アメリカの一部大手新聞の宙吊り遺体写真掲載について

イラクファルージャで米国軍の傭兵が襲撃され、焼かれて宙吊りにされた事件で、大統領府から強力な報道自粛のプレッシャーがかけられたあたりの問題について、あらためて考えてみたいと思います。
イラクの占領統治を監視している民間グループ「イラク占領監視団」のニュースによると、良識あるアメリカの一部大手新聞がファルージャの米関係者殺害事件の遺体写真を新聞一面に掲載したことについて、詳細に伝えています。

イラク占領監視団/メディアと言論の自由
20紙中7紙がファルージャの米関係者焼き討ち死体写真を掲載
http://www.occupationwatch.org/article.php?id=3916

米国の販売部数上位20紙中7紙がイラクファルージャで発生した事件の米関係者焼き討ち死体写真を掲載した。うち、シカゴ・トリビューン、ニューヨークポスト、ニューヨークタイムズフィラデルフィアインクワイアラーおよびサンフランシスコ・クロニクルの5紙は、ユーフラテス川にかかる橋からアメリカ人の死体をぶら下げ、反米スローガンを歌うイラク人の写真を一面に掲載した。
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しかし、販売上位20位の新聞の多くは、より穏当な紙面構成を実施した。

紙面に掲載された報道写真がどのようなものか、一次情報を直接確認してみましょう。
アメリカの大手7紙に掲載された、米軍関係者(傭兵)の炎上写真がコるビスで公開されていますので、URLを直リンします。
覚悟して観て下さい。

炎上する人間。炎の中から頭と手が見える。
炎上する車(中には人が乗ったまま)
ひきずり出された死体。激しく燃えつづけている。
炎上する装甲車の前で指導者の肖像と武器を掲げて勝利を祝う青年
炎上する装甲車の前で指導者の肖像を掲げる青年
炎上する装甲車のまわりで国旗と銃を掲げて気勢をあげるイラク人たち
煙をあげながら燃える死体を楽しく見物するイラクの青年たち。ひとりは黒こげの死体のひとつを足で踏みつけるポーズをカメラマンに見せている
歓声をあげながら死体をひきずって運ぶイラク人たち
死体の前で勝利のポーズをとる少年とイラク人たち。
橋に吊るされた切断死体
橋に吊るされた遺体を誇らしく見せる少年たち

この写真を修正を加えずに一面に掲載した新聞社5紙は、アメリカの政治状況から考えて、勇気ある報道をしたと思います。
私が書くまでも無いことですけれど、権力の諸政策に対する一般市民の評価にとっての判断材料を提供することが、ジャーナリズムに適った報道です。
戦争がどんなに悲惨なものであったとしても、その悲惨さを知らなければ悲惨な戦争について正しく評価することはできません。
悲惨で矛盾を抱えた戦争という事実は、悲惨で矛盾を抱えた事実が提供され無ければ、戦争の真実を正確に評価することはできません。誰も知らされていない事実について、正確に判断することはできないからです。
これらの悲惨な写真を見て、「必要な犠牲だ」と考える人がいてもいいし、「やはり大義に適った犠牲ではない」と考える人がいてもいい。「統治方法がマズイ」と考える人がいてもいいでしょう。
あるいはこれらの写真の悲惨さの中に、もっと別な事実を発見し、問題認識を持つ人もいるかもしれません。たとえば、なぜ輸送車両の警備だけに対してこんなにも憎悪を剥き出しにし、輸送車両自体は見逃したのか、という具合に。
それらの判断は、写真を見たひとりひとりが判断するべきことであって、新聞社や政府が事前に「これは見せずに戦争を判断してもらおう」などと判断して事前に情報を遮断したり、隠蔽することは、民主主義社会としてあってはならないことだと考えます。
この写真報道後、犠牲者は実は一般民間人ではなく、ペンタゴンが雇ったファルージャ掃討作戦の偵察傭兵だったことがわかっています。写真報道後、傭兵雇用問題が議論になったり、大統領のイラク政策支持率が急落しているところを見ると、報道写真の影響力はあったと考えてよさそうです。