佐世保同級生殺害事件・マスコミが「求める」情報

佐世保同級生殺害事件の報道の「情報操作」ぶりについての感想や事件当事者に対する評価は、犬山さんのコメントに共感を表明しておきます。
とにかく、いまの時点では、一部のリーク情報だけにクローズアップ&カットアウトされていて、情報の全体像がほとんどわからない状況。
「正確な事実はまだわからない」と報道することこそが「正確な報道」であり、「正確な事実に基いた判断ができない」と評することが「正確な評論」ではないかと。

【犬惑星】 可愛いウサギの歪な壊れ方
佐世保女児死亡① 殺戮リミックス
http://d.hatena.ne.jp/dogplanet/20040607

このリミックスは単なる僕の個人的な悪ふざけだが、今回の報道はこれとまったく同じ手法で情報操作されている。日記の一部を切り取り、「殺しアンケート」のごく一部分をモニターに映し出してワイドショーのコメンテーターは眉をしかめる。今回の場合、事件が発生してからこの記事が書かれるまで、時間はたっぷりあったし、捜査資料自体の分量が限られている。宮崎勤の時みたいに、何千本ものビデオを何十人という捜査員で検索する必要はないのだ。すべてを読むのは無理にしろ、少なくとも新聞記者やコメンテーターならば加害者少女のHPの一部分くらいには目を通していてもおかしくはない。それでもなお「心の闇」だとか「バトルロワイアル」だとか「残虐性」にこだわるのだとしたら、それはもう恣意的な何かがどこかで働いているとしか思えない。逆に、これが単なる報道陣の読み間違いで、読解力の欠如ならば事態はいっそう深刻だ。加害者少女のHPは、事件の全貌を解読するための貴重な資料なればこそ、きちんとした読み込みが必要なんじゃないかと、身も蓋もない正論しか今の僕には言えない。

佐世保女児死亡②③
http://d.hatena.ne.jp/dogplanet/20040608
おそらく消えるクズ書き込み
http://d.hatena.ne.jp/dogplanet/20040609
2004-06-11 佐世保女児死亡④
http://d.hatena.ne.jp/dogplanet/20040611

殺戮リミックス、最高。
ところで、渋井哲也さんが6月12日のメールマガジンで、某新聞社が、チェットを経験した小学生、チャットでバランスをとっている人、チャットのおかげでバランスが崩れた人、チャットの中で別人格を作っている人を取材協力者として募集していると告知していました。

ライタ−兼大学院生のてっちゃんニュ−ス
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000009683
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200406121420000000009683000

【取材協力者募集】
佐世保の同級生殺害事件にからんで、各メディアにコメントしています。チャットやバトロワの影響が指摘されていますが、わたしは、この事件での影響は、それほどではない立場です。
今回の事件は、「インターネット」→「行動」という味方がされていますが、そこまで直接の影響は考えにくいです。ただ、チャットをはじめインターネットにはたしかに、危険な面もなくはありません。
そこで、以下のメディアから取材協力者を探していただけるように、要請を受けました。
 *某新聞社会部
   対象 小学生
   内容 チャット利用の状況
 *ニュース番組
   対象 学生や社会人、主婦(部屋のなかでの撮影が可能な人)
   内容 チャットでバランスをとっている人
      チャットのおかげで、バランスが崩れた人
      チャットの中で、別人格を作っている人
 できれば、早い方がよく、数日中にお返事をください。

てっちゃん@Hatena
http://d.hatena.ne.jp/hatesbtetuya/
てっちゃん@Hatena 青少年
http://d.hatena.ne.jp/hatesbtetuya/searchdiary?word=%2a%5b%c0%c4%be%af%c7%af%5d

こういう時だからこそ渋井さんにはがんばっていただきたいと思いますが、いまの状況だとどう転んでもマスメディアは「インターネットは危険」という結論を前提とした番組や記事を作りそうで、協力すればするだけ悪く転ぶだけなんじゃないかなという気もしなくもありません。
少年審判の中で客観的な事実が明らかになり実質審判の結論が出る頃、みんなが冷静に事実を検証できる状況になって後で検証報道をした方が良いようにも思います。
時流に乗るメディアがあっても良いですが、すべてのメディアが一斉に、っていうのがどうにも気持ち悪くてなりません。時流に乗らないメディア、調査報道を、もっと量的に増やしていかないと。
マスコミが求めている取材協力者が、「チャットでバランスをとっている人 チャットのおかげで、バランスが崩れた人 チャットの中で、別人格を作っている人」であるというのは、実に興味深いです。
チャットの別人格とかでチャット利用者と世間との異質性を際立たせ、チャット利用者やチャット利用者に便宜を与えているチャット運営者をイケニエの羊として取扱い、「チャットを運営する奴らは社会の敵」のような、単純な二項対立構造の中だけで報道しようというメディア関係者の作為性や意図(もしかしたら悪意)が想像できます。
事実の掘り起こしや取材の積み重ねに基く調査報道ではなく、事件を「企画」し、事実のごく一部を「脚色」し、「演出」するエンターテイメントと評するしかない記事や番組が、テレビや一部新聞社では「報道」などと呼ばれている昨今のメディア状況は本当に気持ち悪い。

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