経団連、著作権保護「日本マーク」導入を検討

日本経団連タイムス』 (7月29日発行 No.2732)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/index.html
日本経団連産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会−海賊版ソフト一掃へ意見交換
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2004/0729/06.html

コンテンツ産業各社で構成する不正商品対策協議会、コンテンツ海外流通促進機構で、いわば「日本マーク」ともいうべき統一マークの制定を行うことを検討していることを紹介。この統一マークを付与しないコンテンツは著作権を侵害していることの立証が容易となり、また同マークを偽造したものについては、迅速な権利救済が期待できる商標権侵害によって摘発することが可能となると述べた。さらに、このマークを付与した団体で商標権侵害への対応を一元的に行うことにより、多数の権利者に対する侵害を一網打尽に摘発することも可能となり、実効性の向上が期待できる上に、「米国の同様の団体などと協力しつつ、海賊版に関する情報や権利救済のノウハウなどもマークを付与した団体において集積することができる」と新たな可能性についても言及した。

要するに、

著作権A→著作権侵害A→著作権侵害調査A→著作権侵害者摘発A→著作権回復A
著作権B→著作権侵害B→著作権侵害調査B→著作権侵害者摘発B→著作権回復B
著作権C→著作権侵害C→著作権侵害調査C→著作権侵害者摘発C→著作権回復C
著作権D→著作権侵害D→著作権侵害調査D→著作権侵害者摘発D→著作権回復D
著作権E→著作権侵害E→著作権侵害調査E→著作権侵害者摘発E→著作権回復E

という具合に各社バラバラで対応している現状を

著作権A、B、C、D、Eに日本マーク付与
 ↓
日本マークの著作権と同時管理
 ↓
日本マークの著作権侵害発生
 ↓
日本マークの著作権侵害調査
 ↓
日本マークの著作権侵害者摘発
 ↓
日本マークの著作権回復
 ↓
結果的に著作権A、B、C、D、Eの著作権回復

という具合に、プロセスを統一させようということですね。
著作権管理の効率化という一言に尽きます。
ところで、キセルという喫煙用具を知ってますか? 吸い口とタバコを入れる部分だけを金地にして中間は木や竹でできている。キセル乗車なんていう言葉もあります。
「日本マーク」もキセル乗車に似ていると思いました。著作権を作って利益を回収するところだけ個々の会社がやって、途中の管理は日本マークの管理団体で取りしきる。日本マークの管理団体には莫大なお金が集まって、たくさんの役人が天下るのでしょうね。
こういうことを書くと「海賊版著作権侵害は許せない」うんたらと言い出す人がいるかもしれませんが、海賊版にもいろいろあって、国力の内外格差が大きすぎて著作権料を払えない国や会社は世界中にたくさんあるわけです。
日米など先進諸国の間なら著作権侵害の効率化を促進する合理性はありますが、国力が違いすぎる国にまで先進国のルールをおしつけるのは理不尽ですし差別です。横綱が子どもと交流試合する時に、本気で平手打ちしたりノド輪をかけたりしますか?
弱者も強者も同じ条件・ルールのもとで戦わせ、強者有利の条件を永続させるイデオロギー。それがグローバリズムの本質です。 経団連の「日本マーク」の導入は、悪しきグローバリズムの最たるもの。
著作権を侵害されている人たちは、ある局面では弱者ではありません。本当の弱者が他にいる、ということを、著作物を作っている人たちは自覚すべきです。
アニメや漫画が第三世界著作権使用料を回収できていないのは事実です。しかし、回収すべき著作権使用料よりももっと価値があってわたしたちにしあわせをもたらすものを、将来、第三世界の子どもたちは日本に与えてくれるに違いありません。
日本は漫画やアニメで世界に夢を与える。そして夢を見た子どもたちは、夢を実現しようと努力する。それによって日本は世界の人たちと幸せなる。すばらしいじゃないですか。目先の利益よりもよっぽど価値ある国際貢献です。
本当の弱者が他にいるということを知らない人たち、もしくは知って欲しくない強者の立場の人たちだけが、本当の弱者に対する配慮を棚に上げて「海賊版をつくるのはケシカラン」と言っているのではないか。そう感じられる言論を散見するのは残念なことです。

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