読売新聞が社説でピンクチラシ排除を唱導

讀賣新聞が風適法改悪を支持する社説を掲載しています。
 

4月10日付・読売社説(1)
風営法改正案]「生活の場を脅かすピンクチラシ」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050409ig90.htm

中には、多くの住民に不快感を与えるものもある。こんなチラシを排除したいと考えるのは、当然のことだろう。

 
讀賣新聞社説の根拠はこの一行に尽きています。
“不快感への共感”、美的価値観への共感、それだけです。ビラメディアが青少年に有害な影響を与えるとの科学的な根拠なり因果関係についての言及は、読売社説にはありません。
「こんなチラシ」と書くその態度は、「たかが選手」とほざいたあの讀賣主筆の傲慢な態度と重なります。
 
私は、ピンクチラシは何度も見てきましたれど、不快を感じたことはありませんし、排除したいと考えたことは一度としてありません。気に入らないならゴミ箱へ捨てれば良いだけです。青少年に有害だといった科学的な根拠も示されていません。
ピンクビラに限らず広告一般に言えることですが、現実社会に存在している夜の部分を広告は表現しているなとは思っても、それで不快になったことはありません。だって、それが社会の現実ですから。
不快なのは、社会の現実を認めずに偽善を演じる人たちです。たとえば、風俗を利用し自分は楽しんでいながら、風俗を社会の害悪であるかのように訴える連中の姿は、私にはとても不快です。
問題は、そういう価値観の相違や宗教感の相違をお互いに容認しあうのが価値の多様性を前提とした民主主義社会であり、特定の価値や特定の宗教だけを絶対的価値であるとの前提で社会のルールを形成すれば民主主義の基本的な諸原則と矛盾が生じ、社会に新たな歪みを発生させ得るという点です。 
そういう問題が、今回の風適法改正案にも含まれています。
 
ピンクビラが社会に広まっているのは、営業停止命令を出せる権限が警察にあるのにもかかわらず警察の怠慢で放置されてきたという点に諸悪の原因があり、警察の不作為ことが問題と指摘されるべきですが、読売新聞社説は警察の不作為については問題意識をもっておらず、警察権力の問題に眼をつぶっているように思われます。
読売社説は「ピンクチラシの配布に関連して、2003年には、254件の中止命令が出された。検挙件数は3919件だったが、7割は、罰則が軽い軽犯罪法違反に問われただけだった。配布した者だけが検挙され、営業者の責任は問えなかった」と書いています。しかし、行政処分たる営業停止命令の件数についてはなぜか触れていません。営業停止命令が風適法規制の最大規制であるのに、その点について触れないというのはいかにも不可解です。
ジャーナリズムは言うまでも無く権力の監視者、ウォッチドッグであり、公権力活動のチェック機能を果すことが本義ですが、読売新聞社説は、権力の監視ではなく、権力による監視の手先になってしまっているようにも見えます。
 
内閣府は、先に発表した世論調査で、ピンクビラに対する民衆の憎悪・不快感を確認するような恣意的な世論調査結果*1を公表しましたが、こうした世論操作や読売社説によって立法が歪められ、歪んだ社会が生まれるとすれば、その結果として被害を被るのはそうした社会で生きていかねばならない子どもたちではないかと思われます。
 
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*1:内閣府:少年非行等に関する世論調査を公表 http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050408#p1 参照