戦後圧力団体の研究:戦後キリスト教婦人矯風会(その1)

私の立場は、矯風会全否定の立場ではありません。是々非々で評価すべきところは評価し、できないところはできないという立場です。その是非のために、矯風会の政治活動について議会データを参照しつつ検証します。
 
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昭和22年08月11日、参議院司法委員会における姦通罪存廃止に関する刑法改正についての公聴会で、公述人として日本キリスト教婦人矯風会幹事の守屋東氏が矯風会の見解を紹介。戦前主張していたの両罰主義を破棄。戦後は姦通罪撤廃を主張し、路線転換した。守屋東氏は日本キリスト教婦人矯風会幹事。
矯風会の姦通罪撤廃への路線転換は必ずしも不倫や自由恋愛を認めるという意味ではないものの、結果的に現在の自由恋愛の基盤を作ったという意味では、自由恋愛に制限的な法制度を主張する矯風会と昭和22年当時の矯風会とでは差異・矛盾がある。

第1回参議院司法委員会-11号 昭和22年08月11日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/001/1340/00108111340011c.html

○公述人(守屋あづま君) この大きな問題につきまして、私は学問的に、又法律的に申すものを持つておりません。ただ一人の婦人として、永い間この問題に対して一つの請願をしておりました立場から、自分の思うところを述べさして頂こうと思いますが、結論は撤廃でございます。私の属しておりましたキリスト教婦人矯風会は、明治十九年に創立されました当初、先ず第一に請願として、議会が始まりますると共に民法、刑法の改正ということを申出ました。勿論請願でございますから、年々その改正を多くの人に調印を求めまして、民法、刑法の改正ができなければならないという運動を起しておまりす。その目的はこの姦通罪、女子のみ姦通罪として罰せられても、男子は罰せられておらないということは不平等だ、どうしても男子も女子も罰せられるべきものである。だから改正して頂きたいというので、その請願を出しました。年々その案を出し、請願に記名する人も多くなつて参りましたけれども、議会においてはこれに対して誠に冷淡で、この問題が出ますと、時には女の嫉妬だ、やきもちだというような言葉さえ投げ掛けて、まともに取扱われるということが薄く長年過ぎて参りました。たまたま一人の代議士の方があつて、これはどうしても日本の風俗を立派にするために必要なことだから、代議士の中にも沢山そうしたことに理解を持ち、應援する人もあるのだから、法律案として出した方がよかろう。法律案とすればかくかくの次第だと言つて、御親切にそのことをお勧め下すつた方がございました。当時の会長さん矢島楫子はその御親切に対して重ねて申しまするのに、この問題が、若しも兩方ともが罰せられるということになつたとしたらどんな結果が來るでしよう、大事な父も母も罰せられてしまう、という今の日本の状態……私どもはこの改正の請願を出す理由は、どうか良い家庭が作られるようにそういう道義は破られないようにということで出しておるのだから、私はこれは請願で通します。丁度日本の道義戰に対して半鐘を叩くようなもので、みんな氣を附けなければならない、注意しなければならないというような意味で、この請願を私は続く限り出しますと言つて返事をした。御親切に申された方は甚だその手温いことを残念にお思いになつて、こんなことでは駄目だ請願ということでは駄目だと言つて大変に残念にお思い下すつたような一つの事実がございましたけれども、この氣持は、私は今日も自分に持つておるのでございます。罰するということが主体じやなくて、國民の中にそういう罪過を犯すことのないようにしたいというところに主点があると思います。勿論そういうことを考えましてもそういうことをした者に対する罰はしなければならないとも考えますけれども、この問題は盗みをした、或いは火をつけたとかいうのと違つて、人間の一番大事な徳義、道義という問題に触れたことであつて、これを罰するにしても非常にそこに一つの力を、又省みなければならない問題があるのじやないかと考えます。そういう行き方におきまして、私はこれは罰を與える、刑法において罰するということよりも、どうしても道義という立場で以て何とか途を附けなければならない。勿論そのことは容易でないことでございます。けれどもこれはやはりその容易でないことを國民として知つていなければならないと思うのでございます。一体刑法というものはその人を罰して、そら、こういうふうに惡いことをしたから罪にしたぞと言つて、報復的に罰するのが目的でなしに、殊に今囘の刑法に対しては罪したものでもその罪を悔いて、その刑罰を受たことによつて希望を持つて、改めて更生する生活ができるようにするということが、刑法の主体であるといたしますならば、私はその姦通罪などというようなことに考えを及ぼした時に、果して更生し得又それによつて希望のある生涯を持つことができるかどうかということを本当に憂います。