刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案衆議院成立

 
「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案」が衆議院で修正可決されました。
ここを読んでいる人の何人かは、もしかしたら将来この法律のお世話になることがあるかもしれません。もちろんそのような状況になってほしいとは願っているわけではありませんが…。
たとえ罪を犯しても、人は人です。人である限り、人としての権利を堂々と主張しましょう。権利は主張してこそ権利です。
 

衆議院
刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案議案審議経過情報
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1D9ADEA.htm
刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律 提出時法律案
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16205077.htm

(自弁の書籍等の閲覧)
第四十六条 受刑者が自弁の書籍等を閲覧することは、この章及び第十一章の規定による場合のほか、これを禁止し、又は制限してはならない。
第四十七条 刑事施設の長は、受刑者が自弁の書籍等を閲覧することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、その閲覧を禁止することができる。
一 刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。
二 矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。
2 前項の規定により閲覧を禁止すべき事由の有無を確認するため自弁の書籍等の翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、受刑者にその費用を負担させることができる。この場合において、受刑者が負担すべき費用を負担しないときは、その閲覧を禁止する。

(新聞紙に関する制限)
第四十八条 刑事施設の長は、法務省令で定めるところにより、受刑者が取得することができる新聞紙の範囲及び取得方法について、刑事施設の管理運営上必要な制限をすることができる。
(時事の報道に接する機会の付与等)
第四十九条 刑事施設の長は、受刑者に対し、日刊新聞紙の備付け、報道番組の放送その他の方法により、できる限り、主要な時事の報道に接する機会を与えるように努めなければならない。
2 刑事施設の長は、第六十九条第二項の規定による援助の措置として、刑事施設に書籍等を備え付けるものとする。この場合において、備え付けた書籍等の閲覧の方法は、刑事施設の長が定める。
(刑事施設の規律及び秩序)
第五十条 刑事施設の規律及び秩序は、適正に維持されなければならない。
2 前項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない。
(身体の検査等)
第五十二条 刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、受刑者について、その身体、着衣、所持品及び居室を検査し、並びにその所持品を取り上げて一時保管することができる。
2 第十六条第二項の規定は、前項の規定による女子の受刑者の身体及び着衣の検査について準用する。
3 刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、刑事施設内において、被収容者以外の者(弁護人又は刑事訴訟法第三十九条第一項に規定する弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)を除く。)の着衣及び携帯品を検査し、並びにその者の携帯品を取り上げて一時保管することができる。
4 前項の検査は、文書図画の内容の検査に及んではならない。
(捕縄、手錠及び拘束衣の使用)
第五十五条 刑務官は、受刑者を護送する場合又は受刑者が次の各号のいずれかの行為をするおそれがある場合には、法務省令で定めるところにより、捕縄又は手錠を使用することができる。
 一 逃走すること。
 二 自身を傷つけ、又は他人に危害を加えること。
 三 刑事施設の設備、器具その他の物を損壊すること。
2 刑務官は、受刑者が自身を傷つけるおそれがある場合において、他にこれを防止する手段がないときは、刑事施設の長の命令により、拘束衣を使用することができる。ただし、捕縄又は手錠と同時に使用することはできない。
3 前項に規定する場合において、刑事施設の長の命令を待ついとまがないときは、刑務官は、その命令を待たないで、拘束衣を使用することができる。この場合には、速やかに、その旨を刑事施設の長に報告しなければならない。
4 拘束衣の使用の期間は、三時間とする。ただし、刑事施設の長は、特に継続の必要があると認めるときは、通じて十二時間を超えない範囲内で、三時間ごとにその期間を更新することができる。*1
5 刑事施設の長は、前項の期間中であっても、拘束衣の使用の必要がなくなったときは、直ちにその使用を中止させなければならない。
6 受刑者に拘束衣を使用し、又はその使用の期間を更新した場合には、刑事施設の長は、速やかに、その受刑者の健康状態について、刑事施設の職員である医師の意見を聴かなければならない。
7 捕縄、手錠及び拘束衣の制式は、法務省令で定める。
(信書の発受)
第九十三条 受刑者が信書を発受することは、この節、第百三条及び次章の規定による場合のほか、これを禁止し、差し止め、又は制限してはならない。
(信書の検査)
第九十四条 刑事施設の長は、刑事施設の規律及び秩序の維持、受刑者の矯正処遇の適切な実施その他の理由により必要があると認める場合には、その指名する職員に、受刑者が発受する信書について、検査を行わせることができる。
2 次に掲げる信書については、前項の検査は、これらの信書に該当することを確認するために必要な限度において行うものとする。ただし、第三号に掲げる信書について、刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合は、この限りでない。
 一 受刑者が国又は地方公共団体の機関から受ける信書
 二 受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し調査を行う国又は地方公共団体の機関に対して発する信書
 三 受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第三条第一項に規定する職務を遂行する弁護士(弁護士法人を含む。第九十六条第二項において同じ。)との間で発受する信書
(信書の発受の禁止)
第九十五条 刑事施設の長は、犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することにより、刑事施設の規律及び秩序を害し、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者(受刑者の親族を除く。)については、受刑者がその者との間で信書を発受することを禁止することができる。ただし、婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の受刑者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため信書を発受する場合は、この限りでない。

