米国軍関係者襲撃事件の日本の報道

日本の関連報道状況を確認しておきます。

イラク>4人死亡事件で政策堅持強調 米大統領報道官
http://www.excite.co.jp/News/searched_story/20040331193600/20040401M30.049.html

【ワシントン中島哲夫】マクレラン米大統領報道官は31日、ファルージャで米国人4人が死亡した事件について、「我々はおじけづかない」などと述べ、現在の政策を堅持する姿勢を強調した。
事件では暴徒化した地元民が犠牲者の遺体を車で引き回すなどし、米国社会にかなりの衝撃を広げたが、AP通信は、米メディアは遺体が地元住民に引きずり回される「生々しい映像」の放映は避けたとしている。
03月31日 19時36分

「おじけづかない」という報道官の言葉を読んで笑っちゃったのですが、だったら見せたってかまわないだろ、ということです。おじけづかない人は「おじけづかない」とは自分では言いません。(同様に屈服しない人は「屈服してはならない」とは言いません。屈服しそうだからそう言うのです)
「地元民が犠牲者の遺体を車で引き回す」という表現がみられますが、車でひきまわしている様子をうつした写真は確認できません。写真を見る限り手で死体を引きずっています。

イラク中部で一部住民が暴徒化、車を襲撃
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040331-00000171-reu-int

熱狂したイラク人住民らが外国人とみられる焼死体を路上で引きずり回したり、炎上した車の中の死体に投石したりする姿が目撃された。
地元住民の話では、車内にいた最大6人が殺害された。ただ、死者は3人か4人だという情報もある。(ロイター)
3月31日20時48分更新

「外国人とみられる焼死体」と表現されていますが、後日、全員米国人だったことが当局から発表されています。一人はクロアチア系米国人。
死者数の正確な事実は、車に乗っていたのは6人で、そのうち死者は4人。実はこの数字に大きな意味があって、4人にはある特定の共通点があって殺されており、共通要素がない2人は住民は逃がしているわけです。
つまり、殺されたアメリカ人4人に共通する事柄に、イラク人の憎悪をかきたてたなにかがあったということで、残虐ではあっても、無差別の暴動ではなく、ある条件を満たしたためにその4人だけが殺されたということです。

連合国の請負業者4人殺害 群衆、遺体引き回す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040401-00000015-kyodo-int

複数の目撃証言によると、興奮した群衆が車両に放火、遺体を引きずり出して切断したり、橋につるすなどした。
4月1日2時1分更新

イラク各地で襲撃事件、米兵ら9人死亡
http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/TKY200403310309.html

イラク中部で31日、米軍車両が爆破され兵士5人が死亡したほか、民間人が乗った車両も銃撃を受け、乗っていた米国人3人を含む外国人4人が殺された。民間車両の襲撃現場では、焼けただれた遺体を周辺住民がたたいたり、引きずり回したりして歓声を上げた。
 民間車両が襲撃されたのは、バグダッド西方のファルージャ近郊。走行中の2台の四輪駆動車が、相次いで銃撃された。カタールの衛星テレビ、アルジャジーラは「外国の民間人4人が死亡。うち少なくとも1人は米国人」と伝えた。ロイター通信は、4人が占領当局と契約する復興事業請負業者だと伝えた。米国務省はこのうち少なくとも3人が米国人だと明らかにした。
 AFP通信が現場の記者の目撃証言として伝えたところによると、住民は遺体をシャベルでたたいたり、「ファルージャを米国人の墓場にしてやる」などと話したりしていたという。AP通信は、2人の遺体が、鉄橋のはりからつり下げられ、その下で住民らが気勢をあげる写真を配信した。

朝日新聞の記事は、ソースがロイターであることを表示して「米国人3人を含む外国人4人」となっていますが、後日4人全員が米国人であることが確認されています。
「住民は遺体をシャベルでたたいたり」という表現がありますが、普通の遺体なら叩いたりしないわけで、なぜその遺体だけを叩いたのかという動機がこの情報だけでは伝わってきません。
「占領当局と契約する復興事業請負業者」との伝聞表現がありますが、これは後日、米軍が雇った傭兵会社の傭兵だということがわかっています。
「復興事業」という言葉をむりやり使っていますが、それが結果的に犠牲者が一般の人であるかのような誤った印象を与えています。

イラクファルージャで住民暴徒化、米民間人4人殺害
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040401-00000203-reu-int

暴徒化したイラク人住民が車両に乗っていた米国人4人を襲撃、殺害した後、焼死体を路上で引きずり回した。
国務省の報道官によると、殺害された4人は、いずれも連合国暫定当局(CPA)の請負業者。
4月1日9時2分更新

(写真版)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040401-00000203-reu-int.view-000

「興奮した群衆」が「暴徒化したイラク人」という表現だけだと、無差別に虐殺したかのような印象を与えますが、前述した通り6人中2人は逃がしているので、無差別ではありません。
一部の情報を省略、カットアウトすることによって、記事全体の問題認識が別なものに変ってしまうという一例です。
「殺害された4人はCPAの請負業者」とありますが、後述する浅井氏の考察によれば、国務省・CPAの請負業者リストには4人が所属する会社名は載っておらず、ペンタゴンの請負傭兵だったということです。

遺体引きずり映像自粛 米人襲撃で主要TV
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040401-00000082-kyodo-ent

【ワシントン31日共同】米主要テレビは3月31日、イラクの首都バグダッドの西方ファルージャで、米国人とみられる外国人が襲撃された現場映像を放映した。しかし、AP通信によると、遺体が周辺住民に引きずり回される「生々しい映像」の放映は控えたという。
マクレラン米大統領報道官は31日の記者会見で「すべての人々が責任ある行動を取ってほしい」と述べ、反米感情がくすぶるイラク国民だけでなく、報道する米メディアにも自制を促した。
イラク戦争後に同国で死亡した米兵は600人に迫っており、大統領選挙を控えるブッシュ大統領は、米兵犠牲者に歯止めをかけることが急務となっている。
4月1日12時4分更新

