表現の自由を制約する自民党改憲案

社民党
2006年1月20日/社民党憲法部会
自民党「新憲法草案」批判(案)
http://www5.sdp.or.jp/central/topics/kenpou2006012002.html

■市民の権利――公の秩序が許す範囲の「自由及び権利」
「草案」は、現行第12条に「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ」という文言を挿入し、自由や権利に「責任・義務」と名目で制限を加える根拠としようとしている。現行憲法では、自由と権利を制約する条件は「公共の福祉」のみであるが、「草案」では現13条、29条も含めこれが「公益及び公の秩序」に」置き換えられる。(22条の「公共の福祉」は削除)
これは、単なる言葉の言い換えではない。「公共の福祉」とはある人権が他人の人権と矛盾・衝突する場合の解決をはかるための調整、実質的公平の原理であり、人権に必然的に内在する制約である。これに対して、「草案」のいう「公益及び公の秩序」は、個人の権利を否定し個人を犠牲にした上での権力に対する忠誠を意味するものともなりかねないもので、外部から人権を制約するものと解される。現憲法が「侵すことの出来ない永久の権利」である基本的人権である「個人の自由と権利」が、明治憲法下での「人権保障」のような統治機構の定める秩序や法益の下位のものと位置づけられ、その許容範囲でしか存在できないものに貶められることになりかねないのである。
例えば国家の安全や、軍事目的といった公益のために、表現の自由や思想・信条の自由等が制限されることにつながり、戦争への批判を立法によって制限する根拠にもなりかねない。「草案」第9条2が自衛軍の任務として「公の秩序の維持のための活動」を規定していることからも、「公益及び公の秩序」が、軍事的要請をも含めた国家の求める秩序全般を指すことは明白である。