(信書の内容による差止め等)
第九十六条 刑事施設の長は、第九十四条の規定による検査の結果、受刑者が発受する信書について、その全部又は一部が次の各号のいずれかに該当する場合には、その発受を差し止め、又はその該当箇所を削除し、若しくは抹消することができる。同条第二項各号に掲げる信書について、これらの信書に該当することを確認する過程においてその全部又は一部が次の各号のいずれかに該当することが判明した場合も、同様とする。
一 暗号の使用その他の理由によって、刑事施設の職員が理解できない内容のものであるとき。
二 発受によって、刑罰法令に触れることとなり、又は刑罰法令に触れる結果を生ずるおそれがあるとき。
三 発受によって、刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。
四 威迫にわたる記述又は明らかな虚偽の記述があるため、受信者を著しく不安にさせ、又は受信者に損害を被らせるおそれがあるとき。
五 受信者を著しく侮辱する記述があるとき。
六 発受によって、受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。

2 前項の規定にかかわらず、受刑者が国又は地方公共団体の機関に対して発する信書であってその機関の権限に属する事項を含むもの及び受刑者が弁護士との間で発受する信書であってその受刑者に係る弁護士法第三条第一項に規定する弁護士の職務に属する事項を含むものについては、その発受の差止め又はその事項に係る部分の削除若しくは抹消は、その部分の全部又は一部が前項第一号から第三号までのいずれかに該当する場合に限り、これを行うことができる。

修正案1:第162回提出(可決)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/syuuseian/3_27BE.htm

 
最近の刑務所の事件。
 

高松刑務所:70歳代の男性受刑者が病死 /香川 - 毎日新聞  2005年4月
金沢の玉川図書館 受刑者名簿冊子をデータベースに 外部指摘受け削除=石川 - 読売新聞  2005年4月
栃木刑務所内で女性受刑者死亡 常勤医らから事情聴く=栃木 - 読売新聞  2005年4月
栃木刑務所:服役中の女性受刑者が死亡 /栃木 - 毎日新聞 2005年4月
独房移転取り消し求め提訴 徳島刑務所で服役中の受刑者=徳島 - 読売新聞  2005年4月
三重刑務所:受刑者が首つり死 - 毎日新聞  2005年4月
札幌刑務所 受刑者100人「疥癬」感染 昨年夏、診断遅れ指摘も=北海道 - 読売新聞  2005年3月
疥癬:札幌刑務所の受刑者97人、集団感染?−−昨年秋 - 毎日新聞 2005年3月

 
「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」は、名古屋の受刑者殺害事件をきっかけに行刑制度を見直した結果として作られた法律です。
私は「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」がパーフェクトな制度だとは思っていません。この行刑「改革」によって、刑務官の犯罪が無くなると言えるのかというと疑問を感じる部分もあります。
刑務官の犯罪行為については、受刑者が刑務所を管理する法務大臣に告発する手続きがこれまでもありましたが、不正を記録していた日記や文書を「秩序維持」の名目で閲覧したり、郵便の内容を検閲されたりして、事前に対策を講じて不正が無かったことにされたり、告発する意欲を失わせるような脅迫に近い「指導」が行われていた実態もありました。
「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」では、第96条で「信書の内容による差止め」の権限を刑務所などに与えた上で、同条2項で公的機関への郵便の差止め権限を限定しています。
ところが、刑事施設の職員が次の条件に当てはまると判断する場合は、郵便を差止めて法務大臣への告発を握りつぶすことは可能です。
 

