パロディと名誉毀損

アメリカには、「ハスラーのフォルウェルパロディ事件」という有名な裁判判決があります。
この事件は、伝道師で保守政治評論家のJ・フォルウェル*1のパロディインタビュー(架空のインタビュー)が、カンパリ*2というお酒の広告のすぐ横に「ジェリ・フォルウェル、私の初体験を語る」というタイトルで掲載されたことが問題となって事件*3でした。
日本で「ハスラーのフォルウェルパロディ事件」を喩えるなら、「池田大作、俺様のブルセラ初体験を語る」みたいなエロエロな架空パロディインタビューが「噂の眞相」あたりに掲載され池田大作氏に「噂の眞相」が名誉毀損で訴えられたような感じの裁判でしょうか。
結論から言うと、「ハスラーのフォルウェルパロディ事件」は、現実の悪意の法理*4の転用*5により、ハスラー誌が勝訴しています。
この事件は、(「アマデウス」を監督した)ミロシュ・フォアマン監督*6により「ラリー・フリント*7という映画の中でくわしく描写されていますので、機会があったら観てください。表現の自由をテーマにした名作です。

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*1: Jerry Falwell の画像イメージ検索 http://images.google.co.jp/images?hl=ja&lr=&ie=UTF-8&q=Jerry+Falwell+

*2: カンパリの画像イメージ検索 http://images.google.co.jp/images?q=%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%AA&hl=ja

*3: 合衆国最高裁判例: Husler Magagine v. Falwell, 485 U.S.46 / 1988

*4: 現実の悪意の法理:公務にたずさわる公人に対する名誉毀損の成立は、問題の表現が現実の悪意(actual malice)をもって作られた場合に限られる、という法理。 ニューヨークタイムズ事件(New York Times Co. v. Sullivan / 1964) 「公務員は、その公務に関する行為に関係して、名誉毀損にわたる虚偽ゆえに損害賠償を認められるのは、当該記事の言明が現実の悪意によってなされた場合にかぎられねばならないということが、憲法保障条項が要求する連邦法上のルールである。“現実の悪意”とは、当該言明が虚偽であることを知っていて、もしくは、それが虚偽かそうでないかを一向に介さずに、あえておこなった場合を指す。」

*5: 合衆国最高裁における現実の悪意の法理の転用:当該パロディは誰が読んでもあまりにも嘘っぽい内容のものであり、フォルウェルが真剣に語った言葉とは到底考えられずパロディは“合理的に信じ難い”ものであるから、フォルウェルは傷つき損害を受けたという効果も生じておらず、保護法益たる“精神的・感情的な苦痛”は存在しない。

*6: http://www.netpro.ne.jp/~takumi-m/cinema-directer/Milos_Forman.htm

*7: ラリー・フリント(ハスラー誌の創刊発行人): http://www.netpro.ne.jp/~takumi-m/rally-fullint.htm