或る不良な子供の取扱いをして見ました時に、或いは又理想的にいろいろ惡化をした人などの取扱いをして見ましたその経驗から申しますと、言い知れない間に満ちたその空氣がどんな恐ろしてものを、子供自身もどうしてよいか分らないといふ間に、默々の間に恐ろしい考えを持ち又親を親と思わないという考を持つということが土台になつて、不良行爲や又思想的に陷る人などもあるという事実に当つて見ました私自身から申しますと刑法のこの問題も單にそういう罪を犯した、惡いことをした人を責める、罰する、ということを考える前に、もう一つこの子供の身になつたらどうかということを、ここに是非考えて頂きたいと思うのでございます。自分の最も信頼する大切な、取り去ることのできない親子の愛、父が姦通し、母が姦通したというような、そのこと自身でも苦しいところにもつて來て、刑罰までも受けたということになつた時にその子供が果して満足な生涯が持てるかどうか、その子供にとつては、このくらい苦しいことはなかろうと思います。盜みをした親の子供が実に可哀そうな、言うことのできないあがきを持つておりますことを思いますと、もつとその子供が成長して知つたら、苦しいその姦通罪で両親が罰を受けた者の自分は子だということが、子供として堪え切れない。そこに子供がどういうような動きを起して來るかということを考えて見ますと、これはどうしてもこういう罪を與えるというような刑罰はとつてしまい、何かそこにもつと好い方法がないだろうか、実は私はそれに対してこうしたらよいといふことが申せますならば、この上ないことでございますが、それが分らない。何か法を廃して、こういう刑法において姦通罪というものを肯定しておいてどうこうというのでなしに、これをないということにして、その人達に対するよい方法はないだろうかというところに、私の苦みはあるので、今日はそのことをむしろ教えを受けたいぐらいでどうしたらよいかということ。もう一つは、姦通罪というようなものに対しましても一般によく申しますことは、立派な人ならば余りないけれども、そこら辺の大衆の所にはこういうことはざらにあることだから、こういう法律がなかつたならば駄目だ、その法律があつて漸くその人たちを伏せておくことができるのだというお話を聞きますけれども、私が不幸にして承知した範囲におきましては、決してこういう罪過を犯す者は教育のある人とかない人とかいうことでないと思います。やはりいかに教育を受けておつても、こういう罪過を犯す人は沢山にある。又教育がない人でも、こういう問題に対しましては実に立派な人もあるので、これはどうしても人としての本当の教育を施すことがそこに起つて來なければならないのだ、私はどうしてもこの問題は一般の道徳の問題、それによつて何かその道を開くのでなければならないということを考えております。今宮城先生のいろいろのお話を伺いまして、ああしたいろいろ世界各國の例がございますけれども、日本として今度新しい新憲法下におきまして、あの戰爭さへも放棄した今日、殆んど理想といつてこのくらい理想はない、無謀と思われるくらいな戰爭放棄というその新らしい條項をはつきり掲げた日本としまして、私は是非共この姦通罪というものは刑法から取つてしまう。そうしてそこにそういうことの起らないように進めて行く途を他に開くという立場の氣持で、それに対しての賛成をしたわけであります。撤廃ということに賛成をした理由であります。
○齋武雄君 私は守屋さんにお伺いいたします。守屋さんは長年の間両性の平等ということを主張されまして、そうして男子も罰しろ、こういう請願を長年の間したということについては敬意を表します。然るに今日のお話によりますと、廃止に賛成である。現在まで長年両罰を主張して來たお方が、今日は廃止、こういうお話でありますが現在の状態は日本の國民の道義が非常に昂揚して、必要がなくなつたというのでありましようかどうか。そういう御心境の変化には重大な理由が存すると私は考えておるのでありますが、その理由をお伺いしたいのであります。
○公述人(守屋あづま君) むずかしい御返事になりますけれども、私、心境の変化と別に申しますよりも、私共の属しておりました團体が、その請願をずつと出して來ましたが、今日の世の中に、両方とも罰した方がよいというふうなことは誰も簡單に考えることでございますけれども、長い間、その間にして來ました私の実際からいいまして、私は罰して行くというふうなことよりも、自由に、もつと何かよい方法があつたならば、撤廃して、その他の途を考えた方がよい。先程泉二先生のお話がございましたように、私は先程ちよつといい落しましたのですが、刑法で云々ということよりも、やはりこういうような問題は家事審判に廻して、そこでよく熟議して行くというふうな方法を取りたいと考えております。両方罰して欲しいといつていたものが、急にどつちも罰しないようにしなければいけないというようにしたという御質問でございますけれども、両方とも惡いということについては強く感じておりますけれども、それ以上に、罰することよりも、もう少し……罰するということを拔かすと工合が惡いが、罰したい氣持は十分ございますけれども、普通の今のような罰し方で行くよりも罰することを止めて、もつとよい途を取つて行きたいという氣持があるので私は撤廃論にしたのであります。
○宮城タマヨ君 守屋先生と久布白先生にお伺い申上げます。姦通罪削除の法律上の問題については、お二方とも反対の立場に立つていらつしやいますけれども、矯風運動家として長い間貴い経驗を持つて、可哀そうな婦人の友となり、それから家庭においての貞操責任の持てませんところの、男子及び女子の行動から起つて來ます家庭問題についての、沢山の相談もお受けになつておると存じております。それで、この刑法や民法の、この法律上の議論はちよつと措きまして、実際両先生がこれらの人に対する教育というもの、教育の効果というものをどのくらい考えていらつしやいますか、評價していらつしやいますか、或いは宗教の立場に立つての教育というものについて、どの程度に効果あるものだと長い経驗の間にお考えになつておりますか、その経驗についての点を質問いたしたいと思つております。