  • 刑事施設の職員が理解できない内容の郵便
  • 刑罰法令に触れる結果を生ずるおそれがある郵便
  • 刑務所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがある郵便

 
「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」の立案の策定には、法務関係者が参加する「行刑運営に関する調査検討委員会」のほか、民間の第三者機関である「行刑改革会議」が関与しています。が、法務省の管理強化という点で十分な議論が行われていたようには見えません。
行刑改革会議」のメンバーには「バーチャルリアリティは悪である」発言で有名な曾野綾子氏、盗聴法制定国会で組対法賛成派公述人として国会陳述した宮澤浩一教授が参加しています。菊田委員は頑張ってくれたようですが、他の委員は…。テレビ朝日社長の広瀬道貞氏と読売新聞副社長・編集主幹の滝鼻卓雄氏がメンバーになっていたためか、行刑改革に関する調査報道や議論がテレビや新聞報道はほあまりなかったのは残念です。
代用監獄は事実上存置され、市民の「自由な面接」の規定については例外規定がこれまで通り設けられ、受刑者報奨制など法務省にとって好都合な提案は順調に「改革」が進み、しかもマスメディアはそれがあたかも好ましい改革であるように伝えるという有様。
受刑者への人権活動は、今後もその必要性は高まることはあっても当分は無くなることは無いでしょう。
 
関連リンク。
 

法務省
行刑改革会議
http://www.moj.go.jp/KANBOU/GYOKEI/KAIGI/

相談役 後藤田正晴 元副総理 
座長  宮澤弘 元法務大臣 
座長代理  成田豊 (株)電通会長 
委員  井嶋一友 弁護士・元最高裁判所判事
江川紹子 ジャーナリスト
大平光代 弁護士
菊田幸一 明治大学法学部教授
久保井一匡 弁護士・前日本弁護士連合会会長
瀬川晃 同志社大学法学部長
曾野綾子 作家・日本財団会長
高久史麿 自治医科大学学長
滝鼻卓雄 (株)読売新聞東京本社取締役副社長・編集主幹
野崎幸雄 弁護士・元名古屋高等裁判所長官
広瀬道貞 全国朝日放送(株)(テレビ朝日)社長
南博方 一橋大学名誉教授
宮澤浩一 慶応義塾大学名誉教授 

行刑改革会議提言
http://www.moj.go.jp/KANBOU/GYOKEI/KAIGI/teigen.pdf
行刑改革会議 第1分科会 第3回会議
軍隊方式行進とかんかん踊り
http://www.moj.go.jp/KANBOU/GYOKEI/BUNKA01/gijiroku03.html

