風適法改正案国会提出:少年指導委員に強制立入権限付与、ビラ配布罪を創設(2)

 

風適法改正案国会提出:少年指導委員に強制立入権限付与、ビラ配布罪を創設(1)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050413#p1

より続きます。
今回の改正のポイントと論点は、次の通りです。
第一に、いわゆるトラフィック制限条約の国内法整備として行われる改正が一点。これは必要な改正で問題ありません。
第二に、デリバリーヘルスなどの出張風俗業を店舗営業の規制と同じ規制を適用させる改正。デリヘルの受付けは電話受け付けやインターネット受け付けがほとんどですが、その受付けをしている営業所をいわゆる歓楽街地区のみに限定し、一般商業地域などの一般地域では営業できなくなります。歓楽街地区はテナント料が比較的高いので、事務所をそこに置かなければならないということになると、営業利益が大幅に圧迫されることになります。
デリヘルは営業所を安いマンションを営業所に使って価格を安くしていたりするので、今回の規制はデリヘル規制としては決定打になるわけで、風俗産業に大きな変化を与えることになるかもしれません。
現在はデリヘルが規制対象ですが、将来、「漫画ネット販売(映像送信型性風俗特殊営業)もデリバリーヘルスと同じだから営業地域規制を実施すべきだ」という警察庁の一部官僚が考えている議論が世論に広がり、風適法再改正がなされると、漫画をネット販売する書店、出版社、アニメ製作会社、ゲーム会社は歓楽街地域に会社を移転するか営業をやめるかを選択しなればならなくなり、実質的な規制になりますが、そういう将来の改正の前提を今回の法改正は作ることになります。
ちなみに、警察職員は、法の施行に必要な限度において「デリバリーヘルス」に係る事務所、受付所又は待機所に立ち入りできますので、将来、映像送信型性風俗特殊営業がデリバリーヘルス並みの規制に強化されれば、書店、出版社、アニメ製作会社、ゲーム会社に警察官が令状無し行政権限のみで土足で調査に入るというようなことも想定されます。
第三に、集客行為の規制の強化。客引きが事実上規制されます。立ってその場所から動かずに声をかけるだけでは規制されませんが、歩き回って「お客さん、イイ子いるよ」と声をかけると処罰対象になります。
集客行為は今回の改正では客引きだけですが、将来、映像送信型性風俗特殊営業の規制が広がる場合には、インターネットでの広告活動、たとえば映像送信型性風俗特殊営業とされるサイトで本を販売している漫画家が自分のウェブサイトで広告活動をするというような行為にも規制範囲が広がるおそれはあるだろうと思われます。
第四に、ピンクビラ配布罪が創設され、ピンクビラを配布した店の営業を停止させるだけではなく、その実効行為に対して直接罰則が適用されるようになります。ピンクビラを配布した人は、百万円以下の罰金に処せられます。配布した場所が学校周辺など広告制限地域だったり青少年に直接配布したりすると、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処せられ、懲役と罰金が併科される場合もあります。
前述したように、ピンクビラについてはすでに現行法で営業停止という強い規制がかかっています。決して野放しになっているわけではありません。
ピンクビラが巷に広がっているのは、営業停止をすべき警察がただ単に現行法の執行を怠り、放任して公安委員会が営業停止をしないというだけの理由ですが、そういう警察・公安委員会の現行法の不作為・不祥事を棚にあげて「ピンクビラが広がっているから処罰するしかない」という理由で改正するのは、自作自演の立法であり、理由がないと思われます。
「野放し」という言葉は、警察にこそ向けられるべきです。
念のために書いておきますが、私は現行法のピンクビラの規制そのものに反対です。ピンクビラ規制は、規制合理性の前提となる生活の実被害がなく、たんなる審美感の相違を立法で強制しているようなものだからです。多くの成人が性産業を利用しているのはこの社会の現実であり、そうした現実がある一方でそうした現実を映している広告を規制することは、多様な価値観・多様な文化を容認する民主主義社会にとってふさわしくないと考えます。
第五に、少年指導委員の公的地位が強化されるとともに、少年指導委員が警察の指導のもとで風俗店・営業所への無令状立入り権限与えられます。この改正部分は、性表現を含む出版の自由を求める側にとって、かなり大きな問題に発展する可能性があると思われます。
少年指導委員は、警察本部権限で委嘱される準公人で、警察OB、法務省OB、補導員、青少年団体関係者などが就任しています。少年指導委員は、少年の補導活動、有害環境の浄化活動などをしていますが、委嘱している人をみると、少年犯罪・青少年健全育成業界の天下りポストのような位置付けになっているケースもあります。
青少年健全育成を目的とした漫画追放といった環境浄化活動の多くは民間の青少年団体や倫理団体・宗教団体が展開していますが、少年指導委員は民間ではなく税金をもらって環境浄化活動をしている準公人です。いわば、税金で給料をもらって風俗追放や漫画追放活動をしている公営活動家といった役割が、少年指導委員と言ってよいと思われます。
もちろん、悪書追放のような意味の無いことはやらずに地道に夜回りして子どもたちに声かけとかしているマジメな人も一部にはいますが、全員がそうではないというあたりに問題があります。
現在の風適法の運用では、税金で給料をもらって書店の“任意”で店舗に立入って有害図書のサンプルを集めたり、性表現を含む漫画が載っている本を書店の店員にたたきつけて「こんな本を置くんじゃない!」と怒鳴り散らすといった程度でしたが(それだけでも問題ですが)、今回の風適法改正案が成立すれば、書店が立入りを拒否しても風適法上の権限で書店に調査・指導目的で立ち入ることができます。
ちなみに、こうした立入り調査権限はいくつかの都道府県の青少年育成条例にもありますが、多くは強制調査は知事の専権事項で知事の決裁が必要で、補導員自身の任意の判断で強制立入りを実施することはできません。ですから、法改正が実施されれば、地方での「有害図書浄化運動」は一気に加速することになるおそれがあります。
 
