NEWS23多事争論 「言論の自由」カテゴリー

筑紫哲也氏のメディアや民主主義を見る目は透明でよく見えているなあといつも思います。少なくともその批判者にくらべて。
以下に挙げる言論の自由記者クラブ、盗聴法といった問題はその一例。

言論の自由表現の自由報道の自由

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s40505.html
憲法リテラシー*1という言葉があるそうであります。リテラシーというのは文字を知る能力、あるいは読み解く能力でありますけれども、私たちはそもそもどこまで憲法というものを知っているでしょうか。例えば言論の自由、宗教を信ずる自由、あるいはイラクの人質はどんな事があっても国が守らなければいけないという、そういうものが憲法のどの条文に該当するのかということを思い浮かべることが可能でありましょうか。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s40331.html
今日の東京高裁の週刊文春*2に関する決定*3について、文春側は「表現の自由が崩壊の瀬戸際で守られた」と言っておりますが、私はそれほど楽観しておりません。
表現の自由を抑えようとする時には、「入口」と「出口」と2つの方法があります。つまり、入口で差し止め、事実上の「検閲」というかたちでそれを抑え込む。出した後で厳しい罰金がいい例でありますけれども、賠償要求に対するお金の額とか、そういうかたちで出口をおさえるという2つの方法があります。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s40217.html
新しいファッションに身を包むと自分が生まれ変わるような気分になるものですけども、それが錯覚であることは当然でありまして、どんなに良い法律を作っても、大事な事はその人間が、あるいは国が、政治がどうやってそれを使うかであります。
その例が、今の憲法に対する私たちの対し方でありますけれども、果たして今の憲法を私たちは十分にこの衣を着こなしてきたのかどうか。言論の自由*4や黙秘権*5について憲法の何条にあるかということを私は時々聞く事があるのですが、答えられる人はほとんどいない。つまり、アメリカ人がそれについてはすぐに条文が言えるのとは違って、この憲法を十分に使いこなしたとは到底言い難い。それにも関わらず、古いからと言って捨てると言う、そういうファッションなのかどうか。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s20419.html
しかしながら、その後の日本の近代の歴史というのは、しばしばそういう「多事争論」を封じ込めてしまって、治安維持法*6とかいろんなものがありました。そして、歴史というのはしばしば繰り返すといわれます。
たとえば、今の私たちの状況というのは、いろんな面で、例えば大恐慌の前夜とか、そういうことを含めて、戦前と似てるんじゃないかという議論がありますが、しかし、たった一つ大きく違ったのは何かというと、私たちの社会には「言論・表現の自由がある」、みんなが勝手なことを言えるということであります。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s10626.html
「そちも相変わらず悪よのぉ。」
この後「いかんざき」*7という公明党の党首が出てくるわけでありますけれども、実はこの二つとも、いわば他者という者に対する言及があります。その中で、最初の社民党のCMでありますけれども、これは民放各局の中では他党への誹謗・中傷等をしたものは受け入れないということがありまして、このTBSを含めて、東京の各局も含めて、33局がこれはもう流さない。全国で77局はこれを受け入れているということが出ております。
後者の場合は、何処でも受け入れる形になっているようでありますけれども、その「本当に怖いことは、最初、人気者の顔をしてやってくる」*8というのは、多分誰のことかという連想が着くということで、誹謗・中傷という扱い*9になったんだろうと思います。後者の場合はKSD事件を連想する人はあまりいないかもしれないということなんでしょうけれども、表現の自由といいますか、あるいは検閲・検定という、そういうことの関連から言うと非常に難しい問題だろうと思います。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s10115.html
そして二番目には、表現の自由とか、言論の自由というのはそれを勝手に使うマスコミのためにあるわけではなくて、それが大事なのは最後には国民のためであります。
そういうことをメディアの方が十分にやっているのか、公権力を監視するという大事な役割を果たしているのか、その面でいうと私は反省すべきことはいっぱいあると思います。しかし、それを狭めるような方法というものに動いていることは、極めてこれはテレビ局やマスコミの人間が困るのではなくて、損をするのは国民であります。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s01026.html
放送と通信が一緒になるというのは思い浮かべていただければ、今のテレビとインターネットの距離が限りなく近づいていくというような形を想像してみれば良いんだと思います。
一方で、しかし、テレビの方にはプライバシーを守るとか、あるいは言論の自由表現の自由とか、いろんなものが放送、ジャーナリズムにまつわる問題が御座います。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s70109.html
長く続いておりますペルーの事件*10は、もうひとつの、ある意味では”人質”を生むことになりました。ペルー政府によって拘束されているテレビ朝日系記者ら二人のことを私はさしているのですが、とにかく報道の側から言えば、政府機関にこういう人間を長く拘束されていることによって、一種の”人質”的な状態が生まれている。つまり、取材というものに対するひとつの制限が生まれざるを得ない。
今度のやったことについては批判的であったり、問題があると思っている現地の記者や、あるいは現地のマスメディアが、今ではペルー政府のやり方に対して抗議の声をあげているのは実はこのためです。つまりこれは報道の自由というものに関わるわけですが、一方でテレビの取材の仕方というのは、別の面でもいろんな批判が多いときに、こういうことを申し上げるのはいささか業界の弁護のように聞こえるかもしれませんが、私は事はそこにとどまらないと思います。

http://www.tbs.co.jp/news23/taji/s60606.html
今日の午後、私はイギリスのジャーナリストで「エコノミスト」の編集長である、ビル・エモットさん、日本論*11も多い人ですけれども、その人と話していて、彼の「リベラルの定義」というのは「選択の自由・表現の自由・権威を公然と疑う自由」、こういうものがある最高の環境の中では、人間が初めて満足した人生を送れると。そういう信念のことをリベラルという。そういたしますと、これは個人の責任、個人というものを強く見る訳ですから、赴くところ、政府、そういうものを邪魔する政府の存在は小さい方がいいということになります。

多事争論月別リスト
http://www.tbs.co.jp/news23/taji/solist.html

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*1:憲法対論』まえがき──憲法なるものの射程と限界 (Message from ミヤダイ 2002年11月17日) http://www.miyadai.com/message/?msg_date=20021117

*2:週刊文春3月25日号 http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040319#p2http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040321#p1http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040322#p3

*3: 週刊文春:東京高裁決定要旨(04年3月31日) http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/syukannbunnsyunntoukyoukousaiyousi.htm

*4: 日本国憲法「第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

*5: 日本国憲法「第三十八条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

*6:治安維持法 http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/jiyuudannatu.htm治安維持法とはどんな法律だったか? http://www.jcp.or.jp/faq_box/2002/2002-0213faq.html

*7:親指に注目 http://www001.upp.so-net.ne.jp/monday19/komeito.jpg

*8:日本テレビ放送網株式会社東京放送株式会社、株式会社フジテレビジョン全国朝日放送株式会社、株式会社テレビ東京に対する社会民主党の申入書 http://www5.sdp.or.jp/central/timebeing/mousiire0704.html 、 『スーパーJチャンネル』社会民主党広告検閲事件についての質問状 http://www5.sdp.or.jp/central/timebeing/situmon0626.html

*9: 「進歩と改革」No.596号 「社民党CMの放映拒否は民主主義の脅威」 http://www.s-kaikaku.com/Shinpo-Kaikaku/shohin/book/shucho-596.htm

*10:外務省緊急対策本部「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/peru/97/

*11: 「日はまた沈む―ジャパン・パワーの限界」ビル エモット (著) ISBN:4794203721 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794203721/