反性教育の動向(1):青少年保護に禁欲教育は逆効果

 
禁欲教育に関する評価については、水島議員は良い認識を示しているようです。
 

水島広子衆議院議員(民主党)
http://www.mizu.cx/
水島広子の国会報告メール
http://blog.mag2.com/m/log/0000056084
No.231 2005.5.21発行
http://blog.mag2.com/m/log/0000056084/105581816

性教育についての懇談
5月19日、国際家族計画連盟(IPPF)若者対策シニア・アドバイザーのドーラ・ブラーケン氏を、超党派の「リプロダクティブ・ヘルス/ライツを考える会」にお招きして、お話をうかがいました。
ヨーロッパ諸国とは異なり、米国と日本ではここのところ性教育が「禁欲」に偏重しつつありますが、禁欲教育の効果はどうなのか、というエビデンスをうかがいました。
なんといっても問題なのは、禁欲教育だけを行ってしまうと、性感染症や避妊についての知識を得る機会が失われるということです。
エール大学やコロンビア大学で長期的な研究が行われているそうですが、結婚まではセックスをしないと誓った人の88%は誓いを守れず、途中で禁欲の誓いを破った人の方が、最初から禁欲の誓いを立てなかった人よりも、性感染症の率が高いそうです。
ブラーケン氏はオランダ人なのですが、オランダでは性交開始年齢が米国よりも高いそうです。
さらに、オランダでは、最初のセックスのときに85%が避妊の手段を講じるそうです(76%がコンドーム。40数%がピル。35%は両方を併用)。
最初のセックスの時点ですでに、責任をもって行わなければならない、ということを知っているということです。
オランダ政府は、性行動そのものに干渉するよりも、若者が自分に責任を持つということを重視しているそうです。その結果、若者の性が守られているということになります。
若者を信頼した方が、結果として問題をコントロールできる、という訴えには心から共感しました。 

 
青少年に性行動の慎重さを促すには、禁欲という形で性をタブー視することはむしろ逆効果で、正しい性知識を教える方が性行動は慎重になるというのが、性行動学の科学的知見です。
 
関連リンク。
 

■IPPF本部(英語)
http://www.ippf.org/
IPPF本部(日本語)
http://www.ippf.org/Home.aspx
■日本家族計画協会
http://www.jfpa.or.jp/
家族と健康 第587号 平成15年2月1日発行
http://www.jfpa.or.jp/02-kikanshi1/587.html

後退するアメリカのリプロ・ヘルス
禁欲教育をめぐるメディアセミナー
ブッシュ政権が樹立されて以降、アメリカ政府は人工妊娠中絶を促すとしてリプロダクティブ・ヘルス/ライツを否定し、さらに学校教育においては禁欲主義を導入するなど、宗教的背景にあと押しされた保守主義を強めている。そこで、本会では去る1月23日、これらブッシュ政権が進める教育・保健政策について、これが女性の健康やセクシュアル・ヘルスの面にいかなる影響を与えるかを理解するため、メディア関係者約40名を集めて、アメリカの禁欲教育をめぐるセミナーを開催した。
昨年12月9日付の「ニューズウィーク」は、アメリカの性教育における禁欲教育の特集記事を掲載し、ブッシュ政権の保守的政策を批判的に扱った。折しも、同月11日から行われた第5回アジア太平洋人口会議で、アメリカ政府はリプロダクティブ・ヘルス/ライツの削除を強行に要求し、参加各国の強い反発を受けた。
(略)
次に、“人間と性”教育研究協議会の村瀬幸浩さんは、禁欲教育について、これを一種の脅しの教育と見る。セックスした場合の不幸な結果や、妊娠した際の辛い状況など、「怖がらせる教育」からは何の成果も上がらないと主張する。
村瀬さんによれば、禁欲教育の延長線上には女性たちの性の自己決定力を抑え、性的マイノリティを排除する意思が見え隠れすると。大切なことは自ら考え自ら判断する自己決定力、すなわち「セックスする・しない、妊娠する・しない、出産する・しない」を正しく判断できる力を、若者に身につけさせることだと訴えた。
NPO法人ぷれいす東京の池上千寿子さんは、性教育における効果の上がらない教え方には、一度だけの情報提供、画一的なメッセージ、行動の抑制があり、禁欲教育にはこれらがあてはまると。「するな!」という教育には、そうなった時の状況を想定しないため、そうなった人たちへの情報伝達、対処の方法がないというのである。
さらに池上さんは、性教育とは性の開始年齢を遅らせ、もしセックスする事態に至れば、望まない妊娠を避けるための正しい避妊法を教え、性感染症を防ぐ知識を与えることであるのに、禁欲教育にはこれらの備えがなく、性行動の結果のマイナス面だけが強調されていると述べ、禁欲プログラムでは、望まない妊娠や性感染を増やすことはあっても、防ぐことにはつながらないのではと、参加者に問いかけた。