以下、警察庁の情報。新旧対照条文は新法案の一部(警察少年指導委員の部分とピンクビラ規制の部分)を転載。下線部は改正部分です。
 

警察庁
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案について
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案 概要
http://www.npa.go.jp/safetylife/seikan14/gaiyo.pdf

風俗営業等に係る人身取引の防止のための規定の整備
(1) 刑法に新設される人身売買の罪等を風俗営業の許可の欠格事由とする。
(2) 接待飲食等営業、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業及び夜間における酒類提供飲食店営業を営む者は、その営業に関し客に接する業務に従事する者の在留資格等を確認し、確認の記録を保存しなければならないこととする(罰則担保)。
性風俗関連特殊営業の規制の強化
(1) 公安委員会は、性風俗関連特殊営業を営もうとする者から届出書の提出があったときは、その者に届出受理書を交付するものとし、性風俗関連特殊営業を営む者に対しその備付け及び提示を義務付けることとする。
(2) 法第2条第7項第1号の営業(以下「デリバリーヘルス」という。)について、営業の本拠となる事務所に加え、客の依頼を受け付ける受付所及び派遣従業者の待機所を届出の対象とする。
(3) 「デリバリーヘルス」の受付所について、店舗型性風俗特殊営業の営業所とみなして営業禁止区域等の規制の対象とする。
(4) 警察職員は、法の施行に必要な限度において「デリバリーヘルス」に係る事務所、受付所又は待機所に立ち入ることができることとする。
風俗営業等に係る集客行為の規制の強化
(1) 風俗営業等に関し客引きをするため、道路その他の公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうことを禁止する(罰則担保)。
(2) 性風俗関連特殊営業の禁止行為とされている人の住居へのビラ等の頒布、広告制限区域等における広告物の表示等について、罰則を整備する。
(3) 店舗型性風俗特殊営業及び無店舗型性風俗特殊営業について、届出を行った者以外の者は、これらの営業を営む目的で広告、宣伝等を行ってはならないこととする(罰則担保)。
4 少年指導委員に関する規定の整備
(1) 少年指導委員の職務に関する規定を整備する。
(2) 公安委員会は、少年指導委員に風俗営業の営業所等に立ち入らせることができることとする。

