ゲーム業界の自主規制強化について


2005年7月19日、社団法人コンピューターエンターテイメント協会(CESA)が「自主規制強化」を発表しました。
以下、当該報道発表です。(文字強調はCESAによる)
 

■社団法人コンピューターエンターテイメント協会(CESA)
http://www.cesa.or.jp/
ゲームソフトの販売自粛について 2005年6月10日付
http://www.cesa.or.jp/news/2005/050610.pdf

2005/06/10
社団法人コンピュータエンターテインメント協会
会長辻本憲三
ゲームソフトの販売自粛について
当協会ではゲームソフトの多様化と表現力の飛躍的向上の中で、ゲームソフトの表現内容を社会一般の倫理水準に照らし適正に維持することに努めております。このために、当業界の自主規制制度として特定非営利法人「コンピュータエンターテインメントレーティング機構」(CERO)の年齢別レーティングを導入し、お客様の購入の目安として商品情報の提供を行って参りました。
今回、当協会ではこれをさらに進めて販売店店頭における対象年齢未満のお客様への販売自粛などについて、販売店の皆様のご協力をいただきながら、より積極的な施策の検討を進めることを決定致しました。
今後ともゲームソフトが音楽や映画等と同様に文化として広く社会に受入れられる努力を続けてまいりますので、ご理解とご協力のほど、よろしくお願いします。
以上

家庭用ゲームソフトの「年齢別レーティング制度」を活用した販売自主規制について 2005年7月19日付
http://www.cesa.or.jp/news/2005/050719.pdf

2005年7月19日
報道関係資料
社団法人コンピュータエンターテインメント協会
家庭用ゲームソフトの「年齢別レーティング制度」を活用した販売自主規制について
社団法人コンピュータエンターテインメント協会(略称:CESA、会長:辻本憲三、事務局:東京都港区西
新橋、電話:03-3591-9151)では、平成17年6月10日に家庭用ゲームソフトの販売自粛の検討を進めることについて発表させていただいておりましたが、このたび各関係機関等と調整の上具体案を検討してまいりました結果、今後以下のとおり、販売の自主規制を実施していくことを決定いたしましたのでご報告申し
上げます。
◎今回の方針について
特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構機構(略称:CERO)のレーティング制度に基づく「18歳以上対象」の家庭用ゲームソフトについては、「18歳未満の方に対しては自主的に販売を規制する」こととし、販売店様に自主規制へのご協力をお願いすることと致しました。
◎これまでの背景・今後に向けた自主的な販売規制実施の理由
これまで家庭用ゲームソフト業界は、家庭用ゲームソフトのユーザーの多くを占める青少年の健全な育成に寄与することを目的に、平成14年10月からCEROによるゲームソフトの年齢別レーティング制度を実施し、過度に性的、暴力的または反社会的なゲームが販売されないようゲームの内容・表現の自主規制を行うとともに、年齢別レーティングマークを表示して購入に際しての情報提供を行ってまいりました。
今回、CESAを中心として、近年の家庭用ゲームソフトの普及に伴う社会への影響の増大、コンテンツの多様化と表現力の飛躍的な向上を踏まえ、家庭用ゲームソフトの販売について自主的な「販売規制」を導入することにより、青少年の生活に関わる一業界として積極的に社会や家庭における青少年の健全育成に向けた努力に協力すべきと考え、自主的な販売規制を実施することと致しました。
◎実施事項
1.販売店各社様に、以下の販売自主規制にご協力いただけるようお願いしてまいります。
(1)CERO「18歳以上対象」ゲームソフトの年齢区分に合ったユーザーへの販売
下記事項につき順次実施してまいります。
①明らかに18歳未満と分かる購入希望者については、「18歳以上対象商品」である事を説明し販売しない。
②18歳未満でも親や保護者が同伴し、その同意の上なら販売する。
③18歳未満かどうか判断がつかない場合は、販売店様側で年齢確認を行う。
(2)お客様が「年齢区分」を認識しやすい陳列の工夫
(3)店頭でのレーティング制度の告知強化
レーティングに関するポスターやパネル等を制作し、店頭で掲示する。
<販売自主規制への協力を働きかけていく販売店様>
全国の家庭用ゲームソフト販売店
2.CEROレーティング制度についての啓蒙活動
消費者へのCEROレーティング制度についての啓蒙活動を強化し、ご理解いただけるよう努力すると同
時に、青少年を取り巻く行政(都道府県)、団体に向けた情報発信を積極的に行う。
3.パッケージ表記の改善の検討(コンテンツアイコン表記の改善を含む)
◎告知強化について
①消費者へのアプローチ:「レーティング」および「対象年齢通りの販売実施・購入呼びかけ」のPRを強化する。
②行政へのアプローチ:主要都道府県を中心に、業界の取り組みをこれまで以上にPR強化する。

