警察庁、少年非行総合対策推進要綱を改訂

庁益強化を兼ねた表現制限法(青少年健全育成基本法案)の行政サイドからの送り風、といったところでしょうか。
要綱改訂理由の「少年が被害者となる事件が多発している」については、「カラオケボックスでの少年犯罪は増えていない」http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040420#p1 を参照のこと。

児童虐待への対応を強化 警察庁が少年要綱改定
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040422-00000054-kyodo-soci

警察庁は、少年犯罪対策の指針となる「少年非行総合対策推進要綱」を7年ぶりに改定、児童虐待事件への対応の強化などを盛り込んだ新要綱を22日、全国の警察本部に通達した。
具体的には(1)児童虐待を早期に発見し、児童相談所が実施する立ち入り調査を援助する(2)出会い系サイト規制法を活用し、インターネット上の有害コンテンツ対策を推進する(3)暴走族など非行集団への少年の加入を食い止め脱退を支援する−などが主な柱。
4月22日10時11分更新

要するに、「インターネットエロ絵狩り」などをもっとやりましょう、ということでしょうね。

警察庁/通達
※4月26日現在、改正少年非行総合対策推進要綱は公表されていない。
http://www.npa.go.jp/pub_docs/index.htm
少年課 H9.8.7 乙生発第9号等 少年非行総合対策推進要綱の制定について (旧要綱)
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen19970807.pdf内閣府
第239回青少年問題審議会議事録平成9年9月18日
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/gizi_15.htm

上記のごとき警察官僚にとって都合の良い情報がマスメディアで流布されていますが、こうした情報を相対化する意味で下記論文は必見です。
少年非行総合対策推進要綱制定以降、CDを万引きした女の子を「窃盗犯」として統計処理せず、逃げる時に店員を突き飛ばしたことを理由に「強盗傷害」として凶悪犯罪統計を水増ししていたというあたりの考察はなかなか興味深いです。
「少年の凶悪犯が増えました」「そりゃタイヘンダー。有害サイトを追放せよ!」とか言っているテレビニュースの識者のコメントの前提って、実は、統計のサンプルの属性を書き直して統計上の凶悪犯の数を増やしていただけだなんて、テレビを見て「まあこわい」とか思っているお茶の間の主婦たちは想像もしていないだろうなぁ。

国学院大学法学部横山実ゼミ
日本における少年非行の動向と厳罰化傾向 横山実
http://www2.kokugakuin.ac.jp/zyokoym/Delinquency1.html
http://www2.kokugakuin.ac.jp/zyokoym/Delinquency2.html

関連図書。犯罪名のリラベリング=統計操作についての根拠となるデータは、この本の中寺尾史子氏の論文の中にあるようです。

現代の少年と少年法 荒木伸怡 (編集)
現代の少年と少年法

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