読者に包装費用を転嫁するな! 1200万部の自己流通規制

1200万人の読者*1への費用負担のことを少しでも考えていますか?>関係者*2

対象は150種類以上 成人向け図書の封印シール
http://www.sankei.co.jp/news/040607/bun103.htm

日本雑誌協会(雑協)などでつくる倫理対策委員会は7日、店頭で青少年が中を見ることができないよう、出版社が一部の成人向け図書に帯状の粘着シールを張って書店やコンビニに出荷する自主規制策を正式発表した。
最終的な対応は各社に任されるが、対象は月間150−180種類で、約1200万部に上ると同委員会は推計している。
シールを張るのは性的描写や暴力的表現が含まれ「18歳未満には見せるべきではない」と出版社が判断した主に雑誌類。
成人向け図書の規制を強化して改正された東京都青少年健全育成条例の7月1日施行に合わせて封印シールを張った出荷は始まるが、準備期間が必要なため各社の足並みがそろうのは7月下旬以降になりそうだという。

はい。あらためて、表示図書類の販売等の制限について確認しておきましょう。

東京都青少年の健全な育成に関する条例 改正 平成16年3月31日条例第43号
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/index9files/ikuseijyourei.htm

(表示図書類の販売等の制限)
第9条の2 図書類の発行を業とする者(以下「図書類発行業者」という。)は、図書類の発行、販売若しくは貸付けを業とする者により構成する団体で倫理綱領等により自主規制を行うもの(以下「自主規制団体」という。)又は自らが、第8条第1項第1号の東京都規則で定める基準に照らし、青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認める内容の図書類に、青少年が閲覧し、又は観覧することが適当でない旨の表示をするように努めなければならない。
2 図書類販売業者等は、前項に定める表示をした図書類(指定図書類を除く。以下「表示図書類」という。)を青少年に販売し、頒布し、又は貸し付けないように努めなければならない。
3 図書類発行業者は、表示図書類について、青少年が閲覧できないように東京都規則で定める方法により包装するように努めなければならない。
4 図書類販売業者等は、表示図書類を陳列するとき(自動販売機等により図書類を販売し、又は貸し付ける場合を除く。)は、東京都規則で定めるところにより当該表示図書類を他の図書類と明確に区分し、営業の場所の容易に監視することのできる場所に置くように努めなければならない。
5 何人も、青少年に表示図書類を閲覧させ、又は観覧させないように努めなければならない。
(表示図書類に関する勧告)
第9条の3 知事は、指定図書類のうち定期的に刊行されるものについて、当該指定の日以後直近の時期に発行されるものから表示図書類とするように自主規制団体又は図書類発行業者に勧告することができる。
2 知事は、表示図書類について、前条第2項から第4項までの規定が遵守されていないと認めるときは、図書類販売業者等又は図書類発行業者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
(東京都青少年健全育成協力員)
第9条の4 知事は、都民の協力を得て、第9条及び第9条の2の規定による指定図書類及び表示図書類の陳列がより適切に行われるように、知事が定めるところにより、東京都青少年健全育成協力員を置くことができる。


帯状の粘着シールが具体的などんなものか、いまのところまだよくわかりません。
シールをはがすときに表紙が破れるというようなことがあるのではないかと心配する人もいるようです。
費用について調べたところ、1200万枚を一社発注するとして、1色のフォームシールと仮定して積算すると、単価は1枚4円程度。とすると、金額は安くて4800万円。シール張りつけ費用も含めると諸経費込みで5000万円ってところでしょうか。
最終的に誰が5000万円を負担するのか、わかっていますか、雑誌購読者のみなさん?
あなたですよ、あ・な・た! 
値上げとして転嫁されなくても、利益を確保するためページが減ったり、お気に入りの作品の連載が無くなったりするかもしれません。
条例で包装義務が課せられることになったわけですが、包装の費用の捻出は、条例上は販売している各書店・コンビニが負担することになっています。
しかし、大手系列以外の書店ではそのような経費を負担するだけのお金が無い。
仕入れリスクゼロがあたりまえだと勘違いしている甘ったれ書店経営者たち*3は負担するつもりもありません。
となれば、包装しなければならない本は本棚から撤去され、出版社に大量に返品が来ることになります。
しかし、返品されると出版社が困ります。もちろん、読者も、原稿書いてる漫画家その他諸々も。
出版社は書店に包装費用を折半してくれと言う。
書店はムリだと言う。出版社も費用は負担したくない。どいつもこいつも負担回避のことしか考えていない。お話になりません。
というわけで、出版社が本棚からの撤去を阻止するために、自分で包装費用を販売価格に転嫁して捻出し、ナントカしようということになった、ということです。
こういう時こそ出版社は団結して「条例で規制するなら都税で包装費用を出せ!」「出版社は青少年保護のために存在するわけじゃねぇ。強制するなら金を用意しろ」と要求すればいいのに、雑誌協会も倫理対策委員会とやらも要求もせず、「返品困ったねー」「ねー」「なんとかならないかなー」「ならないねー」「費用負担どーするー?」「どうしよーか?」「負担するしかないかなー」「しかないねー」「だよねー」「なんとかならないかなー」「ならないねー」「しょがないねー」「お金どうする?」「どうしよかー」「どうしよー?」「値上しかないだろー」「値上しかないかなー」「だよねー」「しょがないねー」的にウダウダした状況。
結局、財政難の東京都は、青少年健全育成事業の費用を雑誌を買っている購読者に転嫁させることに大成功。クソッタレが! レガァレガァガァガァ(エコー)
 
余談ですが、どこかのコンビニ経営者が図書包装についてなにやら語っております。
「助かった」だそーです。

楽天人生 コンビニ経営者としての雑感と馬券術研究
2004.06.20 成人向け図書の封印シール
http://kn-go.cocolog-nifty.com/kngo/2004/06/post_8.html

正直、どこのコンビニが助かろうが、つぶれようがどうでもいいです。客から見離された店がつぶれるのは市場競争社会における自然の道理。魅力のない商品を置いていない店に客が足を運ばないのはあたりまえの話。
シールが張られることで中身が見えなくなったとしても、たぶん見る人は見るでしょうね。私なら確実にシールを破って中身を確かめてから買います。客なんだから商品を確認して買うのはあたりまえでしょう。
安心してください。シールが破れていても、その本が指定図書でない限りは、罰金は課されません。

───────────

*1:一般名詞の読者。

*2: 関係者にはもちろん東京都庁や条例に賛成した議員を含みます。

*3:そんな書店はつぶれてしまえ!