実証研究でゲーム脳説が完敗:コンピュータエンターテインメント協会

先日、社団法人コンピュータエンターテインメント協会が「ゲームソフトが人間に与える影響に関する調査報告書」(財団法人イメージ情報科学研究所が平成15年3月にまとめたもの)をサイトに公開しました。

CESA/社団法人コンピュータエンターテインメント協会
http://www.cesa.or.jp/
ゲーム研究データインデックス
http://research.cesa.or.jp/index.html
「ゲーム研究データインデックス」開設に寄せて
http://research.cesa.or.jp/greeting.html
平成15年3月 財団法人イメージ情報科学研究所
「ゲームソフトが人間に与える影響に関する調査報告書」
http://research.cesa.or.jp/12.pdf

2 テレビゲームと脳の関係に関する調査
◇ テレビゲームと身体的活動
テレビゲームが屋外での身体活動の減少を招いているという実証的な裏づけはない。また、身体活動という点からみると、すべてのテレビゲームが、身体活動の低下を招いているとは必ずしもいえない。
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◇ テレビゲームと対人関係
テレビゲームに時間を使うことが、人との触れ合いを希薄にするとは単純には考えられない。
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テレビゲームが子どもの大脳活動の未熟化という傾向を助長させた可能性があるといえても、その原因になったとは言い難い。
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テレビゲーム時の脳活動についての研究は現段階ではまだそれほど多いとはいえず、その影響についての議論はまだ決定的なものとはいえない。
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川島の主張は、多少誤解されている。つまり、川島は、まだ前頭前野髄鞘化が完成していない成長段階の子どもの脳の発達には、脳の活性範囲が狭いテレビゲームで長時間遊ぶことよりも、まず、脳が広範囲にかつ強く活性する読み書きや簡単な計算といった基本的な学習をよく行い、脳のトレーニングをして、素地を作る必要があるという持論を主張している(川島, 2002a, 2002b)。しかし、子どもがテレビゲームを長期的に使用することで、前頭前野の発達が阻害されて、知力が低く、情動をコントロールできないキレやすい人間になるという脳への悪影響を直接指摘してはいない。
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テレビゲームの脳への悪影響を警告する森(2002)についての検討課題
テレビゲームをすることで痴呆者のように前頭前野を使わないため、脳の発達が阻害されるという論じることは、論理に飛躍があるように思われる。
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テレビゲームと他の活動の扱い方
客観性を欠いているように思われる。
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テレビゲーム使用と、「ゲーム脳」との因果関係
因果関係を特定することはできないであろう。
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このように、森研究は、子どもへの調査や、複数のジャンルのゲームでの調査など評価できる点もあるが、今の段階では、研究の蓄積とハードとその解釈への信憑性という基本的な問題に加え、提示されていないデータなども多く、その結果についての結論は出せない段階である。
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◇テレビゲーム使用時の前頭前野の働き
これらの研究では、RPG やアドベンチャー、戦略ゲームなどの、いわゆる「頭を使いそうな」ゲームについての検討はなされていない。
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◇テレビゲームと集中力
研究結果からは、テレビゲームの集中力への長期的な影響は確認できない
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(5) <テレビゲームの脳への悪影響についての心理学的知見>
暴力性
暴力的なテレビゲームの影響力は、自らの暴力が賞賛されることで強化されると同時に、暴力シーンを見続けることによって暴力的思考に慣れていくという複線的な過程によって強められていると考えられている。
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社会的不適応
テレビゲーム使用によって対人的スキルや人間関係が悪くなり、社会的不適応が生じるとはいえない
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知的能力
教育用のテレビゲームを用いるなど、使用を工夫した場合には、子どもの知的能力が伸びることも十分に考えられる。
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まとめ
悪影響論へのメディアや一般の反応は、研究の実状をやや逸脱した感がある。

ゲーム脳説は、ほぼ否定されていると考えて良さそうです。
こうした実証研究を、ゲーム業界だけでなく、出版業界や漫画業界なども協力して実施すべきではないでしょうか。

CESA、ゲームが人間に与える影響に関する報告書を公開「“ゲーム脳”の結論付けは時期尚早」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041020-00000011-imp-sci

関連リンク。

ゲーム脳」関連記事
http://allabout.co.jp/game/gamenews/subject/msub_gbrain.htm
ゲーム脳の恐怖』著者森昭雄氏への質問メール
http://www5a.biglobe.ne.jp/~gjoitch/scoop/mailtoamori.htm
山本弘のSF秘密基地 第12回日本トンデモ本大賞選評
http://www.tv-game.com/column/clbr02/
http://homepage3.nifty.com/hirorin/tondemotaisho2003.htm
ゲーム脳 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ゲーム脳
お茶の水女子大学社会心理学研究室(坂元研究室)
http://www.hss.ocha.ac.jp/psych/socpsy/sakamoto.htm
http://www.hss.ocha.ac.jp/psych/socpsy/articles/2003.htm

報告書の執筆者の安藤玲子氏のサイトを見たら、業績の一部がネットで公開されていました。

安藤玲子氏業績
http://www.hss.ocha.ac.jp/psych/socpsy/ando/product.htm

高比良美詠子・安藤玲子・坂元章 2004  ネット使用が中学生のネガティブ感情および攻撃性に与える影響−目的別ネット使用のネガティブ効果− 
http://www.hss.ocha.ac.jp/psych/socpsy/ando/kenkohshin2004_takahira.pdf
http://www.hss.ocha.ac.jp/psych/socpsy/ando/per2004_takahira.pdf
安藤玲子・高比良美詠子・坂元章 2004 中学生のネット使用が孤独感・ソーシャルサポートに与える影響-ツール別ネット使用のポジティブ効果 - 日本健康心理学会第17回大会発表論文集(文化女子大学
http://www.hss.ocha.ac.jp/psych/socpsy/ando/kenkohshin2004_ando.pdf
http://www.hss.ocha.ac.jp/psych/socpsy/ando/per2004_ando.pdf


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関連ログ。
 

ゲーム規制:松沢知事の有害図書類規制論
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050712
神奈川県有害図書類指定のゲームソフト説明会
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050711
総務省:有害情報判定委員会創設
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050627
神奈川県ゲーム暴力表現規制(4):GTA3に有害指定
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050607
神奈川県ゲーム暴力表現規制(3):関連リンク
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050604
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上田清司埼玉県知事「神奈川からの流入を防止のためにゲームを規制する」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050603
神奈川県ゲーム暴力表現規制(1):松沢知事御乱心「生身の人間を殺すな!」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050602
松沢成文知事、ゲーム規制を熱く語る「ゲームが犯罪を招くので全体規制を考える時期だ」
神奈川県「かながわ青少年育成指針」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050405
神奈川県:出版流通規制強化案について意見を募集
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20041217
神奈川県の有害環境規制
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20040513

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