カルト宗教の純潔教育論にふりまわされる東京都

青少年の性行為に関する東京都の取り組みについては、淫行処罰規定の導入の是非とは別に、学校教育機関における性教育の議論もいろいろされていて、問題が発生しています。
具体的にいうと、東京都と、“人間と性”教育研究協議会(性教協)と、“純潔教育派”統一協会系政治活動団体の三者が、性教育をめぐって三つ巴の激しい政策闘争を展開しているという状況があります。
東京における性教育をめぐる議論と経緯については、性教協サイトの情報が参考になります。

■“人間と性”教育研究協議会(性教協)
http://www.seikyokyo.org/
性教育ニュース
http://www.seikyokyo.org/menu/04.html
「東京都教育委員会への要請と公開質問状」
http://www.seikyokyo.org/news/news_24.html

東京都教育委員会に対して、以下の内容について要請をするものである。
1)公開質問状の各項目に、誠意ある回答を求めるものである。学習指導要領を説明の論拠とされるのであれば、具体的な箇所・文章を示すことを求めるものである。
2)性教育実践者への不当な処分を即刻撤回すべきである。処分の理由はほとんど説明のないものとなっており、その意味でも原状回復を早急にすべきである。
3)これまで押収した教材等について、その明確な説明がされていないのであるから、けっして「廃棄処分」などの指示をすべきではないことをあらためて要請する。
4)このような各学校ですすめられている性教育を押さえつけ、学校に混乱を持ち込むような「指導」「調査」などは今後は中止し、これまでのものは撤回すべきである。
5)東京弁護士会の「人権救済の申し立て」に伴う貴教育委員会への調査などには積極的に協力されたい。

「東京都教育委員会への要請と公開質問状」についての回答
http://www.seikyokyo.org/news/news_25.html
「東京都教育委員会への要請と公開質問状」についての回答第2回目、第3回目
http://www.seikyokyo.org/news/news_25.html
ジェンダーフリー性教育バッシング--ここが知りたい50のQ&A--」
http://www.seikyokyo.org/news/news_17.html
「東京都教育委員会・横山教育長への「性教育に関する7つの質問事項」
http://www.seikyokyo.org/news/news_12.html
産経抄への抗議文
http://www.seikyokyo.org/news/news_11.html
週刊新潮』の卑劣で低俗な記事に抗議する
http://www.seikyokyo.org/news/news_04.html
産経新聞』の事実をねじ曲げた性教協および性教育バッシング報道に対する抗議文
http://www.seikyokyo.org/news/news_03.html

