自殺者数過去最多の3万4千人:「悲観せず頑張れ」純一郎談

朝日新聞
自殺者、過去最多の3万4千人 昨年、経済的動機が増加
http://www.asahi.com/national/update/0723/003.html
http://www.asahi.com/national/update/0723/images/nat0723005.jpg

「経済・生活問題」が動機とみられる自殺者は、全体の増加率が7.1%だった中で12.1%増だった。全体に占める比率も、バブル期の90年は6.0%(1272人)だったが、景気停滞期に入ると増加傾向が続き、昨年は25.8%(8897人)を占めた。

陸奥新報 2004/07/24 社説 明るく前向きに生きる努力を
http://www.mutusinpou.co.jp/news/04072408.html

東京や大阪を中心に全国規模で心の悩みを受け付ける自殺防止センターの創設者は、プライドを捨てて悩みを打ち明けてほしいと話している。
 プライドというのは四十歳代、五十歳代の世代が持つ「社会の中心」という意識だ。そんなプライドは捨てて、悩みがあったら家族や周囲に相談してほしいというアドバイスだ。
 都内の精神科医院の院長は、終身雇用、年功序列という「制度の崩壊」のしわ寄せが四十歳、五十歳の世代にきていると指摘している。社会的な救済システムの構築が必要だとし、一方では「仕事優先」という意識の改革を説いている。

佐賀新聞 論説 2004年7月28日付 自殺者最悪 立ち上げたい本格対策
http://www.saga-s.co.jp/pub/ronsetu/index.html

自殺者の大多数は、精神疾患に陥っていることがいくつもの調査で明らかである。その大半はうつ病だとされる。
しかし、正しく診断され、適切な治療を受けていた例は極めて少ないのが実情だ。うつ病患者の四分の三が医療機関にかかっていないというデータもある。これでは自殺を防ぐのは難しい。
人員削減で過酷な仕事をこなし、追いつめられた状態が心の病を生んでいく。
厚生労働省研究班が二〇〇二年度に労災認定を受けた自殺者らを対象に実施した長時間残業調査では、仕事のストレスによる精神障害で自殺した人の半数が月に百時間以上の残業をしていたことが分かった。企業の労務管理が問われてしかるべきだ。

沖縄タイムス 社説 2004.7.24 自殺者過去最多 タブー克服し向き合おう
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20040724.html#no_1

東奥日報 社説 20040725 国を挙げて自殺防ぐ対策を
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/sha2004/sha20040725.html

それにしても、自殺予備軍がいつでも無料で弁護士に相談できる身近な制度でもあれば、事態は一変する可能性があるのだが…。
参院選後、なお改革続行を叫ぶ小泉首相よ。毎年、これほどの日本人が自ら死を選択している厳然たる事実。見て見ぬふりをしてはいけない。政治の出番だ。自殺者対策こそ、早急な抜本改革が必要ではないか。

北海道新聞 社説 自殺者最多*サインを見逃さないで(7月24日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20040724&j=0032&k=200407241272

昨年の特徴は、「経済・生活問題」が動機とみられる自殺が八千八百九十七人と、初めて八千人を突破したことだ。特に北海道は、自殺者千七百四十五人のうち五百四十二人までを占め、動機の一位(全国は二位)となった。
長引く不況が災いしているのだろう。リストラや倒産、負債や生活苦などで追い詰められ、生きるのに疲れ果てて死を選ぶ。そんな切なく、やり切れない姿が浮かび上がってくる。
小泉純一郎首相は、自殺者急増を受けて、景気対策に力を入れると言った。当然である。同時に失業者の雇用や経営難にあえぐ中小零細業者への支援にも力を入れるべきだ。
企業も従業員をもっと大事に思い、安易なリストラに走るようなことはやめにしてもらいたい。

信濃毎日新聞 社説=自殺者増加 深刻さがあらためて
http://www.shinmai.co.jp/news/2004/07/24/006.htm

長野県内は前年より百人多い六百四十三人だった。全国はこれで六年続けて三万人台である。とりわけ見逃せないのは、借金や事業の不振など「経済・生活問題」が動機とみられる自殺だ。過去最多だった前年を上回り、初めて八千人を超えた。
 このうち七割を四十代以上の男性が占めている。長引く不況の下、働く人たちが置かれた状況の厳しさをうかがわせる。競争が激化し、優勝劣敗の流れが強まるなか、企業の人員削減や倒産などで追い詰められる人が少なくないと考えられる。

愛媛新聞 社 説 2004.07.24 自殺者数が過去最悪未然防止にあらゆる手だてを
http://www.ehime-np.co.jp/shasetsu/shtsu20040724.html

特に深刻なのは「経済・生活問題」が動機とみられる自殺者数の増加だ。動機別では「健康問題」に次いで二位だが、それでも全体の25・8%を占め、九四年に比べると二倍以上の割合だ。年齢別でもリストラや倒産などの影響をまともに受ける中高年が多く、バブル崩壊後の不況の影は見逃せない。

