共同通信社の誤報:イラク邦人人質事件

2004年10月31日10時14分、讀賣新聞が「バグダッドで発見の遺体は香田証生さん」と報道しました。ご冥福を祈ります。
自衛隊撤退の選択肢があったにもかかわらず撤退しないと判断し、結果的に国民を見殺しにした小泉首相には、政府指導者としての不作為の作為に対する結果責任が問われなければならないと思います。
…と書いた後に、首相官邸から緊急声明が出ました。

内閣総理大臣声明 平成16年10月31日
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2004/10/31seimei.html

1  この度、我が国政府として、人質解放のため、可能な限りのあらゆる努力を尽くしたにもかかわらず、香田証生さんがテロの犠牲になられたことは、痛恨の極みであります。衷心より哀悼の意を表するとともに、御家族に、心からお悔やみを申し上げます。
2  無辜の民間人の生命を奪った今回の行為は、非道かつ卑劣極まりないものであり、改めて強い憤りを覚えます。
3  我が国は、引き続き、国際社会と協調し、イラクの人々のために自衛隊による人道復興支援を行っていくとともに、断固たる姿勢でテロとの闘いを継続してまいります。
4  国民の皆様の御理解と御協力を心からお願いいたします。

可能な限りのあらゆる努力を尽くした???
香田さんの両親にも同じ説明をするのでしょうか。
総理大臣としての資質以前に、人間としてどうかと思います。
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国民を見殺しにした小泉内閣総理大臣に対する苦情の送信先はコチラ
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さて、本題ですが、一部のケダモノ国民(プロ奴隷を含む)たちの“首斬り処刑報道待望論”に煽られてスキャンダルを出しぬこうとフライングしたのではないかという気もします。だからといって誤報が免罪されるわけではないとは思いますが。

イラク邦人人質:共同通信が殺害断定の記事を配信
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20041031k0000m040133000c.html

共同通信社は30日、イラクで人質になった香田証生さん(24)が殺害されたと断定する記事を加盟紙などに配信し、複数の地方紙やブロック紙が号外や夕刊で「殺害を確認」「遺体発見」などと誤報を掲載した。西日本新聞などは「殺害」とした記事を一部地域で差し替えて夕刊を配り直した。
 共同通信は30日午前3時過ぎ、「香田さんがイラクで殺害された」と速報した。遺体が別人と確認された後の午後8時過ぎに検証記事を配信し、「政府や与党関係者らの取材に基づいて報じたが、最終確認の詰めが不十分だった」と誤報を認めた。

次の記事が誤報記事の例。時刻に注目。政府が正式に死亡を確認したと報道された時刻は午前10時すぎ。

東奥日報社
頭部を切断されたアジア人男性見つかる 香田さんらしいと病院関係者
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20041031010000362.asp

バグダッド発の共同通信によると、バグダッドで頭部を切断された若いアジア人男性とみられる遺体が見つかった。イラクの複数の治安当局者が30日語った。AP通信の報道。中東の衛星テレビ、アルアラビーヤによると、イラク暫定政府の内務省報道官も、日本人らしい遺体が見つかったと語った。遺体を収容した病院の職員は、香田証生さん(24)=福岡県直方市=と思うと話しているという。 (10/31 05:40) - 共同

東奥日報社誤報記事について訂正報道を出しています。

情報の判断ミスが誤報に 最終確認の詰め不十分
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/hostages/news/1030-334.html