(3) 守秘義務違反の罰則、研修の実施等の規定を整備する。
5 その他の規定の整備
性風俗関連特殊営業の禁止区域等営業、無届営業等の罰則の強化その他所要の規定を整備する。
6 施行期日等
(1) 刑法改正関連部分を除き、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとする。
(2) 所要の経過措置を設けることとする

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案 条文
http://www.npa.go.jp/safetylife/seikan14/jyobun.pdf
新旧対照条文
http://www.npa.go.jp/safetylife/seikan14/sinkyu.pdf

(接客従業者に対する拘束的行為の規制等)
第三十一条の三 第十八条の二第一項並びに第二十八条第五項及び第七項から第九項までの規定は、無店舗型性風俗特殊営業を営む者について準用する。この場合において、第十八条の二第一項第一号中「営業所で客に」とあるのは「客に」と、第二十八条第五項中「前条」とあるのは「第三十一条の二の二」と、同項第一号ロ中「地域のうち」とあるのは「地域(第二条第七項第一号の営業にあつては同条第六項第二号の営業について、同条第七項第二号の営業にあつては同条第六項第五号の営業について、それぞれ当該条例で定める地域をいう。)のうち」と、同条第七項中「第五項第一号」とあるのは「第三十一条の三第一項において準用する第五項第一号」と、「第二十七条第一項」とあるのは「第三十一条の二第一項」と、同条第八項中「前条及び第五項」とあるのは「第三十一条の二の二及び第三十一条の三第一項において準用する第五項」と、同条第九項中「その営業所に立ち入つて」とあるのは「客となつて」と読み替えるものとする。
(街頭における広告及び宣伝の規制等)
第三十一条の八 第二十八条第五項及び第七項から第九項までの規定は、映像送信型性風俗特殊営業を営む者について準用する。この場合において、同条第五項中「前条に規定するもののほか、その」とあるのは「その」と、同項第一号ロ中「第二項」とあるのは「第二条第六項第五号の営業について第二項」と、同条第七項中「第五項第一号」とあるのは「第三十一条の八第一項において準用する第五項第一号」と、「第二十七条第一項」とあるのは「第三十一条の七第一項」と、同条第八項中「前条及び第五項」とあるのは「第三十一条の八第一項において準用する第五項」と、同条第九項中「その営業所に立ち入つて」とあるのは「客となつて」と読み替えるものとする。

(少年指導委員)
第三十八条(略)
2 少年指導委員は、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等(性風俗関連特殊営業、飲食店営業、興行場営業、特定性風俗物品販売等営業及び接客業務受託営業をいう。第二号において同じ。)に関し、次に掲げる職務を行う
一飲酒若しくは喫煙をしている少年、風俗営業、店舗型性風俗特殊営業若しくは店舗型電話異性紹介営業の営業所若しくは第二条第七項第一号の営業の受付所に客として出入りし、又はこれらの営業所若しくは受付所の付近をはいかいしている十八歳未満の者その他少年の健全な育成の観点から障害があると認められる行為を行つている少年の補導を行うこと。
二 風俗営業若しくは性風俗関連特殊営業等を営む者又はその代理人等に対し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために必要な助言を行うこと。
三 少年の健全な育成に障害を及ぼす行為により被害を受けた少年に対し、助言及び指導その他の援助を行うこと。
四 少年の健全な育成に資するための地方公共団体の施策及び民間団体の活動への協力を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止し、又は少年の健全な育成に資するための活動で国家公安委員会規則で定めるものを行うこと。

3 少年指導委員又は少年指導委員であつた者は、職務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
4 (略)
公安委員会は、少年指導委員に対し、その職務の遂行に必要な研
修を行うものとする。

