ロシア学校占拠事件と情報操作(1)

ロシア・チェチェンの人権侵害について

ロシアでなにが起こっているのかという基本的な情報については、アムネスティなどの民間団体の情報を参照のこと。

アムネスティ発表国際ニュース
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/news_lst.htm

EUR 46/049/2004 ロシア:人質事件の犠牲となった方々に哀悼の意を表す
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2004/0409060.htm
EUR 46/007/2004 暴走:モスクワの地下鉄爆破以後のチェチェン人に対する反感
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2004/0402180.htm
EUR 46/096/2003 市民友好大学の外国人学生が差別の対象に
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/0312221.htm
EUR 46/090/2003 チェチェン特使アフメド・ザカエフ氏の引き渡し要請を却下
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/0311130.htm
EUR 46/085/2003 ロシア連邦プーチン大統領アムネスティが署名を提出
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/0310131.htm
EUR 46/071/2003 ロシア連邦チェチェン避難民にとってイングーシは安全地帯であるべき
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/0308220.htm
EUR 46/068/2003 ロシア連邦:国家にはNGOを保護する義務がある
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/0308081.htm
EUR 46/065/2003 ロシア連邦チェチェン共和国内の拷問と虐待
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/0307110.htm

CPT*1が、特定の国に関する懸念を公式の声明として発表するのは例外的なことである。チェチェン共和国に関する勧告に対してロシア政府から反応が返ってこなかったため、2001年7月、CPTは公式声明を発表するという例外的な手段を初めて取るに至った。声明では、2つの問題に関してロシアとの行き詰まりを懸念している。

EUR 46/063/2003 ロシア連邦:民間人への攻撃は正当化できない
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/0307070.htm
EUR 46/059/2003 ロシア連邦:あるべき方向への第一歩
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030630_2.htm

チェリムカン・ムルダロフは、2001年1月2日、1時間で戻ると言って、チェチェン共和国首都グロズヌイにある家を出た。家族にとって、それが彼の最後の姿となった。チェリムカンの父は、彼の容貌に一致する青年が市中心部で拘束されたことを知った。チェリムカンは大麻を所持していたため拘禁されたが、その後釈放されたと警察は父親に告げた。しかし、チェリムカンと同じ房に拘禁されていた者は、チェリムカンが逮捕された翌日、彼はひどく殴られてため意識不明の状態で、四肢が切断されていたと話したという。2001年1月にはこの「失踪」事件に対する刑事訴訟が始まったが、家族には未だに彼の消息がわからず、加害責任者の起訴もされていない。

EUR 46/052/2003 ロシア連邦:真実の究明や犠牲者への補償を阻害することは国際法違反である
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030605.htm

夜間に強制捜査が行われ、その後、検問所で拘禁されている間に「失踪」する人々が絶えないと報告されている。ロシアの人権団体メモリアル*2が多数の「失踪」事件を記録しているが、最近では、2003年5月5日と6日に起きたリズヴァン・アッパゾフとムサ・ザウルベコフの事件が記録されている。

EUR 46/039/2003 ロシア連邦:資料センターはキャンペーンの重要な役割を担っている
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030512.htm
EUR 46/037/2003 ロシア連邦: アムネスティと女性のためのロシア・クライシスセンター連合会「ストップ・バイオレンス」が当局に行動を起こすように要請
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030511.htm
EUR 46/030/2003 ロシア連邦:裁きの実現を
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030417.htm

2000年3月26日の夜、ケダ・クンガエバさんは、ユーリー・ブダノフ大佐指揮下のロシア兵によって、Tangi-Chuにある彼女の自宅から誘拐された。ブダノフ大佐の供述によれば、彼は、ケダ・クンガエバさんがチェチェン兵士たちの情報を持っているのではないかと疑い、取調べのために彼女を自分のテントに連れて行った。ブダノフ大佐が調査中にケダ・クンガエバさんを殺害したということは広く伝えれられているところである。しかし彼は、彼女の調査中に「一時的な精神異常」の状態で彼女を絞め殺したと供述した。公式の検視報告は、ケダ・クンガエバさんは死ぬ前に強姦されていたと結論付けた。しかしながら、この発見は検察当局によって無視された。彼らはブダノフ大佐を殺害と職権乱用の罪に問うたが、強姦の罪に問われた者はいなかった。

EUR 46/013/2003 ロシア連邦:人権保護の義務を遵守するようアムネスティがロシア政府に要請
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030112.htm
EUR 46/008/2003 ロシア連邦:グリゴーリ・パスコ氏釈放によって彼の無実が再び認められる
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030103.htm

