キーワード「劣化ウラン弾」

私が編集したはてなキーワード劣化ウラン弾」について書いておきます。
 

はてなキーワード劣化ウラン弾
(2005/09/16現在)
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%ce%f4%b2%bd%a5%a6%a5%e9%a5%f3%c3%c6

depleted uranium weapons ( DU weapons )
放射性重金属を使用したハイテク兵器。現在環境破壊が懸念されている。1991年の湾岸戦争で米・英軍がイラク軍に対し初めて実戦で大量に使い有名になった。
天然から取れるウランの0.7%がウラン235と呼ばれ、これを抽出して核燃料や核兵器の素材とするが、残りの99.3%がウラン238で、このウラン238がかつて兵器産業にとって産業価値が劣化した物質であった点を踏まえて「劣化ウラン」と呼ばれる。この劣化ウランに、少量のモリブデンチタニウムを混ぜて、高温を発するマグネシウムで焼き固めると金属状に変化する。これを主に戦車の装甲を貫通させる徹甲弾の弾芯に用いたものを「劣化ウラン弾」と呼ぶ。
劣化ウラン弾は、兵器産業の廃棄物を兵器として転用し戦争で使用することで、製造コストと廃棄コストを軽減できる兵器産業上の利点があると言われているが、劣化ウラン合金のコストよりタングステン合金のコストの方が高く*1、製造コストの点で利点があるというのは信憑性が薄いという説がある。また、通常のタングステン製弾芯を使った弾頭より比重(密度)が高く、1割以上の貫通効果があるとされている。さらに、命中時の摩擦熱により1100℃以上の高温が発生し爆発燃焼し、その瞬間に大量の汚染粉塵が飛散し地域一帯を汚染する効果がある。
劣化ウランは、アルファ線を出すことが確認されている。だが、アルファ線そのものの透過力は数センチであるため、現在の科学的観測技術では被爆の効果を実証的に観測・実証することは難しいとされ、臨床実証研究例が乏しい。
爆発燃焼によって飛散した劣化ウラン弾粉塵の吸引および体内被爆により、劣化ウラン弾粉塵周囲の細胞遺伝子が破壊され、発ガン性が極めて高くなるという説がある(ただし、プルトニウムに限定された情報ではあるが、その「ホットパーティクル」説にはICRPの1977年勧告では否定的である。*2 )。また、鉛やカドミウムのように、重金属としてのウランが体内に取り入れられることによる障害は確実に存在する。
知られているところでは、米陸軍・海兵隊M1A1エイブラムス増加装甲型(M1A1HA)*3戦車の主砲(120ミリ)、同海兵隊AV-8Bハリアー攻撃機の25mm機関砲、米空軍A10攻撃機の30mm砲などに使用されているが、ある程度の口径があり、火器の形態をした兵器には、どのようなものであれ、劣化ウラン弾が使用されている可能性がある。

原子炉等規制法(正式名称は「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」((核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 http://www.houko.com/00/01/S32/166.HTM )) )では、300グラム以上の劣化ウランを含む特定核燃料物質を使用する場合、政府に使用の許可を得る必要があり、使用条件として管理区域を設定するなどの技術上の基準を満たすことが必要となる。

