が自白に基づくものであるという事実に深く懸念を有する。自白が強要により引き出される可能性を排除するために、委員会は、警察留置場すなわち代用監獄における被疑者への取調べが厳格に監視され、電気的手段により記録されるべきことを勧告する。

 
以下、日弁連の関連情報。
 

■日本弁護士連合会
代用監獄廃止について(申入れ)
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/03/2003_58.html
刑事裁判に関する決議
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/jinken/80/1981_2.html
被疑者の弁護活動強化のための宣言
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/jinken/90/1991_4.html
代用監獄廃止
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/ketsugi/80/1980_2.html
拘禁二法案の再々提出に反対する決議
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/jinken/90/1990_1.html
拘禁二法案についての決議
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/jinken/80/1987_6.html
留置施設法・刑事施設法案 刑事施設法案
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/ketsugi/80/1982_2.html
拘禁二法案を廃案とし、国際基準を充足する拘禁法の制定を求める決議
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/jinken/90/1991_3.html
刑事拘禁制度改革実現本部ニュース No. 88
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/katsudo/jinken/koukin/2004/88.html
誤判の根絶を期する宣言
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/jinken/80/1984_1.html
国連の人権活動 国連の委員会 (国連第10回犯罪防止会議日弁連報告書)
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/jinkenlibraly/un/crime/report/report-10th/contents.html
国連の人権活動 国連の委員会 (国連第10回犯罪防止会議日弁連報告書)
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/jinkenlibraly/un/committee/crime/report/report-10th/contents.html
監獄法改正問題
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/kaityou/80/1980_5.html
刑事司法改革に向けての提言 【ダウンロード】
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/00/2000_16.html
国連被拘禁者人権原則をうけて
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/kaityou/80/1989_4.html
自由権規約 (報告書審査1998年)
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/jinkenlibraly/treaty/liberty/report-4th/observation/contents.html
自由権規約 (第3回に対するカウンターレポート)
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/jinkenlibraly/treaty/liberty/report-3rd/jfba-rep/contents.html
日弁連新聞 第360号 シンポジウム 取調べの可視化(録音・録画)で変えよう、刑事司法!
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/syuppan/shinbun/2004/360.html
榎井村殺人事件再審無罪判決をうけて
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/kaityou/90/1994_3.html
拘禁二法案の廃案にあたって
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/kaityou/90/1990_2.html
松山事件再審開始決定についての談話
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/kaityou/70/1979_11.html
日産サニー事件再審開始決定について
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/kaityou/90/1992_2.html

 
関連出版物。
 

取調べの可視化(録画・録音)で変えよう、刑事司法!
日本弁護士連合会取調べの可視化実現ワーキンググループ
取調べの可視化(録画・録音)で変えよう、刑事司法! (GENJINブックレット (42))
http://d.hatena.ne.jp/asin/4877982051
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4877982051/
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世界の潮流になった取調べ可視化 取調べの可視化(録画・録音)で変えよう、刑事司法! Part2
世界の潮流になった取調べ可視化―取調べの可視化(録画・録音)で変えよう、刑事司法! Part2 (GENJINブックレット (46))
http://www.hanmoto.com/bd/ISBN4-87798-227-2.html
http://d.hatena.ne.jp/asin/4877982272
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4877982272/
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裁判員制度と取調べの可視化
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取調べ可視化-密室への挑戦―イギリスの取調べ録音・録画に学ぶ
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被疑者取調べの法的規制
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でっちあげ―痴漢冤罪の発生メカニズム
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*1:刑事訴訟法第39条第3項 「第三十九条 3  検察官、検察事務官又は司法警察職員司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。 」 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html

*2:「第九条 すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。 逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。 刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、釈放に当たっては、裁判その他の司法上の手続のすべての段階における出頭及び必要な場合における判決の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。 逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。 違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。 」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html

*3:「第十条 自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。 (a) 被告人は、例外的な事情がある場合を除くほか有罪の判決を受けた者とは分離されるものとし、有罪の判決を受けていない者としての地位に相応する別個の取扱いを受ける。(b) 少年の被告人は、成人とは分離されるものとし、できる限り速やかに裁判に付される。 行刑の制度は、被拘禁者の矯正及び社会復帰を基本的な目的とする処遇を含む。少年の犯罪者は、成人とは分離されるものとし、その年齢及び法的地位に相応する取扱いを受ける。 」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html

*4:「第十四条 すべての者は、裁判所の前に平等とする。すべての者は、その刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を有する。報道機関及び公衆に対しては、民主的社会における道徳、公の秩序若しくは国の安全を理由として、当事者の私生活の利益のため必要な場合において又はその公開が司法の利益を害することとなる特別な状況において裁判所が真に必要があると認める限度で、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。もっとも、刑事訴訟又は他の訴訟において言い渡される判決は、少年の利益のために必要がある場合又は当該手続が夫婦間の争い若しくは児童の後見に関するものである場合を除くほか、公開する。 刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。 すべての者は、その刑事上の罪の決定について、十分平等に、少なくとも次の保障を受ける権利を有する。 (a) その理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質及び理由を告げられること。(b) 防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること。(c) 不当に遅延することなく裁判を受けること。(d) 自ら出席して裁判を受け及び、直接に又は自ら選任する弁護人を通じて、防御すること。弁護人がいない場合には、弁護人を持つ権利を告げられること。司法の利益のために必要な場合には、十分な支払手段を有しないときは自らその費用を負担することなく、弁護人を付されること。(e) 自己に不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問させること並びに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。(f) 裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。(g) 自己に不利益な供述又は有罪の自白を強要されないこと。 以下略」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html