 それから今一つは、牧野先生にお伺い申上げますが、先程刑罰の逆効果、或いは副作用ということをおおせになりましてございますが、これについて私具体的のことを伺えれば結構だと思つております。
○委員長(伊藤修君) 守屋さんお答えをお願いいたしたいと思います。
○公述人(守屋あづま君) 只今の宮城さんの御質問は、立法的の問題でなしに、姦通といつたような実際問題においてどんなことかとおつしやいますことなんですか……そうなりますと、話が大変くだけてしまいますけれども身の上相談をいたしとおりまして、一番悩みを持つて來られるのは、自分の夫の不貞行爲であるし、そうしてそこに他の女子に子供ができ、而もそれをどう処置していいかというようなところまで行くことがあります。單に刑法上の問題で行つたならば、そういうふうな不貞なことをしても、夫だから云々ということになつてしまいますけれども実に人情というものは妙味のあるもので、今も増田さんもおつしやいましたように、一度自分の夫として愛した者がしくじりました時は、丁度女の立場は息子のしくじりのような考になるらしうございます。どうしてこんなことをしてくれたんだろうという悩みになつて、そうしてその夫のしたよくないことを、できるだけ一番いい方法で、人にも恥をかけず自分たちも体面を傷つけずに処置して行こうという悩みは実際氣の毒なようでございます。そういうことを思いますと、私はいつでも男つてなんていう奴だろうと思います。併しその男が自分の父親である、又息子である、世の中の殆んど不思議なことの最大なことは、男女の問題であると思います。そこに宗教上の問題を加味して御質問もございましたが、私はこれが本当に因果だと思いましてそういうような問題につきましては、できるだけ情実でなく……情実というと語弊がございますけれども、その過ちをするようになつた原因を尋ねて見ますと、その何という男かというような人にも氣の毒な点もある。又女の人にも氣の毒な点がある。悩みを持つて來た女の人には、そこに男の人の苦しみを持つて來ますし、男の相談になると、同性の女性がそこに現われて來るということになつて参りますから、この問題は私は簡單にこういうような所で、ああだ、こうだと決めるような問題でなしに、これこそ本当に人間の人間としての一番の苦しみだ、この苦しみはできるだけ互に信じ、愛して解決をして行かなければならない問題と考えております。宗教的に云々ということがございますが、私は先ず宗教の前に、先程久布白さんのお話にも、まだこの世の中はひどいからということがございましたけれども、その数十年の社会というものは、一面非常に道徳も廃頽したように見えますけれども、又非常に進歩したと思います。成長したと思います。まあここは一番近い例で議会などへ参りまして、今から三、四十年前に議会を傍聽したときの議員諸氏の御樣子と、今日の皆さん方の眞摯なその御樣子を比べて見ると、ああ進歩したものだと思います。又こうして私共女子がこういう所に出まして、何か言わせて頂き、何か言うことができるようになつたことも、これに対しましても或いは眞底から尊敬して聽くていうことじやなく、まあ出て來たから聽くんだという氣持がいくらかあるかも知れませんが、併し今日の平等になりましたこの世の中におきまして、きつぱり聽きもしよう、相談もしようということになつたことは成長している。この成長の蔭には、一番人類の苦しい性慾問題、これもやつぱり進歩してい道ことと思います。私は一層宗教的に、又教育的に、こういう問題を麗わしい、嚴そかな、大切な問題として取扱つて行くようにして参りたいという氣持がございます。大変御滿足が行かないかも知れませんけれども……。
○山下義信君 こういう機会は減多にないと思いますから、女性の諸先生に伺いたいと思いますが、増田さんのお説のように両罪といたしまして、姦通罪を存続いたしましたときに、女性の方が沢山告訴なさいます。即ち夫なる相手方をお訴えなさいますようなことが、女性の権利として沢山出て來るお見込でございましようか、或いはやはり余りないようなお見込でございましようか。これはお四人の御先生方でお相談なさらずに、思い思いに、御答弁お願いたいと思います。女性の嫉妬深い疑い深い人が、何でもかでもすぐに訴えるようになつて、事件が殖えますでしようか、それともやはり姦通罪を廃しても殖えませんでしようか、私共審議いたします上に非常に重大なる参考になりますので、伺いたいと思います。
○公述人(増田シズ君) それは女というものは家庭に子供がございますのですから、女にそういう権利が與えられても、その事件を女が告訴するとか、どうとかいうことはないと思います。
○公述人(守屋あづま君) 私も同じでございます。そればかりでなしに、これからの女の人はもつとこういう問題に積極的に進歩した氣持で子供を教育して参る。男の子供に貞操ということの大事なことをよく教えて参る。女の子供に女の純潔ということのために、しつかりしなければならんということをよく教えて参るだろうと思います。