本リリースに関するお問い合わせ先
社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)
TEL03-3591-9151 FAX 03-3591-9152
Eメールアドレス:info@cesa.or.jp
CESAホームページアドレスhttp://www.cesa.or.jp/

特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構
COMPUTER ENTERTAINMENT RATING ORGANIZATION 略称 CERO
http://www.cero.gr.jp/
年齢別レーティング機構
http://www.cero.gr.jp/rating.html
年齢区分マーク
全年齢対象12才以上対象15才以上対象18才以上対象
CERO倫理規定 (pdf 21.5KB)
http://www.cero.gr.jp/regulation.pdf

 
関連報道。
 

Yahoo!ニュース検索「ゲーム 有害」
Googleニュース検索「ゲーム 有害」
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18歳未満には販売せず ゲームソフトで新規制 - 共同通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050719-00000309-kyodo-bus_all
http://www.shizushin.com/national_economy/2005071901006221.htm
http://www.minyu-net.com/news/2005071901006221.html
http://www.kobe-np.co.jp/kyodonews/news/00021766kd200507262300.shtml
http://kumanichi.com/news/kyodo/economy/200507/20050719000528.htm
http://www.sanyo.oni.co.jp/newspack/20050719/20050719010062211.html
http://www.sakigake.jp/servlet/SKNEWS.NewsPack.npnews?newsid=2005071901006221&genre=economics
http://www.sanin-chuo.co.jp/newspack/modules/news/239001012.html
http://www4.oita-press.co.jp/news.cgi?D=CN20050719&ID=CN2005071901006221.1.N.20050719T233557&J=Economics&UP=20050719T233557
http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack.cgi?economics+CN2005071901006221_1
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2005071901006221_Economics.html
http://www.topics.or.jp/Gnews/news.php?id=CN2005071901006221&gid=G03
http://www.kahoku.co.jp/news/2005/07/2005071901006221.htm
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20050719010062211.asp
http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050719000564

大手ソフトメーカーなどが作るコンピュータエンターテインメント協会(東京)は19日、暴力や性的表現などを含み18歳以上を対象とする家庭用ゲームソフトについて、18歳未満の顧客には売らないよう販売店に求める自主規制を導入すると発表した。
神奈川県が暴力ゲームを有害図書に指定するなど、自治体が規制を広げているため、業界として対応を強化した。
売店は早ければ今年の夏休み期間中から、年齢を確認した上で18歳未満の客には販売しない。ただし保護者の同伴や同意があれば販売する。
既に主要な販売店からは、協力するとの返事を得ているという。保護者の同意や年齢確認の方法は、各店に任せる方針。

CESACERO、年齢別レーティング制度において販売の自主規制を発表 - RBB TODAY
http://www.rbbtoday.com/news/20050719/24239.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050719-00000016-rbb-sci


