総務省不祥事:家計消費状況調査公表先送り:選挙の争点隠し?

麻生太郎総務大臣
総務省が「家計消費状況調査」の公表先送りしました。この動きは、あやしすぎます。
発表では、調査委託先の「新情報センター」が回収率をあげるために焦って回収先ではない家で調査していたそうですが、ほんとに「新情報センター」だけの問題なんでしょうか? 家計消費状況調査の確報(確定統計)は“総選挙投票後”に公表の見通しとのことですが、確報公表の時期を投票後に先送りすることによって“家計を選挙の争点にさせない”ということが、今回の処分の本当の意図なのではありませんか?
速報によると、家計消費は実質4.2%の減少となっており、消費が冷えこんでいます。
 

総務省統計局
平成17年9月1日
家計消費状況調査及び家計消費指数の公表延期について
http://www.stat.go.jp/data/joukyou/enki.htm

総務省が実施している家計消費状況調査について、調査の実施における適切性について改めて確認する必要性が生じたことから、確認作業が完了するまでの間、以下の同調査及び同調査結果を用いて作成する家計消費指数の結果の公表を延期いたします。
   7月分速報(9月6日公表予定)
   7月分確報(9月13日公表予定
1 経緯及びこれまでの対応
「家計消費状況調査」の実施の委託先である社団法人新情報センターにおいて、日本銀行から受託した「生活意識に関するアンケート調査」で不正調査が行われていたことが8月5日に発覚しました。
このため、総務省においても、同日、8月12日公表予定であった家計消費状況調査及び家計消費指数の6月分確報の公表を延期するとともに、家計消費状況調査が適切に行われているかの監査を同法人に指示し、担当部局においても直接調査世帯に対する確認を行うことといたしました。
本年8月末までに調査世帯から確認できた範囲で、調査が正しく行われていない可能性がある世帯が存在することから、引き続き、全調査客体に対する確認を早急に行うよう、改めて新情報センターに指示を行ったところです。
上記確認作業は9月中旬までかかる見込みであることから、この確認作業が完了するまでの間、7月分の家計消費状況調査の結果及び家計消費指数の公表を延期することといたしました。
2 今後の予定
今回公表を延期する家計消費状況調査の結果及び家計消費指数については、上記の確認完了後に、改めて正しく調査された調査票のみを用いて再集計し、公表する予定としています。
総務省としては、今後、新情報センターに対する指導の強化を一層図るなど必要な措置を講じ、再発防止を図るとともに、家計消費状況調査の円滑な実施に万全を期してまいります。
(連絡先)
統計局統計調査部消費統計課
高見課長、能登統計専門官
電話:03−5273−1171

 
で、下記が遅れて公表された統計情報(の速報)。
 

家計調査報告
(二人以上の世帯(農林漁家世帯を除く))
―平成17年7月分速報―
全世帯結果
平成17年9月6日公表
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/zen/index.htm

今月の動き
 

< 全世帯 >消費支出は,1世帯当たり293,839円
前年同月比 名目4.0%の減少  実質3.7%の減少
前月比(季節調整値) 実質4.2%の減少
 
今月の結果
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/zen/pdf/fies_mr1.pdf
統計表
表1 主要家計指標−全国(全世帯・勤労者世帯・勤労者以外の世帯)
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/zen/zuhyou/fies_t1.xls
表2 1世帯当たり1か月間の収入と支出−全国(全世帯・勤労者世帯)
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/zen/zuhyou/fies_t2.xls
付表1 消費水準指数−全国(全世帯)
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/zen/zuhyou/f1.xls
付表2 主要項目の季節調整値−全国(全世帯)
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/zen/zuhyou/f2.xls
境界値(全世帯・勤労者世帯)
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/zen/zuhyou/kyou-x.xls

家計消費状況調査
http://www.stat.go.jp/data/joukyou/index.htm

 
関連報道
 

Googleニュース検索「家計」
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不正判明で世論調査訂正 内閣府、委託業者指名停止
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050905-00000204-kyodo-pol