6 (略)
第三十八条の二公安委員会は、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があると認めるときは、この法律の施行に必要な限度において、少年指導委員に、第三十七条第二項各号に掲げる場所に立ち入らせることができる。ただし、同項第一号、第二号又は第四号から第六号までに掲げる営業所に設けられている個室その他これに類する施設で客が在室するものについては、この限りでない。
公安委員会は、前項の規定による立入りをさせるときは、少年指導委員に対し、当該立入りの場所その他必要な事項を示してこれを実施すべきことを指示するものとする。
3 少年指導委員は、前項の指示に従つて第一項の規定による立入りをしたときは、その結果を公安委員会に報告しなければならない。
4 第一項の規定による立入りをする少年指導委員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
5 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第三十八条の三前二条に定めるもののほか、少年指導委員に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

聴聞の特例)
第四十一条公安委員会は、第二十六条、第三十条第一項若しくは第三項、第三十一条の五第一項、第三十一条の六第二項第二号、第三十一条の十五第一項、第三十一条の二十、第三十一条の二十一第二項第二号、第三十四条第二項、第三十五条、第三十五条の二若しくは第三十五条の四第二項若しくは第四項第二号の規定により営業の停止を命じ、又は第三十条第二項、第三十一条の五第二項、第三十一条の六第二項第三号若しくは第三十一条の十五第二項の規定により営業の廃止を命じようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
2 第八条、第十条の二第六項、第二十六条、第三十条、第三十一条の五第一項若しくは第二項、第三十一条の六第二項第二号若しくは第三号、第三十一条の十五、第三十一条の二十、第三十一条の二十一第二項第二号、第三十四条第二項、第三十五条、第三十五条の二、第三十五条の四第二項若しくは第四項第二号又は第三十九条第四項(前条第三項において準用する場合を含む。)の規定による処分に係る聴聞を行うに当たつては、その期日の一週間前までに、行政手続法第十五条第一項の規定による通知をし、かつ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
3 (略)
4 第八条、第十条の二第六項、第二十六条、第三十条、第三十一条の五第一項若しくは第二項、第三十一条の六第二項第二号若しくは第三号、第三十一条の十五、第三十一条の二十、第三十一条の二十一第二項第二号、第三十四条第二項、第三十五条、第三十五条の二、第三十五条の四第二項若しくは第四項第二号又は第三十九条第四項(前条第三項において準用する場合を含む。)の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

第四十九条次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
五 第二十八条第一項(第三十一条の三第二項の規定により適用する場合及び第三十一条の十三第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者

第五十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
二 第二十八条第五項(第三十一条の三第一項、第三十一条の八第一項、第三十一条の十三第一項及び第三十一条の十八第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者

 
以下、警察の少年指導委員についての情報。
 

http://www.pref.shiga.jp/koan/katsudou/sub3-12/sub3-12.htm

少年指導委員の主な活動

  • 少年を有害環境からまもるための補導活動

風俗営業者等に対し、少年の保護のために法令で規制している事項を遵守するよう協力要請をする活動

  • 少年や保護者からの少年の健全な育成に関する問題について、相談に応じる活動
  • 少年を取り巻く有害環境の浄化活動
  • 少年に対する暴力団の影響を排除するための活動

 
少年指導委員制度の運用の現行ルール。山口県の場合。(他の都道府県でもほぼ同じです)
 

少年指導委員制度の実施について(例規通達)
http://www.police.pref.yamaguchi.jp/0120/iciran/bunsyo/syounen/syounen12.pdf

昭和60年2月13日
山口保防第252号
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第12 」2号。以下「法」という)及び「少年指導委員規則(昭和60年国家公安委員。」会規則第2号)に基づく少年指導委員について「少年指導委員の委嘱等に関、する内規(昭和60年山口県公安委員会内規第1号)が制定されたことから、」この制度の実施に当たつては、次の要領によることとしたので、その運用上遺憾のないようにされたい。