「パスコ氏の釈放は、彼のためにねばり強く活動した百万人もの人々の勝利であるといえる」と、アムネスティは述べた。
 その一方で、アムネスティは、パスコ氏の有罪判決は破棄されるべきだと主張した。それはアムネスティが、パスコ氏は表現の自由という基本的人権を行使したがために逮捕、実刑判決を受けたと確信しているからである。

EUR 46/002/2003 ロシア連邦:ロシア司法制度に蔓延する免責の風潮を憂慮する
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2003/030101.htm
EUR 46/079/2002 ロシア連邦チェチェンでの自爆攻撃をアムネスティが強く非難
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/021206.htm
EUR 46/069/2002 英国/ロシア:チェチェンの大統領特使が英国到着とともに逮捕される
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/021202.htm
EUR 46/065/2002 ロシア連邦チェチェン共和国特使、デンマークから釈放される
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/021201.htm
EUR 46/064/2002 ロシア連邦:身の安全が保障されないまま、チェチェン人避難民をチェチェンへ強制送還することは許されない
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/021110.htm

先日起きたモスクワ劇場人質事件は、ロシア連邦内におけるチェチェン人のおかれた苛酷な状況を一層悪化させている。ロシア国内においても、ロシア治安部隊は、免責されるという風潮の中で、民間人に対する深刻な人権侵害を続けている。ロシアの別の地域においても、チェチェン人は法執行機関による嫌がらせを受けたり恣意的に拘禁されたりしている。

EUR 46/063/2002 ロシア連邦立法府は、表現の自由の保護というロシアの国際的義務を守らなければならない
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/021109.htm

ロシアのジャーナリストならびに人権団体は、今年10月にモスクワの劇場で発生した人質事件を受けて、今月始めに急いで国会を通過した修正案にプーチン大統領が拒否権を行使したことを賞賛した。これらの修正案が発効すれば、チェチェン情勢やこれに関連する事件だけでなく、類似した状況での報道にも制限を課することになっていた。そして特殊部隊や危機対応部隊の隊員に関しても、個人を特定する報道をメディアがおこなうことが、本人の同意無しには禁じられることになっていた。

EUR 46/057/2002 ロシア連邦アムネスティ、ザカエフ氏逮捕に伴い身柄の安全の保障を訴える
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/021008.htm
EUR 46/051/2002 ロシア連邦:劇場人質事件は「人権軽視のもう一つの例」
アムネスティ、ロシアにおける広範な人権侵害に関する新たな報告書を発表

アラウディン・サディコフのケース
グロズヌイ出身の51歳の教師であったアラウディンは、2000年3月5日、連邦保安局に身柄を拘束され、グロズヌイのオクチャーブリスキ地区の警察署に連れて行かれた。彼は殴打され、自分の髪を食べさせられ、真っ赤に焼けた金属で焼かれた。彼の手には今もその火傷の痕が残っている。彼はアムネスティに次のように語った。「奴らは俺を殴って、首をちょん切っちゃおうぜ、と言った。動物を切るための刃物を持ち出し、俺の左耳を切り落とした。そして、次は首をちょん切ってやるぜ、と言った。」彼が受けた仕打ちに対する捜査は、加害者が特定できない、という理由で中止された。

EUR 46/050/2002 ロシア連邦:人質事件を非難
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/021005.htm
EUR 46/025/2002 ロシア連邦共和国:ジャーナリストにして環境保護活動家のパスコ氏、依然として拘禁中
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/020603.htm
EUR 46/011/2002ロシア連邦共和国:グリゴリー・パスコさん釈放のためアムネスティグリーンピースが共同でサイバー・アピールを展開
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/020205.htm
EUR 46/007/2002 ロシア連邦共和国:女性や少女の人権に関する懸念の報告書要約
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/020105.htm