〇菊田委員 いずれにしても,最初のこの1ページの規律及び秩序の維持と言っていますけれども,刑事施設法のときもそういう批判がありましたけれども,規律及び秩序の維持ということが大優先ということには今は余り言うべき時期ではないのですよね。規律維持ということからいけば,こういうことになりますよ,それは。軍隊方式って,これは表現というのはもうやめようじゃないですか。これは人を人として扱うという場合に,ちょうど軍隊と同じなのですよ,今の日本の刑務所は。それはミリタリー方式というのは世界の恥ですよ,これは。
〇滝鼻委員 ただ,必要なものもあるのではないですか。必要なことも。
〇宮澤(浩)会議 分列行進なんかやらされる。
〇菊田委員 もうオイチニ,オイチニでしょう。
〇滝鼻委員 だけど,そこをばらばら歩かせたら逃げられたときにどうするの。
〇菊田委員 ばらばらなんて言いませんよ,普通に歩かせればいいのです。
○富山調査官 どういうことをおっしゃっているのですか。今は別にばらばら歩かせないという意味では正に整然と行進をさせているのですけれども,それがいけないとおっしゃるのですよね。
〇菊田委員 そういうことを言っているんじゃない。オイチニ,オイチニと言っているでしょう。
○富山調査官 掛け声をやめろということですか。
〇菊田委員 はい。
○富山調査官 それだけなのですか。
〇菊田委員 いや,すべてそうでしょう。ここに来ているのは,普通の行進ならいいですよ,普通の行進は,おっしゃるように。だけど今はこんなことやっているでしょう,オイチニ,オイチニって。それから,何で部屋に正座して返事をしなければいけないの。どういうふうに座ってようといいじゃないですか,居房にいる限りは。
○富山調査官 正座,安座は点検時の話ですよ。
〇菊田委員 点検にしても,全部いろんな面がここに出ていますよ。点検のときとか工場にいるときとか,かんかん踊りとかね。かんかん踊りを既にやめたという話を聞いているけれども,やっているところもまだあるのでしょう,これ。裸でやっているところは。
○富山調査官 裸体の検査は,約半数の施設でやっております。
〇菊田委員 まだやっているでしょう。そんなの,今新しい空港でも機械があるのだから,幾らも着衣の上から検査できるわけですよ,するなら。だからそういう方向で,裸はもう全部やめるというようなことをやはり思い切ってやるべきじゃないですか。
○富山調査官 その辺は事務局から説明させていただきたいのですけれども,まず軍隊的行進とおっしゃる部分は,そのイチニ,イチニという声を出させることだけをもしおっしやっているのであれば,それは別にやめても支障はないのですけれどもね。
○菊田委員 それは象徴的ですよ。刑務官だって,こんな形で直立不動でやっているでしょう。何であんなことやるのですか。あんなの,軍隊のまねばかりやめようじゃないかと,そう思いますよ。
〇成田委員 今の小学校あるいは中学校で,我々は戦中派だから気をつけなり何なりというのは分かるのだけれども,今の子供たちはどうしているのかなと,小学校,あるいはデモクラシーのアメリカだとか何とかの学生たちは,あるいは今小学生,中学生にしても,あそこに行こうよといった場合にどういう形で行くのか。何かそういうものをちょっと研究してみたらどうかなという気がしたのですよ。何か今日本だってそうでしょう。大分変わっているのではないですか。
〇宮澤(浩)会長 少人数で,短時間で次のことをやらせるというようなことで,こういうふうになってしまうのかもしれませんね。
〇成田委員 ただ,何か私はやり方が菊田さんが言われるように,本当,軍隊調というか,何かもっといいやり方が。
〇菊田委員 すぐにガラッと変えるということは難しいと思いますよ。だけども,やはり普通の自然体でいくという方向で変えてほしいと思いますね。

行刑改革会議 第3回会議
漫画家花輪和一氏からのヒアリング
http://www.moj.go.jp/KANBOU/GYOKEI/KAIGI/gijiroku03.html