内閣府は5日、7月に発表した「地域再生に関する特別世論調査」で、調査員が本来の対象者ではない自分の知人から回答を得るなど不正なデータ収集があったと発表した。一般入札で調査を受注した「新情報センター」(東京都渋谷区)の調査員による行為で、有効回答2108人のうち、557人分の調査結果を不適切と判断した。
同社は日銀の生活意識調査や総務省の家計消費状況調査、家計消費指数でも不正が相次いで発覚している。
内閣府は新情報センターを8月8日から今月7日までの指名停止処分とした。再発防止策の提示を求めるとともに、損害賠償を求める方針だ。
共同通信) - 9月5日21時50分更新

消費者態度指数2か月ぶりに改善、家計調査はマイナス
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20050906i415.htm

内閣府が発表した7月の消費動向調査によると、今後半年間の消費意欲などを示す消費者態度指数は、2人以上の一般世帯で前月比1・5ポイント上昇の48・1となり、2か月ぶりに改善した。個別項目では「暮らし向き」が前月比で1・7ポイント高い46・9となるなど、4項目すべてが前月比で改善した。
総務省が発表した7月の全世帯(2人以上の世帯)の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出額は29万3839円で、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比3・7%減と、4か月連続でマイナスとなった。

 
読売の「改善」報道は、半分誤報です。
消費者態度指数というのは50ポイント未満が減少、50ポイント以上が増加という意味ですので、46.6ポイントから48・1ポイントになったということは“悪化が多少減速した”にすぎず、現在も悪化し続けているということがはっきりしただけです。同様に暮らし向きの意識態度指数が45.2ポイントから46・9ポイントになったのも、“悪化が多少減速した”にすぎず、現在も悪化し続けているということになります。
 
マスメディアには、議題設定効果という世論操作機能があります。情報源である統計情報の公表を先送りすれば、その情報に関する議論は議題設定効果により先送りされます。
家計統計情報の公表を先送りすれば、先送りした期間は家計が選挙の中心争点にはならなくなり、家計以外のことが選挙の中心争点になる可能性があります。
 
以下、不祥事を起こしたとされる新情報センターの情報。
総務省で統計調査の発注を管理していた官僚たちが天下ってます。
予算書によると今年は14.9億円(前年度2千万円増)を受注する見込み。
 

■新情報センター
http://www.sjc.or.jp/

【郵便】〒150-0013   東京都渋谷区恵比寿1-13-6
【電話】0120-87-5231(フリーダイヤル)