収容された人々は地面に掘った穴より少しまし程度の収容施設に送られる。そこでは被拘禁者は親族や弁護士など外界との接触が一切断たれてしまう。これらの施設からの生存者は、拷問が日常化し組織化されていることを伝えている。収容された人々が男女を問わず強姦され、ハンマーや棍棒で殴られ、電気ショックをかけられ、催涙ガスを浴びせられたりしたという数多くの報告が寄せられている。
ロシア軍による収容後、もしくは居住地域への軍事襲撃後に「失踪」は日常化している。犠牲者の中には敵兵士と関係がある、もしくは敵兵士を援助したとの容疑をかけられた女性や少女たちがいる。何人かの「失踪」した人々の遺体は後に、目印も無いゴミ捨て場や集団墓地で見つかっており、多くは拷問や暴力的殺害の痕跡を残している。
女性と子どもたちは紛争で国内避難民となった約16万人の大部分を構成している。難民たちは現在、イングーシのテント・キャンプや以前養豚場や養鶏所だった所での厳しい生活環境の下で3度目の冬に耐えている。
残虐、非人道的、かつ品位を貶める処遇に該当するロシア連邦共和国内の刑務所、未決拘禁所の状況についての信頼すべき報告がアムネスティに引き続き寄せられている。2001年の4月、ロシアの人権委員は牢獄の状況を「おぞましい」ものだと形容し、また未決拘禁施設は「疫病の温床」となっていると述べた。また、判事は「過去の事例によってのみいまだに判断を下している」とし、そのことが過密化を促進し、ロシアの監獄の拘禁状況を悪化させていると述べた。ある男性が鶏を2羽盗んだ罪で4年の刑を受けたという事例を人権委員は例として引き合いに出した。
審理を待つ何十万人もの人々が超過密状態で拘禁されつづけている。公式な政府情報によると、毎年、刑務所を入退所する人びとの数は500万人に上る。 1万人を超える被拘禁者が毎年死亡し、10万人以上の人々が肺結核を罹っているとのことである。
2001年には、およそ4万人もの女性や少女の囚人たちが、スターリン時代から存在する女性のための35の遠隔地の流刑収容所に拘禁された。

EUR 46/001/2002 ロシア:グリゴリー・パスコ氏に4年の刑の判決環境保護を訴えたために矯正労働所へ
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2002/020101.htm
EUR 46/38/99 チェチェン:事前の警告は民間人への攻撃を正当化しない
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/1999/dec/991201.htm
EUR 46/25/97 チェチェン:男女二人の公開処刑に抗議
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/1997/sept/970901.htm
EUR 46/51/96 ロシア連邦:拷問禁止委員会の勧告
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/nov/1104.htm
EUR 46/26/96 ロシア:チェチェン人への組織的暴力
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/1996/May/0508.htm

96年3月22日、午後9時から10時にかけて、警官に率いられた13の武装し防護服とマスクをかぶった一団が、オネスカヤ通りのアパートを襲った。身分証明等は一切なかった。そこは大人5人と子ども6人のチェチェン人家族が、チェチェンでの紛争を逃れて住んでいる家で、武装した一団は、大人たちのパスポートを取り上げると、有無を言わさずに、銃床なども使って、殴る蹴る等の暴行を加えた。被害者の一人は妻や幼ない子どもたちの前で一時間にもわたって殴られ続けた。女性一人も殴られたといわれており、他の女性も脅迫されたという。12歳の子どもはショック状態に陥ったが、一団は電話線を切断し、病院への通報も許さなかった。

EUR 46/17/96 ロシア:チェチェンでの民間人の殺害
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/1996/mar/0314.htm
EUR 46/03/96 ロシア:チェチェン人質事件、続報
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/1996/jan/0113.htm
EUR/46/01/96 ロシア:チェチェンの人質事件
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/1996/jan/0102.htm

「人権団体はテロに抗議していない」とか「人権団体は反プーチン」というようなデマをブログや掲示板で流しているケダモノはだあ〜れ?(笑)
言うまでも無いことですが、上記のニュースリリースで証明されているように、人権団体は不法な無差別殺害について抗議していますし、報道制限法に拒否権を行使したプーチン大統領の判断*3について賞賛しています。

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以下は、ロシアの人権に関する情報。

ロシア連邦の人権抑圧
http://www.amnesty.org/russia/
Video: Amnesty International Russia campaign TV spot
http://emedia.amnesty.org/RussiaTVSpot.ram
アムネスティ ロシア関連ニュース
http://web.amnesty.org/library/eng-rus/index
アムネスティ ロシアキャンペーン Justice for everybody
http://amnesty-news.c.tclk.net/maabdrIaaYUKkbduSDIb/
Russia: Released Grigory Pasko reiterates his innocence
グレゴリーパスコ氏解放キャンペーン
http://web.amnesty.org/web/content.nsf/pages/gbrpasko

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*1: CPT=欧州拷問防止委員会

*2: ロシア:人権団体メモリアル(ロシア語) http://www.memo.ru/

*3:プーチンの報道制限法に対する拒否権行使は、国際社会からの批判を回避して国際的地位を確保するため、という分析には説得力があります。だとすれば、国際社会を構成する各国の人民の世論、特に日本を含めた先進国の国民の世論は、ロシア政府の判断を左右する力があるということにもなるでしょう。