政府の自粛要請文

要請文要旨
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20040110k0000m010092005c.html
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20040110k0000m010092005c.html

 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊部隊の派遣に関する当面の取材について
 自衛隊イラク派遣については国民の関心も高く、いつどのような規模の部隊が派遣されるのか、緊急時に部隊や隊員はどのように対応するのかなどの取材及び報道が過熱しています。
 派遣日程については、民間航空機を利用することがあることから自衛隊員のみならず他の一般乗客の安全にもかかわってくるものであり、緊急時における対応要領はまさに自らの手の内を明らかにするものであります。
 防衛庁としては、派遣部隊及び隊員の安全にかかわる情報は、従来から公表を差し控えているところであり、記者の取材活動において仮に派遣部隊及び隊員の安全にかかわる情報を入手した場合にも、報道を差し控えて頂くようお願いします。
 また、派遣隊員の家族について、本人の同意を得ていないと思われる映像の放映等も散見されますが、このようなものは本人のプライバシーとの関係で問題を生じることにもなりかねません。
 以上のことから、このような報道により派遣される部隊及び隊員等の安全確保を含めた防衛庁の円滑な業務遂行を阻害すると認められる場合は、爾後(じご)の取材をお断りすることになります。
 防衛庁としては可能な限り報道機関への協力を行っていく考えです。貴社におかれましては、別紙の(お願い)の通りお願いします。

 (お願い)
 現在、イラクは「退避勧告」、クウェートは「渡航の是非を検討する」地域になっており、取材者も例外ではありません。取材時に発生する不測事態に関しての責任は負いかねます。
 また、陸上自衛隊の派遣が予定されているイラク南東部地域における報道機関の方々の行動によっては、現地の経済状況、社会状況等に思わぬ影響を与えることも懸念されます。
 以上のようなことから、各報道機関におかれましては、現地における取材を可能な限り控えて頂くようお願いします。防衛庁としては現地部隊と連携して積極的にホームページや本庁におけるブリーフィングによる情報提供を行いたいと考えています。特にホームページについては、既に開設されており、現地における自衛隊部隊の活動等の情報を逐次更新し、本年はじめから英語版、アラビア語版による情報提供もいたします。
 また、次に示す隊員の生命及び安全に関する事項の報道を自粛されるようお願いします。
 (1)部隊、装備品、補給品等の数量
 (2)部隊、活動地域の位置
 (3)部隊の将来の活動にかかわる情報
 (4)部隊行動基準、部隊の防護手段、警戒態勢にかかわる情報
 (5)部隊の情報収集手段、情報収集態勢にかかわる情報
 (6)部隊の情報収集等により得られた警備関連情報
 (7)他国軍等の情報(当該他国軍等の許可がある場合を除く)
 (8)隊員の生命及び安全に関すること
 (9)その他、部隊等が定める事項

自粛が文字通りの意味での「自粛」であって強制ではないと言えるためには、自粛要請を受け入れるか拒否するかの判断はあくまでも取材側・報道側の自由であって、自粛を拒否をした場合でも不利益処分が無いということが前提になります。
自粛要請を拒否した時に、拒否したメディアに対して不利益処分をする場合は、それはすでに強制処分=「措置命令」であって「自粛」ではありません。
防衛庁長官による「自粛要請」は、「防衛庁の円滑な業務遂行を阻害すると認められる場合は爾後の取材をお断りすることになります」との前提を置いていますので、選択の自由が確保された「自粛」と言うべきではなく、拒否したメディアに対して不利益処分をした限りにおいて選択の自由が存在しないわけですから、実質的には憲法違反の「検閲」たる強制的な「措置命令」であると思われます。