日本人人質事件のマスコミ報道を憂慮する市民による緊急声明

私も声明賛同人に参加させていただきました。

日本人人質事件のマスコミ報道を憂慮する市民が緊急声明
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200404121036071

私たちは、イラク武装勢力の人質となっている3人を一刻も早く解放させたいと願っている日本の市民です。
3人は24時間以内に解放と報道されてから、まだ現実には解放されていません。
 にもかかわらず、日本ではとんでもない報道があちこちで行われるようになりました。
 私たちは解放声明が出されて以降のニュースや報道を見ているのですが、この段階になって明確に「撤退しなくて良かった」「政府の対応は正しかった」といったコメントを述べる人間を出演者として登場させ、次々に発言させています。
 これは、きわめて危険な報道です。武装勢力は、3人がイラクのために活動しているという日本市民からの情報と3人の家族の切実な訴えを聞き、イスラム教の指導者からの説得もあり、3人の解放を決めたのです。その背景には、多くの日本市民がイラクからの自衛隊撤退を望んでいるというメッセージが伝わったことも、間違いなくあります。ここ数時間のマスコミ報道は、これを打ち消し、「政府の対応は正しい」というメッセージを伝えようとするものです。報道機関自身は「政府の対応は正しい」などと言えないため、いままで画面に登場したこともなかったようなコメンテーターを使って、そういう世論誘導を行おうとしています。
 被害者家族は一致して「自衛隊の撤退を求める。」「政府の対応はおかしい。何もしていない。」というコメントを出しています。その家族に小泉総理は会うことすらしませんでした。そのことを疑問視する報道は一つもなく、事件が解決に向かいかけたところで、一斉に「政府広報」のような報道を開始しました。
 電波は世界中を流れています。このような報道姿勢そのものが、3人の人質の生命の危険を再び増大させています。日本市民が世界に発信した情報を打ち消し、イラク情勢を再び緊張させています。日本のマスコミは、自分たちの意図的な報道が世界に何を引き起こすか、それを想起する想像力すらないのでしょうか。
 マスコミは責任を持った報道をしてほしい。「主張のバランス」「メディアの中立性」などというのは、こうした事態の前では重要なポイントなどではないはずです。人命第一の報道姿勢を取っていただきたい。

マスコミの報道姿勢を憂慮する市民
[呼びかけ・賛同人:転載・転送のさい、ご自分の名前を加えてください]
竹村英明・平和政策塾、山崎久隆・劣化ウラン研究会、きくちゆみ、青山貞一、アイリーン・スミス、星川淳(作家・翻訳家)、田中優、井上利男、北野桂ほか

参考リンク

日刊ベリタ:日本人人質事件のマスコミ報道を憂慮する市民が緊急声明
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200404121036071

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戦争報道と放送倫理

日本民間放送連盟(民放連)
放送倫理基本綱領
http://www.nab.or.jp/htm/ethics/idea.html

放送は、その活動を通じて、福祉の増進、文化の向上、教育・教養の進展、産業・経済の繁栄に役立ち、平和な社会の実現に寄与することを使命とする。
放送は、民主主義の精神にのっとり、放送の公共性を重んじ、法と秩序を守り、基本的人権を尊重し、国民の知る権利に応えて、言論・表現の自由を守る。
放送は、いまや国民にとって最も身近なメディアであり、その社会的影響力はきわめて大きい。われわれは、このことを自覚し、放送が国民生活、とりわけ児童・青少年および家庭に与える影響を考慮して、新しい世代の育成に貢献するとともに、社会生活に役立つ情報と健全な娯楽を提供し、国民の生活を豊かにするようにつとめる。
放送は、意見の分かれている問題については、できる限り多くの角度から論点を明らかにし、公正を保持しなければならない。
放送は、適正な言葉と映像を用いると同時に、品位ある表現を心掛けるようつとめる。また、万一、誤った表現があった場合、過ちをあらためることを恐れてはならない。
報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない。放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる。