3)「性教協の影響」という文脈のなかで「性道徳の指導を抜きに、避妊の知識と技術を教えるだけの“コンドーム教育”も全国に広がっている」という件(くだり)も全く事実に反します。記事のリードの部分にある「日本では、性行動の低年齢化という現状を追認するだけの“コンドーム教育”」が行われているという評価も何を根拠にして記事が書かれているのでしょうか。
高校3年生ともなれば、性交体験率は女子が45.6%、男子が37.3%、中学3年生では女子が9.1%、男子で12.3%となっています。また避妊の実行率をみますと、高校3年生の女子では「いつも避妊をする」は21.9%(2002年)で、93年45.2%、96年の29.2%、99年23.3%と年々実行率は低下しているのが現状です(東京都性教育研究会編『2002年調査 児童・生徒の性』学校図書、2002年)。ところが残念ながら、実際には避妊についてしっかり考えさせ学ばせる教育が全国に広がっているという現状ではありません。むしろ避妊の知識もなく、無防備なまま子どもたちは半ばせかされるように性行動をしているのが現実なのです。
渡辺浩記者は、「全国に広がっている」“コンドーム教育”の現場に一体どれだけ足を踏み込んで、取材をし、記事を書いているのでしょうか。新聞記者としての基本的姿勢が問われる問題なのではないでしょうか。
4)「日本では急進的性教育の蔓延などで性感染症や妊娠が増えている」という高橋史朗明星大学教授のコメントですが、そうした内容はどのように証明されているのでしょうか。従来の氏の主張からすれば、「急進的性教育」は性教協のことを指していると考えられますが、「蔓延」などという状況の理解は何に基づいてコメントされているのでしょうか。また「急進的性教育の蔓延」がどのように性感染症や妊娠の増加とつながっているというのでしょうか。私たちだけでなく、性教育・保健・医療関係者で、性感染症や妊娠の増加についてそのような分析をしている人はほとんどいないと思われます。全く特異な立場からの発言であることを貴社はご存じなのでしょうか。
すでにおわかりと思いますが、高橋史朗明星大学教授は、これまで統一協会系ダミー団体(たとえば、世界女性平和連合、東西南北統一運動国民連合など)で、講演と執筆を精力的に行なってきた人物です。そのことを承知の上で、コメントを掲載しているのでしたら、『産経新聞』の見識が疑われる問題です。
氏が統一協会の新純潔教育路線の忠実な協力者であったことは、浅井春夫編著『時代と子どものニーズに応える性教育――統一協会の「新純潔教育」総批判』(あゆみ出版、1993年)の拙稿「子どもたちに何を語りたいのですか――高橋史朗氏の「性教育」論批判」および「高橋史朗氏の『第三の性教育』批判」(『ヒューマン・セクシュアリティ』16号、1994年8月)で、高橋氏の協力者ぶりについて事実をもって明らかにしています。また1992年からはじめられた科学と人権を柱とした性教育への攻撃に対しても“人間と性”教育研究協議会代表幹事会編『統一協会 ボディコントロールの恐怖』(かもがわ出版、1997年)で、基本的な反論はしていますので、あらためてお読みください。

週刊新潮』編集部に対する再抗議文
http://www.seikyokyo.org/news/news_08.html
産経新聞』の回答と、それに対する再抗議文
http://www.seikyokyo.org/news/news_06.html

東京都が「性行動委員会」を設置した背景には、反性教育政策をとった都が性教協の批判に応じきれなくなり、ついに「性の学習権侵害」により人権救済申立*1までされ、どうにもならなくなった東京都の行き詰まり状況を打開したいとの思惑も含まれていると推測します。
また、純潔思想の一部カルト宗教勢力が期待する「性教育ネガティブキャンペーン」に一部右系メディアが同調し、性教育政策をつぶして純潔教育の導入にむけた取り組みを東京都にさせようとしているという状況もあるようです。
私は信仰の自由を認める立場ですので、純潔思想のカルトの人が“自分の信仰を実践するために自分自身に対して”規律することに寛容な立場です。純潔を守りたい人は勝手に守れば良い。純潔を失ってもそれ以上に欲しいなにかがあるならそうすればいいのです。
しかし、思想や教義を共有しない他者に対して純潔思想を制度や公教育の場でおしつけることには反対です。
感染症対策のためにコンドームの装着を教えることが「急進的性教育の蔓延」と非難しているカルト宗教や一部右系メディアはどうかしています。東京都がこうした純潔思想派の活動勢力にひきずられている状況は子どもにとって悲しむべき残念な状況だと思います。
性教育統一協会純潔教育の問題については下記出版物などを参考にしてください。

最新版 セクソロジー・ノート―性…もっとやさしくもっとたしかに
ISBN:4434041762
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統一協会ボディコントロールの恐怖―「新純潔教育」の正体
“人間と性”教育研究協議会代表幹事
ISBN:4876993319

カルト教団宗教法人世界基督教統一神霊協会についての情報は下記にて。

■弁護士紀藤正樹のLINC
http://homepage1.nifty.com/kito/
宗教被害を考える資料集
http://homepage1.nifty.com/kito/syuukyohigai.top.frame.htm
統一協会問題LINK資料集
http://homepage1.nifty.com/kito/uc.resorce.htm

霊感商法の実態全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称「全国弁連」)
http://www1k.mesh.ne.jp/reikan/

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【脚注】