ゲーム脳問題は脳の問題ではない(1)

 
最近の注目論考を三つ紹介。
 

ゲーム脳問題最終報告 〜最後に最大のネタを用意していてくれた森教授よ さようなら〜
※森論文の原文を参照して検証した論考
http://blog.drecom.jp/scheisse/archive/91
伝染するゲーム脳 
http://www.journalistcourse.net/blog/archives/2004/12/post_5.html
俗流若者論という視点
http://kgotooffice.cocolog-nifty.com/kgotolabo/2005/03/post_10.html

http://www.itmedia.co.jp/games/articles/0506/01/news033.html
http://www.itmedia.co.jp/games/articles/0506/01/news033_2.html

 
前述した論考「伝染するゲーム脳」は、「ゲーム脳問題」は脳の問題ではないという大きな問題を提起しています。
ゲーム脳問題最終報告」では、論文自体がかなりヒドイものであることを紹介するとともに、論文が発表された日本健康行動科学会」という団体の役員は、みんな森教授と同じ病院関係者や大学関係者だということも紹介されています。
つまり、一般の学術団体で様々な学者から第三者的視点で検証され認められた学問ではなくて、論文を発表している人と論文を評価する団体が同一。ジサクジエーンに限りなく近い。中身の無い“科学的権威”と言うよりありません。
 
ではなぜ、そんな「論文」がこれほど注目されているのか。
結論を先に書くと、私たちからは見えない場所で森教授とはべつの第三者が「ゲーム脳の恐怖」という出版物を起点としたメディア戦略をコーディネイトしているから、ではないかと。
 
森教授の珍科学が原因というより、それを政治的・商業的に利用しようとしているのかどうかは不明ですが、何者かが森教授とは別な動機で珍科学の“科学的権威”を利用し、メディア露出を深めているから、社会に珍科学が権威として広まっている。
喩えるなら、森教授は神輿(みこし)であって、神輿をかついでいる人がいるから、みんながそれを見てヤイノヤイノと騒いでいる、という構図があるのではないかと思うわけです。
神輿は森教授だけではありません。前述した「伝染するゲーム脳」で紹介されているように、「NHK出版」*1もそうです。
 

あの「日本大学の教授」である森昭雄という人間が、あの天下の「NHK」出版から出した本であるという権威性は、人々の頭から疑問符を払拭し、それを信用に足る本であると鵜呑みにさせた。

森教授やNHK出版自身がメディアコーディネイトをしている可能性もありますが、珍学説を出すような人がメディアコーディネイトの能力があるとは思えませんし、NHK出版関係者がゲーム脳学説を肯定的に紹介した「週刊文春」などの雑誌メディアやゲーム脳特集を放送し続ける「テレビ朝日」に影響力があるとも思えません。彼らは、メディアに影響力のある、別な何者かがメディアコーディネイトに利用されていると考えるのが自然です。
 
では、その何者かとはいったい誰なのか。それはどのような動機なのか。なぜそんな動機を持ったのか。
 
ゲーム脳問題は脳の問題ではない(2)」に続く。

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*1:NHK出版の社長は、戦時性暴力についての番組で自民党の安倍・中川氏から圧力を受けて番組を改変させたと告発されたNHK幹部だった人でした。