資料:衆院青少年特別委平成12年11月9日会議録「有害情報と少年非行との因果関係を調べよ」

 
「有害情報と少年非行との因果関係を調べよ」と主張していた水島広子議員(民主党)の国会質疑を転載します。
「有害情報と少年非行との因果関係を調べよ」という主張は、そのまま「因果関係は実証されていない」という前提を含んでいることに留意してください。また、水島議員は「単一の価値観が押しつけられるような社会になってしまうと、結局それは、回り回って子供たちに悪影響を及ぼしていく」と述べている点についても留意してください。
 

衆議院会議録情報 第150回国会 青少年問題に関する特別委員会 第2号
平成12年11月09日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/150/0073/15011090073002c.html
http://www.mizu.cx/sitsumon/seisyonen/seisyonen001109.html

政府参考人総務庁青少年対策本部次長)*1川口雄君
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○水島委員 民主党水島広子*2でございます。
今の馳議員*3の御質問でも、ガイドラインづくりなどに関しても、この一連の取り組みが極めて消極的であるという点には私も全く同感でございます。
それと同時に、先ほど馳議員は、この領域は科学的にその根拠を示したりデータを集めたりすることが非常に難しいという趣旨のことをおっしゃっておられましたけれども、ただ、私は、有害環境、有害情報と言うのであれば、やはり、何が有害であって、それがどのような害をどの程度及ぼすのかということに関するデータは、地道に集めていく必要があると思っております。
この日本におけるさまざまな政策決定の場にそのような基礎的なデータが余りにも欠けているということに、私は常々驚きを持って見ておりまして、やはり何か法律をつくったり法律を変えようというときには、それをきちんと説明するにふさわしい、十分でなくても、その方向性を示すような根拠となるようなデータを持つべきであると思っております。
そこで、私は、まず初めに、この有害情報に関するデータにつきまして、先ほども多少御質問はございましたけれども、改めて確認をさせていただきたいと思います。
有害情報が精神面に及ぼす影響、あるいは有害情報と問題行動との関係についての国内での研究は、どの程度今までになされているでしょうか。それはもちろん、相関関係を調べるものと因果関係を調べるものがあると思いますけれども、それぞれについて、今まで国内で行われている研究についてお答えをいただきたいと思います。
○川口政府参考人 私ども総務庁の青少年対策本部で行った結果につきまして、幾つかございますけれども、御紹介いたします。
私ども、平成十年に、非行原因に関する総合的調査研究*4というのを行いました。この中では、非行群というのとそれから一般の少年、非行群というのは、補導された少年とかあるいは少年鑑別所に収容された少年、そういった非行少年と、それから補導歴のない一般の少年と、こういったものをグループに区分しましていろいろと分析した結果、非行群の方が有害情報に触れた程度が高いということが確認されております。
先ほども御紹介申し上げましたけれども、ポルノ雑誌とかアダルトビデオを見たことがあるという中学生は、ごく普通の一般の中学生では二七%、非行の中学生では五七%程度。それから、高校生で比べてみますと、一般の高校生で見たことがあるというのが五四%、それに対して、非行歴のあるとかあるいは鑑別所の高校生につきましては七一%ということで、明らかに差が出ております。これは、いわゆる相関関係というふうに学者の世界では言っておりますけれども、そんな関係がございます。
