フィギュア萌え族発言の顛末:NGO-AMI「問われるワイドショー的メディア構造」

kitano2005-03-21

 

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■大谷氏の一連の問題について、「放送レポート」へNGO-AMIの意見を発表しました。2005/3/15
今回の「フィギュア萌え族」などの大谷氏の一連の発言・記事について、主にテレビ・ワイドショーの「報道」のあり方の問題ととらえ、その旨を「放送レポート 193号」に発表いたしました。

「放送レポート193号」掲載文
フィギュア萌え族」という“妄言” 問われるワイドショー的メディア構造
http://picnic.to/~ami/o_repo.htm

いうまでもなく、私たちは事件をたいへん痛ましいものと考えており、ご遺族の心中を察すると胸の潰れる思いがする。大谷氏が曲解するような、小児性愛を擁護する団体ではない。私たちが問題としているのは、あくまでも表現規制につながる反面、犯罪防止には実効性を持たない的外れな言説である。だからこそ、大谷氏の「ジャーナリスト」としての姿勢を問うたのであり、ひいてはテレビなどメディアのあり方を問う目的で「質問状」を送付したのである。
 だが、大谷氏は私たち(や、他の人々)の質問や批判に、およそまともとはいえない返答をした。それだけでなく、非常に不可解なことだが、私たちへの返答とは食い違った内容を1月4日づけ「日刊スポーツ」に書いている。

<NGO-AMIからの質問>
「フィギュア萌え族」を「脱人間的」「没人間的」とされた論拠を示してく
ださい。具体的にどのような観察、どのような資料に基づくものであるかを
示していただければ幸いです。
<NGO-AMIへのファックスによる返答>
取材ソース、取材データ、取材対象に言及できないことは、自明、周知の事
柄と考えております。
<「日刊スポーツ」、「フラッシュアップ」での記述>
公開質問状での「その類の嗜好についてきちんと取材したのか」という指摘
を待つまでもなく、実際に大阪の日本橋など、マニアが集う場所も取材して
みたし、インターネット上でのやり取りも見せてもらった。

 いかがだろうか。
 私たちも「日刊スポーツ」を読むことができるのだから、食い違った返答を示す合理的な理由は見当たらない。もちろん「取材源の秘匿」が、答えになっていないことも明白だ。秘匿する必要のある取材源があるとは考えにくいからである。
 また大谷氏は、「日刊スポーツ」紙上で、「ここで書くのもはばかれるような幼女や少女を性的に弄ぶというよりは、加虐的、嗜虐的な傾向の強いものだった」と続けるが、であればなおのこと、私たちに対してもこれを強く主張してもよさそうなものである。一般的に、性的なキャラクター表現が直接犯罪を誘発するという具体的な証拠は世界中を見渡しても存在しない。実は、大谷氏は自らの論拠の乏しさを薄々分っており、その「不安」が一連のアンフェアな振る舞いとして顕れたとは考えられないだろうか。少なくとも、これら不可解な態度は、氏が感情論を語っているだけという疑念を強くする。
(中略)

大谷氏 
「私はね、趣味は勝手だけども、こういったあおりそそのかすようなグッズ
とかアニメとか、世界から大変な批判を受けているわけですね、日本はなん
とかしてくれと、で、こういう番組で申し上げたり文章で書いたら、この事
件の間に配達証明付きで公開質問状が送られて来るんですね、こういう社会
って何なんだろうと、子供本当に守らないといけないと取材してる記者達が
叫んだら、そいつ宛に配達証明のですね、いったい何を質問するんだろうと」
勝谷誠彦氏(割って入る感じで) 
「それあれですか、自分の変質的なあれの人権というか権利を守れというん
ですか? そういう趣味の権利を」
大谷氏 
「・・・でしょうね」 

このように、犯罪を擁護するものという誹謗中傷的な曲解とセットで、質問状に対する憤慨が語られている。大谷氏は私たちを社会的な発言すら許されない存在と一方的に断じていたのだろうか。 少し注釈的に記しておくと、一部の市民団体などからの糾弾を除けば、大谷氏が説明なく語る「世界からの大変な批判」は存在しない。架空のキャラクターを使った性表現は国際的にも児童ポルノとは認定されておらず、米国最高裁判決、日弁連の声明でも同様の解釈がなされている。これもまた、いつ、誰によって、どのように批判がなされたのか提示されない限り、根拠に乏しいイメージ操作と言わざるを得ない。また、番組で同席した勝谷誠彦氏が大谷氏に同調せず、逆に、今回の事件に際して表現規制強化を叫ぶ者を強く批判したことは付記しておく。(「週刊SPA!」掲載号:通巻2929号 2005年1月11日発売)
一方、「質問状」を問題視した大谷氏自身は、実はこれまでに多数の「公開質問状」を送付してきている。民主党などに対し、佐高信氏らと連名で送付した、盗聴法強行採決に関するものなどがそれだ。インターネット上で文面を確認できるものだけで十通近くあり、総数はかなりあるものと思われる。
もしも、大谷氏らが質問状を送付した政治家が「日本を本気で心配している政治家に質問状を送って、一体何を質問するというのか」とメディアで切り捨てたら、大谷氏はどう反応するのだろうか。
また氏は「児童ポルノ」の問題について、端的にいって無知であり、古い、誤った情報を繰り返している。たとえば「日刊スポーツ」では「欧米であのような劇画や動画を流したとしたら、厳しい懲役が待っている」と主張し、「しんぶん赤旗」(2004年12月31日号)でも「日本は児童ポルノが野放しになっていることで国際的にも批判をあびています」と主張する。だが前者はそういう事実はなく、後者は古い情報に基づく誤報である。インターネットで調べれば正確な情報は比較的簡単に手に入る。なぜそうしないのか。
つまり氏の態度は「こんな犯罪を行うのは黒人に決まっている」式の決めつけよりも、さらに悪質なのである。「決めつけ」への「意見表明」を受け付けず、その場しのぎの返答と、公共の電波を用いての誹謗に終始しているのだから。
本稿をお読みいただいたテレビ報道関係者には、ぜひ教えていただきたい。いかなるロジックを持ってすれば、大谷氏の言動は擁護しうるのか。
(中略)
マスコミには、人々に情報を提供し、権力の暴走に対する「歯止め」という機能がある。「第四の権力」と呼ばれる所以である。しかし同時に「権力は腐敗する」とは、万人の認める真理であろう。だが、人間の理性はそれを食い止めることができるはずだ。
大谷昭宏氏ならびに、すべてのメディアに関わる方々に、理性の発揮を切に望む次第である。