家族と健康 第593号 平成15年8月1日発行
http://www.jfpa.or.jp/02-kikanshi1/593.html

アメリカの新保守主義
ところが、米国のブッシュ政権新保守主義が、中絶禁止を強く主張するプロライフとも提携し、国連人口基金など、中絶を容認する機関や施設への拠金をすべて打ち切って、多額な予算を使い若者に「結婚まで禁欲のみ教育のプログラム」を推奨している。
結婚まで禁欲のみの性教育と、包括的セクシュアリティ教育との特徴を比較すると、包括的性教育では「セクシュアリティは自然で普通な、健康な人生の一部分である」と教えているのに対し、禁欲のみ性教育では「結婚前の性行動は社会的心理的身体的悪影響を招く」と教えている。
包括的性教育では「性交しないことが妊娠や性感染症の予防に最も効果的」と教えているのに対して、禁欲のみ性教育では「結婚まで性交しないことが唯一の正しい行動」と教えているのである。
性と生殖に関しては「自ら判断し、決定し、相互に尊重する」ことが特に重要である。このため、自分や相手の体について正確な情報を入手し、自分で判断し、自ら健康管理できるように、学校や地域における性教育や健康教育を一層充実させるように努める必要がある。それに必要な行動変容のスキルの獲得を目指すためにも、包括的セクシュアリティ教育を広めることが大切と考えるのである。

第604号 平成16年7月1日発行
http://www.jfpa.or.jp/02-kikanshi1/604.html

リプロ・ヘルス/ライツの文言を削除
第三の脅威は二〇〇四年の「出生前被害者に対する暴力処罰法」で、ブッシュ大統領はこの連邦法にもすでに署名している。暴力処罰法は、受精直後から法的に保護される独立した人格が生じるとしており、妊娠中の母親が犯罪で死傷した場合、加害者は母親と胎児に対する二つの罪で処罰される。この法律によって合法中絶に制限が加えられる怖れは十分考えられる。
第四の脅威は包括的性教育の否定と禁欲教育の推進である。ブッシュ政権は、「結婚まで禁欲を」とうたった全国キャンペーンに多額の連邦予算をつけ、世界的にもこのキャンペーンを広めようと目論んでいる。
脅威の第五は、国際人口開発会議(カイロ、一九九四)で採択された行動計画から、リプロダクティブ・ライツとリプロダクティブ・ヘルスサービスという文言を削除しようという動きである。米政府は、二〇〇二年に開かれたアジア太平洋人口会議の準備会議で、突然カイロ行動計画を承認しないと発表した。前記文言が中絶を容認しているというのがその主な理由である。
しかし、米国の豹変ぶりに会議参加国からは批判が集中した。その後も、カイロ行動計画には支持できる面が多くあるといいながら、問題の文言に対する米国の姿勢は変わらず、しかも「結婚していない思春期の若者にとって禁欲はもっとも責任ある、かつもっとも健康的な方法」だと力説している。

■“人間と性”教育研究協議会(性教協
性教育ニュース 【03/02/11】
アメリカの禁欲主義教育とわが国の性をめぐる諸問題
http://www.seikyokyo.org/news/news_05.html
性教育ニュース 【03/01/21】
産経新聞の事実をねじ曲げた記事に対する抗議文」
http://www.seikyokyo.org/news/news_03.html
アメリカの禁欲主義教育と日本の性問題』
http://www.seikyokyo.org/news/news_07.html
アメリカの禁欲主義教育と日本の性問題
http://d.hatena.ne.jp/asin/4871683567
統一協会 ボディコントロールの恐怖―「新純潔教育」の正体
http://d.hatena.ne.jp/asin/4876993319

 
関連ログ
 

性教育の動向(2):自民党の反性教育ジェンダーフリーキャンペーン
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050523
性教育の動向(3):報道2001:「つくる会八木秀次氏が立ち往生(1)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050525
性教育の動向(4):報道2001:「つくる会八木秀次氏が立ち往生(2)
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050526
性教育の動向(5):ここまでするのか「過激な性教育ジェンダーフリー教育に関する実態調査」
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050527

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