そのほかにも、私どもがやった諸調査の中では、青少年とテレビ、ゲームなどに係る暴力性に関する調査*5、これは平成十年の十月から十二月にかけて行いました。
これは、専らテレビとかあるいはゲームの暴力場面、暴力場面の定義もいろいろとありますので、この調査では一定の、人を殴ったりしたらこれはもう暴力だというふうに、通常の暴力とはちょっと離れるかもしれませんけれども、そういったものを含めて調査しました結果、テレビの暴力シーンを一生懸命見ている子供ほど非行、不良行為を経験している者が多い、あるいは、そういったテレビとか暴力シーンを見た子供ほど暴力行為の経験が多い、そんな結果が出ております。
例えば、この調査によりますと、友達と酒やビールなどを飲んだという子供でございますけれども、テレビの暴力場面を余り見ない子供、それにつきましては六%程度が酒とかビールを飲んだことがあるというふうに答えております。それに対して、テレビの暴力シーンを多く見た子供、そういったものは一四%が飲酒の経験があるというふうに答えております。いわゆる相関関係が示されたものというふうに私どもは理解しております。
○水島委員 その中で、例えば強姦を犯して捕まった子供が、それまで強姦や性暴力を肯定するようなメディアにどの程度さらされていたかとか、そのような個別の調査はされているでしょうか。
○川口政府参考人 そこまでの区分はしておりませんで、私どもが選んだのは、少年鑑別所とかあるいは補導歴のある子供ということで、そういった個々の、こういった犯歴のあるという調査はしておりません。
○水島委員 今御紹介いただいたデータというのは、御指摘のように、あくまでも相関関係を示すものであって、相関関係を示すデータが得られたら、次は因果関係を調べていくというのが常道であると思いますけれども、今後、因果関係を調べていくためにどのような研究を今計画されているのか、何を知るためにどのようなデザインで調査をしていこうとされているのかを教えてください。
○川口政府参考人 私どもとしましては、いわゆる有害な環境というものは青少年の生育に影響を及ぼすんだ、こういったことを考えておりますので、このほかにも、いわゆる有害と考え得る環境についてもいろいろ調査を進めていきたいと思っております。
ただ、先ほど先生がおっしゃった、相関関係が済んだから因果関係ということでございますけれども、因果関係というのは本当に実験でもしないとわからない。そうすると、そういったような発育途上にある子供について実験するのかとか、いろいろな問題がありますし、学問的にもなかなか難しい問題だろうなというふうに私どもは感じております。
私ども、相関関係があるというこういった調査結果がありますし、また、相関関係があるということは、これは因果関係を否定するものでは当然ありませんので、相関関係ということで何らかの影響があるんじゃないかというふうに思っております*6けれども、いずれにしましても、こういったいろいろな青少年の有害情報と行為、行動の関係にどんなものがあるか、今後も引き続き調査を進めたいと思っております。
○水島委員 今、因果関係は実験でもしないとわからないというお答えだったんですけれども、実際には、大規模な、子供たちをランダムに選びまして、それでプロスペクティブに前向きに一定期間追跡していくことによってある程度の因果関係というのは得られるというのが、ある意味では常識だと思いますけれども、そのような常識を知るためにも、私は海外での先行研究というものはきちんと調査すべきであると思っております。
先ほどのお答えでは、総務庁としては国内の調査だけをやっているのであって海外のことについてはわからないというようなお答えを馳議員に対してされていたように思いましたけれども、実際に、海外の今までの学術研究をどの程度集めて、そこからどのような結論あるいは推測を導き出されているのかを簡潔にお答えください。
○川口政府参考人 私ども、ある意味では手薄というおしかりを受けるかもしれませんけれども、私どもも限られた人員の中で一生懸命やっておりますけれども、海外の情報につきましては十分把握はしておりません。