【参考リンク】
※守屋東氏と日本キリスト教婦人矯風会百年史
http://ryubin.dtdns.net/ryutan/persons/moriya_azuma/moriya.html

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昭和23年、衆議院文化委員会において、「婦人の日」を祝祭日に指定の陳情書(「婦人の日」協議会キリスト教婦人矯風会外十名)(第五六七号)が委員会送付。祝祭日にはならなかったものの、翌年、労働省は「婦人の日」を正式に決定。

第2回衆議院文化委員会-9号 昭和23年06月08日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/002/1344/00206081344009c.html

2-衆-文化委員会-21号 昭和23年07月04日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/002/1344/00207041344021c.html

※「婦人の日」は、1949(昭和24)年労働省(現在の厚生労働省)が制定。1998(平成10)年に「女性の日」に改称されている。
【参考リンク】
※「婦人の祝日に関する世論調査内閣府政府広報
調査時期  昭和53年4月29日〜昭和53年5月8日
http://www.op.cao.go.jp/survey/s53/S53-04-53-02.html

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昭和24年、参議院本会議において、木内キヤウ議員による乳幼児の着物の輸入に関する請願に関する緊急動議で、請願団体の一人として矯風会が紹介される。

5-参-本会議-25号 昭和24年05月13日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/005/0512/00505130512026c.html

