なぜ写真を掲載したのか。報道すべきなのか。

大統領府からの報道自粛要請があったにもかかわらず、なぜ一部新聞は写真を掲載したのか。すべきだと考えたのか。という点について、まとめます。
一言で言うと、文字だけでは表現しきれない真実を報道写真によって伝えるため、でしょう。
占領政策の矛盾が最も現れているファルージャという場所で起きた事件に含まれた情報を、その矛盾の意味を失わないまま正確に伝えるためには、文字では足りません。一葉の写真は万語を語り、問いかけます。
宙づり遺体写真が、悲劇的だからでも衝撃的だから、は衝撃性という意味でのニュース性はありますが、それだけがニュースの要素ではないでしょう。
イラク政策にとって重要な新事実、つまりパレスチナ型の暴力の連鎖、憎悪の連鎖の急速な拡大がその写真の中に含まれているということが、報道の必要性です。

宙づり遺体の写真一斉掲載 米主要紙、世論へ影響も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040402-00000049-kyodo-int

【ロサンゼルス1日共同】米主要各紙は1日、イラク中部のファルージャで起きた米国人襲撃事件の犠牲者が宙づりにされた生々しい現場写真を一斉に掲載した。
AP通信が配信し、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ紙などが1面カラーで大きく掲載。CNNが遺体にモザイクをかけて報じるなど、米テレビの多くも表現に配慮して放送。ロサンゼルス・タイムズのジョン・キャロル編集長は写真に添えた記事で「議論の結果、事件の本質を報道するため掲載を決めた」と説明した。(共同通信
4月2日9時40分更新

反米勢力一掃へ大規模作戦 米軍、民間人殺害で
http://kumanichi.com/news/kyodo/international/200404/20040402000434.htm

【ワシントン2日共同】イラク駐留米軍は、米民間人4人が殺害されたイラク中部のファルージャで大規模掃討作戦を敢行し、殺害の実行グループを含めた反米武装勢力の一掃に乗り出す。
犠牲者が宙づりにされた痛々しい写真を米メディアが報じたことで全米に衝撃が広がっており、米軍は威信に懸けて犯人の拘束、殺害と治安回復に全力を挙げる構え。だが、燃え上がった反米感情をさらにあおる危険性もある。

熊本日日新聞も共同電の「民間人」という表現を使ってますね。違うっちゅーのに。
「燃え上がった反米感情をさらにあおる危険性」については、後から考えれば的中していたわけで、悲劇的な暴力の連鎖がイラクで深まっているという事実を伝える意味でも、写真や映像の使用は考慮されるべきです。
これまでの経過をまとめます。

3月20日 イラク開戦から1年
3月30日 秘密偵察任務を帯びたブラックウォーター社員が偽装警備でファルージャに潜入
3月31日 事件発生。ブラックウォーター社員殺害宙吊り
3月31日 伝送映像がプール(一般提供) 
3月31日 メディアを監視していた大統領府当局が、映像を問題視。大統領報道官がメディア各社に報道自粛要請
3月31日 各局テレビ局と新聞の大半が自粛要請を受け入れる
4月1日 暴力の連鎖性を象徴した殺害事件を重く視た新聞社7社が、報道の自由との兼ね合いも考慮し、大統領の自粛要請に抗するかたちで4月1日に写真掲載
4月2日 7社による写真掲載報道自体がテレビニュースになり、CNN等がモザイク入りで全米テレビネットで放送
その後米国では民間軍事委託問題が議論になる
4月2日 米イラク駐留米軍、(予定通り)報復作戦実施を発表
4月4日 シーア派サドル師が「実力行使が必要」と声明
4月5日 米軍、ファルージャ実力封鎖
4月5日 読売新聞が民間軍事委託問題を掲載。ファルージャ襲撃犠牲者が軍関係者であったことを報道。
4月6日 米軍、ファルージャで大規模攻撃開始
4月7日 米軍、ファルージャのモスクを攻撃。精密誘導弾2発?を使用
4月7-8日 日本人人質事件発生
4月9日 米軍一時的停戦。これまでの掃討作戦によりイラク人450人死亡、1000人以上が負傷
4月10日 米軍攻撃再開
4月10日 日本人人質解放の情報
4月11日 停戦成立
4月12日 日本人人質問題一転混迷へ