映像報道自粛が大統領の中間選挙対策のためでもあることは容易に想像できることです。
テレビを観ている側が、どんな情報が放送されなかったのかということを知る術は、私たちにはほとんどありません。
日本のテレビニュースの場合だと、自粛要請以前に番組倫理規定で自粛してしまっているので、要請さえはじめからないという状況です。

イラクファルージャの4人死亡事件は全員米国人
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040402-00002063-mai-int

国務省のエレリ副報道官は31日、イラクファルージャで4人が死亡した事件について、全員が米国人であることを確認。4人は米ノースカロライナ州に本拠を置く安全保障コンサルタント会社の所属。同社は米国などから軍特殊部隊の元隊員らを雇用し、ファルージャ近辺での食料輸送の警備を請け負っていたという。
4月1日20時48分更新

共同通信は「外国人とみられる焼死体」と伝えていましたが、ロイターから情報を買った毎日新聞は「全員が米国人」と報道。
それにしても「奇妙なのは、安全保障コンサルタント会社」って表現です。
なぜ「イラク派遣正規兵のかわりに、軍交戦規定に縛られずにバンバンイラク人を撃ち殺して暗殺任務をバリバリこなせる傭兵会社」と書かないのでしょうか?

というわけで、襲撃された4人が所属していた傭兵会社、ブラックウォーター・セキュリティ・コンサルティング社についての情報にリンクを張っておきます。

2004年4月4日 星川淳/TUP
ファルージャで惨殺されたのは、ただの“民間人”ではない!
http://give-peace-a-chance.jp/118/blackwater.html

Blackwater aids military with armed support
Wednesday, March 31,
http://www.cnn.com/2004/US/South/03/31/civilian.deaths.ap/


ファルージャで殺害されたブラックウォーター・メンバーの個人データ
http://counternews.blogtribe.org/entry-0b614135a0d4698293fcaf22f7e10244.html
元記事
http://www.williambowles.info/guests/blackwater.html

パナマ侵攻、フォートブロッグ特殊軍暗殺トレーニング付き、アフガニスタン従軍、グラナダ従軍、白人至上主義者…。なんとまあ「御立派」な軍歴の方たちだこと。
朝日新聞の外電担当者に「復興事業請負業者」と表現したことが正しかったのか、小一時間問い詰めてみたいものです。
朝日の記事を普通に読んだら、「イラクの復興支援のためにがんばっていた民間人がァー、意味も無く怒った暴徒にーィ、無差別襲われて死体にひどいことされてェー、とっても可哀想ねェー。」などと勘違いする人もいるかもしれません。
浅井久仁臣氏が、この事件について、興味深い分析を試みています。

浅井久仁臣「私の視点」
私の視点−ファルージャ“民間人”虐殺の深層
http://www.asaikuniomi.com/gulfwar2-2004.4.8

今回、米軍が手を焼くファルージャに、米軍の何らかの「ミッション」を受けた4人は、偵察に入ったと思われます。恐らく、救援物資を届けるガードマンのような形態を装ったのでしょう。だが、身元は簡単に割れてしまい、車を尾行されてしまいました。そして、2台の車が米軍の目の届かない地点に差し掛かったとき、襲撃グループの牙が剥かれたのです。 
もし、報道されているように彼らが救援物資車両を警護する役目 だったというのなら、搬送車も襲われていたはずです。だが、その被害報告はありません。この事件は偶然起きたものではなく、4人がその身元ゆえに狙われていたのです。襲撃グループから4人の身元を聞かされた市民は、暴徒化してあのような行為に及んだと推測されるのです。
その後何日経っても日本のマスコミは、4人が民間人であったと伝え続けました。朝日新聞は、米国内の死体写真の掲載是非論争は大きく伝えたものの、一度として彼らの身分を明かしませんでした。読売は5日になって「民間軍事会社に秘密のベール…ファルージャ襲撃で注目」と題する記事を掲載しました。だが、ナントそれは特派員の書いたものではなく、東京で外国報道機関のモニターをする国際部の尾関記者が書いたものでした。恐らく同記者はこれまでにもこの問題に着目していたのでしょう。限られた字数の中で状況が分かり易くきちんとまとめられています。 

暗殺技術を持った傭兵雇って、軍の替わりに警備名目で掃討作戦準備のために偵察させ、なにかあったら勝手に撃ち殺しても殺されても誰も文句も言わない、文句を言えない状態になっていて、イラク人を殺して恨みをかって殺されて、そういう傭兵雇ったために一般のイラク人にとった必要な福祉予算が減らされているといった様々な現実が、あの写真には写し出されています。
人の死はどんな死でも悲しいものですが、こんな生きかた、こんな死に方が「人道復興支援」とか「民主国家建設」の名のもとで許されるような、出口政策無き戦争というものに憤りを感じます。
日本はイラク復興のために550億円を出すということになっていますが、その多くの使途が、政府関係者以外の人にはわかりません。
国会議員が質問主意書を出してもわけのわからない答弁しか帰ってきません。550億円の一部がブラックウォーターのような傭兵企業に支払われ使われたとしても、政府が自主的に調査・公開しない限り、国民にはわかりません。
念のため自動リンクを外します。

ブラックウォーター・セキュリティ・コンサルティング
Blackwater Security Consulting
h ttp://www.blackwatersecurity.com/
h ttp://blackwatersecurity.com/