アニメーションと日本の外交政策

9月26日に、外務省がアジア諸国の記者を招いてアニメを取材させるのだそうです。26日前後の報道に要注目です。
文化交流の官僚が日本のアニメを評価したり使うのは結構なことだし、アジア外交としての「日本アニメに関心を有する記者招聘の実施」は面白い取組みです。
ただ、冷えきったアジア外交には少しはプラスになるかもしれませんが、アジア外交を冷えさせているのはいったい誰なのか。外務官僚は、アニメ記者に対して口を開くよりも、首相官邸に対して口を開くことを優先することこそ、国益につながるのではないでしょうか。
 

■外務省
日本アニメに関心を有する記者招聘の実施について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/17/rls_0907b.html

日本アニメに関心を有する記者招聘の実施について
平成17年9月7日
外務省は、アジア諸国・地域の新聞・雑誌等において文化分野担当の記者10名(中国2名、香港2名、韓国、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアブルネイ)を9月26日(月曜日)から10月6日(木曜日)まで、わが国に招聘する。
一行は、滞在中、アニメ関係者への取材、アニメ関連施設の視察、わが国の現代文化事情に精通する有識者よりのブリーフ、新聞社への訪問、観劇、都内・地方視察(京都、奈良)を行う予定である。
この招聘は、アジア各国・地域のマスコミの最前線で活躍する記者に、わが国から発信されるポップカルチャー、特にアジア諸国で人気の高い日本アニメの魅力を日本の新しい文化の一つとして紹介するとともに「クール・ジャパン」の一面を広報してもらうことを目的とするものである。

大臣官房 国際報道官室
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/sosiki/daijin.html

 
以下、アニメーションに関連した外務省の文書。
 

外務省員の声 文化外交最前線―第19号― 2005年7月30日 近藤誠一
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/bunkagaiko/050730a.html
外務省員の声 文化外交最前線―第17号― 2005年7月27日 近藤誠一
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/bunkagaiko/050727.html
韓国政府による日本文化開放政策(概要) 平成15年12月30日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/bunka/index.html

【2003年12月に開放が決定された部分】
(略)
○ 劇場用アニメ*1
・ 2006年に全て開放。

外務省員の声 文化外交最前線―第3号― 2004年4月29日近藤誠一
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/staff/bunkagaiko/040429.html
我が国の重点外交政策(平成16年度)平成15年7月
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jg_seisaku/j_gaiko_16.html

4.連帯と共感をめざした文化外交
(4) 「魅力的な日本」の発信
伝統文化、ポップカルチャー、アニメと映像、先進科学技術、美しい自然

平成16年度中国・韓国元日本留学者の集い研究会「中国、韓国における日本文化」(平成16年5月25日、於東京)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/topics/c_k_tudoi.html

元留学生による意見交換の概要
全体を通して、以下のような意見が発表されました。
1.好まれる日本文化の傾向・動向、文化比較
(韓国)
(略)
・政策的には98年から段階的に日本の大衆文化の開放措置が実施されてきており、放送の一部と劇場用アニメ以外の分野はほぼ全面的に開放された。韓国における日本の大衆文化コンテンツは、アニメを除いてこれまで苦戦してきたが、放送と劇場用アニメが全面開放されれば、日本の大衆文化ブームが来る可能性が高い。
・類似性が高い文化ほど、受け入れられる可能性が高いという「文化的割引論」により、そもそも日本文化は受容されやすいが、根強い反日感情が障壁として働いている。反日感情は上の世代ほど強い。また、日韓関係は大衆文化の受容を大きく左右する。

日露修好150周年記念事業カレンダー 2005年9月7日現在
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/russia/shukou_150/calendar.html

2005/7/6 005/7/10 日露修好150周年記念日本アニメ祭 サンクトペテルブルク市(映画館・ドム・キノー サンクトペテルブルク総領事館 映画 *2

欧州/平和条約締結の重要性に関する世論啓発事業 平成13年6月
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/russia/jr_keihatsu.html

2.ロシアのテレビ放送における日本関連番組の放映
ロシア国民の間で、日本の文化、社会等についての理解が深まるよう、次のとおり、ロシアのテレビ放送において日本関連番組の放映を行う。
(略)
ポケットモンスター」プロモーション番組作成チーム(2000年12月)

野寺外務大臣政務官演説 第2回アジア文化協力フォーラム(香港)における小野寺外務大臣政務官演説(仮訳) 平成16年11月15日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/16/eond_1115.html
町村外務大臣演説 町村外務大臣のニューヨークにおける政策スピーチ (戦後60年を迎えた日本の世界戦略と日米関係)(仮訳)平成17年4月29日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/17/emc_0429.html

御列席の皆様、
日本と米国は、実は文化面においてもグローバル・パワーとして互いに協力してきています。日本と米国の文化の融合は、新たにグローバルな文化を創ってきました。最近特に、その様な現象が見受けられます。「千と千尋の神隠し」を始め、宮崎アニメは日本的感性とウォルト・ディズニーのアニメ制作の伝統とが融合して作られた新しい創作物だと思います。*3

 
韓国の日本アニメの完全な文化開放は2006年。
韓国政府の努力を無にすることが無いよう、日本政府の側も努力していただきたいものです。
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*1:劇場用アニメの文化開放は、韓国の文化開放政策の中で一番最後に実施される分野です。

*2:サンクトペテルブルク日本総領事館 http://www.st-petersburg.ru.emb-japan.go.jp/indexjp.htm

*3:平成17年4月29日の町村大臣の「宮崎アニメは日本的感性とウォルト・ディズニーのアニメ制作の伝統とが融合して作られた新しい創作物」だとのスピーチは、そおかあ? 単なるフレームアップか?という印象もなきにしもあらず。というか、コミック規制の推進者の町村氏が少女いたぶりアニメでは世界一の宮崎アニメ(笑)をもちあげ、アメリカ追随政権にいてアメリカ従属外交を担っている町村大臣が「米帝の手先であるディズニーに対抗する」ためにアニメーターになった宮崎駿(現在はどういう気持ちかわかりませんが)をディズニーと比肩して評する図は、見ていて滑稽というか、愉快です。参考文献 『オタク学入門』1996年5月25日版 1996.Toshio Okada http://www.netcity.or.jp/OTAKU/okada/library/books/otakugaku/No6.html