イムレ・ケルテース「運命ではなく」

ところで、最近読んだ、といっても3月ぐらい前ですれど、ノーベル文学賞作家の本では、イムレ・ケルテースが良かったです。

2002年のノーベル賞受賞作家、イムレ・ケルテースの「運命ではなく」。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4336045208.html

いわゆるホロコースト文学ですけれど、民族的価値観の対立を乗り越えた普遍性がありますね、この作品には。
民族的対立その他の運命の中で、人間がひとりの個人として困難な人生を自由に生きるとはどういうことか。
強い(民族の)側に回ることでは、「本当の自由」は得られないのではないか。
管理されている人間が管理する側にまわることによって得られる自由よりも、管理され続けながらも誰かを管理しない世界の可能性を空想する自由の方が、その人を幸福にする。
そんなことも考えさせられる本でした。

もしすべてが運命でしかないなら、自由などありえない。
その逆に、もし自由というものがあるなら、運命はないのだ。
(イムレ・ケルテース/「運命ではなく」)