国内に関しましては、比較的予算的にもそんなにかかりませんので、いろいろな情報を集めて、私どものやった調査結果もありますし、あるいはそのほかにも、各都道府県でやっている調査でありますとか、いろいろな関係団体でやっている調査、あるいは学者の方々がやっている調査、そういったものがございますので、私どもは、そういったものを取りまとめまして、その上で、どういう施策が講じられるかということも検討していますし、また、そういった調査結果をまとめまして、関係省庁あるいは関係団体等にも送付しております。
○水島委員 今、国内のものであればお金がかからないというお答えでしたけれども、海外の今までの学術研究で論文になっているものにどんなものがあるかを知るためには、もうインターネットの時代ですから、人一人いれば一瞬にしてそれを調べることができるわけです。お金がない、人手がないということは私は全く言いわけにならないと思いますので、因果関係は調べることはできないなどと情けないことをおっしゃらないで、まず、海外ではどのようなデザインで研究が行われてきたかということをよく勉強していただきたい。
何といっても、そのような前向きの大規模な調査が全く欠けているというのが日本の一つの大きな欠点であると思います。病気の有病率を知ることもできない。また、どのような習慣がその後生活習慣病につながっていくかということも、日本人をきちんとしたデータとして使っていくこともできない。ですから、私は、もうこれは省庁の枠を超えて、きちんと、大規模な、子供たちなら子供たちを囲い込んで、そして長期間にわたって、どういう習慣のあった子供がその後どういうふうになっていくということを調査していくのは政府にしかできないことではないかと思っておりますので、ぜひ、外国ではそのような大規模な研究をどのように行ってきたかということをよく調べていただいて、これから研究にも、また、郵政省の方でも予算を要求されているようでございますけれども、そういう国民の税金から賄われる大切な研究ですので、ぜひ一円たりともむだにしないように、しっかりとした成果を上げていただきたいと思います。
さて、この件を今伺ってまいりましても、メディアが子供たちに与える影響が社会的な話題になってから随分久しいと思います。今回調べましたところ、国会でも一九七〇年代には既にテレビと子供の関係について取り上げられているわけです。このような状況にありながら、自国内の研究はもちろんのこと、海外における状況も調べていないというのは、私は、一種の行政の怠慢と言われても仕方がないのではないかと思います。先ほどの、ガイドラインすらつくっていないということに関してもそうでございますけれども、どうもこの件に関する危機感が随分足りないのではないかというような印象をどうしても持たざるを得ないと思います。
さて、日本の国内の状況はそうでございますけれども、有害情報に関する海外における法制化の状況について、また、有害情報というものを海外ではどのように定義をしているかということについて、簡潔に教えていただきたいと思います。
○川口政府参考人 私ども、平成十年におきます調査がございます。若干日時がたっておりますけれども、平成十年の、諸外国における青少年施策等に関する調査*7というものによりますと、アメリカとかイギリスあるいはフランス、ドイツなどの制度につきましては、出版物とかテレビ放送等の各メディアを規律するそれぞれの法律あるいは法令や自主規制などによって青少年保護対策がとられているというふうに承知しております。
先ほど先生がおっしゃいました有害情報という概念につきましては、こういった国々につきましては、それぞれの法令とか、あるいは業界で行っております自主規制の中で決められているようでございます。
