本:戒厳令下の国民投票

読了。
2004年12月3日、「国民投票法等に関する与党協議実務者会議」は、「憲法改正国民投票法案」を2005年11月に国会に提出することで一致したと発表しました。
憲法改正国民投票法案」は、新聞・放送における改憲に関する「論評」を違法とし、警察官が新聞や市民メディアの記事の内容をチェックし新聞経営者、記者、市民メディア管理者を「報道の内容」を根拠として逮捕することを可能とする戦後初の超治安立法です。
報道・表現の危機を考える弁護士の会の「憲法を決めるのは誰? 戒厳令下の国民投票」は、憲法改正国民投票法案のについて簡潔に問題点を指摘しています。オススメ。
 

憲法を決めるのは誰?―戒厳令下の国民投票 (GENJINブックレット)
http://d.hatena.ne.jp/asin/4877982604
憲法を決めるのは誰? 戒厳令下の国民投票
著:報道・表現の危機を考える弁護士の会・編
現代人文社
http://202.33.140.26/genjin/search.cgi?mode=detail&bnum=40069

Chapter 1 私たちだって投票したい!
Chapter 2 改憲案の是非について報道できない!議論できない!
 1 国民の憲法改正への関わり方に関する規制
  ・不明確な国民投票運動の定義
  ・外国人に対する制限
  ・教員に対する制限
  ・公務員に対する制限
 2 メディアに対する規制
  ・国民投票の結果に影響を及ぼす目的の報道評論の禁止
  ・予想投票の公表の禁止
  ・新聞、雑誌などに対する規制
  ・虚偽放送などの禁止
Chapter 3 杞憂ではない理由――戒厳令下の日本
Chapter 4 私が決めたとおりには投票できない?!――一括投票か、個別投票か
資料
 日本国憲法改正国民投票法案(「議連案」)
 日本国憲法改正国民投票法案要綱(「議連案要綱」)
 国民投票法等に関する与党協議会実務者会議報告
 日本国憲法改正国民投票法案骨子(「国民投票法案骨子」)
 憲法改正国民投票法制に係る論点とりまとめ案(民主党憲法調査会拡大役員会案)
 日本弁護士連合会・憲法改正国民投票法案に関する意見書
(略)
本書では国民投票法案の重大な問題点を詳細に指摘しています。
国民投票法案では、憲法の複数の条項についての改憲案が発議された場合に、全部につき一括して投票することとするのか、あるいは条項ごとに個別に投票することとするのかについて明らかにしていません。個別の条項ごとに賛否の意思を表示できる投票方法にしなければ、国民・市民の意思が投票結果に正確に反映されないことになります。
国民投票では、国民・市民に情報が提供され、広く国民的・市民的議論がなされ、投票運動は自由になされなければならないのに、国民投票法案は広範な禁止規定を定め、不明確な構成要件により刑罰を科すものとなっています。
公務員、教育者の運動の制限、外国人の運動の全面的禁止、マスコミの規制、不明確な要件での刑事罰の規定は、まさに戒厳令下の国民投票といった状況を生み出し、甚だしい萎縮効果をもたらし、報道・表現の自由を著しく制限するものとなります。
そのほか、発議から投票までの期間は十分に保障されるべきであること、改憲の是非は少なくとも投票数の過半数で決すべきであること、未成年者、公民権停止者の投票権は考慮されるべきであることなど、本書で指摘している重要な問題があります。
改憲問題は、いうまでもなくこれからの国の進路、あり方、私たち市民一人ひとりの生き方までも規定する最も重大な問題です。憲法改正国民投票については報道・表現の自由が最大限尊重・保障され、十分な国民的・市民的討議、運動がなされ、投票者の意思が正確に反映されるものでなければなりません。本書を一人でも多くの方々に読んでいただき、本書が国民投票法案の問題点に対する広範な世論形成に少しでも役立つことを願っています。

kitanoのアレでも何度か紹介していますが、憲法改正国民投票法案は「憲法改正後の社会を先取りする、戦前の新聞紙法に匹敵する究極の言論弾圧立法」(吉岡忍氏)です。「憲法改正国民投票法案」が成立すれば、すぐに憲法改正発議となるでしょうから、「憲法改正国民投票法案」の違憲裁判は改正後の憲法、すなわち国民の人権がすでに制限された憲法の下でその違憲性が問われ、合憲と判断されることになるでしょう。
そういう問題を未然に防ぐ意味で、選挙の投票に参加し、最高裁判事国民審査で審査判事全員に×を書くことには意味があるように思われます。
 
関連リンク。
 

■LLFP  報道・表現の危機を考える弁護士の会
http://llfp.j-all.com/

 
関連ログ。
 

最高裁判事国民審査:審査判事全員に×を
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050824
おたくのための選挙資料(1):自由民主党の公約
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050822
資料:国民投票法等に関する与党協議会実務者会議報告
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050609/p1
資料:日本国憲法改正国民投票法案骨子案
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050609/p2
資料:日本国憲法改正国民投票法案(議連案全文)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050608
表現の自由を刺し殺すために包丁を研ぐ:改憲国民投票法案(2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050427
資料:報道・表現の危機を考える弁護士の会 声明
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050830/p4

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【脚注】