大谷昭宏氏宛て公開質問状
http://picnic.to/~ami/ool.htm

報道被害:奈良女児誘拐殺人事件における、マスコミのオタクバッシングまとめサイト
http://www.geocities.jp/houdou_higai/
http://www.geocities.jp/houdou_higai/index_02.html
AMI-nineteen
奈良事件でのオタク叩き情報収集スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/news/648/1104470947/
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/news/648/1109474074/

BPO(放送倫理・番組向上機構)
視聴者からの意見 2005年1月
http://www.bpo.gr.jp/better/shichosha/shichosha0501.html

<ワイドショー、コメンテーター>

  • コメンテーターが、奈良女児誘拐殺人事件の犯人像について、あたかも特定の趣味を持つ人たちの中に、犯人がいるかのような発言を繰り返したうえ、発言に抗議した人を激しく非難し続けている。一般人が反論出来ないテレビという独占的な場で一方的に糾弾するのは、放送を使った暴力であり差別助長だ。(同様意見49件)

 
まずはNGO−AMI関係者の方に感謝して評価しておきます。
 
その上で書きますが、もちろん大谷氏の「フィギュア萌え族」の一連の言動には事実認識のところで誤りがあって訂正しないという問題がありましたけれど、おかしな発言や情報を提供しているのは、大谷氏の「フィギュア萌え族」の件だけではないです。
よみうりテレビの「たかじんのそこまで言って委員会」といったバカ番組もそうですし、例をあげると限りなくでてくる。そういう中で、テレビの問題やメディア問題に積極的にコメントしてきた大谷氏自身がおかしな発言をするという流れに、私は危機感を感じます。
 

「奈良幼女誘拐殺人事件」という物語を克服するために
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050117#p1

つまりぶっちゃけ言うと、
 

これまで何度も政府や企業などの権力を批判し、客観報道を標榜し、記者クラブ
の払い下げ情報のコピペで商売しているマスメディアを批判し、黒田軍団で調査
報道を続けて、みんなからサヨクと呼ばれていた大谷昭宏氏が、自分がやってき
たことを否定するようなマヌケを演じて自滅しているのが楽しくて楽しくてしか
たがない。だからオレたちはおもいっきり楽しんで宣言してやろうではないか、
「サヨクの大谷は終った」と。

 
という倒錯した動機で批判している奴や、そういう気分に同調している人*1が結構いるということです。という意味でなら「大谷氏を批判するムーヴメント」に乗っているだけの人が、大した政治性の無いままに騒いでいる」との認識には同感です。

 
「大谷氏を批判するムーヴメント」に乗っているだけの人の言論が確定してしまわないうちに、ちゃんとした批判を公開したという意味でも、NGO-AMIの活動は評価されねばならないし、わたしは感謝したいです。
大谷氏はモノを言う人で、言ったことが叩かれているわけですが、なにも言わないで本当の問題から目を背け沈黙し続けるワイドショーの司会やコメンテーター、そして番組を作っているプロデューサーたちは、大谷氏と同じくらい、またはそれ以上にひどいです。
事実を伝えることを職として国民の知る権利の代行者を標榜するメディア人が、眼前の危機に沈黙するという不作為は、悪意に等しい。
 
関連リンク。
 

大谷昭宏事務所
http://homepage2.nifty.com/otani-office/
対話も感情もない「萌え」のむなしさ― 犯人、楓ちゃんをフィギュア化 ―
http://homepage2.nifty.com/otani-office/nikkan/n041123.html
趣味と犯罪の境界 社会が決めるべき― 「フィギュアマニア」に改めて思う ―
http://homepage2.nifty.com/otani-office/nikkan/n050104.html

 
関連ログ。
 

「奈良幼女誘拐殺人事件」という物語を克服するために
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050117#p1
よみうりテレビロリコン血祭りアンケート
他称「ロリコン族」をバッシングするディープな世界
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040324
女性セブンの すごい 記事
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040322#p2
フジTV「ワッツ!?ニッポン」:「性犯罪者再犯率は七割が常識」諸澤発言
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050108#p3

 
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*1: みなさんみんな知っていると思いますが、具体的にはここら辺ですね。→切込隊長 はてな市民権獲得への旅 http://d.hatena.ne.jp/kirik/