例えば、ドイツの有害図書規制法*8という個別法がございますけれども、この中では、児童とか少年を道徳的に危険に陥らせる性質の文書、こういったものを青少年有害文書と規定しまして、こういったものについては、児童、少年への販売、陳列、貸し付けなどの行為を禁止しているというふうに承知しております。
○水島委員 平成十年というと少し前になりますので、ぜひ直近の海外の情報を早急に調べていただきまして、そして、私たちが、どのような規制が必要であれば規制をしていくべきなのか、どのようなシステムを採用すれば自主規制がうまく動くのか、そのあたりについて御検討をいただきたいと思います。
 ただ、いずれにしましても、日本では、この点、先ほど申しましたように、随分と長いこと危機感が持たれずに野放し状態になってきたというような印象を持っておりますけれども、海外では、表現の自由という問題をわきまえながら、それでも子供たちのために一定の努力をしてきたという足跡がうかがわれると思います。日本も、もう遅きに失した感もございますけれども、本当に今からでも早急に取り組んでいくことが必要であると思います。
 さて、その日本の現状の一つでございますけれども、先日、ある方からお手紙をいただきました、その方の高校生のお嬢さんが読んでいたアンアンという雑誌に何かこんな広告が載っていたと。これは伝言ダイヤルの広告でございます。アンアンという雑誌は、特に成人向けの雑誌でもございませんし、普通に中学生や高校生がおしゃれのために買ったりする雑誌なわけです。
 その雑誌の中に、このような伝言ダイヤルの広告が載っておりまして、確かに、下を見ると小さな字で十八歳未満の方お断りと書いてございます。でも、このお母さんが試しにこの一つに電話をかけてみたところ、何と、割り切ったおつき合いとか、援助でとか、堂々と中高生対象に金額を提示して交際を募っているものが多かったという、そのような報告をいただきました。
先ほどから青少年向けのメディアというような話は出てきているわけですけれども、子供というのは別に青少年向けのものだけを読むわけではなくて、その辺にある、だれでも目にすることのできるメディアに子供たちは常にさらされていると考えるべきでありまして、まさにこのアンアンに伝言ダイヤルの広告が載っているというのがその一つの代表的な事例ではないかと思いまして、今御紹介させていただいたわけです。
 まず、今の日本においてアンアンにこのような広告が載っているということがなぜ起こるのか、これは自主規制というもののすきをついて起こった問題なのか、あるいは現在は全く規制対象になっていないのか、そのあたりについて、今の日本の状況を踏まえて御説明をいただきたいと思います。
○川口政府参考人 アンアンの事例を例にとってお尋ねでございますけれども、一般的に言いますと、刑法に触れるようなものが一方にございますけれども、それは日本の法律では刑法等で取り締まっております。しかしながら、それ以外の一般的なものにつきましては、現行法上、法制度はございません。
 そして、私ども、そういったことでいいのかということが一つありますし、そうすると、現行法制度上何ができるか。例えば憲法のお話もございますけれども、私どもの立場としては、自主規制をお願いします、こういったこと、それからほかにも、例えば住民運動をもっと活発にしていくとか、あるいは現行の法令で違反するものは取り締まるとか、こういったことが挙げられますけれども、一般的に言いますと、まず自主規制でやってほしいということでやっております。
 そして、御指摘の点につきましては、多分、日本雑誌広告協会という団体の所管というか、そこに関連していることだと思いますけれども、日本雑誌広告協会におきましては、雑誌広告の掲載基準というものを定めているというふうに伺っております。その中で、「風紀に関する広告」で、風紀を乱す広告は掲載しない、特に青少年の育成に害を与えるものであってはならないというようなことを定めておるように伺っております。