内閣府大臣官房政府広報室の世論調査に関するお詫びとご報告
http://www.sjc.or.jp/owabi/index.htm

内閣府大臣官房政府広報室の世論調査に関するお詫びとご報告
平成17年9月6日
社団法人 新情報センター
会長 永島泰彦
内閣府大臣官房政府広報室から受託した「地域再生に関する特別世論調査」、「食育に関する特別世論調査」の実施に際して、標本の一部で調査員による不適切な収集が行われましたことを、深くお詫び申し上げます。この件は先般の日本銀行調査の問題を受けて、同時期に実施した標記調査を現地調査により監査した結果判明したものです。
(略)
銀調査に関わる社内処分について
平成17年9月1日
社団法人新情報センター
会長 永島泰彦
日本銀行から受託した「生活意識に関するアンケート調査(第23回)」の実施に関わる不祥事に対し、あらためて深くお詫びすると共に、社会に与えた影響の重大性、会社に生じた損失等を勘案し、以下のとおり社内処分を決定し、同日付で実行いたしました。
・会長及び事務局長は月額報酬の10%減額を当分の間
・管理部長及び企画部長は他部署に降格のうえ月額報酬の5%減額を当分の間
・実施担当者は降格のうえ他部署に異動
(略)
経緯の説明
尚、新聞等の発表では当初の結果から約1/3のサンプルが不正と受け取られかねない表現もあり、ここにこれまでの経緯を簡略に説明させていただきます。
7月5日に発表された調査の概要は次のとおりです。
   調査時期:平成17年6月3日(金)〜13日(月)
   調査対象:全国の満20歳以上の個人
   標本数 :4,000人(有効回答数2,997人(回収率74.9%))
   抽出方法:層化二段無作為抽出法
   調査方法:調査員による訪問留置法
この調査の回答者の中で調査結果を希望する約1000名の方に、結果レポートを発送いたしました。そのうちの一人から「自分は協力していないのに、レポートが送られてきた」という連絡が日本銀行に入り、調査員による不正が判明しました。また、当社担当者が回収率を気にするあまり、一定の回収率に達しない地点に対して現地リスティングによる補充を行っていました。この補充方法は、今回の調査仕様に違反するものです。
その後、日本銀行から徹底調査を求められ、結果として、回答者全数に監査を行いました。具体的には、まず、回答サンプルについて電話番号が判明できた約63%に対して電話監査を、さらにその後、電話監査できなかった対象サンプルに対しては、調査員を替えて現地調査による監査を実施しました。この両監査の結果、2010名の対象者から、協力したとの確認を得、そのサンプルのみで再集計したものが8月5日に発表されました。
その集計結果は、7月5日の2997サンプルから987サンプルを削除したものとなりましたが、その内訳は次の通りです。
1)調査対象者本人が回答していないデータやその疑いが残るデータ(235件)
(対象者本人が回答への協力の事実がないもの、対象者本人以外が回答したもの、対象者の回答の真正性を合理的に証明できないものなどに分けられます。)
2)標本の補充に当たって、標本抽出の無作為性が損なわれるような取り扱いが行なわれたデータ(374件)
3)悉皆調査時に連絡が取れなかった先など、適切性が確認できなかったデータ(378件)
(現地調査で訪問できなかった若しくは訪問しても留守であったものです。)

会社概要
http://www.sjc.or.jp/pro/pro.htm
定款・決算書類等(PDF形式)
http://www.sjc.or.jp/houkoku/houkoku.htm
(02)役員名簿(平成17年度) [8KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_02.pdf

新情報センター役員名簿平成17年6月1日現在 天下ってるなぁ。。。

(03)社員名簿(平成17年度) [7KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_03.pdf
(04)事業報告書(平成16年度) [10KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_04.pdf
(05)収支計算書(平成16年度) [12KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_05.pdf
(06)正味財産増減計算書(平成16年度) [8KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_06.pdf
(07)貸借対照表(平成16年度) [8KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_07.pdf
(08)財産目録(平成16年度) [8KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_08.pdf
(09)事業計画書(平成17年度) [10KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_09.pdf
(10)収支予算書(平成17年度) [12KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_10.pdf

予算書
受託事業特別会計
(平成17年4月1日より平成18年3月31日まで)
事業収入 調査収入 
算額 1,490,000,000
前年度予算額 1,470,000,000
増減 20,000,000

(11)国からの補助金等全体の金額及び年間収入に対する割合(平成16年度) [7KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_112.pdf

(平成16年度決算ベース)
○国からの補助金等全体の金額 (B) 120,658 千円
○法人年間収入(前期繰越金を除く) (A) 1,486,673 千円
(B)/(A) 8.1 %

(12)補助金等支出明細(平成16年度) [9KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_122.pdf
(13)役員功労金規定 [8KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_13.pdf
(14)役員報酬規定 [8KB]
http://www.sjc.or.jp/houkoku/h16/H16_14.pdf

役員報酬について
平成16年3月25日会長決裁
社団法人新情報センター役員報酬規定第四条の規定に基づき、平成16年度の役員報酬は、次の通りとする。
月額報酬 会長 

