ベネズエラでラジオ・テレビ社会的責任法案が可決


 
ひとの振り見て我が振り直せ。
 

放送規制法案を可決 ベネズエラ
http://www.sankei.co.jp/news/041126/kok025.htm

25日付のベネズエラ各紙によると、同国国会は24日、暴力や性描写のほか「公共の秩序を乱す」内容の放送を大幅に規制する「ラジオ・テレビ社会的責任法案」を与党の賛成多数で可決した。
左派のチャベス大統領は日ごろから自身に批判的な報道を「富裕層と結託したメディアによるテロ行為」と非難しているため、野党や人権保護団体は「政府による報道統制につながる」と批判している。
違反した放送局には100万ドル(約1億円)単位の罰金が科されるほか、放送免許の取り消しもあり得る。(共同)

以下、全国紙を「ベネズエラ」で検索。

NY原油急騰、48ドル台 灯油の需給逼迫感が再燃
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041120-00000022-kyodo-bus_all

冬の灯油需要期を前に、暖房油など石油製品の在庫が減少していることが材料視された。また、産油国ベネズエラのラミレス・エネルギー・鉱業相が、来月予定されている石油輸出国機構(OPEC)会合で減産合意する可能性について支持する考えを示したとする報道が、相場を急速に押し上げた。

ベネズエラで検事暗殺か - 読売新聞 (124文字) 2004年11月
[NEWS25時]在ベネズエラ中国大使館 中国住民の警護強化を要請 - 毎日新聞 (216文字) 2004年11月
「先住民殺害した男を裁け」コロンブス像を引き倒す ベネズエラ - 産経新聞 (93文字) 2004年10月
コロンブスは虐殺者」 ベネズエラで抗議集会、大統領派が銅像破壊 - 読売新聞 (280文字) 2004年10月
チャベスベネズエラ大統領の勝利、中央選管が確認 - 読売新聞 (155文字) 2004年8月
[NEWS25時]ベネズエラ 「不正投票、見当たらず」 - 毎日新聞 (127文字) 2004年8月
ベネズエラ:先住民「ワユ族」ルポ チャベス人気、根強く - 毎日新聞 (884文字) 2004年8月

グローバリズムの拡大、日米など石油消費国による石油資源国の搾取、石油資源国の搾取の反動として広がる反米民族主義の高揚と権力者による反米民族主義の利用、ポストグローバリズ構想の欠如、その結果として発生する経済失政と産業の低迷、その結果としての貧富の格差の拡大、その場しのぎの権力の集中一元化、反政府運動に対する弾圧と反政府活動の劇化…といった現象が同時進行していることが伺えます。
以下、外務省のベネズエラ・ボリバル共和国についての分析。
石油を支配する石油消費超大国による経済支配やグローバリゼーションに対抗するために、国内権力を過度に強化しているという政治状況が伺えます。

■外務省
ベネズエラ・ボリバル共和国(Bolivarian Republic of Venezuela)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/venezuela/data.html