 現行法制度上では、ある意味では、こういうように自主規制をつくってくださいという、一種のお願いといいますか、そういったことでやっております。確かに、そういったいかがわしいものが一般の青少年の目に触れるということは余り好ましくないことだろうとは思いますけれども、制度上そんなふうになっております。
○水島委員 自主規制をお願いする場合であっても、具体的に何も提示しないで自主規制でお願いしますと言ったら、判断する側もどうしたらいいかわからないと思うのですが、その場合にどのような自主規制をお願いされているのでしょうか。
○川口政府参考人 私ども、メディア等に対するいろいろなお願いとか、大分昔から、昭和二十年代ぐらいからやっておりますけれども、各団体も、いろいろな団体がありまして、そこでいろいろな自主規制を行っております。
 私どもの立場は、青少年に害を与えるものはやめてほしい、そういったことで自主規制してほしいというふうな一般的なお願いはしております。
○水島委員 そうしますと、特に青少年向けのメディアでは青少年に害を与えてくれるなということではなく、だれでも目にする可能性のあるメディアに対して青少年に害を与えないようにということをお願いしているというふうに理解してよろしいのでしょうか。あるいは、青少年を守るといった場合に、それは青少年向けのメディアという世界に限定されて今まで議論されてきたのでしょうか。
○川口政府参考人 私どもの立場としましては、有害な社会環境というのは青少年の生育に悪影響を及ぼす、こういった立場からやっておりまして、基本的には、いろいろな団体でそれぞれ自主規制というものを持っておりまして、その励行をお願いしますということでやってきておるわけでございます。
 他方、一般的に言いますと、いわゆる有害図書とかテープにつきましては、長野県を除く各都道府県では条例を設けて、有害図書として指定されたものは、条例上、青少年には見せないように区分して陳列しておくとか、青少年には売ってはだめだ、こんな規制をかけている都道府県もございます。
○水島委員 何か、お答えを聞けば聞くほど、やはり何らかの取り組みを早急にしなければいけないのではないかという気持ちが私も強くなってまいるわけです。
ただ、この領域は本当に、ともすると危険なことになってしまう領域であると思っております。情報を規制するということになってまいりますと、それが公権力による検閲というような形をとってしまうと、当然、表現の自由を脅かすことになりますし、また価値観の単一化につながっていくものであると思います。
価値観が単一化されていくと、やはり心を病む人がふえてくるわけであって、例えば子供たちに対して有害環境が悪影響を及ぼすのと同じように、最近得られたデータでは、親がうつであるということが子供たちの発育に重大な影響を及ぼすということが示されております。
社会全体が息苦しくなって、表現の自由が認められなくなって、単一の価値観が押しつけられるような社会になってしまうと、結局それは、回り回って子供たちに悪影響を及ぼしていくということがここのところの理解であると思います。
ですから、本当にこの領域は、多様な価値観を表現する自由を守っていくということで、極めて慎重に、かつ対象を限定して、しっかりとした合理性に基づいて行っていかなければいけないものであると思います。
また、子供たちの教育という観点からいきましても、単一の価値観をただ粛々として受け取るような子供を育てることが私たちの目標ではなくて、やはり多様な価値観を受け入れることができる、また、メディアリテラシーの考え方もそうだと思いますけれども、自分の頭で考える、自分でその問題に対してどう対処していくかを自分で考えられる子供たちを育てていくということが私たちの目標であると思いますので、本当にここは、ただ規制をすればいいという考え方ではなく、子供たちの能力を伸ばしていくような形での取り組みが必要になってくると思います。
そのような観点から、今私たち民主党でも、子供たちを有害情報から守るための法律を準備しているところでございます。