CESA調査・広報委員長のスクウェア・エニックス和田洋一社長は、自主規制の開始時期や方法については、販売店ごとの事情もあるため、各社に一任するとしたが、7月下旬から8月上旬にかけて開始し、年内には消費者の方々に理解・浸透していただけるように努力したい、と述べた。
なお、ここでいう「販売店」とは、全国のテレビゲーム専門店、フランチャイズショップのほかに、百貨店、大手スーパー、家電量販店、複合店、コンビニエンスストア、eコマースサイトなど、テレビゲームを扱うすべての販路が含まれる。すでにCESAでは大手流通各社に協力要請を行っており、95%から賛同済み。また残る5%についても賛同が得られる見込みだという。
またCEROレーティング制度についての啓蒙活動については、行政(都道府県)、団体に向けた、積極的な情報発信のほかに、ゲームソフトのパッケージ表記も改善する。パッケージ表記については現状のコンテンツアイコン表記の改善も含める。
CESAによれば、2004年に審査されたゲームソフトのうち、18歳以上対象に当たるソフトは全体の8.7%。ほかに年齢別レーティングには全年齢、12歳以上対象、15歳以上対象の4区分があり、年齢区分マークとコンテンツの概要を示すアイコン(飲酒・喫煙など)がパッケージに貼られて出荷される。ただしCEROレーティングは消費者に対してゲームソフト購入の指針を示す物で、購入に対する制限は事実上なかった。今回の自主規制により、CEROの年齢別レーティングはより存在意義が増すことになる。
今回の記者会見は神奈川県による「グランドセフトオートIII」の有害図書類指定や、一連の「暴力ゲーム」バッシングに対する、ゲーム業界側の対応だともいえる。中古問題で一時はねじれにねじれたメーカーと販売店が、相互に協力して市場を盛り上げていく試みという点でも興味深い。テレビゲームに対する社会的な要請に対して、CESAが真摯な姿勢で取り組んでいくことをアピールしたともいえる。
次世代コンソール発売を控え、ゲームの表現に関する社会的な摩擦は、今後も増えこそすれ減ることはあり得ない。その解決には条例などの外部拘束力に頼るのではなく、今回のような業界による自主規制の強化が望ましい。より一層の地道な努力に伴う、消費者への認知度の向上を望みたい。
(ライター 小野憲史)*1

CESA、「年齢別レーティング制度」を活用した販売自主規制を開始
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050719/cesa.htm

会見には、CESA調査広報委員長である株式会社スクウェア・エニックス和田洋一氏、流通委員長である株式会社コーエーの小松清志氏、CESAの専務理事として堀口大典氏が出席。
和田氏は「先般の行政の動きやユーザーの声を反映し、業界でも18歳未満の方に対して若干刺激が強いタイトルに関しては、流通の方に対して自主的に対応していくお願いをする」と口火を切った。「今まで、CEROのレーティング機関では『推奨』という形でレーティングを行なってきた。あくまでも推奨ということだったが、現状、家庭用ゲームソフトが文化としても影響が大きいということを真摯に受け止め、18歳以上のレーティングタイトルに関して、保護者の方に了解をとってからの販売をお願いすることになった」と報告。
「確認の仕方については、販売店様にお任せする。また、レーティング制度自体の啓蒙活動も行なっていく。また、パッケージ表記の改善の検討も行なっていく。今まではもちろん、私どもなりに取り組んできたが、ゲームソフトは我々が思っていた以上に皆様に受け入れられているという、その重さを我々が真摯に受け止めるべきではないかということで、6月よりかなり深いところまで話し合いを持ってきた。今回の話は流通にとって扱うかということなので、ご協力をお願いする、という話になるのだが、今回を契機として、最終消費者の方々との接点を拡大していきながら、きちんとした声を反映するような状態で業界全体を運営していきたい、という態度の表明として今回の記者会見をセットさせていただいた」と経緯を明らかにした。
また、流通委員会の販売店に対する話し合いの状況に関しては、小松氏から「現状、流通委員会での販売店へのお願いの状況だが、私どものほうでは、先週末の時点で大多数の販売店の協力が得られるということでめどがついた。しかしながら、販売店によって店舗数、購買層の違い、販売形態など様々な事情がある。私どもとしてはできる限りご協力いただくということで、実施時期や方法については、販売店サイドで、できる範囲でお願いしたいと考えている。私どもが考えている事柄に関しては、おおむね販売店のほうでも賛成されている。実施の時期については7月下旬から8月上旬にかけて少しずつ実施していただけると考えているが、フランチャイズを持っているところに関しては、実施に関しては少々時間を要すると思われるが、できるかぎりすみやかに実施していただけるようお願いしていく」と報告された。
今回の発表に関して「問題を認識することが肝要。認識のコンセンサスをちゃんととっていこうというのがこれまでの議論。ただ、議論ばかりでなく、できるところからどんどんやっていかないと。今回も議論で相当時間がかかっている。Eコマースの場合は別の話があるので、チェックしようがない。そこはさすがに難しいが」と和田氏は補足した。
また、「今回の発表は“対行政”ということではない。条例で規制すると実質抜け道はいくらでもある。それではかえってユーザーの方々の信頼を失うことになる。自分たちでやることが一番実行力があると考えている。条例を作る際に我々に打診されることはほとんどないが、もし打診していただけるのであれば、問題意識を共有した上で話し合っていきたい。まずはお話をさせてもらえれば」と展望を述べた。

