住民基本台帳閲覧制度検討会:国民の知る権利は守られるのか?

 
なにをいまさら、という感じで住民基本台帳閲覧制度の見直しが進んでいます。
麻生総務大臣@上流階級が住民基本台帳閲覧制度検討会で「法改正を含め閲覧制度を見直していく」と報道がありました。マスメディアは個人情報保護の強化という観点で住民基本台帳閲覧制度の見直しを報じているようです。
国民のプライバシー保護という観点だけで見るなら、住民基本台帳閲覧制度の見直しは歓迎すべきことで、ダイレクトメールの発送や住民情報の売買目的でのデータベース構築などを目的とした大量閲覧については、実行性のある抑制運用が必要だと思います。
しかし、なにごとにも表と裏があるもので、選挙報道に必須の世論調査サンプルや、政治資金の実態把握に住民基本台帳の閲覧は必須という側面もあります。
もし、住民基本台帳の閲覧が原則禁止になり、世論調査サンプルや政治資金の実態把握目的の閲覧も含めて禁止されると、政治家の選挙報道や、政治資金実態把握に基く政治家の金の使い方の監視といった政治権力に対する監視活動は、今よりも確実に悪化します。
たとえば、政治家への個人献金の多くは企業経営者の親族を経由していますが、そういった個人献金者がどの企業から出たものかを把握する(名寄せする)ためには住民基本台帳の閲覧が必要であり、もし住民基本台帳の閲覧ができなければ実際に現地に行って確認しなければならず、政治資金実態把握がいまよりも困難になります。
つまり、「国民のプライバシーの保護」というタテマエは、容易に「政治家の悪徳の保護」にもなり得る可能性もあり、無条件的な閲覧制度の解消は国民の知る権利を結果的に阻害するおそれを含みます。
という意味で、「国民のプライバシー保護」の美名のもとで国民の知る権利が制限され、政治家のドス黒い金の動きに対する調査が封じられることが無いよう、閲覧については原則非開示としながら、公益目的(特に国民の知る権利を実現する活動)による閲覧を例外制度によって担保する必要があろうかと思われます。
 

Googleニュース「住民基本台帳」
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住民基本台帳「誰でも閲覧可能」見直し 総務省の検討会
http://www.asahi.com/national/update/0512/TKY200505120088.html

 一方、清原慶子三鷹市長は「プライバシー保護の観点から、原則非公開を含めた抜本的な改正が必要だ」としながらも、「学術調査、世論調査の必要性も理解する」と指摘した。検討会メンバーの報道関係者からも世論調査には社会的意義がある」と、全面規制に慎重な意見が出された。

総務次官「住基台帳閲覧、原則非公開の方向で検討を」
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050512STXKE038412052005.html

香山次官は「今から結論めいたことは言えない」とした上で、「閲覧は原則自由で一定の場合に制約できるとなっている現行制度を、原則と例外をある程度逆転させる方向で検討しないといけないのではないか」と述べた。

総務省
住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会
http://www.soumu.go.jp/menu_03/shingi_kenkyu/kenkyu/daityo_eturan/index.html
◎ 「住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会」の開催
(平成17年4月26日公表)
住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会開催要領
◎ 「住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会」メンバー名簿
http://www.soumu.go.jp/menu_03/shingi_kenkyu/kenkyu/daityo_eturan/kaisai.html

住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会メンバー名簿
 (敬称略 50音順) 
縣忠明 産経新聞東京本社論説委員論説委員 
荒川満 東京都総務局行政部長 
石川雅己 全国連合戸籍事務協議会会長(千代田区長) 
稲葉馨 東北大学大学院法学研究科教授 
宇賀克也 東京大学大学院法学政治学研究科教授 
小田尚 読売新聞東京本社論説委員 
片木淳 早稲田大学大学院公共経営研究科教授 
北村龍行 毎日新聞社論説室論説委員 
清原慶子 三鷹市長
小牧次郎 全国市区選挙管理委員会連合会副会長 
佐野真理子 主婦連合会事務局長 
城本勝 日本放送協会放送総局解説委員室解説委員 
中田宏 横浜市長 
屶網敏雄 千葉市選挙管理委員会委員長 
堀部政男 中央大学大学院法務研究科教授・一橋大学名誉教授 
森本昌義 株式会社ベネッセコーポレーション代表取締役社長兼COO
(日本経済団体連合会推薦) 
(オブザーバー)
 内閣府国民生活局個人情報保護推進室長
 法務省民事局民事第一課長 

 
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