ただ、なぜそれでも今規制が必要かということに関しては、今までもずっと議論してきたことが根拠となっているわけですけれども、またもう一つ、現在は、親が子供に適切な情報を与えたいと思ったときに、それを判断するような情報が全くないというのが現状でございます。
先ほど、その格付のガイドラインもまだ準備されていないということであったわけですけれども、青少年と放送に関する調査研究会の委員も務められておりました岩男寿美子先生は、放送事業者は自主的に批判にこたえるべきであり、時間帯の規制だけではなく、番組に関する情報を提供する責任がある、各番組のプロデューサーが、制作した番組にどのような暴力あるいは性描写がどのような文脈でどの程度含まれているか、またその番組は小中学生にふさわしいと考えるかどうかを二百字程度にまとめて公表するという方式を提案されております。
この方法であれば、画一的な基準によらず、国家による検閲という形もとらずに、メディアと視聴者の双方向のコミュニケーションができるという点でも、極めて有用な提案であると思っております。また、この方法であれば、格付のガイドラインづくりを待つこともなく、やる気になればあすからでも始められる方法であると思います。
 この提案は議論の経過で採用されなかったということでありますけれども、なぜこの提案が採用されなかったのか、その経緯を御説明いただきたいと思います。
○金澤政府参考人 今先生がおっしゃいましたような、さまざまなメッセージを提供していけばどうかというお話でございますが、現実にそれをやり始めている局がございます。
やらないということではなくて、まだ非常に不十分な段階ではございますけれども、この番組にはどういう暴力場面が含まれているかということを番組宣伝のときに必ず明示していくとか、番組の冒頭に明示するとか、そういうことを行っている局があるということでございます。
○水島委員 引き続き先ほど来と同じような御回答しかいただけなかったわけですけれども、今私が伺いたかったのは、なぜその提案が採用されなかったのかという理由を伺いたかったわけで、現在どの番組がどういうことをやっているかということではなかったわけです。ただ、今のようなお答えがずっと続いていて、結果的に、一般の市民から見て自主規制というものが十分な効果を上げていない。
今小さな子供を持つ親たちからすれば、十年後にそれが完成したとしても遅過ぎるわけです。もう本当に今すぐに何とかしてほしい問題でありながら、自主規制が十分な効果を上げていないように見える。そして、それに対する行政の対応も、今のような極めて消極的な印象がある。そのような状況の中で、メディア規制に関心を持つ人の数が非常にふえてきているように思っております。
先ほど申しましたように、この領域は本当に、ともすれば民主主義を後退させてしまう危険性もはらんでいる領域でありますので、ぜひ民主主義が日本で後退することがないような、本当に、きちんとしたモラルを持った大人たちが、きちんとした形で子供たちを守れるような取り組みを早急に進めていかなければ大変なことになってしまうのではないかという危機感を持っております。
そして、私は、この件についていろいろと調べ始めましてから、何かを質問させていただくと、これは郵政省だとか、これは総務庁だとか、例によってそのような担当省庁があるわけですけれども、この有害環境と青少年の関係というのは決して縦割りで語れるものではなくて、きちんと包括的に取り組んでいかなければいけない重要なテーマであると思っております。
改めてお伺いしたいのですけれども、今まで各省庁では、どのような組織図で、だれが責任を持って取り組んでこられたのか、また、だれに聞けばこの問題を包括的に語っていただけるのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。
○川口政府参考人 現在の行政組織というのは、各省庁がいろいろな仕事を分担してやっている、そういったことで国家行政組織法というのはでき上がっております。
ただ、一方においては、確かに、各省庁にまたがっていろいろな大事な問題であるとか、そういった問題につきましては、いろいろなレベルで調整が行われております。先生の御指摘の有害なメディアの問題につきましては、私ども、青少年の健全な育成を図る、現在の青少年対策本部がございますけれども、政府全体の青少年行政、青少年施策が統一を持って総合的に進められるようにということで、私ども、全体の立場で調整しまして、先ほども申し上げましたように、青少年育成要綱というものをつくりまして、そこで調整をやっているわけでございます。
いろいろな分担所掌、これはこういう省庁がやっているんだということは要綱の中で明示しておりますけれども、一カ所に聞けばすべてがわかるというような仕組みになっておりません。各省庁におかれましてもまた別な行政目的があって、その中の一環として青少年関係の施策もやっているということでございますので、私どもは、青少年が健全に育成するように、ほかの目的を持った施策であっても青少年の健全育成という目的にも合致した政策をやってもらう、こういった立場でございますけれども、そんなことになっております。
○水島委員 日本の子供たちをきちんと育てていくというのは、私はもう重大な行政目標であると思っておりますので、各省庁の行政目標の隅っこに子供がいて、それが切り張りで何かされているというような状況ではなくて、子供というものをきちんとメーンに据えて、そのために各省庁が知恵や人手を出していくというような体制をぜひ早急につくっていただかないと、日本はもうこれだけ諸外国に比べておくれをとっているわけですから、ここからそのおくれを取り戻すというのは大変な努力が必要だと思います。
もちろん、今まで海外で行われた先行研究ですとか、海外でどのような制度がどのように機能したか、そのような情報を手に入れられるという点では、ある程度楽かもしれません。ただ、いずれにしても、社会的な関心を一つにまとめて、またこの領域できちんとした取り組みをしていくためには本当に大きな努力が必要であると思いますので、ぜひ、どこの省庁が何だというような縦割りではなくて、子供のことを本当に大切に据えるような組織図をきちんとつくり直していただきたいと要望いたします。
(以下略)

