イラク新憲法について

反戦翻訳団がラフール・マハジャン氏の論考を掲載しています。
イラク憲法の必要性を私は否定はしませんが、イラク憲法の日程押しつけはイラク安定のためではなく米国世論向けに報道させるためとの氏の認識には、共感できます。
 

イラク憲法について】ラフール・マハジャン(2005/10/10)
http://blog.livedoor.jp/awtbrigade/archives/50077041.html

だが、1958年の革命をこの結果でもって評価するのであれば、今年1月の選挙はどうだろうか。選挙の結果生まれたのは、政府と結託した準軍事組織集団が殺人と拷問をほしいままにする(そして犠牲者の姿を国営テレビで放送する)ような、警察国家だった。政治家は宗派間の紛争にばかり没頭し、政府ができる3ヶ月前から人々が待ち望んでいたような要求にはろくに取り組もうともしない。
そして、自由のない警察国家の建設はあらたな段階に達した。民衆は無視されつづけるが、ときおり選挙が行われる。すなわち、新憲法というわけだ。
政府が作られる時点ですでに、政府内の民族・宗派集団が互いになんとか長期的に妥協できる点を見出す力量など持っていないことが明らかになっていた。3ヶ月たったあとでさえ、せいぜいできるのは難問を先送りにすることくらいだった。
無謀なことに、米国はこの反目しあう集団に憲法案を8月15日までにまとめ、10月15日に選挙で承認するよう要求した。米国支持派のクルド人政治家であるマフムード・オスマンですら、このように語っている。「時間がない?それはアメリカ人のせいだよ。彼らはいつも短い期限を押し付けてくる。まるでハンバーガーかファーストフードでも作るみたいに」
今回の米国による押し付けは、支配力を増すためではないし、イラクを安定させるためですらない。単に数日間のあいだ、メディアの注目を集め、米国内で大々的に報道させるだけのためなのだ。

 
メディアがイラク戦争に参加するかしないか。イラク憲法についての報道は、そのリスマス試験紙となり得るように思います。
イラク報道では保守メディアは「イラクは新たな段階に達しました」「大きな節目を迎えています」*1的な報道で、状況の推移を“戦争の幕ひき”として演出しようとしているようにも見えますが、現実には戦争は継続していますし、戦場は拡大し、犠牲者は増え続けています。
もし、イラク憲法の報道が、「イラクは新たな段階に達しました」的な現状を既成事実化するものとなり、その結果としてイラク戦争についての国民の認識が歪められるとすれば、メディアはある意味で誤報を報じイラク戦争に主体的に加担したことになるおそれがあります。
 
最近のイラク戦争関連報道の一部。
 

3割が英軍の即時撤退望む=「イラク攻撃は誤り」57%に−世論調査時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051013-00000188-jij-int
サマワで英軍にロケット弾
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051013-00000022-kyodo-int
イラク>軍の採用所近くで自爆テロ、30人が死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051012-00000153-mai-int
北部でまた自爆、31人死亡 イラク、新兵採用施設
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051012-00000250-kyodo-int
英軍攻撃へイラク民兵訓練か=イランの革命防衛隊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051012-00000108-jij-int
自爆相次ぎ43人死亡 国民投票控えイラク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051012-00000006-kyodo-int
イラク自爆テロ2件、60人が死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051011-00000314-yom-int
バグダッドで自動車による自爆、死者少なくとも25人
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051011-00000251-reu-int
米軍15万2000人に大幅増強 イラク国民投票に備え
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051007-00000120-kyodo-int
支持率37%、就任以来最低 世論調査米大統領
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051007-00000095-kyodo-int
爆弾テロ、死者25人に イラク中部、80人以上負傷
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051006-00000031-kyodo-int
投票ボイコット呼び掛け イラク、対米攻撃拡大も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051005-00000063-kyodo-int
イラク連続テロで85人死亡 繁華街
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050930-00000019-kyodo-int
英軍基地に迫撃弾か イラク南部サマワ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050928-00000030-kyodo-int
米首都に10万人超 イラク駐留反対訴え
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050926-00000008-san-int
イラクで反英感情噴出 英軍、地元警察に突入
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050923-00000010-san-int
米軍撤退訴え大統領に書簡 イラク戦死兵の母
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050922-00000035-kyodo-int
「無実」の兄弟殺害と抗議 米軍にイラク住民
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050819-00000022-kyodo-int
「日本の首相を非難せよ」 サマワ、金曜礼拝で
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050812-00000279-kyodo-int
陸自報じるな」と脅迫状 サマワ地元メディアに
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050808-00000212-kyodo-int

サマワ8日共同】陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワで、地元有力紙アッサマワとムサンナ・テレビに対し、陸自の活動を報道しないよう警告し、従わねば「社員を殺害する」などとする脅迫状が送りつけられていたことが8日分かった。両メディア関係者が明らかにした。
脅迫後、両メディアは陸自絡みの報道を一時停止。脅迫の狙いは、復興支援活動に対する市民の支持を遮断し、陸自を孤立化させることにあるとみられる。治安が不安定化する中で、陸自の活動は新たな問題に直面した。
サマワでは7日、暴徒化したデモ隊と警官隊が衝突、1人が死亡し約60人が負傷するなど不穏な情勢が続いている。
脅迫状は7月下旬に届き(1)陸自との協力停止(2)陸自の活動を称賛しない(3)陸自と英軍の活動を報じない(4)イスラム戦士の抵抗運動を「テロ」と表現しない−−ことを要求。応じなければ「社員を殺害するか拉致し、または事務所を爆破する」と脅している。(共同通信) - 8月8日

イラク戦争 > 社説
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/war_against_iraq/editorials_1.html

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*1:たとえば2005年10月14日NHK定時ニュース。