1 制度の趣旨
法第38条の規定に基づき、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、民間有志者を法律上活動を認められた少年指導委員として委嘱し、風俗環境が及ぼす影響から少年を守るための諸活動を行わせようとするものである。
2 実施要領
別添「少年指導委員制度実施要領」のとおり
3 留意事項
(1) 少年指導委員には、法に規定する立入権はもとより、何ら強制にわたる行為を行う権限がないので、関係者の権利や自由を侵害することがないよう指導を徹底すること。*1
(2) 少年指導委員の活動状況の把握に努め、必要な指導を実施し効率的な運用を図ること。
(3) 新しく委嘱された少年指導委員で少年関係のボランテイアの経験がない者には、一定期間同行指導を行うなどの措置に留意すること。
4 報告
(1) 少年指導委員の活動区域を管轄する警察署長は、少年指導委員の活動結果について、活動区域ごとに、少年指導委員活動状況表(別記様式)により、3箇月(4半期)ごとに取りまとめ、翌月10日までに少年課を経由して報告すること。ただし、委嘱時が前記期間の途中であるときは、残りの期間を取りまとめること。
(2) 特異あるいは効果的な活動事例については、その都度電話又は書面で少年課を経由して報告すること。
別添
少年指導委員制度実施要領
第1 趣旨
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「法」という「少年指導委員規則(以下「規則」という)及び「少年指導委員の委嘱等に関する内規」(以下「内規」という)に基づき、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、民間有志者を法律上活動を認められた少年指導委員として委嘱し、風俗環境が及ぼす影響から少年を守るための諸活動を行わせるうえで必要な要領を定めるものである。
第2 委嘱
1 配置地域
内規第2条に基づき、岩国、周南、防府、山口、宇部及び下関の各市に配置地域を選定する。ただし風俗環境、少年非行及び福祉犯の状況等を考慮し、以後必要な整備を行うものとする。
2 委嘱手続
(1) 少年指導委員の活動区域(配置地域)を管轄する警察署長(以下「警察署長」という)は、内規第4条に基づく少年指導委員の推薦に当たっては、活動区域内に居住し、又は勤務する等当該活動区域の実情に精通していると認められる者につき、次の事項を明らかにして行うものとする。
ア 住所、氏名、年齢、職業、家族の状況、経歴及び健康状態
イ 関係機関からの推薦等、少年指導委員として適任と認められる理由
ウ 法第38条第1項に規定する資格要件
(2) 法第38条第1項に規定する資格要件は、次の基準によるものとする。
ア 人格及び行動について社会的信望を有すること。
人格、識見ともにすぐれ、行動等においても地域住民に信頼のあることをいう。
イ 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。
少年に対する深い愛情と理解を持ち、少年の健全な育成活動に対して旺盛な熱意と使命感を持つとともに、自主的、自発的な活動が可能な時間的余裕を有することをいう。
ウ 生活が安定していること。
経済的観点からだけでなく、家庭的にも安定していることをいう。
エ 健康で活動力を有すること。
心身共に健康であり、その職務を行うことによつて、精神的、肉体的に支障をきたすことがないことをいい、おおむね65歳以下の者をいう。
(3) 少年指導委員は、地域社会から幅広く適任者を求めるものとするが、少年警察協助員、少年相談員に資格要件を備えた適格者がいる場合は併嘱することもできる。
(4) 警察署長は、委嘱された少年指導委員の住所、氏名及び活動区域を市町村広報紙、自治会報等に掲載するなどして遅滞なく地域住民に周知させるものとする。
第3 活動
少年指導委員は、次の要領により活動するものとする。この場合、原則として2人以上が1組で行うようにする。
1 少年の補導
(1) 活動場所
ア 路上等一般公衆の通行する場所
イ 少年指導委員が、活動の目的を告げ、出入りすることに同意を得られた営業所
(2) 対象少年
飲酒又は、喫煙を行つている少年、服装態度等から家出したと認められる少年等補導を要するもの。
(3) 活動内容
ア指導及び助言
少年に呼び掛けを行い、当該行為の中止や帰宅を促す等の指導及び助言を行う。この場合少年の保護者への連絡が必要であると認められるときは保護者に連絡する。