○木内キヤウ君 大日本連合母の会の代表、矯風会、櫻楓会、母を護るの家代表、学生と母の会の代表から、乳幼兒の着物の輸入に関する切実な請願がございました。
 現在の日本の着物は窮乏の極に達しております。そうしてその重圧を感じておりますのは婦人にかかつております。殊に小さな、着物を持たずに生れる子供、その着物の材料の調達は主婦の心に日夜大きな悩みとなつております。若いこの節の人に材料のない子供の生れる人のその資材が丸でありません。これが解決をしますのに、米國から古い着物、古いものを輸入して貰いたいという懇請でございます。

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昭和26年、参議院労働委員会において、日本有権者同盟で当時婦人少年局縮小反対運動を組織していた斎藤きえ参考人が、労働行政機構改革に関し、国際婦人運動とつながりの深い婦人少年局を存続させよとの主張の中で、国際婦人運動に参加している事例として矯風会を紹介。

11閉-参-労働委員会-4号 昭和26年09月27日
○労働行政の実情に関する調査の件(行政機構改革に関する件)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/011/0808/01109270808004c.html

参考人(斎藤きえ君)
婦人少年局は現在出していらつしやいますような女子供たちの実態調査とか、或いは農村婦人の調査、それから封建性についての調査とか、いろいろな私ども民間団体ではできない、例えば婦人の市民意識についての調査なんというものもございますが、そういうものを、私どもが運動する場合に、やはりこれから日本の婦人運動も的確な科学的な調査資料に基いてやらなければならないという段階に婦人少年局の果していらつしやる役割というものは非常に大きい、こういうふうに考えております。そうして又こういう調査をなさる場合にも、地方の職員室というものは非常に大きな役割を果しておいでになるということを、私どもは実際にお話を伺つて知つております。それからもう一つ、婦人少年局の婦人課の組織規程の中には現れておりませんが、今まで婦人少年局がやつて来られました非常に大きな役割は、国際的な連絡提携ということであろうかと思います。今年の婦人週間には、海外の婦人とのメッセージの交換をされたようでありまして、アメリカは勿論ブラジル、カナダ、デンマーク、イギリス、イタリー、韓国、オランダ、ノルウエー、スエーデン、タイというふうないろいろな国との交換をしておられます。勿論私ども民間の婦人団体の中にも国際的な繋りを持つております婦人団体はたくさんございます。例えばYWCAとか矯風会とか平和婦人会といつたような団体が、それぞれ国際的な繋りを持つておりますが、この婦人少年局は、今年の四月行われたような広汎な海外婦人との繋りというものはできるのでありまして、ここにも私ども民間団体ではできない大きな役割を婦人少年局はやつておられるように思います。特に今度の藤田局長は国際人であられますので、私どもは今後ますますこういう面にも大いに活動して頂きたいと思つております。

【参考リンク】
※法政大学大原社会問題研究所 日本労働年鑑 第27集 1955年版 第二部 労働運動 第四編 その他の社会運動
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/rn/27/rn1955-700.html

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昭和27年、破壞活動防止法案、公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案を議題とした衆議院方委員会公聴会で、婦人民主倶楽部委員長の櫛田フキ氏が出席公述人として陳述。破防法案に反対した婦人団体の例として矯風会を紹介。

13-衆-法務委員会公聴会-1号 昭和27年04月30日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/013/0640/01304300640001c.html

○櫛田公述人 婦人民主倶楽部の櫛田フキでございます。
 過般来労働組合ゼネストでこれに抗議をしたこと、それは当然なことでございますが、婦人団体でも私が属しております婦人民主クラブを初めとして、日本基督教女子青年会だの、それから矯風会だの、有権者同盟だの、日本大学婦人協会、また婦人平和協会というな婦人団体もこぞつてこれには猛反対をいたしておりまして、すでに政府に決議文を出しておりますから、皆様が御承知のことだと思います。

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昭和27年、破壞活動防止法案、公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案についての参議院法務委員会審議で、緑風会の宮城タマヨ議員の質疑で、破防法案に反対した婦人団体の例として矯風会を紹介。宮城タマヨ議員は、売防法成立の有力推進者の一人。破壊活動防止法案の審議では扇動条項の削除を主張。