1943年10月30日、原爆を開発したマンハッタン委員会内の「S-1実施委員会」が、マンハッタン計画の責任者L.R.グローブス将軍宛に発した報告「放射性物質の兵器としての利用」には、「放射能物質を吸い込んだ人間を死なせるのに必要な量は極めて微量である」との報告が含まれている。*4
平成7年12月及び平成8年1月、在日米軍は沖縄久米島鳥島射爆撃場で訓練を行い、劣化ウラン弾1250発を使用*5した。
1996年8月29日、国連の差別防止・少数者保護小委員会(U.N. Sub-Commission on Prevention of Discrimination and Protection of Minorities)は、劣化ウランを使用する兵器を核兵器化学兵器と並ぶ非人道兵器として挙げ、賛成15、反対1(米国)、棄権8(日本を含む)により、引き続き検討材料とすることを決定した。*6 劣化ウラン弾の使用が、ジュネーブ条約追加第一議定書*7第51条4-5で禁止される無差別攻撃に抵触すると解釈する者もいる。
劣化ウラン弾が使用された旧ユーゴ・ボスニアでは、カジンド総合病院のシュラフコ・ジュドラレ院長が、1996年から2002年にかけてガンの発生が4.5倍に増え、一つの器官に一度に二つ三つの腫瘍ができる百万人に一人ほどの稀なケースが発生していることを証言した。*8
劣化ウラン弾と疾病との因果関係については、日本の場合の2003年のがんによる「死亡率」は「10万人あたり242.5人」(アメリカは202.0人、ハンガリーは334.0人)であり*9大阪府の「発生率(罹患率)」は「10万人あたり男434.3、女290.4」であり*10日本の方がイラクよりも罹患率が高いとの統計データを根拠に因果関係を否定する見解もあるが、2003年8月、来日したイラク人医師・ジャワッド・アル・アリ氏が「バスラでは、前回湾岸戦争前のがん発生率は10万人あたり11人(88年)だったのが、98年75人、2001年116人と激増している」と報告し、劣化ウラン弾と疾病との因果関係を示唆している。*11
劣化ウラン弾と小児白血病と因果関係については、ウィルス・化学物質・放射線・電磁波などの要因を認める学説を根拠に、単純に劣化ウラン弾放射線によるという断定・特定はできないとする見解があるが、有意な差が認められる報告も存在する。*12
2003年、WHOは、『概況報告書』の劣化ウランの項目の中で、劣化ウラン被爆が健康に有害な影響を与えるとの因果関係を示すデータは無いと記述した。しかし、バイスタンダー効果など、劣化ウラン弾使用による健康への影響の可能性を強調したWHO専門官のキース・ベイバーストック氏(フィンランド・クオピオ国立大学)の研究は、報告書を書いたWHO放射能環境保健課の責任者マイク・レパチョリ課長により無視されたという事実が判明している。WHO放射能環境保健課の山下俊一専門科学官(長崎大学)は「劣化ウランは理論的には影響が無いと公開されているが、報告は国際社会におけるひとつの限界であり、本当に無いかはわからない」と証言している。*13
2004年、英国国防省*14は、劣化ウラン弾健康被害予防のため、劣化ウラン弾被弾戦車に遭遇した兵士に対する尿検査を推奨する通達を出した。通達には「あなたは劣化ウランが使用された戦場に派遣されています。劣化ウランは低度ながら放射性の重金属であり、健康被害を引き起こす可能性があります。あなたは任務中に劣化ウラン弾を、劣化ウランを含んだちりにさらされたかもしれません」と明記されていた。
2004年2月、英国エディンバラの年金控訴審判所(the Pensions appeal Tribunal)において、湾岸戦争の際に劣化ウラン弾による健康被害を受けたと主張した退役軍人に対し年金を半額支給した措置について争われた裁判で、劣化ウラン弾による健康被害を公式に認めた*15



劣化ウラン弾の関連情報を含むウェブサイト
 
公共機関
IAEA(2003) 『劣化ウランFAQ集』→http://chronoflyer.ddo.jp/~trinary/plus/iaea/duqaa_ej.html(対訳)
UNEP(2003) 『劣化ウラン概況報告書』→http://chronoflyer.ddo.jp/~trinary/plus/unep/factsheet_ej.html(対訳)
WHO(2003) 『概況報告書 第257号 - 劣化ウラン』→http://chronoflyer.ddo.jp/~trinary/plus/du/factsheet_ej.html(対訳)
WHO(2001) 『劣化ウラン:原因、被曝および健康への影響 ― 概要 ― 』→http://chronoflyer.ddo.jp/~trinary/plus/du/ej.html(対訳)
劣化ウランに関する情報→http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20030401d1.htmlアメリカ大使館)
劣化ウラン問題 →http://tokyo.usembassy.gov/j/policy/tpolicyj-security.html#duアメリカ大使館)
 
学術系
武力紛争における劣化ウラン兵器の使用→http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/Pub/29.html
 
報道
劣化ウラン弾 被曝深刻→http://www.chugoku-np.co.jp/abom/uran/
Depleted Uranium - The Silver Bullet→http://www.tv.cbc.ca/national/pgminfo/du/
 
市民団体系
STOP!劣化ウラン弾キャンペーン→http://nbfo.at.infoseek.co.jp/
劣化ウラン廃絶キャンペーン→http://www.cadu-jp.org/
NO!!小型核兵器(DU)サッポロ・プロジェクト→http://members.jcom.home.ne.jp/no_du_sapporo/
劣化ウラン研究会→http://www.jca.apc.org/DUCJ/index-j.html
Campaign Against Depleted Uranium→http://www.cadu.org.uk/
 
個人サイト
劣化ウラン弾は すごい 核兵器?→http://pws.prserv.net/spanglemaker/essays/uran.html/
軍事板常見問題・劣化ウラン弾http://mltr.e-city.tv/faq09f.html#劣化ウラン弾
劣化ウラン弾http://members.jcom.home.ne.jp/3720652101/uranium.htm


