2004年報道の自由度世界ランキング

日本国は42位。ボスニア・ヘルツェゴヴィナナミビアよりもジャーナリストの地位が低い国。
北朝鮮が最下位だとか下を見て安心しているようじゃね。上を見ないと、上を。
というわけで、国境無き記者団の公表情報より日本よりも上の順位の国の一部を抜粋引用。

■国境無き記者団(RSF)
http://www.rsf.fr/
Third Annual Worldwide Press Freedom Index
世界報道の自由年次報告書2004年度版
http://www.rsf.fr/article.php3?id_article=11715

順位
1デンマーク
1フィンランド
1アイスランド
1アイルランド
1オランダ
1ノルウェー
1スロヴァキア
1スイス
9ニュージーランド
10ラトビア
11エストニア
11ドイツ
11スウェーデン
11トリニダード・トバゴ
15スロベニア
16リトアニア
17オーストリア
18カナダ
19チェコ共和国
19フランス
21ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
22アメリカ合衆国(本土)
  
42チリ
42ナミビア
42ウルグアイ
42日本
アジア地域の調査結果
http://www.rsf.fr/IMG/pdf/Asia_index_Eng_2004.pdf

日本(第42位)には、各種メディアに強い力があります。しかし、記者クラブの慣行は、複数のニュースへのアクセスを外国人とフリーランスジャーナリストから奪っています。

2004年 日本に関する年次報告書
http://www.rsf.fr/article.php3?id_article=10192

2003年5月の個人情報保護法*1の成立は、報道の自由を危険に陥らせた。同時に、小泉政権は、記者クラブ・システム(外国人とフリーランスジャーナリストの公式情報への有効なアクセスを否定している)を改良するために何もしていない。少ない事例であるがジャーナリストが2003年に殺害されている。2003年末、ジャーナリストの殺人の動機が中国の組織犯罪に対する彼による調査と関係しているかどうかについて、警察当局は捜査していない。
国会は、1年間の討論の後、2003年5月、論争の的になっていた個人情報保護法を成立させた。その法律は、日本の政治的と経済エリート内の汚職とセックスのスキャンダルをしばしば調査し報道する複数の雑誌の記者を脅かししている。
ジャーナリストのレオ・ルイスがトクダネ雑誌と呼んでいる『フライデー』『週刊実話』そして 『週刊文春』は、近年、どの従来の報道機関も取材を試みていなかったスキャンダルを報道した。フリーランス記者の石田氏は、同法をスキャンダルに対する報復行為であるとして以下のように非難した。 「雑誌はこれらのスキャンダルの報道により政権に対し実効ある抑制を与えた。だから議員が雑誌を罰する機会を見つけたことは実に自然であった」
警察は、警視庁指定116号事件として知られていた大手日刊新聞に対する襲撃事件に関する捜査を、犯罪の時効を迎えた3月11日に打ち切った。
朝日新聞襲撃事件の最後の攻撃は、1988年3月、同社の静岡と阪神支局の従業員と駐車場に対して行われた爆撃である。極右翼グループが犯行声明を出したが、警察は実行犯を特定しなかった。
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日本政府は、2003年度中に欧州連合が情報の自由な流通に対する重大な危害であると非難した記者クラブ・システムの改革を行なわなかった。長く与党にある自由民主党と主要メディアは、報道機関とジャーナリストを管理統制する方法として、記者クラブを維持した。海外特派員、フリーランス・ジャーナリストおよび報道自由機構からの批判にもかかわらず、政府およびメディアは、この旧態依然としたシステムの様相を変更するいかなる言動をも示さなかった。
1,500あると言う人もいるが、日本には公式には約800もの記者クラブが存在する。大部分は、公共機関(省および州政府)、大企業、政党および皇室と関連している。記者クラブのメンバーは、日本新聞協会(日本の新聞社と通信社)に加入した約160社のメディアの12,000人を越えるジャーナリストで構成されている。
第一記者クラブは議会を担当する記者によって1882年に設立され、以来、政府は記者クラブを推進した。記者クラブ員は、新聞社、全国テレビ局および全国通信社(共同通信及び時事通信)で働く約20人のジャーナリストに制限されている。それらは、関係のある機関のため、その機関の場所に置かれた記者クラブ室で働くジャーナリストの情報共有として役立っている。だが、外国人ジャーナリストは外務省の記者クラブで受け入れられるだけである。
日本の新聞社と新聞協会は、2003年12月の欧州連合記者クラブ批判を無視し、「記者クラブはニュースの輸入障壁の役割を果たしていると主張している欧州連合の提案は、誤解および偏見的で、部分的な情報に基づいている」と協会は主張している。
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2003年、ジャーナリストが殺害された。*2しかし、彼の死が彼の仕事と関係していたかどうかはまだはっきりしていない。
フリーランス・ジャーナリスト染谷悟の死体は、9月12日、東京湾で発見された。彼の手は縛られ、身体はチェーンで巻かれていた。彼は、8箇所殴られおり、頭部外傷を負っていた。警察は、彼の死について、東京の歓楽街歌舞伎町の中国の犯罪者は彼の取材を非常に恐れていたことと関係していると言っている。
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創価学会(この分派は連立与党のメンバーである公明党を含む金融と政治的な同盟を組んでいる)はフリージャーナリストを悩まし続けている。
隔週のニュース雑誌「フォーラム21」*3の編集者乙骨正生氏は、独立して活動し取材している日本と外国のジャーナリストへの不寛容に関するいくつかの例を示している。創価学会の一部は、日刊新聞を含む約10の出版物を所有している。公明新聞は200万の部数があるが、乙骨氏に対する少なくとも5つの訴訟を起こしている。

