実感なき景気回復「竹中踊り場脱却宣言」:中小企業は景気後退


竹中大臣の「踊り場脱却宣言」(という報道)ですが、発表された時期が選挙直前ということを考えると、政治的な臭いのする発表であることは否めません。
北海道のある経済研究者がラジオ番組で「踊り場脱却宣言」についてコメントしたところによると、「踊り場脱却宣言」の実態は、景気“後退”のペースが緩やかになっただけで景気が後退し続けている事実に変りは無い、とのことです。
まあそんなところでしょうね。
 
以下、竹中大臣や与党議員が隠しておきたい景況判断BSIの統計情報。
グラフで見ておわかりの通り、景気が回復しているのは大企業と中堅企業の一部であって、中小零細企業は景気後退のペースが緩やかになっているだけで、景気後退自体は続いています。中小企業は、過去13年間一度も景気は上向いたことは無く、回復もしていません。下がりつづけるだけです。
これで景気が良くなっていると思っている国民は、与党関係者か奴隷のいずれかではないでしょうか。
 

財務省
財務総合政策研究所
http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/soken.htm
法人企業景気予測調査
http://www.mof.go.jp/bos/1c003.htm
<平成17年度調査>
平成17年4-6月期調査 [PDFファイル形式] (22.8KB)
http://www.mof.go.jp/bos/1c1701.pdf
<平成16年度調査>
平成16年4-6月期調査 [PDFファイル形式] (16.8KB)
http://www.mof.go.jp/bos/1c1601.pdf
平成16年7-9月期調査 [PDFファイル形式] (16.8KB)
http://www.mof.go.jp/bos/1c1602.pdf
平成16年10-12月期調査 [PDFファイル形式] (16.8KB)
http://www.mof.go.jp/bos/1c1603.pdf
平成17年1-3月期調査 [PDFファイル形式] (23.6KB)
http://www.mof.go.jp/bos/1c1604.pdf
公表データ (Excel方式)
http://www.mof.go.jp/bos/1c003date.htm
平成17年度調査 【BSI項目編】(343KB)
※平成17年第2四半期(最近)の現況景気判断BSIを抜粋。括弧は前回調査の景気見通し。
http://www.mof.go.jp/bos/bsi1701.xls

構成比% BSI%ポイント
大企業  中堅企業 中小企業  
17年 4〜6月
BSI
前回 (3.6)   (3.4)   (▲7.3)
今回 0.9    ▲5.0   ▲21.4

旧・財務省景気予測調査(S58.5〜H16.2)
http://www.mof.go.jp/bos/1c003o.htm
財務省景気予測調査 時系列データ検索メニュー
http://www.fabnet2.mof.go.jp/bos/index.htm

首相官邸
官報資料版
http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo-shiryo/
平成16年3月3日 官報資料版
http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo-shiryo/2004/0303/siry0303.htm

◇景気予測調査(十一月)……………財務省
http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo-shiryo/2004/0303/si030301.htm

 
この景気BSIのデータをグラフにしたものがこれです。
赤色が景気後退、青色が景気回復。
BSI:Business Survey Index(判断指標)とは、「上昇(強くなる・増加・過大)の割合−下降(弱くなる・減少・不足)の割合」のことで、景気BSIは、判断する企業が景気について回復継続下降の強度の総合平均値を指し、BSI値がプラスは景気回復、BSI値がマイナスは景気後退です。BSI値のマイナス値が小さければ、緩やかに景気後退、BSI値のマイナス値が大きければ大きく景気後退していると判断することができます。
 

 
最新の調査結果によると、大企業だけが0.9ポイント(ほぼ横ばい)で、中堅企業が-5.0ポイント(景気後退)、中小企業は-21.4ポイント(大きな景気後退)となっており、いずれも前回調査の景気見込みを下回る景気BSIを示しています。
この調査結果を見る限り、企業の実感としての景気は、大企業は横ばい、中堅企業はゆっくり景気後退、中小零細企業は以前として大きく景気後退というふうに考えざるを得ません。
 
一体、どこが景気回復なのでしょうか? 景気回復を実感している会社は例外ではありませんか? 竹中大臣は政府の利権に与っている一部の大企業だけを見て景気判断をしているのではありませんか?  
 
中小企業は14年連続景気後退です。
皆さん、国民の多数の生活と国家経済の土台を支えている中小企業が14年連続景気後退だという事実をどう思いますか?
そういう経済破壊を続けてきた政権を、どうして国民は支持しているのでしょうか? 
いったい誰が、与党に投票しているのでしょうか?
そういう政治を支持している国民は誰なのでしょう?
 
私は、「景気回復なら自民党」という神話は、竹下内閣ぐらいまではまだなんとか信じることはできたかと思いますが、今は完全に消えてなくなった、と判断しています。特に小泉内閣では。
いまの政権は経済運営が最悪です。なぜ最悪かといったら、なにを優先すべきかを判断できる人材が与党の主流派に一人もいないからでしょう。
国民は、世界的な経済競争と強者総取りのグローバリズムの中で、日本国が経済戦争の負け組になり、日本国が世界経済戦争の敗北国になっていることを薄々と感じており、この経済戦争が負け戦(いくさ)であることを実感しているのだと思います。
日本はかつて軍事で負け、そして冷戦後は経済でも敗北。それは、前述した通り、客観的な事実です。
それでも、小泉内閣の支持者は、アメリカに追従し、この経済戦争(ハゲタカ財界に郵政資産を売り渡す郵政民営化を含む)をいままで通り続ければ一発逆転で勝利できると信じている。それは喩えるなら、戦前のカミカゼ思想のようなものではないでしょうか。日本は神の国だからピンチになったらカミカゼが吹いて助けてくれる。日本がピンチになったらアメリカさんは助けてくれる、と。
私はそんな神話を信じません。
 
