「反日デモ」批判の問題点メモ

 

論点メモ
0 いかなる表現も、暴力の否定を前提にする。その原則は中国に対してだけ適用されるのではなく、日本にも適用される。対話を拒否して暴力を実行すれば、その瞬間、議論で負けたことになる。
↓議論で負けた例。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20050412k0000m040043000c.html
http://www.daily.co.jp/newsflash/2005/04/16/169199.shtml
http://www.sankei.co.jp/news/050415/sha081.htm
http://www.asahi.com/national/update/0416/SEB200504160011.html
http://www.asahi.com/special/050410/OSK200504160006.html
http://www.asahi.com/special/050410/TKY200504150338.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050415-00000192-kyodo-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050416-00000408-jij-soci

1 「反日教育」と「歴史事実」は区別しなければならない。事実は事実であり、日本人であっても誰であっても認めなければならない。何が事実かが重要であり、事実をふまえない議論は、中国のデモであろうと中国のデモに対する批判であろうと、意味が無い。大事なことは事実の評価に見解の相違があるとしても、事実は共有されなければならないという点である。
2 もし日本政府や日本人が自己主張の結論だけをおしつけるなら、結局はデモで暴力を行使する者たちと同じ土俵に立つことになってしまう。主張を伝える前に、まず事実を理性的に議論し、意見の相違を理性的に認め合うべきである。
3 「官製デモ」などの言葉は「民衆の表現活動」と「公権力による民衆統制」の違いの区別を失わせしめる。民衆の行為と公権力の行為は区別しなければならない。
4 「公権力の見解」と「民衆の意思表示」は区別して考えるべきである。
5 「デモンストレーション(をしている人)」と「暴力(を実行している人)」は区別されねばならない。デモに参加している人のすべてが暴力を実行しているわではないし、デモの参加者の全員が暴力を行使するためにデモに参加しているわけではない。
6 批判すべきは暴力であって、その批判はデモに参加している人も同意される批判である。デモを批判しても意味が無い。
7 デモンストレーションは、憲法学でいう「非言語表現」であり、「集会の自由」「表現の自由」「言論の自由」の一形態である。「集会の自由」「表現の自由」「言論の自由」といった自由権規定は、基本的人権であり、それが明白な生活侵害を伴うような暴力行為に至らない限り、日本人であろうと中国人であろうと確保されねばならない。という意味において、日本政府や日本のメディアやそれらを支持する人たちによる反日デモ批判によって、結果的に中国政府が暴力とは無関係な民衆のデモの規制やネット規制を実行せしめたことは、間接的に中国の民衆の表現の自由を奪うことに手を貸したことにもなり、罪深い行為と言わねばならない。
8 表現の自由が存在する国の愛国者は、表現の自由が存在するということを誇りに思うべきである。愛国者は、表現の自由の欠如した国でデモという表現行為が存在することを「それが表現の自由である。わたしはそのよなう表現の自由が民衆にあることを歓迎する」と率直に評価すべきである。
9 デモという「表現活動そのもの」と、「表現によって伝えられる主張の内容」は区別されねばならない。「主張の内容」に反対だからといって「表現活動そのもの」に反対すれば、それは人権を抑圧している公権力と同じ土俵に立つことを意味する。
10 デモによる「批判の対象」が日本である場合に対してだけデモを批判するのはおかしい。デモによる「批判の対象」によってデモの正当性やデモの主張内容が否定されたり肯定されたりするのは不合理である。
11 愛国主義的運動の高揚は、中国のそれと日本のそれには共通点がある。愛国主義的運動の高揚の共通点は、自己の欠如感や不全感を契機としていることが多い。愛国主義的運動高揚を理解するためには、(日中双方の愛国主義的運動を展開している)当事者がどのような欠如感や不全感を持っているかを理解することが必要である。
12 民衆の愛国主義的運動の高揚とは別に、政府・企業間には資源や権益の確保(東シナ海ガス田など)をめぐって対立が存在する。こうした利害対立を背景に議論している公権力の当事者に、中国も日本も、民衆の愛国心は利用され煽動されてきたという実態がある。民衆の表層に目を向けるのではなく、そうした表層を隠れ蓑にしてブラックボックスの中で議論している公権力者の姿に注目する必要がある。
13 対立の本質が隠蔽される中で民衆の知らない場所で民衆の生活にとって重大な決定がなされたり、そうした決定とは離れたところで暴力が広まることは、日中双方の民衆の利益にならない。議論の不在と暴力は誰の理益にもならない。
14 民衆側の問題として、中国も日本も、非暴力運動についての理解がまだ不充分。デモを組織するリーダーは、非暴力トレーニングを十分に積んで経験を得る必要があるが、そうしたトレーニングの場が限られているという問題は、日中双方に存在すると思われる。ただ、中国の場合は、民衆運動に対する厳しい国家統制があるため、組織的な非暴力運動を実践し難いという状況は考慮されるべきと思われる。