イ 所持物件の取扱
少年が酒類、たばこ、性具、有害図書、その他少年の健全な育成に支障があると認められる物件を所持しているときは、少年に対し、その物件を廃棄し、又は保護者に預けるように指導する。
(4) 注意事項
自殺のおそれがある少年等、緊急に保護を要すると認められる少年については、速やかに警察官に連絡する。
風俗営業者等に対する協力要請活動
(1) 活動内容
ア 風俗営業及び風俗関連営業の営業者、管理者、従業者に対し、法第18条(年少者の立入禁止の表示法)第22条(風俗営業者の禁止行為)法第28条第5項(風俗関連営業者の禁止行為)等の規定を遵守し、少年の健全な育成に有害な影響を及ぼす行為をしないように協力を要請する。
イ ゲームセンター、喫茶店等少年が多数出入りする営業所の営業者等に対し、営業所内を不良少年等のたまり場とすることのないように協力を要請する。
(2) 注意事項
営業所に対する活動は原則として営業時間外に行う。ただし、出入りすることに同意を得られた営業所については、営業時間内に活動を行うことができる。また、営業時間外に営業者と面接して活動を行うことが困難な場合には、営業開始直後等に営業所に迷惑のかからない方法で行う。
3 少年相談
風俗営業及び風俗関連営業等に関し、少年の健全な育成に係る事項について、少年及び保護者等から相談があつた場合には、相談者に助言を行うなどの援助をし、その内容が複雑、難解な事案等で少年指導委員が処理することがふさわしくないときは、警察署、福祉事務所等の関係機関を紹介する。相談に当たつては、必要以上に家庭内の問題に深入りしないこと。
4 少年を取り巻く有害環境の浄化活動
各種会合等の機会を利用し、有害環境の実情を地域住民に知らせ、有害環境浄化活動の気運を醸成するとともに、地域における有害環境浄化活動が活発に行われるようこれらの運動に協力援助する。
第4 講習
少年指導委員に対する講習内容は、次のとおりとする。
1 少年指導委員として必要な一般教養
(1) 少年非行及び少年の福祉を害する犯罪の態様と現状
(2) 風俗営業及び風俗関連営業等の実態
(3) 少年法児童福祉法山口県青少年健全育成条例等少年の健全な育成に関する法令
2 少年指導委員の活動に必要な実務教養
(1) 少年指導委員の心構え等活動上の留意事項
(2) 少年指導委員の活動の内容と限界
(3) 少年指導委員の活動要領
第5 指導教養
警察本部少年課長及び警察署長は、少年指導委員に対し、次の事項について指導教養を行うものとする。
1 前記第3活動、第4講習に定めた事項
2 秘密の保持
少年指導委員として委嘱を受けている間はもとより、辞職(解嘱)した後においても、少年指導委員として知り得た秘密を漏らさないこと。
3 関係機関との連絡及び協調
平素から警察職員及び風俗環境浄化協会等と連絡を密にし、活動に当たつてはこれらと協調する。
4 身分証明書の携帯及び提示
活動にあたつては、必ず所定の身分証明書を携帯し、関係者から請求があつたときは、これを提示する。
5 受傷事故の防止
活動に当たつては、あらかじめ最寄りの警察署又は交番に活動予定地等を連絡するなど有機的な連携を保つとともに関係者との紛争をさけ受傷事故を防止する。
第6 解嘱
法第38条第5項に規定する解嘱事由に該当する場合の基準は、次のとおりとする。
1 法第38条第1項各号のいずれかの要件を欠くに至つたとき。
前記第2 2(2)による
2 職務上の義務に違反し、又はその職務を怠つたとき。
正当な理由がなく、法若しくは規則に規定する職務上の義務に違反し、又は法第38条第2項に規定する職務を行わないときをいう。
3 少年指導委員たるにふさわしくない非行のあつたとき。
少年指導委員としてふさわしくない刑罰法令に違反する行為又は反道徳的、反社会的行為があつたときをいう。
第7 辞職の取扱い
警察署長は、少年指導委員が心身の故障、その他の理由によつて辞意を申し出たときは、副申書を添えて公安委員会に報告するものとする。この場合に公安委員会が辞職を認めたときは、交付物品(第8に掲げるもの)に委嘱状を添えて返納させる。
第8 物品の交付
少年指導委員には、次に掲げるものを交付する。
1 少年指導委員証(規則で定めた様式)
2 少年指導委員手帳(別紙)
3 少年指導委員バッチ(全国統一規格)
第9 災害補償
少年指導委員の活動に際して災害等が発生した場合は「県議会の議員、その他非常勤の職員の公務災害補償等に関する条例(昭和42年山口県条例」第38号)が適用されるので早期に報告を行うこと。