13-参-法務委員会-50号 昭和27年06月06日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/013/0488/01306060488050c.html

○宮城タマヨ君 今日は法務総裁がお出まし下さいまして安心いたしました。実は毎日法務総裁お倒れにならないかしらと思つて御案じ申上げておるところなのでございますけれども、私どもも健康を破壊するかも知れない、この法案でうんと頑張つているのでございますが、私はこの参議院始つて以来五カ年間もう法務委員として徹頭徹尾やつております。そしてこの委員会で髄分法律の審議もいたしましたけれども、今度のように多くのかたから反対の陳情をされた法律案は始めてでございます。それで文化団体や学術団体、労働団体、その他各層の団体からの陳情は、これにまあ然るところでございましようけれども、私が大変驚いておりますことは、婦人団体が挙つて反対の立場に立つております。恐らく法務総裁のところにも陳情に参りました者もございますと思つておりますけれども、例の公安委員でいらつしやつた植村環さんなんかの率いていらつしやる、あれは日本女子基督教青年会でございますか、これは宗教団体でございまして、そのほか日本大学婦人協会、日本婦人平和協会、日本婦人有権者同盟、日本基督教矯風会といつたような、とにかく国際的な団体を初めとしまして、その他たくさんの婦人団体、それから又驚きますことは地域婦人団体、つまりPTAでございますとか地区の婦人たち、つまり母親の立場に立つておりますところの婦人たちが非常にこの法案の成立いたします日を心配いたしまして、ということは後にも申上げますけれども、我が子に、我が家に火がつきはしないかという心配で、そしてまあ多い日は、今日持つて来たいほどでございますが、千通以上の陳情が参つておりますようなことでございまして、中には実にこの前の例の治安維持法にひつかかつて、そうして自分の子供がめちやくちやになつたような例もございますし、又一人の息子がひつかかつたために、兄弟が折角結婚が成立しておつたのに、それが取止めになつたために、一家もう挙つて治安維持法のために亡ぼされたという例もございまして、勿論今度の破壊活動防止法案があの治安維持法と違うことは私どもも十分了解しておりますけれども、非常なお母さんたちの心配の運動でございます。ところがこの法律問題の一問一答によりまして、だんだんその法案の内容が明らかにされて参りまするにつれまして、私も又母親の立場に立ちましたときに非常に心配になつて参りました。そこでもうこの法律論は尽きております今日でございますが、私は母親の立場において数点につきまして法務総裁から一つお教えを願いたい。そうして私の立場で又多くの婦人団体、殊に地域婦人団体のかたに説明をして、納得の行かぬ点がございましたらそれにも努めたいと思つております。そうしてどうしても納得が行かなければ、それは止むを得ないと思つておりますのでございます。

【参考リンク】
※宮城タマヨ
http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/M/miyagi_t.html

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昭和27年、破壞活動防止法案、公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案についての参議院本会議討論で、日本共産党の須藤五郎議員が、破防法案に反対した婦人団体の例として矯風会を紹介。

13-参-本会議-61号 昭和27年07月03日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/013/0512/01307030512061c.html

○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して、只今上程された軍事植民地的法案、破防法並びに他の二法案に対し、断固反対するものであります。
 韓国の国家公安法、バオダイ政権下のベトナムのそれを見るがよい。それはこの破防法と同じ性質の法案であります。即ちこの種の法案は退歩的な国にのみあるものであります。御丁寧にも今日、李承晩大統領は破防法が実施されたらこんなことになるぞとその見本を見せております。自己に不利益なる言動をなす者は、開会中にもかかわらず国会議員といえども逮捕し、国会を軍隊を以て包囲するごとき無法をあえてやつておるのであります。今日、日本の国会におきましても、学生、労働者の破防法反対の陳情に対し、鉄兜の棚を作り、これを阻止しているではありませんか、韓国と何ら異ならないのであります。(「どうだ民主クラブ」と呼ぶ者あり、笑声)憲法を超越したこのフアツシヨ法は国会議員でも、誰であろうが、政府に反対した者は皆縛り上げることができるのであります。そのためにこそ、天下の衆人皆声を揃うて、この法案に反対しておるのであります。四月十二日、四月十八日以来第三波、第四波に及ぶ数百万のゼネストは何を物語つておるのか。日本学術会議は圧倒的多数を以て反対決議をなし、全国の大学、高校はストライキを以てこれに抗議し、各大学の教授たちも殆んどが反対に立上つておるのであります。毎日々々国会に押し寄せるあらゆる階層の反対陳情を政府はどう見ているか。公益のために立法すると言つておるが、新聞の輿論、あらゆる文化団体は口を揃えて反対を唱え、又婦人矯風会を初め、婦人団体も皆これに反対しておるのであります。