 
掲示板に書いた私の文。
 

1832 デモは素晴らしい (キタノ) - 2005/04/15 08:52
デモをしている民衆と政府の区別は必要ですし、デモと暴力の区別も必要でしょうね。
反日デモが起きてデモをしていた中国人と会う機会があったら、私ならこう言うでしょう。
「すばらしい! それが表現の自由ですよね! でも抗議すべき相手は日本政府だけでしょうか? あなたの生活や人権を抑圧している中国政府にもあなたの気持ちを意思表示すべきだとは思いませんか? もし抗議するなら私も協力させていただきます。」と。
デモが起きた時に、「ああ表現の自由がある国だな」とホッと安心するのが民主主義や基本的人権を理解している人です。不安になる人は民主主義や基本的人権を理解していない人。
もちろん暴力はいかなる場合も肯定できないという認識は表現の自由の前提ですが、暴力とデモという表現行為(憲法学では「非言語表現」と言って、表現の自由のひとつであると考えられています)は区別しないとだめですよね。
今回の反日デモに対する一部の過剰反応は、民主主義の未成熟さを示しています。
もしデモの相手が日本ではなく中国企業だったらデモをやめろと言ったでしょうか。もしデモの相手が中国政府の要人だったらデモをやめろと言ったでしょうか。もしデモの相手が北朝鮮だったらデモをやめろと言ったでしょうか。
たぶん言わなかったと思います。
デモによる批判の対象が日本だったからデモをやめろと言っているのであって、それ以上の理由や根拠は特に無いというのが、反日デモに対する過剰反応の本質ではないかと。

1833 Re1826 米政府の態度 おまえが言うか (キタノ) - 2005/04/15 09:05 -
> 米国務省のバウチャー報道官が、「中国には在外公館に対する暴力を防ぐ責任がある」
> と述べ、中国政府の対応を批判した *1
 
「おまえが言うか!」って感じですね。
だって、アメリカはむかし、ベオグラードの中国大使館にミサイルを落して、新華社通信の女性記者と、光明日報の記者と妻の3人を殺したことがあったんですよ。
あとで米政府は「軍事施設と間違えて攻撃しちゃった。ごめーん。」と「誤爆」であるとの声明を出しましたが、明らかに狙って落したというのが一般的理解です。
ベオグラード事件の時には、今起きてる反日デモよりも大規模なデモが起りました。
 
http://www.panda.hello-net.info/keyword/ha/taishikan.htm
http://sekitori.web.infoseek.co.jp/war/war_yugo_beo_china.html

 
関連リンク。
 

JANJAN
中国で反日デモ 関連リンク集
http://www.janjan.jp/link/0504/0504110664/1.php

Yahoo!ニュース トピックス
中国の反日行動
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/anti_japanese_protests_in_china/
尖閣諸島問題
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/senkaku_islands/
竹島問題
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/takeshima/
東シナ海ガス田問題
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/natural_gas_field_near_eez/

朝日新聞
特集 反日デモ
http://www.asahi.com/special/050410/

 
中国系の愛国サイトの一例。情報の利用については自己責任でお願いします。*2
 

「愛国」「抗日」をテーマとする中国サイト
http://www.1931-9-18.org/
http://www.china918.net/
http://918.netor.com/
http://www.sjwar.org/
http://www.china918.cn/
http://www.wwgc.cc/
http://www.909.com.cn/731/index.html
http://www.ww2.org.hk/index.html
http://www.diaoyuislands.org/
http://www.japanpig.com/
http://kill.japanpig.com/