65万円

 
会長の報酬が月65万円。10%減額処分ということは、6万5千円の減給か。処分期間は「当分の間」となっていますが、どうせ2、3ヶ月でしょ。仮に3ヶ月としても19万5千円。新情報センターに国民の血税を支払っている金額14.9億円ですので、減給しても0.01%程度穴埋めするだけです。
 
内閣府は平成17年8月8日から同年9月7日まで新情報センターの指名停止処分にするそうですが、同社の指名停止処分期間中に実施される市場調査および世論調査サービスに関する指名競争入札一般競争入札は、いまのところ確認されていません。
つまり、新情報センターが処分されたと言っても、形式的なものにすぎず、実質的なダメージは無い。
“家計を選挙の争点にさせない”ための公表先送りではないかとの疑問はますます大きくなります。
 
処分と公表先送りを決定した大臣はこの人。
 

麻生太郎総務大臣
総務大臣麻生太郎
http://www.soumu.go.jp/daijin_column/index.html

 
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余談ですが、麻生大臣はインターネット規制を強めていると批判したら、選挙の争点とされることを避けたかったのか、とたんに火消しに回っています。
よーし、言質をとったぞ。
みなさん、このページをダウンロードして証拠確保しておいてください。
そしてネット規制の話題が議論されるたびに、麻生大臣のこの発言を何度でも何万回でもコピー&ペーストしてやりましょう。
 

麻生太郎総務大臣
情報リテラシー(2005.8.23)麻生太郎
http://www.soumu.go.jp/daijin_column/column_050823.html

インターネットを規制しろ、という声があります。実際、社会問題になる例も増えています。出会い系サイトをきっかけとした誘拐・殺人、自殺サイト、賭博、詐欺など。つい数ヶ月前も、インターネットで爆弾の作り方を調べて高校の教室に投げ込んだ、という事件が話題になりました。ただ、犯罪そのものなら規制もできますが、インターネットを一律に規制するのはどうでしょうか。表現の自由、通信の秘密、という憲法上認められた権利の問題があります。悪いサイトだけ規制すればよい、という意見もあるかもしれませんが、どこまでが悪いサイトで、どこからが悪くないサイトか、という線引きはそう簡単にはできません。インターネットは国境という概念がありませんから、一部の国だけで取り組んでも仕方ないという技術的な問題もあります。何よりも、インターネットの一部の悪い面だけをとらえて、インターネットの良い面も使えなくすることになりかねません。
結局、国、プロバイダー、利用者のそれぞれがインターネットをうまく使うために取り組まなければいけない、ということになります。

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関連ログ。
 

IT安心会議:インターネット上における違法有害情報対策
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050905
資料:総務省のインターネット選挙に対する検閲
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050906
総務省情報通信審中間答申への意見募集:地上デジタル強制を見直せ
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050802
総務省:有害情報判定委員会創設
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050627
政府がインターネット有害情報規制に着手:「有害サイトは閉鎖させるべきだ」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050615

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■追補(2005.10.12)
平成17年10月7日、総務省は正式に社団法人新情報センターの登録業者の指名停止を決定しました。
措置期間は平成17年10月7日から平成18年4月6日まで6箇月間です。
 

登録業者の指名停止
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/051007_5.html

平成17年10月 7日
登録業者の指名停止
登録業者の指名停止を行いますので、以下のとおり公表します。
1  登録業者名 社団法人 新情報センター
会長 永島泰彦
東京都渋谷区恵比寿1−13−6
2  措置期間 平成17年10月 7 日から
平成18年 4 月 6 日まで6箇月間
3  措置理由
上記法人は、総務省統計局発注に係る「家計消費状況調査」の実施に際して、標本データの一部で不適切な収集・集計を行い、国の景気判断を行う上で重要な位置をしめる同調査の信頼性を失いかねない事態を生じさせた。
これは、不正又は不誠実な行為であり、契約の相手方として不適当であると認められるため。
 
連絡先
総務省大臣官房会計課
酒瀬川、蒔田
TEL : 03−5253−5135
FAX : 03−5253−5138

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