【関連図書】
放射能兵器劣化ウラン―核の戦場 ウラン汚染地帯
「汚れた弾丸」「アフガニスタンで起こったこと」 (KCデラックス)
マンガ版劣化ウラン弾―人体・環境を破壊する核兵器!
知られざるヒバクシャ―劣化ウラン弾の実態
イラク・湾岸戦争の子どもたち―劣化ウラン弾は何をもたらしたか

 
このキーワードにて「埋もれた警鐘」が報じた事実を追記したところ、これに抵抗して削除し、理由を説明したうえで一部を復活させると、今度は全文クリアという暴挙に出て事実上キーワード自体を機能停止に追いこんだ劣化ウラン弾擁護派の方が現れました。
以下、当該編集履歴
 

劣化ウラン弾@20050920225028 (2005/09/20 22:50:28) id:lovelovedog
(はてなユーザーのみ閲覧可)
http://d.hatena.ne.jp/keywordlog?klid=553821

 
ごらんの通り、彼は対案を示すことを放棄し、全文削除してしまいました。なんだかなー。
はてなユーザー以外の人も確認できるよう、編集結果を証拠保全まためキャプチャーしておきます。
 

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/12/705a5c36b6a4a8279e7b12bbc1dba0f4.png

 
私の感想を一言で言うと、キーワードの私物化はみなさんの迷惑なのでやめていただきたい、ということです。
経緯についてはキーワードの編集履歴とコメントを読んでください。
私のコメントを再掲。
 

kitano 『重要性の“評価”は各人の価値基準に依存し、価値判断者のブログで記述すべき事項であるため、削除。劣化ウラン弾核兵器放射線兵器であるか否かは、「核兵器」「放射線兵器」の定義に依存し議論が多様であり、「核兵器」「放射線兵器」の項目で書くべき事項であるため削除。プロパガンダであるとの評価については、平成16年12月02日参議院決算委員会で小池晃が、平成17年07月13日には衆議院国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会で大出彰が質疑を行うなど、市民団体に限ったことではなく、そもそも劣化ウラン弾の客観説明とは別な問題であるため削除。「放射線と奇形」についての一般論は、奇形や放射線の項目で書くべき事項であり評価も多用であるため削除。』
kitano 『劣化ウラン弾使用地域と疾病の因果関係についての評価は、WHO等、因果関係を疑問視する向きもあるが、統計から因果関係を実証し研究結果の公表を拒否されたWHOの研究者がWHOを辞めて因果関係を訴えるなど、「ちゃんとした統計」についての評価が多様であることは事実であるため、劣化ウラン弾の客観説明としてはWHOへのリンクで足りていると判断し、削除。ジャワッド・アル・アリ氏とその反論、及び、劣化ウラン弾と小児白血病と因果関係の議論については、本文で客観事実について両論併記。』
kitano 『WHO報告に関する情報(両論併記)、マンハッタン委員会メモ「放射性物質の兵器としての利用」の公文書情報、カジンド総合病院の証言情報、関連図書を、追加。(否定論で参照可能な文献があれば紹介願いたい)』
kitano 『「備考」の参照情報は文中からキーワードリンクが張られており、キーワードから何を考えるべきかは各人の価値判断であるため削除。マンハッタン委員会メモは「放射性重金属を使用した兵器」である劣化ウラン弾の関連情報として有意のため復活。WHO報告に関する情報等に関しては情報の出典の明記で足り(る)ため削除復活。必要なのは出典であり、ネットアーカイブの公開を伴わなければキーワードを編集できないとのlovelovedog氏の見解は、過去のlovelovedog氏自身のキーワード編集姿勢と矛盾しており、はてなキーワードの実際の編集に照らしても極論と思われる。マイク・レパチョリ課長の言い分添付は容認。』

 
このように、私はキーワードの編集ごとに経緯と理由をコメントにて説明し、レパチョリ氏の認識情報など、妥当と思われる編集については容認しております。
したがって、「単純な」復活行為とは、私は承知しておりません。彼のその後のコメントを読んだ現在も同じ気持ちです。
「埋もれた警鐘」など、新たな報道により既知となった劣化ウラン弾に関する新事実を事実として認めない態度は、キーワード編集としていかがなものかと思います。
事実を事実として認めたくない方の感情や個人的見解について、キーワードの中でとやかく言うつもりは私にはありません。事実ではない前提で個人的主観を何万並べても、事実の呈示の前では無意味です。
WHO報告を否定するベイバーストック研究にしろ、マンハッタン委員会メモにしろ、、カジンド総合病院の証言にしろ、どう判断すべきかという価値判断ではなく、判断の前提となる事実として何があるのか、そのソースの手引きとしてなる情報を示すことが、キーワードの編集において重要かと思います。
 