報道の自由度世界ランキングの評価方法
http://www.rsf.fr/article.php3?id_article=11716
・First world press freedom ranking (2003)
第二回報道の自由度世界ランキング
http://www.rsf.fr/article.php3?id_article=8247
・Second world press freedom ranking (2002)
第一回報道の自由度世界ランキング
http://www.rsf.fr/article.php3?id_article=4116

第1回調査では日本の順位は26位、第2回調査は44位、そして今回は42位。わずかに上向いたもののジャーナリスト(新聞社やテレビ局のことではない!)の地位は、小泉内閣成立を境に低順位で低迷中。
日本のランクが低い理由は、記者クラブの取材特権システムとか、司法制度の閉鎖性の問題とか、創価学会の問題とか、クロスオーナーシップの問題とか、放送免許や新聞流通の寡占が進んでいるとか、新聞社に法律上排他的資本移動制限の特権があるとか、新規参入が事実上不能になっているなど、いろんな背景があると思いますが、2003年に26位から一気に44位まで下がり、その後も低迷を続けているのは、おそらくメディア規制立法や戦争取材環境の悪化と関係があるように思います。
以下、マスメディア様の報道。

■CNN
報道の自由度、中東、東アジア低く、日本42位
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200410270013.html
朝日新聞
報道の自由北朝鮮が最下位 国境なき記者団ランキング
http://www.asahi.com/international/update/1028/005.html


「おかしな報道には抗議しよう日記」さんが「記者クラブ批判を理由にレポートを紹介しなかったとしたら、批判の内容を自らの態度で証明している事になる」と分析していましたが、その通りです。
ちなみに、韓国政府は“敵国”のランキングの低さを強調しています。

■韓国大使館 2004-10-27
ウォッチドッグ(監視グループ)、北韓による報道の自由抑圧を指摘
http://www.mofat.go.kr/mission/emb/jp_menuadd_view.mof?seq_no=2695&menu_add=243&ipage=2&si_dcode=JP-JP

下ばかりみている人は下に落ちていきます。事実に目をつぶる人はなおさらです。他人の振り見て我が振りなおせ。
以下、言及ダイアリー&ブログ。

http://d.hatena.ne.jp/http?//www.asahi.com/international/update/1028/005.html
http://d.hatena.ne.jp/taron/20041029 アメリカやイスラエルより低いのは納得できないとの感想
http://d.hatena.ne.jp/vladimir-kyoto/20041028 よく通ったとの感想
http://www.mypress.jp/v2_writers/talkingdrum/story/?story_id=742568 日本の大手メディアが記者クラブ批判を理由にレポートを紹介しなかったとしたら、批判の内容を自らの態度で証明している事になるとの分析。(スルドイ)
http://www.doblog.com/weblog/myblog/7303/637921#637921
http://d.hatena.ne.jp/odakin/20041029#p3
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2004/10/post_22.html 「こんなものなんじゃないか、日本の報道って」
http://haluhico.exblog.jp/1235039 「だが、アジアじゃ"2番目"だ」ってさ。はいはい、日本は北朝鮮と同じアジアだね。(苦笑)

「キシャクラブ」についての新聞協会の見解は、これ。この見解に私は不同意です。

記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解
2002年(平成14年)1月17日 第610回編集委員会
http://www.pressnet.or.jp/info/seimei/kenk20020117.htm

アメリカの順位ですが、記者の殺害とか愛国者法などの立法による報道制限などの理由があると思いますが、ニュースソースの秘匿(情報を提供した人の実名を絶対に公開しないという取材活動上の倫理的鉄則)を侵害するような立法、行政活動、司法活動が相次いでいることも理由に含まれているのだと思います。
最近も、ニューヨークタイムズの記者が報道倫理を守ったことを理由に法廷侮辱罪で逮捕・収監されました。

熊本日日新聞社
証言拒否でまた収監命令 NYタイムズの有名記者
http://kumanichi.com/news/kyodo/culture/200410/20041008000104.htm

【ワシントン7日共同】ワシントンの連邦地裁は7日、取材源の秘匿を理由に、米中央情報局(CIA)工作員名漏えい疑惑の大陪審証言を拒否したとして、米ニューヨーク・タイムズ紙の有名記者ジュディス・ミラーさんを法廷侮辱罪で収監する決定を下した。
 漏えい疑惑に絡む証言拒否で同地裁が記者の収監を命じたのは、米タイム誌のマシュー・クーパー記者に続き2件目。疑惑捜査への協力を優先させ、取材源の秘匿を認めない司法判断が相次いで下されたことに、米メディアは「憲法修正第1条で保障された報道の自由への挑戦」と危機感を強めている。
 決定によると、ホワイトハウス高官が国家機密であるCIA工作員の実名をジャーナリストに漏らした疑惑を捜査している特別検察官からの召喚状に基づき、同地裁は9月、ミラー記者に大陪審で匿名の取材源を明かすよう命じたが、同記者は拒否した。

CIA工作員の身元漏えい:大陪審証言を拒否、記者の収監命令−−米連邦地裁
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/10/09/20041009ddm007030079000c.html

情報源を漏らしたら、その瞬間、その新聞社に情報提供しようと考える情報源はいなくなってしまうでしょう。そうなって最終的に困るのは、知る権利を行使できない国民です。
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過去ログ。

2004-02-23 報道の自由度世界ランキング
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040223

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*1: 個人情報の保護に関する法律(平成十五年五月三十日法律第五十七号) http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html

*2: 染谷殺人事件 関連情報 http://www.asyura.com/0310/nihon8/msg/101.html

*3:フォーラム21 http://www.forum21.jp/ 、 2004-9-1 特集/警察の創価学会汚染創価学会との癒着は警察の汚点 ―学会員警察官の問題行動も多発など参照 http://www.forum21.jp/contents/04-9-1.html