ゲーム業界、ソフト販売で自主規制策 日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050719AT1D1903819072005.html
「18禁」ゲーム 年齢確認後に販売へ 業界団体が規制要請  2005/07/20 07:52
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20050720&j=0022&k=200507201684

家庭用ゲームの業界団体、コンピュータエンターテインメント協会(CESA、東京)は十九日、過激な性表現や暴力シーンなどが含まれ、「十八歳以上」と指定したゲームソフトについて、身分証による年齢確認などを行った上で販売する規制強化策を発表した。全国の販売店に協力を求め、年内にも販売規制の徹底を目指す。
過激ゲームの影響を受けた少年犯罪の凶悪化を防ぐことが狙い。規制強化策は、身分証提示のほか《1》年齢制限付きのソフトと通常のソフトの販売場所を区別する《2》保護者の同意の上で販売する《3》年齢制限のマークを目立つ位置にはる−など。年齢確認ができないインターネット販売への対処など課題は残るが、「販売店の95%から賛同は得ている」(同協会)という。
ゲームソフトには既に「十五歳以上」「十八歳以上」など対象年齢を四段階に分ける制度が導入されているが、販売規制に強制力はない。しかし、今年二月に大阪府内の小学校で起きた教職員殺傷事件の少年容疑者が、過激アクションゲームに影響を受けたと報じられて以来、大阪府や神奈川県など自治体から販売規制を強化する動きが出ている。このため、ゲーム業界も自主的に規制強化策をまとめることにした。

有害ゲームを広域指定検討 神奈川提案で知事会 - 共同通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050714-00000089-kyodo-pol
http://www.minyu-net.com/news/2005071401001226.html
http://www.kobe-np.co.jp/kyodonews/news/00020380kd200507211200.shtml
http://www.sanyo.oni.co.jp/newspack/20050714/20050714010012261.html
http://kumanichi.com/news/kyodo/politics/200507/20050714000170.htm
http://www.topics.or.jp/Gnews/news.php?id=CN2005071401001226&gid=G02
http://www.shizushin.com/national_politics/2005071401001226.htm
http://www.kahoku.co.jp/news/2005/07/2005071401001226.htm
http://www.sanin-chuo.co.jp/newspack/modules/news/237671010.html
http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050714000201
http://www4.oita-press.co.jp/news.cgi?D=CN20050714&ID=CN2005071401001226.1.N.20050714T123118&J=Politics&UP=20050714T123118
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20050714010012261.asp
http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack.cgi?politics+CN2005071401001226_1
http://www.sakigake.jp/servlet/SKNEWS.NewsPack.npnews?newsid=2005071401001226&genre=politics

