キーワード「劣化ウラン弾」

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depleted uranium weapons ( DU weapons )
放射性重金属を使用した大量環境破壊兵器。1991年の湾岸戦争で米・英軍がイラク軍に対し初めて実戦で大量に使い有名になった。
天然から取れるウランの0.7%がウラン235と呼ばれ、これを抽出して核燃料や核兵器の素材とするが、残りの99.3%がウラン238で、このウラン238がかつて兵器産業にとって産業価値が劣化した物質であった点を踏まえて「劣化ウラン」と呼ばれる。この劣化ウランに、少量のモリブデンチタニウムを混ぜて、高温を発するマグネシウムで焼き固めると金属状に変化する。これを主に戦車の装甲を貫通させる徹甲弾の弾芯に用いたものを「劣化ウラン弾」と呼ぶ。
劣化ウラン弾は、兵器産業の廃棄物を兵器として転用し戦争で使用することで、製造コストと廃棄コストを軽減できる兵器産業上の利点がある。また、通常のタングステン製弾芯を使った弾頭より比重(密度)が高く、1割以上の貫通効果があるとされている。さらに、命中時の摩擦熱により1100℃以上の高温が発生し爆発燃焼し、その瞬間に大量の汚染粉塵が飛散し地域一帯を汚染する効果がある。
劣化ウランは、アルファ線を出すことが確認されている。だが、アルファ線そのものの透過力は数センチであるため、現在の科学的観測技術では被爆の効果を実証的に観測・実証することは難しいとされ、臨床実証研究例が乏しい。
爆発燃焼によって飛散した劣化ウラン弾粉塵の吸引および体内被爆により、劣化ウラン弾粉塵周囲の細胞遺伝子が破壊され、発ガン性が極めて高くなるという説がある。また、鉛やカドミウムのように、重金属としてのウランが体内に取り入れられることによる障害は確実に存在する。
知られているところでは、米陸軍・海兵隊M1A1エイブラムス*1戦車の主砲(120ミリ)、同海兵隊AV-8Bハリアー攻撃機の25mm機関砲、米空軍A10攻撃機の30mm砲などに使用されているが、ある程度の口径があり、火器の形態をした兵器には、どのようなものであれ、劣化ウラン弾が使用されている可能性がある。自衛隊は2003年秋の時点まで劣化ウラン弾保有していたとされている。
原子炉等規制法では、非軍用目的で300グラム以上の劣化ウランを含む特定核燃料物質を使用する場合、政府に使用の許可を得る必要があり、使用条件として管理区域を設定するなどの技術上の基準を満たすことが必要となる。平成7年12月及び平成8年1月、在日米軍は沖縄久米島鳥島射爆撃場で訓練を行い、劣化ウラン弾1250発を使用したことが問題となった。
1996年8月、国連小委員会は、劣化ウランを使用する兵器を核兵器化学兵器と並ぶ非人道兵器として挙げ、賛成15、反対1(米国)、棄権8(日本を含む)により、完全な除去のための対策が必要であると決議した。劣化ウラン弾の使用が、ジュネーブ条約第51条4-5で禁止される無差別攻撃に抵触すると解釈する国際法学者もいる。
2004年、英国国防省は、劣化ウラン弾健康被害予防のため、劣化ウラン弾被弾戦車に遭遇した兵士に対する尿検査を推奨する通達を出した。通達には「あなたは劣化ウランが使用された戦場に派遣されています。劣化ウランは低度ながら放射性の重金属であり、健康被害を引き起こす可能性があります。あなたは任務中に劣化ウラン弾を、劣化ウランを含んだちりにさらされたかもしれません」と明記されていた。
2004年2月、英国エディンバラ年金提訴審判所は、湾岸戦争の際に劣化ウラン弾による健康被害を受けたと主張した退役軍人に対し年金を半額支給した措置について争われた裁判で、劣化ウラン弾による健康被害を公式に認めた。

参考サイト:
http://nbfo.at.infoseek.co.jp/
http://www.cadu-jp.org/
http://members.jcom.home.ne.jp/no_du_sapporo/
http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/Pub/29.html
http://pws.prserv.net/spanglemaker/essays/uran.html/
http://www.jca.apc.org/DUCJ/index-j.html
http://www.tv.cbc.ca/national/pgminfo/du/

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*1:この戦車の砲塔には、劣化ウランで出来た装甲が組み込まれている。