 
少年指導委員は県警本部の所管で動いていますが、その活動は少年補導員,少年警察協助員といった準公人の活動と連携しているため、連絡調整のため少年補導員協議会に参加することになっています。こうした警察傘下の準公人は、5万8,000人がおり、各地の青少年健全育成行政に影響を与えています。
 

内閣府
平成15年版 青少年白書
本編 > 第2部 > 第7章 > 第2節 少年非行の防止活動
第2節 少年非行の防止活動
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h15zenbun/html/honpen/hp020702.htm

2.非行防止のための地域組織
(2) 少年補導員協議会,母の会
少年補導員協議会は,少年補導員等の民間ボランティアが全国各地におおむね警察署単位で組織され,犯罪防止組織の中核として,少年の非行防止と健全育成に大きく寄与している。その実践的活動の中心となるのは少年補導員,少年警察協助員,少年指導委員等の少年警察ボランティアであり,平成14年4月末現在,全国で5万8,000人が活動している。
また,地域により,母の会等の地域女性組織が設けられ,子どもを持つ母親の立場から女性の特性を生かしつつ,広報啓発,街頭補導,社会環境の浄化等の活動を行っている。

 
関連ログ。
少年指導委員については、平成13年ぐらいから少年警察委員制度の強化が検討され、予算措置も講じられ、少年警察活動規則が制定されています。
出版規制に限らず、人権を制限するような統制体制は、ハード(官僚組織・予算)→ソフト(運用制度)という順番で進むのが一般的ですが、今回の風適法改正は、ハードの部分がほぼ完成したことを受けてソフトの部分の完成を新たに目指しているという見方ができると思われます。
 

「少年警察活動規則試案」パブリックコメントに対する警視庁回答
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020069.html
「少年警察活動規則試案」パブリックコメント
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020068.html
警察庁少年警察活動規則/募集意見に対する考え方を公表
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020100.html
内閣府男女共同参画局への意見書(草稿)
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020119.html
青少年育成施策大綱(骨子案) についての意見
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020278.html
資料/第2回少年有害環境対策研究会議事要旨
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020329.html
警察庁資料/少年非行防止法制の在り方について(中間報告)
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020380.html

 
以下、少年警察活動に関する関連通達。
 

警察庁
警察庁の訓令・通達
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/index.htm


少年課 S57.4.6 丙少発第8号 少年警察協助員制度の実施について
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen19820406.pdf
少年課 H8.10.16 乙生発第13号 少年警察活動要綱の改正について
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen19961016.pdf
少年課 H8.10.17 丙少発第19号等 少年警察活動要綱の改正の趣旨等について
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen19961017.pdf
H14.5.31丙少発第13号
少年警察ボランティア活動の活性化に向けた取組みの強化について
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen20020531.pdf
H14.9.27乙生発第2号
少年警察活動規則の制定について
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen20020927.pdf
H14.10.10 乙生発第4号
少年警察活動推進上の留意事項について
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen20021010.pdf
H13.10.31 丁少発第149号
平成14年生活安全警察(少年警察)の運営重点の実施細目について
http://www.pdc.npa.go.jp/pub_docs/notification/seian/shounen/shounen20011031.pdf

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*1:この部分が法改正後は無くなることになります。