全国知事会議は14日、残虐シーンが多いとして全国で初めて家庭用テレビゲームソフトを条例で有害図書類に指定した神奈川県の提案を受け、都道府県での広域的な指定や、業界の自主規制の強化要望などを常任委員会で検討することを決めた。
神奈川県は6月、米国製の家庭用テレビゲームソフト「グランド・セフト・オート3」(国内版発売元・カプコン)を有害図書類に指定した。
松沢成文神奈川知事は「愛好者や業界からすごい抗議を受けたが、驚くほどの残虐性だ。各知事の判断もあるが、広域的にやらないと(近隣県で)すぐ手に入る」と指摘した。

CESA、年齢制限付きゲームの販売適切化で販売店と協力へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050610-00000032-rbb-sci

コンピュータエンターテインメント協会CESA)は、店頭における年齢別レーティング付きソフトの販売に関し「販売店の皆様のご協力をいただきながら、より積極的な施策の検討を進めることを決定致しました。」とのコメントを発表した。
この発表は、神奈川県における「グランドセフトオートIII」の有害図書類指定をうけてのものとみられる。
この有害図書類指定では、年齢別レーティング付きソフトの販売における規制などが問題となっていた。これまでも年齢別レーティング付きソフトは他のソフトと分けて陳列することが望ましいとされてきたが、より踏み込んだ形での対策が実施されそうだ。
(RBB TODAY)

CESAの今回の対応は、ゲーム規制を実施した神奈川県だけではなく、ゲーム規制を実施していない都道府県も含めた全国が規制対象地域となっています。
問題のひとつは、自主規制によってゲームを規制対象にしていない地域でも制度規制が想定していない実質的な規制が広がってしまうという点。
もうひとつは、自主規制がゲームが有害であるとの認識を前提にした措置であって、ゲームは有害でも無害でもなく各人の価値観に基く選別の便宜、すなわち本来の意味でのゾーニングのためではないという点です。
 
CESAの対応については、大雑把に言って三つの評価があります。
 

評価A 全国で自主規制をしたことによって、神奈川県のゲームの条例規制の全国化を阻止することができるだろう。
評価B 全国で自主規制をしたことによって、神奈川県のゲームの条例規制の全国化を自ら担い、条例規制の全国化に拍車をかけることになるだろう。
評価C 消費者にとっては不要な規制が全国化したことに違いは無い。条例規制であろうが自主規制であろうが、規制が全国化した結果になったことそれ自体が問題だ。

 
この評価は、いわゆる「撤退戦術」の戦術評価でもあるわけですが、みなさんはどの評価が正しいと思いますか?
おそらくCESAとしては、評価Aを想定していると思われます。でも実際はどうでしょうか?
 
私は評価Aについては疑問を感じます。
なぜか。
ゾーニングのためではなく、有害規制の延長として実施しているからです。
もしCESAが「ゲームは有害ではない。ただ単に個人の価値観の相違にすぎない。だから、価値観の多様性に応じた個人的なゲームの選別の便宜のためにゾーニングを実施する。悪までも表現の自由は守り抜く」と毅然とした態度を示したうえでゾーニングを実施するのであれば、自主規制の実施によって神奈川県知事が「規制したから自主規制した。効果が表れた」と喜びはしゃぐなどということは無かったのではないでしょうか。
 
私はゾーニングそのものを否定する立場ではありませんが、ゲームは有害だとの前提で実施される自主規制は、ゾーニングではあり得ず、制度規制を加速する作用となると指摘しておきます。
強調して書いておきたいことは。自主規制とゾーニングとは違うので区別しなければならないということです。
CESAのやっていることはただの自主規制であり、制度規制の延長であって、多様な価値を尊重し合うゾーニングではありません。
 

ビデオニュース:宮台真司氏講演 メディア影響論
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040115