○成田座長代理 本を拝見しますと,甘い物が少ないと。
○花輪氏 そうですね。甘い食べ物のことを「甘しゃり」と言うのですけれも,例えば自分で仕事をしているときとか休憩時間,不意に自分で自分に質問するんですよ。「今自分は何を思っているか」と。そしたら,答えはいつも,「甘しゃりが食いたい」,ただそれだけですね。
(略)
○成田座長代理 著作に,受刑者同士で連絡先を教え合ったということで,軽へい禁というのですか,こういう懲罰がありますが,これはどのようにお感じになりますか。
○花輪氏 すごい体験をしたなという気がしましたね。刑務所でないと,ああいう体験はできないと思います。私の場合は10日間の正座でした。正座といっても,疲れるとあぐらをかいていいし,あぐらをかいていて疲れると,また正座と。それを10日間,交互に繰り返す。でも,ここで,娑婆で,そういうふうに一日座り続けろと言われても,できないですよね。1万円あげるからやれといってもできない。やはり刑務所でなければ,ああいうことはできなかったから,すごくいい体験じゃなかったかなと思いますね。
(略)
○江川委員 時間の問題ではなくて,例えばカウンセリングだとか指導だとか,そういう機会があったかということなんですが。
○花輪氏 カウンセリングとかは,食堂に宗教家の名前などいっぱい張ってありましたから,心に苦悩があって,カウンセリングを受けたいと思えば,工場担当,いわゆるおやじに申し込めば,それはできると思いますね。
 作業が役に立ったかというのは,私は木工所で鎌倉彫りをやっていまして,鎌倉彫りは彫刻刀でばらの花とかいろいろな花をボリュームをつけて彫るわけですね。見本があって,最初は簡単なものから練習して,20日ぐらいするとだんだん彫れるようになって,みんな本当にうまく彫れるようになりますね。もうプロ級になりますよ。だから,出てからこれは生かせばいいのになと思うけれども,できないんですよね。なぜできないかというと,自分のオリジナリティーがないから。自分で好きな花をスケッチして,自分でデザインして,このように彫ろうという,そこがあればみんなプロとして通用するぐらい,彫る技術はすごくありますね。
○江川委員 これを彫りなさいというものをやるわけですか。
○花輪氏 そうです,型紙があって。
○菊田委員 花輪さんにお伺いしたいのですが,本を読みました。非常にリアルな本で本当に驚きましたけれども,頭の中で描いたものを出てから書かれたというふうに聞いていますけれども,書く上で資料を持ち出すとか,いろいろ苦労がありましたら,その点についてお伺いしたいのですが。
○花輪氏 拘置所でいっぱいスケッチして,札幌刑務所で,検査で,これはだめだと言われて,切り取られてしまいまして,だから,もう刑務所の中では絵を描いてはいけないのだなというのがありましたから,描きたいと思いましたけれども描けなかったですね。だから一生懸命記憶して,出てからすぐ,忘れないうちにノートに書きました。でも,どうしても分からないところがあって,例えば畳の敷き方ですね。あれはノートに分からないように書いて出てきました。
○菊田委員 つまり若干の資料は隠して持ち出したということですね。
○花輪氏 いえ,見ても分からないように,検査されても分からないように。例えばノートは反対側にして,上下を逆にして,簡単に何が書いてあるのか分からないような感じで,畳の敷き方とか書いてきましたね。
○菊田委員 それはもっと堂々と持ち出せるようにすべきだったとか,あるいは持ち出せたら,もっといいものが書けたという思いはないですか。
○花輪氏 それはもう当然ですよ。もう自由に書いていいということであれば,もっとすごい,いいものが書けたのになというのが残念ですね。非常に残念です。

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花輪氏の漫画。オススメ。
 

刑務所の前 (第1集) (Big comics special)
刑務所の前 (第1集)
刑務所の前 (第2集) (Big comics special)
刑務所の前 2 (2)
刑務所の中
刑務所の中
刑務所の中 特別版 [DVD]
刑務所の中 特別版

 
ついでにもひとつオススメのチョムスキーの映画。
 

暴動刑務所アッティカ
http://d.hatena.ne.jp/asin/B000064DVN

 
この映画はマジでスゴイ映画です。アメリカの州立刑務所で実際に発生した受刑者虐殺事件をもとに作られたドキュメンタリー映画です。モーガン・フリーマンがいい味を出してます。
で、その映画を見て書いた詩がこれ。●は殺された受刑者の数をそのまま表現しています。■と◆は受刑者と一緒に殺された刑務官。
 

アッティカ
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/010112.html

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*1:「通じて十二時間を超えない範囲内で」ということは、連続して12時間は拘束衣を使い続けることができるということでする。しかも、「一日十二時間を超えない範囲内で」ではなく「通じて十二時間を超えない範囲内で」なので、たとえば12時間拘束衣を使って1一旦解放し、5分後に拘束衣の必要を認めてさらに12時間拘束衣を使うということを繰り返せば、一日5分の解放だけで、死ぬまで拘束衣を使い続けることも法的には可能です。実際にそうしなくても「そうすることもできるんだぞ」と受刑者を脅迫できる環境こそが名古屋刑務所受刑者拷問死事件を発生せしめたという見かたもできそうですが、そういう法務省のための抜け道をちゃんと用意している法案の問題を指摘・修正できなかったあたりが、「行刑改革会議」や国会審議の弱さではないかと。