高知新聞社説 自殺者最多 精神的な孤立防ごう
http://www.kochinews.co.jp/0407/040724editor.htm

もう一つ、数は少ないが見過ごせない数値がある。自殺した小中学生が93人と、前年より50%以上も増えているのだ。いじめの潜在・陰湿化や、対人関係の希薄化が懸念される。学校はもちろん、家庭や地域も含めた社会全体の対応も問われている。

毎日新聞
社説:自殺者最多記録 「社会の母性」を育まねば…
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/25/20040725ddm005070174000c.html

景気回復の兆しが見えたとはいえ、長かった不況が自殺者の増加に大きな影響を与えていることは間違いない。行き過ぎた消費性癖やパチンコなどのギャンブル人気を背景に多重債務者が増え続け、自己破産申請者が24万人を数えたり、その予備軍が200万人はいるといわれる世相との関係も重視しなければならない。また、「勝ち組・負け組」といった流行語に象徴されるように、いつの間にか人生を勝負事や他人との競争とはき違えるような風潮が広がっていることが、人々の失意や挫折感を増幅している面も否めない。
1900(明治33)年の自殺者は5863人で、人口10万人当たりの自殺率は13・4人にすぎなかった。昨年の自殺率は約27人となり、先進諸国の中でも突出している。こと自殺予防に関する限り、日本は百有余年間、経済や科学の発展と引き換えに退歩の道をたどってきてしまったと言える。

2004/07/27 自殺へ追い込まれる社会 /埼玉
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/27/20040727ddlk11070217000c.html
八代で川に沈んだ男性の遺体を発見 /熊本
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/25/20040725ddlk43040158000c.html
貨物列車にはねられ女性死亡 /愛知
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/25/20040725ddlk23040001000c.html
岡谷・農薬自殺?の巻き添え、刺激臭で異常訴え /長野
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/25/20040725ddlk20040083000c.html
虎風録:代表の死
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/24/20040724ddf035070016000c.html
自殺者、過去最悪 「絶望」に救いの手を 行政・民間、対策に本腰
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/23/20040723ddr041040009000c.html
JR中野駅で飛び込み /東京
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/22/20040722ddlk13040247000c.html
横浜・緑区の母子無理心中 不明確な「責任」悲劇に /神奈川
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/21/20040721ddlk14040298000c.html
長男焼身自殺?自宅敷地に遺棄 八千代の79歳を逮捕 /千葉
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/17/20040717ddlk12040169000c.html
自殺者:昨年の人数、最悪の3万4000人 経済苦、初の8000人台−−警察庁
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/23/20040723ddm001040170000c.html

経済・生活問題からの自殺は統計初年の78年には1703人で、その後も1000〜3000人台で推移、全体に占める割合も10%台止まりだった。だが98年、6000人台に達して以降、毎年増え続け、全体に占める割合も今回26%とこれまでで最も高くなった。
一方、全体を職業別に見ると、無職(1万6307人)が半数近く、その約1割が失業者だった。

小泉首相:「特効薬ない」「事情いろいろ」 自殺者最悪・中小企業不況にコメント
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/24/20040724ddn002010028000c.html

「事情はいろいろあると思いますね。経済だけじゃないと思う」

自殺者:1日100人、命絶つ リストラ、うつ…予備軍もっと
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/07/23/20040723ddn041040030000c.html

労働衛生課は「自殺の動機が職場の問題だけなのかどうか分からず、対処方法も一律ではない」

産経新聞
「悲観的に思わないで」 自殺者数過去最多更新で首相
http://www.sankei.co.jp/news/040723/sei057.htm

小泉純一郎首相は23日昼、昨年1年間の自殺者が過去最多になったことについて「あまり悲観的に思わないで、頑張ってほしい。」

純一郎の加害当事者としての反省の無さ、想像力のなさ、庶民性のなさ、共感力のなさ、無責任さには怒りよりもむしろ悲しみを感じます。
一応、これまでの政府の対応の情報もあげておきます。
自殺防止対策有識者懇談会が、自殺対策として根拠の乏しいメディア規制を提言していた点に注意。

■自殺防止対策有識者懇談会
第7回議事録 02/12/12
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/12/txt/s1212-4.txt
第6回議事録 02/10/04
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/10/txt/s1004-2.txt
第5回議事録 02/08/07
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/08/txt/s0807-2.txt
第4回議事録 02/06/21
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/06/txt/s0621-3.txt
第3回議事録 02/05/09
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/05/txt/s0509-2.txt
第2回議事録 02/03/15
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/03/txt/s0315-4.txt
第1回議事録
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/02/txt/s0201-1.txt
・自殺防止対策有識者懇談会報告「自殺予防に向けての提言」平成14年12月
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3a.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3b.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3c1.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3c2.html