 
この会議録で答弁に立っていた川口雄総務庁青少年対策本部次長は、平成11年7月から青少年対策本部次長に在籍し、その後本部次長職のまま内閣府国際平和協力本部事務局参事官、総務省日本学術会議事務局長を兼任し、平成15年1月20日に辞任した後は、 平成15年2月3日に国家公務員共済組合連合会の常任幹事に天下っています。任期は平成18年1月31日まで。*9
ちなみに国家公務員共済組合連合会幹事の報酬は、平成15年12月現在、月額82万4千円、ボーナスは年3.30月分ですので271.92万円、年間合計1260万円余となっています。仮に任期満了で再任せず退職すると仮定すると、退職時には退職金として247万円+αが渡される予定です。*10


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このエントリーは2005.4.11に掲載しました。
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*1:総務庁青少年対策本部次長は、青少年政策を所管する官僚のトップ。現在は内閣の主要大臣で構成される「青少年育成推進本部」という組織が政治部門になっており、行政部門は総務庁青少年対策本部の行政権限を引き継いだ内閣府共生社会政策統括官が行政部門のトップになっています。http://www8.cao.go.jp/youth/index.html

*2:水島広子衆議院議員 http://www.mizu.cx/

*3:馳浩衆議院議員(自民党) http://www.hasenet.org/

*4:非行原因に関する総合的調査研究報告書 /総務庁青少年対策本部/1990 http://opac.lib.city.kobe.jp/cgi-bin/WebOpac/getdetail.cgi?kobeid=CT:0306643177&pvolid=PV:0005106040&type=CtlgBook&opt=

*5:内閣府共生社会政策統括官 青少年に関する調査研究等 http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu.htm H10年度青少年とテレビ、ゲーム等に係る暴力性に関する調査研究 平成11年9月発行 概要 http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/tv/tv.htm

*6:因果関係についてはあえて調べず、因果関係について科学的な実証をあいまいにしたまま相関関係だけで規制を実施できるという態度を崩さないあたりに、内閣府(旧総務庁)の戦略があります。水島議員はそこを崩そうとしている点で社民党共産党よりも革新的ではあります。旧総務庁は、因果関係をあいまいにしたまま相関関係で規制した方が包括的に広く自己規制を求めることができるので結果的に規制効果の範囲は広くなると考えている一方、水島議員は因果関係をはっきりさせれば業界の自主規制よりも強い規制でも憲法との整合性がとれると考えているようです。政府サイドは規制の広さを、水島議員は規制の強さを求めているという点で、相違はあれど規制を求めている点では一致しているという見方もできます。規制の実効性という点では、トータルでは政府の広く包括的に規制していく方法論の方が規制の実効性はコストパフォーマンスは高いと思われます。

*7:諸外国における青少年施策等に関する調査。総務庁青少年対策本部『諸外国における青少年施策等に関する調査研究報告書 −有害環境、幼児虐待及び児童買春からの青少年保護を中心に−』(1998年)、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、タイ、オランダ、スウェーデンの7ヶ国の調査がある。 報告書は青少年情報センターで貸し出しています。http://www8.cao.go.jp/youth2/library/t010104.html

*8:ドイツ連邦共和国未成年者有害メディア審査機関 http://www.bundespruefstelle.de/ ドイツの有害図書規制法については、2004年10月畔上泰治人文社会科学研究科助教授『ドイツにおける青少年保護政策−青少年有害メディア審査機関の決定事例を中心に−』概要 など参照。http://csc.social.tsukuba.ac.jp/pt_semi_j_041029.htm

*9:平成15年12月25日総務省 平成15年度再就職状況の公表について http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/pdf/031225_3_a.pdf 国家公務員共済組合連合会 (KKR) http://www.kkr.or.jp/ 国家公務員共済組合連合会役員の状況について http://www.kkr.or.jp/desku/soumu/yakuin16.8.1.pdf

*10:役員の給与等 http://www.kkr.or.jp/desku/soumu/quyo15.12.01.pdf