国家的なアイテンティティの喪失の中で、国民は対米従属、他民族排斥、国家従属、インチキ愛国心などのイデオロギーが広まっています。所属する日本という国の崩壊を感じているからこそ、小泉みたいなインチキ改革者、インチキ右翼が政治の表にまで出てきている、と私は分析します。
その日本人の姿は、反日デモをする中国人の姿とダブります。
国家の統制が強まるが故に、統制の例外としての反日運動が激化する中国の人民の姿は、対外的な政策に熱狂する一部の日本人のそれと違いはありません。日本がダメな国になっていて、ダメな部分をかえることができないという絶望感に苛まされているからこそ、北朝鮮外交や偏狭な排外政策のような問題に注目が集まるのです。経済戦争の敗北という目前の問題に目を向け、対決することかできないから。
そして、そういうある意味、絶望的な国民感情を、小泉内閣中国共産党執行部と同じ手法で利用していることに、国民は気づきもしない。
それはある種のパニック状態なのだろう、と私は思います。
 
「踊り場脱却宣言」という政府発表を大きく書き写しているだけのテレビや新聞社は、大本営発表を書き写す戦前の新聞社やNHK同様、権力チェックを怠り、偏向報道を垂れ流し、国民を欺いているように私には見えます。
国民の側も、偏向したニュースに惑わされること無く、景気を悪化させ、怠惰な政治を続け、冒険的な排外外交で国民と他国を欺き、やるべき政策をやらず、17万人の国民を自殺においやった指導者がいったい誰なのか、与党は誰なのか。政権を動かしているのは誰なのか、内閣総理大臣は誰なのか、内閣総理大臣を支持して支えてるのが誰なのか、を直視すべきではないでしょうか。
郵政民営化などというインチキ政策に惑わされること無く、現実をしっかりと直視し、9月11日の総選挙に望む必要がありそうです。
 
以下、政府のソース。報道は政府発表コピペのばかりの意味の無い情報ばかりなので省略。
 

内閣府

竹中平蔵内閣府特命担当大臣(経済財政政策)・郵政民営化担当
http://www.cao.go.jp/minister/takenaka-profile.html
大臣記者会見
http://www5.cao.go.jp/minister/menu.html
竹中大臣 経済財政諮問会議後記者会見要旨 第18回会議(平成17年8月9日)
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2005/0809/interview.html

最近の経済動向等概要でございますけれども、横長の資料、表紙をめくった1ページに基調判断を書いております。基調判断、今月は、「景気は、企業部門と家計部門がともに改善し、緩やかに回復している」としております。先月より、表現上は上方修正しております。これは、緩やかな回復局面にあるという大局的な判断は変更しておりませんが、現時点での指標等から総合的に判断しまして、踊り場的状況を脱却しているというふうに判断しております。

竹中内閣府特命担当大臣(経済財政政策)・郵政民営化担当 記者会見要旨
(平成17年8月10日(水) 10:31〜10:37 於 記者会見室)
http://www5.cao.go.jp/minister/2005/0810kaiken.html

2.質疑応答
(略)
(問)景気の踊り場を脱却したということなんですが、選挙で政治の空白が生まれることによって、悪い影響等は考えられないのでしょうか。
(答)そういうことにならないように、その間の予算編成プロセスもしっかりと進めていきたいと思っておりますし、また、それ以外の秋に向けての準備も、これは各部署で粛々と進めていかなければいけないと思っております。
総理からも、政策の空白は生まないようにと強い御指示をいただいておりますし、私自身も内閣府の中で政策の空白を生まないようにしっかりとやっていこうというふうに申し上げております。
(略)
(問)景気について伺いたいんですが、昨日の記者会見の中で、大臣は景気の現状について回復力が強いとは思っていないと述べられたんですけれども、景気が足どりを強めるためには、現状で何が足りないと思われているでしょうか。何があれば足どりが強まるというふうに思われるでしょうか。
(答)短期的な問題と中長期的な問題が当然あると思いますね。中長期的な問題としては、これはやはり構造改革を更に進めて、民間主導のしっかりとした経済体質をつくるということだと思いますね。だから、民間でできることは民間でやるという意味での郵政民営化というのは、やはり極めて重要なわけです。郵政民営化は余り重要じゃないと言っておられる方もおられるようですが、ちょっと経済政策としてのセンスを疑う御発言であると私は思います。

 
竹中大臣郵政民営化の必要性につなげて景気踊り場脱却宣言をしているわけですが、ロイターの配信記事によると、財務省は別な見方をしているようです。
 

今までの景気判断の枠内、一喜一憂する必要ない=GDPで財務相
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200508120020.html

 [東京 12日 ロイター] 谷垣財務相閣議後の会見で、けさ発表された4─6月期国内総生産(GDP)について、今までの景気判断の枠内であり、一喜一憂する必要はないとの認識を示した。

 
財務省は景気BSIのデータを持っていますので、さすがに「景気は良くなった」などという嘘は言えなかったようです。
景気の足をひっぱっている短期要因の原油価格上昇について、大臣は「短期の即効薬がない」と言っていますが、それって無策だと言っているようなものではないでしょうか。
 
関連ログ。
 

好況ってなんだっけ?
http://zirr.hp.infoseek.co.jp/020216.html

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