(略)
したがって、もし科学的な成果を踏まえたメディアの悪影響に対する対処を考えるのであれば、メディアの「受容文脈」、どういう情況で享受するのかというその情況をコントロールしなければならない。
どういうふうにコントロールするのが最も効率的であるのかというふうな提案をしていかなければならないわけですが、残念ながらこの日本ではついぞそういう提案がなされたことは無く、未だにメディア規制に賛成する側も反対する側も、「有害だから規制しろ」「いや有害じゃないから規制するな」というような議論をまだやっているわけであります。これは非常に素朴すぎる考え方であります。
「有害じゃないから規制するな」という理由は正しいでしょうか? これはちょっと口を滑らして次の段の方に入ってしまいましたけれども。
たとえば、こうしたことはもう以前から常識になっているわけですけれども、いろんな人に言うと「そんなことを言うけどだって日本以外の先進国ではもっとメディア規制しているじゃないか」という反論が出てきますね。
メディア規制は、政治的な言論統制を除けば、性暴力について1960年代の北欧のポルノ規制などに遡るわけですが、この性や暴力に関するメディア規制は、市民運動、社会運動の段階では素朴な悪影響論ですけれども、法形成の段階ではいろんな学問的なデータを踏まえて、素朴な悪影響論に呼応して法を作るというようなことは一般的にはありません。
具体的には、北欧やドイツでは、くりかえし「性的なメディアは性的な子どもにするのか」「暴力的なメディアが子どもを暴力的にするのか」という研究がなされてきて、肯定的な結論はあまり得られないんですよね。しかし否定はなされてきた。
じゃあ規制はどういうロジックでなされてきているのでしょうか? それは「ゾーニング」というロジックです。
つまり「見たいものを見る権利」の反対側。「見たくないものを見ないですむ権利」。あるいは子どもを保護監督する責任を負った側で言うと、「子どもに見せたくないものを見せない権利」ということですね。
これはもちろん憲法上の権利ということで、憲法のなんでも入れられる「幸福追求権」というものがありますよね、環境権入れたり肖像権入れたりするわけですけれども、その幸福追求権の中にこの権利を書きこもうじゃねーかというような動き。これが規制のロジックです。
わかりやすく言えば「不意打ちをくらわない権利」というふうに言ってよいです。裏返せば、見たいときにはちょっとコストをかければ見ることができる。見る権利でもあるわけですね。
このゾーニングのロジックによる規制は、悪影響ウンヌンカンヌンについての議論を必要としません。ま、ある種の“信仰”に基づいて悪影響があると思う人はその自分の認識に基づいてゾーニングのロジックを使って見なければいいし、子どもに見せなければいい。そういう考え方であります。
ところが日本では、有害だから規制しろ、いやそんなことは証明されていないから規制するな。この議論も実は、有害ウンヌンカンヌンについてのマスコミ効果研究の伝統とは別に、ゾーニングについての先進国の長い歴史をまったく踏まえていない“馬鹿げた”理論であると断言していいです。

 
メディアが犯罪を誘発するという強力効果論学説を実証する科学的根拠はこれまでも存在せず、受容文脈によって行動は左右されることが科学的に明らかになっています。
したがって、有害か無害かという議論はすでに学問的に結論が出ていることですので、制度規制にせよ、自主規制にせよ、有害であるという前提での規制の実施には意味がありません。
重要なことは、情報が悪影響を及ぼすことはないとの前提のもとで、各々の価値観のもとで情報を取捨する利便を提供するシステムしとしての本来の意味でのゾーニングを実施し、各々の価値を尊重するための自主規制を目指すということです。
自主規制をしなければ子どもに悪い影響があるから自主規制をするというロジックは、科学的に誤りであるだけでなく、自主規制それ自体が制度規制の延長的規制として表現の自由を抑圧する側にまわってしまうことになります。
 