 
かつて日本人が中国人にしていた事実=中国人の怒り根源、についての映像ファイル。(グロ注意)
ファイルをダウンロードする方は、負荷低減のため、できるだけダウンロードソフト*3で10k/s未満に速度制限してダウンロードすることを推奨します。14歳未満の方は大日本帝国のアジア侵略について知っている大人の人といっしょに見てください。
 

http://www.ydjps.sc.cn/shaoxiandui/duizhishi/nanjin/avi/D26.AVI
http://www.ydjps.sc.cn/shaoxiandui/duizhishi/nanjin/avi/D03.AVI
http://www.ydjps.sc.cn/shaoxiandui/duizhishi/nanjin/avi/D07.AVI

 
デモの自由と規制についての判断を示した新潟県公安条例事件最高裁判決の情報。
 

最高裁判所判例集判決全文表示
判例 S29.11.24 大法廷判決 昭和26(あ)3188 昭和二四年新潟県条令第四号違反(第8巻11号1866頁)
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/VM2/33F9E6D60A399E1349256A850030D1D7?OPENDOCUMENT

行列行進又は公衆の集団示威運動(以下単にこれらの行動という)は、公共の福祉に反するような不当な目的又は方法によらないかぎり、本来国民の自由とするところであるから、条例においてこれらの行動につき単なる届出制を定めることは格別、そうでなく一般的な許可制を定めてこれを事前に抑制することは、憲法の趣旨に反し許されないと解するを相当とする。
しかしこれらの行動といえども公共の秩序を保持し、又は公共の福祉が著しく侵されることを防止するため、特定の場所又は方法につき、合理的かつ明確な基準の下に、予じめ許可を受けしめ、又は届出をなさしめてこのような場合にはこれを禁止することができる旨の規定を条例に設けても、これをもつて直ちに憲法の保障する国民の自由を不当に制限するものと解することはできない。
けだしかかる条例の規定は、なんらこれらの行動を一般に制限するのでなく、前示の観点から単に特定の場所又は方法について制限する場合があることを認めるた過ぎないからである。さらにまた、これらの行動について公共の安全に対し明らかな差迫つた危険を及ぼすことが予見されるときは、これを許可せず又は禁止することができる旨の規定を設けることも、これをもつて直ちに憲法の保障する国民の自由を不当に制限することにはならないと解すべきである。

 
この最高裁判決の判断が正しいとは私は思いません。中国の民衆も、日本の民衆も、集会の自由や言論表現の自由を求めていますが、制度と警察組織によって規制を受けています。
今回の「反日デモ」の批判は、結果的にそうした民衆の自由への制限を規制事実化せしめたという意味で、罪深いと思われます。
デモについての憲法学的議論について知りたい人は下記情報を参考に、憲法人権論の本などを読んで見てください。
 

憲法Ⅰ(人権論) 第13回
表現の自由(5) 集会の自由、集団行動の規制
http://www.kyoto-su.ac.jp/~suga/kenpo1/kenpo1-13.html

 
デモ規制条例いろいろ。キーワードは「集団示威」。
 

Google検索「集団示威運動に関する条例」

 
関連ログ。
 

布施辰治さんを知っていますか?
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050118#p1
反日?ゲームの現在
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041013#p4
静穏保持法と公安条例
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040421#p5

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*1:反日デモ、米が中国の対応批判 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050413it02.htm 日中両国に関係修復促す 米国務省報道官 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp05041305.html

*2:クッキー、スクリプトスタイルシート、アクティブXなどの機能はoff推奨。下に紹介するサイトは直接的危険はありませんが、そこから先のリンクに飛ぶ場合はどうなっても知りません。アクセス追跡などが気になる人はプロキシを使ったりモデムはこまめに再起動するなど、自分で対策してください。

*3:たとえばIrvineとか。 http://hp.vector.co.jp/authors/VA024591/ ダウンロードソフトの使用は、マナーというか、大量のアクセス負荷によって日本からのアクセスを制限されないための防衛手段とご理解ください。