政治体制・内政
(1)1958年の大統領選挙により民主政治の基盤が築かれて以後、民主体制が持続。1968年以来、それぞれ中道のキリスト教社会党(COPEI)と民主行動党(AD)による二大政党が定着し、政治的にも安定。
(2)98年12月の大統領選挙で、独立系の第五共和国運動のチャベス(92年のクーデター未遂事件の首謀者)が当選。
(3)99年2月に就任したチャベス大統領は、新憲法の制定を最大の公約とし、政治改革に優先的に取り組み、同年12月の新憲法に関する国民投票を経て、大統領権限の強化、国会の一院制への移行、国家主義的経済運営等が発効。2000年7月には政治改革の集大成となるメガ選挙(新憲法に則った大統領、国会議員、州知事等の選出)が実施され、チャベス大統領が圧勝。
(4)チャベス大統領はその後、経済社会政策に重点を置く旨宣言したが、十分な失業、治安対策が図れなかったため支持率が急落。01年末より反政府運動が活発化し、野党、財界、労組、マスコミ、教会との対立を深めていった。
(5)2002年4月には、軍主導によって一時暫定政権が発足するという政変劇が発生(「4月政変」)。わずか2日後にチャベス大統領は大統領職に復帰し、国民各層との対話・融和に取り組むが、同年末になり反政府運動が再燃し、同年12月から03年2月迄の二ヶ月間に亘り、大統領罷免を求めるゼネストが全国規模で行われた。
(6)これを受け、米州機構OAS)、友好国グループ、カーターセンター等が仲介努力を行った結果、2003年5月に大統領罷免国民投票の実施を含む政府側と反政府側の合意が成立。右合意を踏まえて、同年11〜12月には大統領等罷免国民投票を求める署名運動が実施された。
(7)2004年6月7日、全国投票評議会(CNE)は、5月に行われた約100万人分の署名の再検証(異議申し立て)プロセスを経て、有効な署名総数を確認し、大統領罷免の是非を問う国民投票を8月15日に実施する旨発表。
(8)国民投票では、予想を上回る有権者が殺到した上、指紋認識装置の問題等が発生したことから投票プロセスの遅滞を招いたが、国際監視団による投票監視活動の下、大きな混乱なく平和裡に実施された。その結果、チャベス大統領の罷免は回避され、同大統領の任期は2007年1月10日迄継続されることとなった。
(9)国際社会が国民投票の結果を認める中、依然、反政府側は不正の疑義を呈し最高裁に異議申し立てを行っている。しかし、10月31日に実施された地方選挙では、与党側が圧勝を収め、チャベス政権はその政治基盤を一層固めつつある。
 
12.経済概況
ベネズエラは、88年頃までは一人当たりGNPが南米第一位の豊かな国であったが、原油市況の低迷、為替切り下げ、金融危機や経済調整政策の影響により経済状況は悪化し、ベネズエラ社会を特徴づけていた厚い中間層が没落、低所得者層の貧困が深刻化している。

ベネズエラのメディア規制がケシカランという主張には、「でもそれは超大国アメリカのグローバリズムを擁護することになるじゃないか」という批判があるかと思いますが、私はそういう二項対立的思考は採用しません。
私はグローバリズムに対抗するという意味での反米民族主義大義が無いとは思いませんし、原油資源国が石油消費国である超大国アメリカや日本の石油“簒奪”が正しいとも思いません。石油を支配する石油消費超大国による経済支配やグローバリゼーションに対抗するために、権力を強化しなければならないという事情は、その当事国の国民の将来を考えるなら一定の正当性は認められるべきでしょう。
でも、それとこれとは別で、グローバリズムへの対抗という目的の議論と対抗手段の議論は区別すべきだというのが私の立場です。
アメリカの産業がベネズエラのメディアに経済的圧力をかけて政府批判をさせている陰謀論が事実なのかどうかはわかりません。
メディア外圧が存在することが仮に事実だとしても、国民の基本的人権を制限し、自由を奪ってまで権力強化をすることにどれだけの価値があるのかという整合性を考えると、「ラジオ・テレビ社会的責任法案」はやりすぎです。
じゃあ他に手段があるのかとチャベス政権派の人から批判がありそうですが、その手段を見つけられないというのがいまのチャベス政権の弱点です。
グローバリズムに対抗するなら、グローバリズムと同じ手法は完全に脱しなければならない。支配の政治から合意の政治へ。そういう転換が必要なのに、それができない弱さがメディア規制となって現れているのだと思います。*1
 
関連ログ。

■kitanoのアレ
2004-05-09 戦時人権制限法による戦時下の放送報道管制
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040509
青少年健全育成基本法案をとりまとめた自由民主党内閣部会の議員
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040315#p1
青少年健全育成基本法案国会提出へ
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040311#p1

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BGM (二次元系向き)
http://222.106.20.112:8042/listen.pls
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*1:同じことが日本の与野党についても言えそうですが、それについては後日。