(1) 報道・メディアに望まれること
 精神疾患や精神医療に対する偏見が根強く残っており、心の健康問題を抱える者が気軽に精神科医等を受診できる状況にないと言われている。このため、報道機関においては、精神疾患や精神医療に対する偏見を助長することのないような適切な報道に努めていただいたい。
 一人の自殺の結果、それに影響を受けた複数の者の自殺が誘発される場合(群発自殺)があり、これは、報道の仕方によっては、さらに拡大する可能性がある。過去にも、有名人の自殺の方法や場所、後追い自殺の発生等が、詳細かつセンセーショナルに報道され、その後、自殺が急増した例が複数報告されている。特に、児童・思春期の自殺については、こうしたリスクが高いとの指摘があり、関係者には留意していただきたい。
 一方、メディアは、国民に対して大きな影響力をもつため、適切な報道によって、自殺予防に大きな力を発揮できると考えられる。自殺のサインへの気づき方、その際の対応の仕方、相談機関等自殺予防のために有用な情報を報道するよう、自殺予防を考慮した自殺報道のあり方に留意していただきたい。
 最近では、インターネットの普及により、自殺予防に関するものから自殺を促すものに至るまで「自殺」関連サイトが多数存在する。インターネット上における様々な自殺関連情報にも留意していただきたい。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3d.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3e.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3f.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3g.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/dl/h1218-3a1.pdf
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/dl/h1218-3a2.pdf
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/dl/h1218-3b.pdf
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/dl/h1218-3c.pdf

自殺有識懇5回議事録で「自殺に関する常識テスト」が紹介されています。○か×で答えてください。答えは議事録を参照のこと。ただし、議事録の答えが正しいとは限りません。

自殺に関する常識テスト
1番 自殺既遂者+未遂者+念慮者の総数は100万を超える
2番 自殺者による経済的損失は5,000億を超える
3番 ある程度の成果の望める自殺予防にかかる費用は50億円で納まる
4番 経済問題を抱えた中年男性のサラリーマンの一部が自殺をする
5番 その経済生活問題とはサラ金地獄のことである
6番 精神科医やカウンセラーは自殺の専門家である
7番 平成13年の資料で原因・動機別分類は遺書のある30%が対象である
8番 平成12年の資料で原因・動機別で多いのは健康問題であり、職業別では無職者である
9番 救命救急センターに収容された自殺未遂者は「助かってよかった」と言う
10番 救命救急センターに収容された自殺未遂者のほぼ全例に精神科的診断名がつく
11番 救命救急センターに収容された自殺未遂者は精神科医と治療関係にある
12番 救命救急センターに収容された自殺未遂者は精神科医の診察を受ける
13番 これまで総合的な自殺対策案は発表されていない
14番 人は自殺をしてはいけない

経済的理由は自殺動機として増えていない!というようなことを言っている人もいるようですが、間違いです。
政府自身、厚生労働省「働く者の生活と社会のあり方に関する懇談会」報告書で「人口当たり自殺者は世界でもトップクラスになっている。50代が多く、経済的要因によるものが特に増加している」と分析しています。

厚生労働省
働く者の生活と社会のあり方に関する懇談会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/s0720-1.html
働くことを巡る現状と課題
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/s0720-1a.html

自殺事実の報道は、対策や議論の前提が作られるという意味で良いことですが、報道された自殺事実、あるいは報道の根拠となる警察統計には疑問もあります。
それは、警察統計上、自殺と認定されない自殺者や失踪者の存在です。
かなりの確率で自殺と推測される場合であっても、自殺を証明するものがなにもない場合、統計上は死因不明と処理されます。
たとえば、海、河川、湖などに入水自殺して沖にながされ長期間漂流していた場合、あるいは海や湖の底に沈んで埋まっていた場合、森の中で自殺して長期間発見されなかった場合など、自殺の状況証拠がある場合でも、物的証拠が無いと事故死や自然死の可能性もあるという理由で自殺として処理されない場合もあります。雪山で睡眠薬を飲んで凍死した場合、睡眠薬を飲んだという証拠がわからない場合は、たんなる事故死として処理されます。
それから、自殺しても発見されない場合は、当然ながら失踪として処理されますので、失踪自殺は統計には反映されません。住所不定者で家族もいない場合、自殺のために失踪しても、失踪事実さえ数値として出てこない場合もあります。
また、乗用車に飛び込むようなケースだと、当り屋かもしれないということで、自殺ではなく乗用車の運転手の過失致死罪に切替えて捜査するというようなケースもあるそうですので、そういう場合は自殺ではなく犯罪事件として処理されます。
また、自殺という能動的な方法ではなく、病気の場合は治療の中止や投薬の中止などの方法で受動的に自殺する場合は、自殺ではなく病死として処理されます。またわざと病気になって治療を拒否するような場合も、わざと病気になり治療を拒否したという証拠でもない限り、自殺ではなく病死になります。
自殺者も、自殺未遂者も、自殺未遂予備者も、みんな苦悩の大きさは一般の人よりも大きい。少なくとも、自殺者だけが苦しんでいるわけではない、とは言えると思います。

関連ログ。
 

資料:厚生労働省の自殺統計
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050628