Battle Talk Radio アクセス(松文館わいせつ事件特集)

Battle Talk Radio アクセス (2004年1月14日オンエア)
http://www.tbs.co.jp/ac/

(敬称略)

蓮舫「東さん、この裁判の重要性。実はこの裁判が始まる前から指摘をされておりましたね。」
東浩紀「ええ。はい。」
蓮舫「これはどういうつながりだったんでしょうか。」
東浩紀「第一に、コミックのわいせつ性が史上初めて裁判で争われているというのもあるんですが、それに関係して今回、漫画家さんたちのグループが非常に活発な活動をしていまして、弁護側の証人としても宮台真司先生や斉藤環さんなどかなり知的にレベルの高い論陣が組まれた裁判だったんですね。ですから単に表現とわいせつがどうのという問題ではなくて、普通の裁判とは違う点でもっと話題になってもいいと思う事件だったかなと思います。」
蓮舫「東さん個人のご意見をお伺いしたいのですが、国が漫画のわいせつ性を規制するという、昨日、有罪というかたちになったのですが、この方針はいかがですか?」
東浩紀「僕自身はわいせつという観念を国が管理することにはまったく意味が無いと思いますれども。」
蓮舫「意味が無い。」
東浩紀「ええ。ただ、今回の裁判を通して、先ほどラジオに出ていた視聴者の意見を聞いてみるとですね、そういうのとは別のロジックが働いているというか、つまり“最近、青少年は危険である”と。そういう日本社会の治安の維持のためにとにかく危険なものは外側におしやろうよという変化のすごく大きな流れがあって、その中のひとつとしてこういう成人漫画が標的になったのかなという感じですね」
蓮舫「あー。はあはあ。排除の法則じゃないけど、危険なものをどんどんどんどん魔女裁判のように捕っていこうよっていうようなニュアンスですか?」
東浩紀「ですね。ですからこれはテーマとしてこれはわいせつが主題になっている裁判ではあるんですれども、この裁判を支えている世論っていうか、今の社会の中のポイントっていうのは、むしろわいせつよりも治安であって、少年犯罪の問題ともからんでくると思うんですが、いま日本社会が治安が悪くなっているとみんなが思い始めているという状態で、その時に誰か仮想敵を探さなければならないといった時に、急にわいせつコミックの問題が出てきたのかなという理解のしかたをしています。」
蓮舫「はあ、いわゆるスケープゴートじゃないけれども」
東浩紀「そうですね。」
蓮舫「わいせつコミックの先になにかあるんじゃないかという深い読みをされていると思うのですが」
東浩紀「ええ」
蓮舫「ただ、どうなんでしょう。わいせつでないものはそうでないものとは、一般的に住み分けができるんですかね、この時代に」
東浩紀「ですからわいせつっていう概念そのものが、弁護側の証人として出た宮台さんなんかが言っているんですれども、わいせつという概念そのものが結局主観的なものであってね、それを国家が管理するということ自体が、いまはどう考えても無意味であって、かといってわいせつなコミックを読んだからといって急に性犯罪に走るといった客観的なデータも無い以上、それを国が管理する必要はそもそも無いんだと思います。」
蓮舫「それが科学的根拠というね」
東浩紀「ええ。ただ、問題は同じことのくり返しになりますけれど、結局、科学的な根拠があるかないかといってもですね、人って科学的な根拠が無くてもある方向にパーッと走っていってしまうことがあるわけですよね。」
蓮舫「えー、ええ。」
東浩紀「そういう意味で、今の日本社会全体が、ある種、科学的根拠無くスケープゴートを作ろうとしているということのひとつの象徴みたいなことなのかなと思って見ているのですけれども。」
蓮舫「うーん。意味が無い以上に悪いっていうことですね」
東浩紀「そういうことですね。」

東浩紀
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はてなダイアリー - 波状言論
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東浩紀氏のコメントに異義無しです。
が、世を乱れさせた真犯人を隠蔽するためのスケープゴートづくりは、これまでにもありましたし、松文館で最後とはかぎりません。
世間から目を逸らすためのスケープゴート、理性を超越した権威回復のアイテム=魔女狩りの魔女は、これからも権威者の手によって登場させられるでしょう、理性による秩序より恐怖による秩序を民衆自身が望んでいる限り。