日本民間放送連盟 放送基準 2004(平成16)年4月1日改正施行
http://www.nab.or.jp/htm/ethics/base.html

1章 人権
(1) 人命を軽視するような取り扱いはしない。
2章 法と政治
(11) 政治に関しては公正な立場を守り、一党一派に偏らないように注意する。
(13) 政治・経済問題等に関する意見は、その責任の所在を明らかにする必要がある。
(14) 政治・経済に混乱を与えるおそれのある問題は慎重に取り扱う。
3章 児童および青少年への配慮
(15) 児童および青少年の人格形成に貢献し、良い習慣、責任感、正しい勇気などの精神を尊重させるように配慮する。
(16) 児童向け番組は、健全な社会通念に基づき、児童の品性を損なうような言葉や表現は避けなければならない。
(17) 児童向け番組で、悪徳行為・残忍・陰惨などの場面を取り扱う時は、児童の気持ちを過度に刺激したり傷つけたりしないように配慮する。
(18) 放送時間帯に応じ、児童および青少年の視聴に十分配慮する。
(19) 武力や暴力を表現する時は、青少年に対する影響を考慮しなければならない。
6章 報道の責任
(32) ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない。
(34) 取材・編集にあたっては、一方に偏るなど、視聴者に誤解を与えないように注意する。
(36) 事実の報道であっても、陰惨な場面の細かい表現は避けなければならない。
7章 宗教
(39) 信教の自由および各宗派の立場を尊重し、他宗・他派を中傷、ひぼうする言動は取り扱わない。
8章 表現上の配慮
(43) 放送内容は、放送時刻に応じて視聴者の生活状態を考慮し、不快な感じを与えないようにする。
(46) 人心に動揺や不安を与えるおそれのある内容のものは慎重に取り扱う。
(47) 社会・公共の問題で意見が対立しているものについては、できるだけ多くの角度から論じなければならない。
(55) 病的、残虐、悲惨、虐待などの情景を表現する時は、視聴者に嫌悪感を与えないようにする。
9章 暴力表現
(63) 暴力行為は、その目的のいかんを問わず、否定的に取り扱う。
(64) 暴力行為の表現は、最小限にとどめる。
(65) 殺人・拷問・暴行・私刑などの残虐な感じを与える行為、その他、精神的・肉体的苦痛を、誇大または刺激的に表現しない。
10章 犯罪表現
(66) 犯罪を肯定したり犯罪者を英雄扱いしたりしてはならない。
(67) 犯罪の手口を表現する時は、模倣の気持ちを起こさせないように注意する。
(70) 鉄砲・刀剣類の使用は慎重にし、殺傷の手段については模倣の動機を与えないように注意する。
(71) 誘かいなどを取り扱う時は、その手口を詳しく表現してはならない。

日本民間放送連盟 報道指針 2003(平成15)年2月20日追加
http://www.nab.or.jp/htm/ethics/motto.html

民間放送の報道活動に携わる者は、この目的のために、市民の知る権利に応える社会的役割を自覚し、常に積極的な取材・報道を行うとともに、厳しい批判精神と市民としての良識をもち、ジャーナリストとしての原点に立って自らを律する。この活動は、市民の信頼を基盤として初めて成立する。
1.報道の自由
(1) 取材・報道の判断は、市民の知る権利に応えることを第一の基準とし、報道活動は、真実を伝える良心のみに依拠する。
(2) 報道活動は、公共性、公益性に基づいて、あらゆる権力の行使を監視し、社会悪を徹底的に追及する。
(3) 報道活動は、あらゆる圧力、干渉を排除する。
2.報道姿勢
(1) 視聴者・聴取者および取材対象者に対し、常に誠実な姿勢を保つ。取材・報道にあたって人を欺く手法や不公正な手法は用いない。
(2) 予断を排し、事実をありのまま伝える。未確認の情報は未確認であることを明示する。
(3) 公平な報道は、報道活動に従事する放送人が常に公平を意識し、努力することによってしか達成できない。取材・報道対象の選択から伝え方まで、できるだけ多様な意見を考慮し、多角的な報道を心掛ける。
4.報道表現
報道における表現は、節度と品位をもって行われなければならない。過度の演出、センセーショナリズムは、報道活動の公正さに疑念を抱かせ、市民の信頼を損なう。
(1) 過度の演出や視聴者・聴取者に誤解を与える表現手法、合理的理由のない匿名インタビュー、モザイクの濫用は避ける。
(2) 不公正な編集手法、サブリミナル手法やこれに類する手法 は用いない

誘かい報道の取り扱いについて
http://www.nab.or.jp/htm/ethics/kidnapnews.html

誘かい事件のうち、報道されることによって被害者の生命に危険が及ぶおそれがあるものについては、捜査当局からすみやかにその情報の提供を受けて報道機関(民放連加盟各社)は事件の内容を検討のうえ、その結果によっては厳重に報道を自制する。
 また、警察当局がこれを単に捜査上の便宜から乱用し、あるいは報道統制とならぬよう厳重に注意する。

緊急事態における放送に関する指針
http://www.nab.or.jp/htm/press/press20031121.html#shishin

民間放送は、「日本民間放送連盟 放送基準」および「日本民間放送連盟 報道指針」の精神に則り、外部からの武力攻撃により市民の平穏な生活が脅かされる緊急事態においては、以下の指針にもとづき取材・報道を行う。
1.市民の生命・財産にかかわる緊急情報は、正確かつ迅速に報道する。その目的とするものは、被害の発生と拡大の防止にある。
2.緊急事態にあっては政府に対し最大限の情報開示を求めるとともに、多角的かつ客観的な取材・報道に最善の努力を傾ける。
3.報道機関として、いかなる緊急事態にあっても市民の基本的人権および知る権利を守り、自由で自律的な取材・報道活動を貫く。