私の戦後の表現規制の歴史の評価では、ゾーニングは一度として実施した例がありません。しかし、規制する側が規制される側に「自主規制」をやらせることによって、規制の強化が成功した例ならたくさんあります。
東京都では1964年に青少年条例が制定されましたが、前年の1963年に自主規制団体「出版倫理協議会」結成されたことが、自主規制先行型の条例規制の土壌をつくることになりました。これ以降、自主規制団体の自主規制は、規制サイドに利用され続けることになります。
1970年代、劇画などの性表現や暴力表現が問題になったき、少年非行の増加はマンガのせいだということになって長野を除く全都道府県で条例が制定・強化されたましたが、この時も表現流通者による自主規制が先行する形で規制が強化されました。
1980年代にはいわゆるロリコン漫画・ロリータゲームの性表現が批判を受けましたが、この時も自主規制が先行する形で規制が強化されました。
1990年代初頭にはいわゆる「ポルノコミック追放運動」が一部宗教団体によって展開されましたが、この時も圧力団体や議員や総務省が自主規制団体に自主規制を要請し、それを受け入れ自主規制が先行した後に、条例が強化されました。
 
このように、日本における表現流通規制は、自主規制団体が規制推進派の先行部隊として規制を先導し、制度規制を定着させていく役割を果していたというのが過去40年の表現規制の「歴史」です。
 
もちろん、自主規制団体が規制推進派の先行部隊として規制を先導することに、なんの意味も無いとも言いきれません。自主規制団体は、出版社、書店、メジャー表現者などの利益を確保してきた実績は認めざるをえません。表現規制が強化されても、利益だけは確保されたということの意味は大きい。
しかし、利益の確保は、あくまでも“多数派”の利益であって、それは限りなく少数派の表現と利益を切り捨てていくということと同義です。
みなさん、よく考えてみてください。少数派の表現を守ってこそ、表現の自由を守っていると言えるのであって、多数派が少数派を切り捨てることで多数派の利害を守るのは表現の自由を守っているのではなくて、ただ単に多数派の利益=「営業の自由」を守っているにすぎません。
 
わたしたちは、CESAにかぎらず、自主規制団体と呼ばれる集団を評価する場合、「表現の自由」を守っているのか、それとも「多数派の営業の自由」を守っているのかを、よく見極める必要があります。
表現の自由を守るフリをして多数派の営業の自由を守っているにすぎない団体の活動を、少なくとも私は「表現の自由を守る団体」として評価することはできない。
 
現在の多数派の表現と利益は、過去40年間に渡って少数派の表現・流通をあたかもイケニエとして犠牲にすることによって成立しているのにすぎないのであって、それは逆に言えば、表現の多数派こそが表現を規制してきたのだという見方もできます。
それは喩えるなら、タコが自分の足を一本ずつ食べることによって飢えをしのいでいるのに等しい。
少数派の切捨てによって成立する多数派は、いつまでも多数派ではいられません。切り捨てれば切り捨てるほど、切り捨てた多数派は少数派になり、切り捨てられた少数派は多数派になっています。タコが自分の足を食べれば食べるほど、足はどんどん減って、最後には一本しか無くなっていくのと同じです。最後の一本になってもう切れ捨てる足が無くなった時、「自主規制」を強化することは不可能となり、制度規制に圧倒されて「表現の自由」は完全に死ぬでしょう。
そういうシナリオに向ってひた走った40年になんの反省もせず、いま、まさに表現の多数派が、過去40年間してきたように表現の少数派を切り捨てることによって多数派の利益は確保され、表現の多数派と思われている自主規制派は少しずつ少数派に転落し、規制を受けた少数派が多数派に転じようとしています。
 
これは、日本社会が現在も、すべての構成員がなんらかの形で身分差別に参加することによって体制を維持してきた江戸時代と変らぬ差別社会である、ということを証明する一例ではないでしょうか。
 
みなさん、このことだけは憶えておいてください。そしてだまされないでください。
「自主規制」は規制反対派の戦術だけではなく、規制推進派の戦術でもあり得るということを。そして「規制を防ぐために自主規制しましょう」と言っている人は規制反対派ではなく、規制反対派の仮面を被った規制推進者となっていることがある、ということを。
 