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昭和29年、衆議院法務委員会における売春等処罰法案審議で、宗教家(救世軍・大佐)の瀬川八十雄参考人が、売春婦矯正施設の運営主体の一例として矯風会を紹介。

19-衆-法務委員会-64号 昭和29年05月28日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/019/0488/01905280488064c.html

○瀬川参考人 私は今神近先生のおつしやる通りのことを考えているのであります。願わくはこの法律に矯正の面も伴うようにということを考えているのでございます。しかしながら今それもこれも一緒にということはなかなか困難でありましようから、まずこの法案漢案の罰則の方、それが男であろうと業者であろうと何であろうと、ひつくるめてまずこの法案を通過させるように何とかお骨折りを願いたい。もしもこれが通過されれば、必ずそれに伴うて保護の方面が起つて来るに違いないのでありまするから、まず何はさておいてもこれを通過させていただきたい。少年法の場合において、これを行う少年たちをどうしようかというお話も多分あつたろうと思うのであります。何はともあれ少年法を先に通過さしてしまおうというふうにお考えになつたやうに覚えているのでありますが、そういう寸法で大急ぎでお運びを願いたいと思うのであります。今矯正ということでございましたが、これは十七箇所、ことに東京のものは矯風会なり、救世軍なり、あるいは山田ワカ先生の方なり、また聖友ホームなり、あるいはついでに横浜の万面へも寄つていただきたいということを考えております。それで矯正の問題が論議された場合にもただちに御返事のできるように、ただいま私どもは私どもとして、至らぬ者でございまするけれども、それを考えている最中でございまして、たとえばまず更正寮というわけで、最初に更生寮、これは精神指導――それが宗教的方面であろうと何であろうと、精神指導、生活の訓練をする、職業の補導をやる、そしてどうも性格異常であるとか、精神薄弱であるとかいうふうな長期にわたるものに至つては、ことによつたら強制収界の必要があるかもしれませんが、そういうふうな多少長期にわたる施設、それから今度は更生寮から進んで、かりに婦人寮という名前ですが、指導監督をすると一緒に住宅の提供という意味合いの色彩の濃いものというような、大体三通りにして行つたらばよかろうというふうなぐあいで、当局ともわれわれかねかね御相談をしている最中でございます。幸いにしまして、十七箇所の施設をざつと見ますると、非常に高い標準は別ですが、われわれの方から見て、半分以上はこれは更生したなというふうなことがはつきり甘えると思うのであります。そういうことを私どもは考えておりますから、どうぞそのお考えでお願いしたいのです。ですから、何はともあれ、不完全であろうが何であろうが、この法律案は何としても一日も早く通過させていただきたい。更生の方はあとから必ずできましようから、まず大急ぎで今議会にやつていただきたい、どうぞお願いいたします。

【参考リンク】
救世軍の陸海軍人伝道と戦時難民救済事業
http://members.at.infoseek.co.jp/kindoochan/war_relief_work.html

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昭和30年、衆議院法務委員会において、売春等処罰法案の審議で、猪俣浩三議員の質問に対し、紅露みつ厚生政務次官が“転落女性保護施設”の委託団体の一例として矯風会を例示。紅露みつ議員は元自民党婦人局長。

22-衆-法務委員会-29号 昭和30年06月29日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/022/0488/02206290488029c.html