共同通信社イラク日本人人質事件で30日未明、イラク北部で見つかった遺体について、人質の香田証生さん(24)と断定し「香田さん殺害」との誤報を配信した。政府関係者や与党幹部らの取材に基づくものだったが、最終確認の詰めが不十分だったことと、情報の判断ミスが誤報につながった。
共同通信は30日午前2時ごろ、高島肇久外務報道官が外務省にタクシーで駆けつけるところを確認。首相官邸と外務省のほか、中東の衛星テレビ、アルジャジーラの動向など現地の動きも並行して探った。
一方で細田博之杉浦正健正副官房長官らが官邸に参集。こうした状況も併せ、「政府は香田さんの死亡をほぼ断定している」とする十分な根拠はあると判断。午前3時3分に「香田さん殺害」のニュース速報を流した。
高島報道官は午前4時から記者会見し、バグダッド日本大使館に米軍から「バラドで日本人らしい遺体が発見され、香田さんの体の特徴と一致する部分がある」との連絡が入ったことを明らかにした。
その後の取材で香田さんの死亡を否定する情報がなかったことに加え、当初の取材結果に重きを置き続けたため「政府は歯型や指紋などで最終確認しない限り正式発表はしないが、香田さんの死亡を間違いないとみている」と判断し、政府の「香田さんではない」との発表を待つことになってしまった。

「ごめんなさい」ぐらいどうして言えないんだろう。
私の見たところ、誤報について「謝罪」しているまともな新聞社・テレビ局は、熊本日日新聞など一部だけで、それ以外のニュースサイトで「お詫び」を掲載してるサイトは見当たりません。

誤報関連記事
http://news.google.co.jp/news?num=100&hl=ja&lr=&tab=nn&ie=UTF-8&q=%E8%AA%A4%E5%A0%B1

お詫び/熊本日日新聞
http://kumanichi.com/sokuho/20041030.html

おわび イラク日本人人質事件の報道について 
イラク日本人人質事件をめぐり「くまにちコム」は30日、共同通信社の情報をもとに香田証生さんが殺害されたと報じましたが、米軍が通報した遺体は最終的に別人で、香田さんの安否は依然不明であることが判明。殺害は誤報でした。
共同通信社は30日未明、米軍から日本側に香田さんとみられる遺体をイラク国内で発見したとの通報があり、首相官邸細田博之官房長官、また外務省には担当局長ら政府要人が急きょ招集されたことをつかみ取材を開始。取材に対し、複数の政府要人、与党幹部が、香田さんが死亡していると認めたため、政府が断定していると判断し、香田さん殺害を速報。「くまにちコム」も信頼性が極めて高いと判断し、伝えました。
しかし、30日午後6時すぎ高島外務報道官が記者会見し、米軍が通報した遺体は香田さんと別人と発表しました。
この報道により香田さんのご家族、関係者及び読者の皆様にご迷惑をかけましたことを深くおわびします。

「情報は現場にある」という原則がおろそかになっているのでは?
これまでの誤報例では、記者が現場での取材が不足していたことに起因する例が多いです。「政府の見解が事実である」的な歪んだ現実認識が、マスコミの取材現場で常態化しているのかもしれません。
記者クラブ体制に依存し、現場取材の不足体質になっているのは、共同通信だけではなく、どこの新聞社も同じでしょう。共同通信だけを責めるわけにはいきません。
マスメディアは原点に戻って「国民の知る権利」を行使していただきたいものですが、ただ、マスコミの情報に依存して過度な期待を持つ国民の側も、独自の一次情報源を持ったり自ら情報公開請求をするなど、“情報の自律”を自覚した方が良いでしょうね。
念のために書いておきますが、今回の誤報は「事実が確認取れないまま事実として報道した」ということで、フライングだったという意味で誤報です。
ただ、フライングだからたいしたことが無いという認識にも私は同意できません。いつの時点でその事実を知り判断したかという情報は、公的地位にある人の判断の正しさをめぐる重要な情報となり得るのですから。

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■雑談

讀賣テレビのニュースを観ていたら、邦人誘拐事件のニュース番組で、「ここまでの番組はご覧の提供でお送りしています」というアナウンスがあったあと、なぜか提供の文字が出ず、香田さんの誘拐犯の画像だけがずっと出ていました。提供の文字はアナウンスから10秒ぐらい後になってやっと表示。
一瞬、誘拐犯が讀賣テレビの提供なのかと思いました。放送事故でしょうか。

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