立川反戦ビラ事件:腐敗する司法・肥大する行政

 
被告の大西さんが第1部で発言しています。
 

■ビデオニュース
公開シンポジウム『おかしいぞ警察・検察・裁判所』
http://www.videonews.com/sympo_jurisdiction.html

第1部 警察不当逮捕実態報告
立川反戦ビラ裁判被告、JR浦和電車区事件被告、葛飾ビラ事件関係者
(第1部 40分 ) 映像
http://www.videonews.com/asx/sympojurisdiction/021405_jurisdiction1_300.asx
第2部 検察・警察裏金問題
大谷昭宏氏(ジャーナリスト)*1
鈴木邦男氏(評論家)
映像
http://www.videonews.com/asx/sympojurisdiction/021405_jurisdiction2_300.asx
第3部 検察腐敗と国策捜査
三井環氏(元大阪高検公安部長)
魚住昭氏(ジャーナリスト)
映像
http://www.videonews.com/asx/sympojurisdiction/021405_jurisdiction3_300.asx

■創
2・14(月) 公開シンポジウム おかしいぞ!警察・検察・裁判所
http://www.tsukuru.co.jp/050214.html

▼主催:司法の反動化を考えるジャーナリストの会

▼呼びかけ人
魚住昭(ジャーナリスト)/岡本厚(世界)
北村肇(週刊金曜日)/斎藤貴男(ジャーナリスト)
篠田博之(創)/大谷昭宏(ジャーナリスト)
二木啓孝日刊ゲンダイ)/元木昌彦講談社
森達也(映画監督)/他

 
逮捕状の発行ですら裁判官が自分の印鑑を押すのを忘れそのまま逮捕状を発行していたケースが2件も発生していた*2というのですから、呆れます。
「おかしいはずの裁判所ですら無罪判決を出しました」と大西さんが言っていました。ただビラを配って75日間の拘留(1日10時間密室での過酷な取調べが毎日)を認めた裁判所はやはり「おかしいぞ」です。
1934年(田原総一朗が生まれた年)に帝人事件という贈収賄事があり、被告は200日以上の長期拘留&南京虫責めなどの拷問で自白を強要されるという事件が発生して「司法ファッショ」という批判が起りましたが、一連のビラ入れ事件はこれに匹敵する司法ファッショでしょう。
大西さんは「無罪判決でも細かくみるとおかしい、たとえば構成要件で成立して裁判所で違法性なしで選別するという地裁判決は、結果的に裁判所にビラの内容を審査権を認めるようなものでおかしい」というようなことも言っていました。同感です。ビラの主張の内容の是非は国民自身で判断すべきことであり、裁判所がその是非を判断すべきではありません。
シンポジウムでは司法の腐敗の実態が議論されましたが、どこの国でも司法の腐敗は肥大する行政と連動しています。シンポジウムでは判検交流の問題、検察後援者*3による接待の問題、メディアに対する検察による接待と恫喝の問題はほとんどとりあげられていませんでしたが、そういう問題もあります。
警察の犯罪は検察が自ら捜査して訴追できますが、検察は検察しか訴追できません。検察が訴追しないと判断すればそれで終りです。そこに司法の腐敗の根源があり、三井告発の意味があります。
政治家や高級官僚を逮捕して訴追することができるのは検察だけです。ですから、やましいことをしている政治家や高級官僚は、できるだけ検察の権限を少なくして起きたいと思っていることでしょう。
そういう巨悪を強めることなく、検察の巨悪をいかに弱めるかが難しいところです。
検察の犯罪は、特別検察官事務所のような第三者機関による第三者の訴追権を認めてゆく以外に無いでしょう。しかしその判断を政治家にまかせてしまっては、政治家の巨悪は眠ったままになってしまう可能性があります。
もうひとつの方法として、検察の地方組織をすべて独立させ、中央任免になっている地方検察の局長を選挙で選出するといった大胆な議論があっても良かったと思います。検察官の犯罪と汚職についてだけ他地域の検察に訴追権を認めることにしておけば、検察同士でお互いを監視しあう形になりますので検察の腐敗抑止には効果が見込めます。検察組織はピラミッド型ではなく分散ネットワーク型に変える時期が来ているのではないでしょうか。
 