○紅露政府委員 ただいま猪俣委員より転落女性を現在厚生省はどのように保護しているか、こういうことのお尋ねでございますが、現在はこうした転落女性を収容いたします施設が全国で十七カ所ございます。大体七百人程度を収容しております。これは都道府県直営のものもございますし、それから救世軍矯風会東本願寺等の社会事業団体に委託をしているものもございます。収容者の更生につきましては職業の問題がございますし、住宅の問題がございます。その他いろいろ困難なことが多いのでございますが、相当数はここで独立する力を得、また結婚をするというような気分にもなる、あるいは親元に帰す。こういうふうにしかるべくその個人々々によりまして身の振り方をつけておるわけでございます。この施設に入りました二十九年度の総入所者の数は九百七十五名でございました。それから総退所者が一千九人でございます。数字に食い違いがございますが、これは時間のずれでございます。そして今申し上げましたように、退所者は就職をしたり、あるいは親元に帰ったり、結婚ができたというように、相当な効果をこれはあげておると信じます。経費につきましては、本年度は二千五百万円を厚生省としては計上いたしております。これは都道府県におきまして二割、国家が八割ということでございますので、この施設に使いまする費用の二千五百万円は、八割に相当する額でございます。

【参考】
※NIEのひろば・阿波の先人たち 紅露みつ
http://www.topics.or.jp/nie/2000nie/1218senjin.html

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昭和30年、参議院法務委員会における売春等処罰法案審議で、宗教家(救世軍・大佐)の瀬川八十雄参考人が、売春婦保護施設の運営主体の一例として矯風会を紹介。

22-参-法務委員会-18号 昭和30年07月19日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/022/0488/02207190488018c.html

参考人(瀬川八十雄君) 大へん大きな問題でありまするから、私がこれをよくこなせるかどうかはなはだ心もとなく、責任を感ずる次第であります。そこで、終戦直後公娼廃止とともに次官会議の決定といたしまして、全国に十七カ所の保護施設を始められることになりまして、矯風会なり救世軍なり、その他の団体がこれに預かることにしていただきました。そこで去る五年か、その内外の統計でございますが、これはごく今年というわけにはいきませんですが、何がゆえにその婦人寮に入るようになったかというもともとの原因ですね、素行不良というのが八%、好奇心からが六%余り、自暴自棄が二%、性格異常が四%、放浪性が一%幾ら、両親がなくなったというのが一一%、家庭不和が一九%、離婚があり、家出あり、生活困難、これが一番大きい。それから誘惑が八%、それから強姦されたがもとでというのがあり、まあこんなようなわけで、パーセンテージがいろいろ出ております。ところで実際に当ってみますると、その原因をただ一つにするということが非常に困難です。貧乏でもあったり、家庭の不和でもあったり、誘惑の受けやすい人もあってみたり、ですからもうこんがらかっておるのです。ですからたとい貧乏であっても、精神がしっかりしておったらそれに負けないということは幾らもあり得る。貧乏の人の家庭から必ず片っ端しから出るとはさまっていないのですから、それですから貧困だけをとらえれば、あれもこれもみな貧困が原因になってしまうというような状態に見えるのであります。それですから、私は宗教家の片端でありまするから、ことにその点に心が向っていくのかしりませんけれども、つまり要するにそういうふうな娘たちの出てこない、周旋人がたとい来たところで、出てこないようにするというのは、つまり健全な家庭というのが、これがまあ一番大事だと思うのです。健全なる家庭というのは、何も金持ちでなければならぬというわけは何もないのであって、貧しい家庭であっても、それにひっかからないで、こういうものの原因にならないで済んでおる。われわれの寮に来まして、そうして更生して、同じ家庭に帰って、同じ貧乏な暮しをしておっても、またもう一ぺん転落するということはなしにおる婦人が幾らもおるのですから、そんなふうに更生の実をあげておる婦人が幾らでもおるのですから、それですから貧困ということばかりが原因になるとはきまっていない。そうすると、結局は経済上の問題が全然関係がないとは言えませんけれども、根本の問題はどうしても私は家庭にあり、家庭を組織している一人々々の知能の問題であり、さらに進んで精神の問題に至り、また宗教的の感化というものに大いにあるというつもりで、われわれのところへ来る娘たちにできるだけそれを強制しない程度で、これを努めておるというわけであります。

(この項目つづく)