それから、いくら「×××をぶっこわす」のが流行だといっても、対案を示すことなく全文クリアするとの彼の態度は、キーワード編集としてはやりすぎで、合意や事実認識うんぬん以前の問題でしょう。
以前も、彼のキーワード編集は「備考」だの「重要」だの「重要・その2」だの、あげくの果てには「アーカイブ化された際に復活検討する」だの、キーワードがパブリックな場であるとの自覚の無いと思えるような、個人的な主観をおしつけるわがままなキーワード編集が目につきます。
「警鐘を埋もれさせる」との真意で彼がキーワードを編集していたのかどうかは私は関知するところではありませんし、はてな市民である以上どう編集するのも自由ですが、全文クリアについては、彼自身の評判を彼自身で貶めたという意味で、残念な対応だと私は思いました。
建設的な対応というか、大人の対応を希望します。
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関連リンク。

「埋もれた警鐘」WHOの劣化ウラン弾健康被害報告で隠された事実
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050917/p1

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*1:グランドパワー」2004年8月号より

*2:http://www.jaeri.go.jp/dresa/dresa/term/bp002290.htm

*3:この戦車の砲塔には、劣化ウランで出来た装甲が組み込まれている。

*4:広島ホームテレビ平成17年8月6日放送「テレメンタリー2005「埋もれた警鐘」〜旧ユーゴ劣化ウラン弾被災地をゆく〜」 http://www.home-tv.co.jp/co/press/20050806.html

*5:米軍鳥島射爆撃場における劣化ウラン含有弾誤使用問題に係る環境調査について(文部科学省の情報公開サイト) http://www.kankyo-hoshano.go.jp/06/06.html

*6: 差別防止・少数者保護小委員会の決議内容 http://www1.umn.edu/humanrts/demo/subcom96-part1.htm

*7: ジュネーブ条約追加第一議定書 http://www.globalissuesgroup.com/geneva/protocol1.html

*8:広島ホームテレビ平成17年8月6日放送「テレメンタリー2005「埋もれた警鐘」〜旧ユーゴ劣化ウラン弾被災地をゆく〜」 http://www.home-tv.co.jp/co/press/20050806.html

*9:いろいろな事項についての10万人あたりの年間死亡数 2004年度版

*10:大阪府がん登録:がんの罹患と予後

*11:2003年8月6日 イラク医師が記者会見

*12:劣化ウラン弾による被害の実態と人体影響について」における、2002年12月のジョルマクリー医師による報告

*13:WHO 'suppressed' scientific study into depleted uranium cancer fears in Iraq (Sunday Herald紙) http://www.sundayherald.com/40096 広島ホームテレビ平成17年8月6日放送「テレメンタリー2005「埋もれた警鐘」〜旧ユーゴ劣化ウラン弾被災地をゆく〜」 http://www.home-tv.co.jp/co/press/20050806.html

*14:英国国防省劣化ウラン弾に関するサイト http://www.mod.uk/issues/depleted_uranium/index.htm

*15:「裁判所は、ケニー・ダンカン氏の劣化ウラン曝露(exposure to Depleted Uranium)は、湾岸戦争での従軍に起因するものと見なした。裁判長と医師は、世界保健機構ブレーメン研究所によって行われた染色体異常検査は決定的なものと見なした。」 http://www.nodu-hiroshima.org/siryou10.htm 原告代理人の英国全国湾岸戦争帰還兵・家族連合(NGV&FA) http://www.ngvfa.com/ NGV&FAの健康被害報告 http://www.ngvfa.com/replist.html 英国の劣化ウラン弾裁判判決報道については、平成16年3月12日、参議院予算委員会で政府委員の小松一郎外務省欧州局長が「湾岸戦争の際に劣化ウラン弾による健康被害を受けたと主張しておられる退役軍人」の「年金額を見直すよう命ずる判断を行ったということを報道で承知」していると答弁している。「英国の国防省に事実関係を照会」した結果、「国防省として現在審判所の判断の及ぼす影響や本年年金額について検討中であるという返事」も受け取っているが、「(日本国)政府としては、劣化ウラン弾に関する国際機関等による調査の動向を引き続き注視していきたい」との見解も述べている