1955年、「悪書追放運動」が起った時、表現者の多くは自主規制という方法論での抵抗ではなく、正々堂々と表現の自由と科学的合理性を掲げて批判に応じ、その結果として「青少年保護育成法案」の国会上程を阻止し、育成条例も制定も阻止することができました。
その時の規制推進派の失敗の経験が、規制推進派に「自主規制先行型による規制拡大戦略」を学ばせ、自主規制によって規制を拡大させることになったのです。
ですから、規制される側も、失敗と成功の両方の経験から学ばなければなりません。
自主規制ではなく、不当に譲歩することなく、正々堂々と議論し、表現規制に一致団結して反対していくことの重要性を。そして、有害性を前提としない、多様な価値観をまもるためのゾーニングの必要性を。
 
ジャーナリスト、文壇、放送業界、映像業界、漫画業界、ゲーム業界、同人誌関係者、フィギュア業界、通信業界、憲法学者社会学者、メディア技術関係者、おたく、メディア関係者、国際NGOなどはまだバラバラなままです。
一方、規制を推進している側は、宗教業界、青少年団体、女性団体、警察、内閣府厚生労働省経済産業省、財界、放送業界、一部出版者、学術団体、極右団体、保守言論人などが一致結束しています。
自主規制により仲間の一部を切り捨てることによって、切り捨てた側は当面の利益を確保することはできます。しかし、仲間を切り捨てた側も、いつかは切り捨てられる側になるということを私たちは忘れてはなりません。
仲間を裏切ってまで自分の好む表現の利益だけを確保する「自主規制」に、私は反対です。たとえ意見や審美的価値観が異なるとしても、表現の自由において表現者を擁護するということ。その立場を私は崩したくはありません。
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関連リンク。
 

全国知事会
http://www.nga.gr.jp/

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関連ログ

資料:神奈川青少年課のゲーム規制の認識「社会全員がゲームが悪だと言っている」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050717
神奈川県議会で加速するゲーム規制:北井宏昭議員「疑わしきは罰せよ!」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050715
ゲーム規制:松沢知事の有害図書類規制論
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050712
神奈川県有害図書類指定のゲームソフト説明会
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050711
総務省:有害情報判定委員会創設
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050627
神奈川県ゲーム暴力表現規制(4):GTA3に有害指定
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050607
神奈川県ゲーム暴力表現規制(3):関連リンク
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050604
神奈川県ゲーム暴力表現規制(2):報道状況
上田清司埼玉県知事「神奈川からの流入を防止のためにゲームを規制する」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050603
神奈川県ゲーム暴力表現規制(1):松沢知事御乱心「生身の人間を殺すな!」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050602
松沢成文知事、ゲーム規制を熱く語る「ゲームが犯罪を招くので全体規制を考える時期だ」
神奈川県「かながわ青少年育成指針」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050405
神奈川県:出版流通規制強化案について意見を募集
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041217
神奈川県の有害環境規制
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040513

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*1:小野憲史は元「ゲーム批評」の編集長。「小野憲史のなんでもかんでも」http://members.jcom.home.ne.jp/kono3478/normal/word/index1.html kono3478@jcom.home.ne.jp はてなダイアリー「日々つれづれ」 http://d.hatena.ne.jp/kono3478/ 小野憲史氏のゲーム規制についての見解例→ 「もういいかげんゲーム業界の人間はマスコミのゲーム叩きと思われる報道についてだけ文句を言うのはやめた方がいいのでは。叩かれたときに「でも我々はこうやってキチンとルールを作ってやってます」と胸を張って言えないところを棚に上げて、人様の文句ばっかり言っても仕方がないと思うんですけどね。だって臭いモノに蓋をしたいのはゲーム業界の方でしょう。」 http://d.hatena.ne.jp/kono3478/20050215