2月10日の衆議院憲法調査会で、高橋千鶴子議員(日本共産党)が立川の事件について触れ、表現の自由、政治活動の自由についての発言がありました。
本来なら、自由民主党の議員こそ、こういう議論をすべきではないでしょうかね。共産党だけでなく自民党もいろんなところに大量にビラを入れているわけですから。
 

衆議院
会議録 第161回国会 憲法調査会公聴会 第2号(平成16年11月18日)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/014116120041118002.htm
会議録 第162回国会 憲法調査会 第2号(平成17年2月10日)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/008916220050210002.htm

○高橋委員
・・・・・
今日の日本社会は、なお解決しなければならない人権侵害の実態があります。昨年一月の立川での防衛庁宿舎へのビラ配布に対する不当逮捕、起訴、昨年十二月、葛飾区でのビラ配布への不当逮捕、起訴などは、憲法が保障する表現の自由、政治活動の自由を侵害するものであります。立川の事件は十二月に東京地裁が無罪と判決したにもかかわらず、その直後に葛飾の事件が起こされました。憲法調査会は、本来、こうした日本の人権状況がどうなっているのか、憲法に反する状況はないのか、基本的人権の保障を妨げている原因は何かなどを調査するべきであると考えます。
日本国憲法の豊かな人権規定を再確認し、立法、行政、司法など日本社会の各分野でこれを生かしていくことこそ今日求められます。憲法九十七条が、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、」中略「過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と、将来に向けて発展させていくことも見通しています。
日本国憲法の人権規定は、現在だけでなく、将来生起する人権についても対応し得る懐の深い構造を持ち、国民はそれをさらに生かし、豊かに発展させていくものと考えます。

 
昨年、日本政府は、中国潜水艦の領海侵犯事件が発生した時、国会で宇佐美登衆議院議員*4があなたは住居侵入をとがめもせず放置するのか、領海内にいるときに警告せず領海から出てから警告したのはおかしいのではないかというような細田官房長官に対する質問に、官房長官はこう答えています。
 

衆議院 第161回国会 内閣委員会 第6号(平成16年11月12日)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000216120041112006.htm

細田国務大臣 そういうお考えもあると思いますし、今回のことについてはよくレビューをいたしてまいりたいと思っております。
潜水艦が海面下を走っておるということで、今住宅との関係で言われましたけれども、もし海面上に出て旗を出して通るのは、領海でも、これは無害通航権でそれはいいのでございます。

 
どうやら領海内で他国の潜水艦がうろうろしても、無害通航権であるから警告しなくてもよいし住居侵入のような犯罪ではない、と日本国政府は考えているようです。ををーっ。
考えてみれば、居住スペースに侵入せず通路で政治ビラの配布している行為も無害通航権なようなものですね。

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*1:大谷氏ではなく鳥越さんの方がこのシンポジウムにはふさわしかったと思うなぁ。主催者には申し訳無いが、大谷氏の顔はしばらく見たくない。 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/news/648/1104470947/r966-967 質問者の「多少自由を犠牲にしてでも、危ない奴は除けておけみたいな意識が結構付け入る隙を与えている」との指摘はまさにその通りで、大谷氏の「フィギュア萌え族」の一連の発言はそういう意識を拡大することに作用しているわけで、大谷氏の回答はそういう問題の自覚の無さを示していると思われます。「大谷さんの今の意見に全面的に賛成」と言っていたゲンダイの二木氏も同じ。

*2:押印のない逮捕状 http://blog.livedoor.jp/herry/archives/13848087.html

*3:検察官の後援会組織のようなものは行政内にもありますし民間にもあります。検察官はある意味で国会議員に匹敵する権力を持っていますので、その権力者を後援することで権力のおこぼれに与ろうとする人たちが山のようにいるわけです。

*4:うさみ登衆議院議員(民主党東京4区松下政経塾10期生) http://www.usami21.com/